「少し待て」
そう言い男は視線を此方から逸らし何処かへと連絡をとる。
しばらくすると、連絡が終わったのか男が再び此方に視線を向ける。
「中で待っていろ、後で呼びに行く。……ようこそ、アフターライフへ」
そう男は言い扉の前から横にズレる。
どうやらローグが会ってもいいと判断したらしい。これは僥倖ではないだろうか?
取り敢えず中に入ろう……まずはそれからだ。
「……ゲーム通りで何より」
そう呟きながらアフターライフの中を歩きカウンター前のスツールに座る。
確かゲーム中でジャッキーがレジェンドがどうたらこうたらと言っていた覚えがあるが…まぁいい。というかジョニーの記憶ではアトランティスじゃなかったっけ?
「ご注文は?」
バーテンの女性が少しはにかみながら注文を促す。どうやらクレアではないみたいだ。今日は珍しく非番なんだろうか?
「ねぇ、ご注文は?」
……そうだ注文だ。
何も注文せずただ座っているだけなんてなんて無作法だろう。
日本人らしく……あ、今はアメリカのナイトシティの住民か。まぁ気にしないでいいだろう。
取り敢えずではあるが自分の好きなカクテルを注文するとしよう。
「ジントニックをお願い」
「へぇ……分かって言ってるの?」
女性の言葉はもっともだ。
ジントニック
ジンとトニックウォーター、そしてライムで作るシンプルなカクテルだ。
だがそれ故に店で使っているジン、トニックウォーターで味ががらりと変わり、それに加えバーテンダーの腕前が顕著に出るというシンプル故に店のレベルが分かるという恐ろしいものだ。
それを一杯目に注文するという事はある意味……いや普通に挑発行為と取られてもおかしくないのだ。
「分かってはいるんだけどジントニックが大好きなんだ。頼むよ」
「難儀なものが好きなのねぇ…分かったわ」
素直に分かってるけど好きだからと言うとバーテンの女性は笑みを深くしジントニックを作り出す。
……この時代にもタンカレーが残ってるのか…好きなジンだしとてもありがたい。
「はいよジントニックお待ち」
「ありがとう……うーんやっぱりこれだねぇ。最高だ」
「本当に好きなんだね」
「シンプル故に飾らない。だが味は深く甘さと苦さを兼ね揃えるいいカクテルだと思ってるよ」
少し打ち解けたのか和気藹々と話していると扉の前で話した男が面会の時間だとやってきた。
「ついてこい」
「了解」
ついてこいと言われ男がそのまま歩いて行ったのでそれについていく。
個室…いやテーブル席に女性が足を組んで座っているのが見える。
……ローグだ。ナイトシティのレジェンドの一人、ローグ・アメンディアレスがそこにいる。
この世界初めての有名人物に少し気持ちが高ぶってしまうが落ち着かせる。
大丈夫だ、落ち着け。焦ってはボロを出す。あくまでスマートに話す事を心掛けろ。
「あんたがソロを始めるってんで挨拶に来た奴かい?」
「あぁ、その通りだ」
「今時珍しいから会ってみようと思ったが……ふむ、何ができる?」
値踏みをするかのようにローグが自分を見る。
ここは素直にできる事を話すべきだろうか?
いや待て、例え能力がカンストしているからと言って本当に自分はそのスペックを100%発揮できるのだろうか?
だが買い物、ヴィークルの運転等の時にやった事を鑑みるとほぼゲームと同じようにできる事は分かっている。
元いた世界ではついぞ出来なかったフルダイブ型のゲームみたいなものと考えれば問題ないだろう。
「基本的には何でも可能。ただ使っていた機材の型が古くてネットランナーとしてはちょっと今の環境に馴らさないといけないかも」
「へぇ…ネットランナー上がりかい。何でもとは具体的になんだい?」
「護衛から排除まで、一通り」
「そうは見えないけどねぇ?…まぁいいさ、仕事はしっかりこなしてもらうよ」
「それは勿論」
「言うは易し行うは難しだよ」
「確かにその通りで。だけどもやると決めた以上完遂しますよ?」
「そうあって欲しいね
じゃ、話はこれで終わりだ。頑張りな」
そう言いローグは行った行ったと手を振る。
それでは、とローグに一言言い席を立ちその場所から離れようとするとローグに声をかけられる。
「忘れるとこだったが名前は?」
「……ファントム。依頼の斡旋、よろしくお願いしますね」
そう歩きながら手を振りながらローグに返答し移動する。
これでローグが管理している地域からの依頼が来るだろう。
「
ローグがそう呟く。
その声は店の音楽や声で彼女には届かなった。
「無事面会は終わったようね」
カウンター近くまで歩くと先程話していたバーテンに声をかけられる。
声から察するにやれやれと言った感が少し出ているが何かやらかしたのだろうか?
「無事…?に終わりましたよ。いやはや流石に疲れた」
「ならお祝いとしてもう一杯どうぞ。ようこそ、アフターライフに」
そういいバーテンの女性はジントニックを作り置いてくれる。
ご厚意に甘え戴きジントニックを飲む。
「……ふぅ。やっぱりこれだよこれ。
あ、そうそう、これからお世話になる皆様と貴女に」
そう言い1万エディーを送信する。
受け取ったバーテンは目を見開き驚いている。
「こんなに…!?流石に受け取れないよ」
「なら残ったエディー分ここで頼んだモノから引いといて。それなら問題ないでしょう?」
「まぁ…確かにそれなら…」
「ではそれで。
……えぇっと…お名前は?」
「シンディーよ。よろしくね。亡霊さん?」
「聞こえてたか」
御馳走様と言いカウンターから離れる。
そのまま店の出口まで行き扉を潜ると門番的な役割をしていた男に声をかけられた。
「またのご来店をお待ちしております」
「あぁ、また来るよ」
ガタイに似合わないなーとか思いながら苦笑いで答えアフターライフからでてバイクを止めている所まで歩く。
さて、次はワカコの所に行くとしよう。