人を想う気持ち――――――
それこそが、一番大事な調味料。






※ニンテンドー発のSRPG【ファイアーエムブレム 封印の剣】の登場キャラクター
【ロイ】と【リリーナ】のカップリング二次創作小説です。

≪設定≫
・原作【ファイアーエムブレム封印の剣】本編後
・ロイ×リリーナ支援Aおよびペアエンド前提

※注意
・原作ネタバレ注意!
・多少の解釈違いがあるかもしれません

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【FE封印】気持ち、ほんのひと握り【ロイ×リリーナSS】

戦乱が明けて、が経った。

激しい傷跡が、今も世界の各地に残る。

リキアの地も、またその一つ。

フェレ侯爵領に凱旋したロイは、休む間もなく領地の、そしてリキア全土の復興に尽力していた。

 

「よし…!今日はここまでとしよう!みんな、ありがとう!」

ロイは、自分の汗を軽く拭って、臣下に向けてそう言葉を掛けた。

彼の言葉に、それまで作業を行っていた者たちは一斉に手を止め、うんと身体を伸ばしたり、お互いに今日の仕事を労ったりと、各々が帰路に就いていた。

「ロイ様、お疲れ様です!」

ひとりの若者が、ロイに声をかけた。

「ウォルト、君もありがとう。いつも助かるよ。」

「いえ、フェレ復興…そしてリキア全土の復興は、ロイ様だけでなく、我々フェレ家全員の願いですから。」

「そうだね。みんなのおかげで、復興もかなり早く進んでいる。この調子で…。」

途中まで言いかけた所で、ロイは態勢を崩し、膝をついた。

「ロイ様!!?」

ウォルトが心配そうに駆け寄った。

「だ、大丈夫だよ…。少し疲れが溜まっただけだと思う。」

心配をかけないようにそう声をかけるロイだったが、顔は赤くなっており、呼吸も少し荒い。

ウォルトは、恐る恐るロイの額に手を伸ばす。

額に触れた手に、上昇したロイの体温が即座に伝わった。

「す、すごい熱じゃないですか…!これはまずい…すぐに城にお送りしないと…!」

ウォルトはすぐにロイを背負って、城へと一目散に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――ロイが、倒れた…?」

リリーナが、臣下から告げられた事実に問い返した。

「えぇ…。なんでも復興支援活動の後、急にその場で倒れられたのだとか…。」

「そんな…!」

詳細な状況を伺い、益々表情が暗くなるリリーナ。

「我がオスティア領も被害は大きいですが、フェレ領もかなり甚大な被害を受けていたのでしょう。ここ最近は騎士団総出での活動が続いていた、と伺っています。」

「内部から謀反で襲撃されたオスティアと違って、フェレは村の方も含めてお城の外側を侵攻されてたから、私たちよりもよっぽど復興が大変なはず…。ロイ…無理をしたんじゃ…。」

そう言ったリリーナは、少し考えて臣下にこう告げた。

 

「馬を出して。私はこれから、フェレに向かいます!残りの騎士団は、留守をお願い!」

「「はっ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――失礼します。」

ロイの身体に響かないよう、リリーナは慎重に寝室の扉を開けた。

そこには、ぐっすりと眠るロイと傍らに臣下のマーカスが座っていた。

「リリーナ様…!これはようこそ、おいでなさりました…!」

「ロイの具合はどう?」

「それが…どうやら、疲労から風邪を拗らせてしまったようで…。」

「風邪?」

「はい。発熱が酷いので今は安静にしなさいと、先程医師から診断され、薬を飲んでお休みになられたところです。」

「そう…とりあえず、命に別状がなくてよかったわ…。」

リリーナは、少し安堵の表情を見せた。

しかし、マーカスの表情は暗いままだ。

「…ロイ様は、復興活動に自らも毎日積極的に参加されておりました。現場で指揮を執るだけでなく、ご自身も動かれ、民にも声をかけ、それはもうとても献身的な働きぶりでした。しかし…。」

「無理をしてた、ってことよね…。」

「はい…。エリウッド様もここのところ体調を更に崩され、床に臥せられる時間も長くなっております。そのエリウッド様に代わって自分が、と必死になっておられたのでしょう。お気持ちはお察ししますが…お身体がもたないのも無理はございません。我々がもっとしっかり止めていれば…。」

「マーカスさん…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリーナは、部屋を後にした。

悲しい表情を見せるマーカスに、心が締め付けられそうになりながら。

(ロイも…マーカスさん達も…誰も悪くない。フェレのみんなは、必死に頑張ってる…。何か私も力になれないかしら…。)

考え事をしながら歩いていたせいか、リリーナは前から向かってくる人影に気づかなかった。

 

「きゃっ!?」

正面衝突をしてしまうリリーナとフェレ家の侍女。

侍女は持っていた小鍋を落として割ってしまい、中身も廊下にすべて流れ出てしまった。

「り、リリーナ様、申し訳ありません!怪我や火傷はございませんか!?」

「い、いえ、私は大丈夫…。ごめんなさい、ボーッとしてしまって…。」

リリーナはふと、こぼれた鍋の中身を見た。

「それは…?」

「あぁ、あれはこれからエリウッド様にお持ちする予定だったお夕飯です。最近、エリウッド様も体調が優れないので、できる限り消化も良く、かつ少しでもお元気になるよう粥を用意したのですが…これでは作り直しですね…。」

「粥…!」

リリーナが、ハッとなった。

そして、侍女に向かって【お願い】をした。

 

「すいません、もしよかったら…私にも手伝わせてもらえませんか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外は陽が沈み、夜を迎えていた。

それまで深く眠りについていたロイが、目を覚ました。

(そうか、あれから僕は寝てしまって…。もう、夜になってたのか…。)

寝台から窓の外を眺め、眠っていた間の時の流れを実感していた。

自身の体調管理が疎かだったせいで、臣下にも迷惑をかけた。

その事を悔いるかのように、遠い目で空を見つめる。

 

コンコン。

扉を叩く音がする。

「どうぞ。」

入ってきたのは、リリーナだった。

「リリーナ…!?なんでここに?」

「ロイが倒れた、って聞いて、心配になって。具合はどう?」

「う、うん。薬のおかげかな、少し楽になってきてるよ。」

「よかった。」

リリーナはホッとして笑みを浮かべたが、ロイは逆に、申し訳なさそうな表情を返した。

「ごめんね、リリーナにまで心配をかけて…。オスティアは、君が侯爵を引き継いだばかりで、今とても大変な時期だというのに…。」

しかし、リリーナは笑顔のまま、

「気にしないで!大変なのはお互い様だもの。どちらかが困った時は助けに行く。お父様とおじさまの時から交わしてる約束じゃない!」

…と、答えた。

「そうだったね。ありがとう、リリーナ。」

ロイもまた、リリーナに微笑み返しながら感謝した。

 

「あ、そうだ。ロイ、お腹すいてない?」

唐突にリリーナがロイに聞いた。

「え?あぁ、そういえばお昼以降何も食べてないから、たしかに空いたかと聞かれると…。」

そう聞かれてロイは、自分のお腹の辺りを触った。

「ちょっと待っててね。」

リリーナはそう言うと、寝台の側の机の上に小さな鍋を置いた。

「これは…?」

ロイは不思議そうに見ながらも鍋の蓋を開ける。

 

中身は、廊下で落としたあの粥と同じものだった。

もくもくと湯気が上がり、香りが部屋の中を満たしていく。

「わぁ、すごい!美味しそうだ!これ…もしかしてリリーナが?」

ロイはとても嬉しそうな表情を見せながらリリーナに聞いた。

「う、うん、そうよ。」

「嬉しいよ、ありがとう!いい香りだ…。早速、いただいてもいいかな?」

「どうぞ、召し上がれ。」

そう言われると、ロイは匙を手に取り、粥を掬う。

火傷してしまわないよう、息を吹きかけて冷ましながら、口へと運んだ。

「…美味しい!」

ロイの表情は、益々明るくなった。

「これ、本当にリリーナが作ったんだよね!?すごく美味しいよ!」

「よかった…。無理せず食べれる分だけ食べて元気だしてね。」

「ありがとう、嬉しいよ!」

ロイからの御礼に、微笑みを返したリリーナは、

「じゃあ、私はこれで。ゆっくり休んでね。」

…と、だけ言葉を残して、部屋を後にした。

(…リリーナも、疲れているのかな…?)

ロイは、帰っていく彼女のどこか陰のある背中を見て、そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――その日の夜更け。

もう城の中もすっかりと静まり返った中、ロイは目を覚ましていた。

(…夕方にあれだけ寝てしまったせいかな…。あまり寝付けないや…。)

寝台の傍らに置いていた水を少し飲み、一呼吸置く。

すると微かながら、遠くの方で物音がしていることに彼は気付いた。

(こんな遅くに何の音だろう…?)

ロイは立ち上がり、身体を冷やさぬように着込んでから部屋を出た。

 

廊下を進んでいくにつれ、音は大きくなり、目的の場所へと近づいているのが解る。

部屋からは、光も漏れ出している。

(あれは、厨房…?こんな時間ということは、夜営の兵への夜食だろうか…?)

ロイは、ゆっくりと厨房の扉を開けて中を覗いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに居たのは、オスティアに帰ったはずのリリーナだった。

彼女がなぜか、厨房で作業をしている。

(リリーナ…?なんでここに…?)

ロイは夢かと思って何度も目を擦るも、そこにリリーナがいるのは間違いない。

でも、理由がまったくわからない。

困惑しているロイに、戻ってきた侍女が声をかけた。

「ロイ様?こんな夜更けに何を?」

その声に、中にいたリリーナも気づいて、パッと後ろを振り返る。

「ロイ!?なんでここに?寝てないで大丈夫なの!?」

「それはこっちの台詞だよ。オスティアに戻ったんじゃなかったの?」

「そ、それは…。」

リリーナが少しもじもじしてしまったところで、侍女が助け船を出した。

「悔しかったんですよね。」

そう言われて、彼女は静かに首を縦に振った。

「ここから先は、お邪魔虫になりそうなので、私は失礼しますね。」

侍女はそう言って、その場を早々に立ち去った。

なぜかその表情は、嬉しそうとも、楽しそうともとれる表情をしていた。

 

「悔しい、って…どういうことだい?」

まだ状況が理解し切れていないロイが、リリーナに問いかけた。

リリーナは少し恥ずかしそうにしながら、話し始めた。

「実はね…今日、ロイに食べてもらった粥…あれ、私が作ったものじゃないの。」

「えっ、そうだったの!?」

「うん…嘘をついてごめんなさい。」

悲しそうな表情をするリリーナに、ロイは穏やかに言葉をかける。

「何か、理由があったんでしょ?リリーナが理由もなく、嘘をつくとは思ってないよ。」

それを聞いた彼女は、さらに言葉を続けた。

「作ったのは本当なの。でも失敗してしまって…。とてもじゃないけど、ロイに出してあげられるものじゃなかった。だから、侍女さんが作られてたおじさまの分を少し頂いたの。」

「そうだったんだ…。それで、帰る時少し元気がなさそうだったんだね。」

「ここまでして頑張ってるロイのために、私も何かできないかな、って思ったんだけど…慣れないことをすると、上手くいかないわね…。」

「リリーナ…。」

リリーナが失敗するのも無理はない。

彼女は侯爵の一人娘。

城の中では召使いがいて、食事を誰かに作るなんて機会はそんなになかったはずだ。

 

それなのに、彼女は――――――

 

 

「【悔しい】っていう気持ちはわかったけど、どうしてこんな時間までフェレの厨房で…?」

ロイの疑問に、リリーナは少し恥ずかしそうに、

「朝食…。」

…と、呟いた。

「え…?」

「失敗したままだと悔しいから、ロイに朝食を作ってあげたくて。それをこっそり置いて帰るつもりだったの!」

「僕に、朝食を…?」

「でも、また失敗したくない…。だからフェレ家の使いのみんなにも…それこそエリウッドおじさまにも許可をもらって、夜営のみんなのお夜食の準備をお手伝いする条件で、練習させてもらってるの。」

「リリーナ、何もそこまでして…。」

「夕方にも言ったでしょう?私たちオスティアは、この間の戦乱でフェレに本当に助けてもらった。だから今度は私たちの番よ。それに…。」

 

「いつかロイは、私を迎えに来てくれるんでしょう?…その時に…もっと美味しい料理を、食べさせてあげたいから…。」

リリーナは、顔を真っ赤にさせながら言った。

「リリーナ、それは…!」

それを聞いたロイも、また顔を赤くする。

二人の間に、少し沈黙が走った。

そして、沈黙を先に破ったのはロイの方だった。

「リリーナ。もしよかったら…夜営のみんなの分の夜食、僕も少し食べてみてもいいかな?」

「え…でも、まだちゃんと上手には…。」

困惑するリリーナ。

しかし、彼は真っすぐ彼女にこう言った。

 

「リリーナの作った料理を、食べてみたい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――数日後。

ロイの体調はすっかり良くなり、また以前のようにフェレの村や市街地に訪れ復興活動を行っていた。

時刻は丁度、正午を迎えたところだ。

 

「よし、そろそろ休憩にしよう!」

彼がそう指示を出し、全員が一斉に各々で休憩を始める。

ロイもまた、日陰のある腰掛けに座った。

そして、荷物の中から一つ、小さな包みを取り出した。

「ロイ様、一緒にお昼食べましょう!」

「ウォルト!あぁ、もちろんだよ。」

やってきたウォルトも同じ腰掛けに座り、自身も昼食の用意をする。

その時、彼の目にロイの持っていた小包の中身が写った。

「あれ、握り飯…ですか?これ、ロイ様がご自分で?」

「いいや、違うよ。」

「あれ、そうなんですか?う~ん、城の者が作ったにしてはいつもより形が悪いような…。」

「ウォルトには、そう見える?」

「ロイ様には、そうは見えないんですか?」

「僕はね――――――」

 

 

 

 

 

「これ以上、この世で綺麗で美味しいものはない。そう思ってるよ。」


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