2121年 巴里 ルーブル美術館
通い慣れた美術館。何度も見慣れたはずの絵画。
【モナ・リザ】
世界中の何千、何万もの人々を魅了してきた微笑み。
【彼女】を見つめていると心が揺さぶられる。
その原因は分かっていた。
【彼女】の微笑みと重なるように、どこかで会ったことのある女性のことを
思い出してしまうからだ。脳裏に、瞼の裏に焼き付いて離れない彼女を。
どこからか吹き込んできた柔らかい風が、私のピンク色のおさげ髪を揺らした。
心の中で【彼女】に別れの言葉を告げ、その場を離れるために歩き始めた。
歩いている間も頭が、心が止めどなく彼女を思い出そうとしている。
初めて一緒にお泊まりをした時を。彼女の恥ずかしがる顔。
二人で旅行した場所。あれは日本の京都だった。彼女の楽しそうな顔。
温泉にも行ったんだっけ? 彼女の美しい浴衣姿。
彼女の家族と食事をしたこともあったな。彼女の慌てた顔。
そして、初めてのキス。彼女の嬉しそうな顔。
二人ともキスが好きだった。何度も触れた彼女の唇。
それに最後のキスは...。
『す、すいません!』
私としたことが、ぼーっとしていてすれ違う人とぶつかってしまった。
ぶつかった拍子に落ちてしまった
何度も謝ってから、私はまた歩き始めた。
何を考えていたのだっけ? そうだ。彼女のことだ。
ここに来ると、どうしても思い出してしまう。
私の記憶の中のどこかにいる彼女。
喧嘩したこともあったかしら。あれはエイプリルフールの日。
二人とも負けず嫌いで、つまらない事で喧嘩したりしたんだっけ。
でも、すぐ仲直りできた気がする。
一緒に歌を歌ったりもしていたな。
彼女の歌声が好きだった。ずっと横で聴いていたかった。
しばらく会えなくなった時もあったんだっけ?
会えない間の喪失感、悲しさ。
でも、その分だけ会えた時の喜びは大きかった。
彼女の手の温もり、柔らかな唇の感触。
私は彼女とのキスが大好きだった。
ファーストキスからラストキスまで全てが。
「また会いに来たよ。」
私は目的の場所に到着した。
【モナ・リザ】
【彼女】の微笑みを観ていると心が安らいでいった。
まるで、名前も思い出せない彼女と出会えたような気になるからかな。
どこからか吹いてきた爽やかな風が私の黒いロングヘアーを
髪...?
そう言えば、さっきぶつかったピンクのおさげの女性が落としたヘアピン。
どこかで...。
振り返って彼女を探してみた。
でも、そこから見えたのは【彼女】の微笑みに魅了されている人々だけだった。
外に出てみると午後の緩やかな時が流れていた。
さっきぶつかった時に落としてしまった愛用の
そう言えば...。
ぶつかった時に髪留めを拾ってくれた黒髪の柔らかな笑顔の女の人...。
どこかで...。
ふっと振り返ってみたが、そこから見えたのは【彼女】の微笑みに会いに行こうとしている
人々の群れだけだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
にじさんじの二次創作小説を投稿しているのでが、
別の長編作品構成中に宇多田ヒカル様の『One Last Kiss』を聴いていたら
頭の中に浮かんできたイメージを元に書いてみました。
私の勝手なイメージなので解釈違い等あると思います。
数ある中で最初に感じたイメージで二人を主人公にしてみました。
補足として作品内の【彼女】は【モナ・リザ】を示しています。
中盤の「すいません」の部分で物語の視点が変っています。
前半は【モナ・リザ】を見終わり変える健屋さん視点
後半は【モナ・リザ】を見に行こうとしている白雪さん視点。
最後はまた健屋さんという感じです。
(行間が二行空いている場面で視点転換するようにしています。)
短編も頭に浮かんだら合間に投稿していこうと思います。
見かけたら覗いていただければ嬉しいです。
良かったら過去に投稿した連載(完結済み)も読んでいただければ嬉しいです。
(人を選ぶ作品になってますが...。)
最後まで読んでいただき、改めてありがとうございました!