花で奏でる。   作:斉藤努

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第3話

啓斗とたえは同じアルバイトをしていた。場所はライブハウスSPEACE。たまたま同じ面接の席が隣同士。クラスの席でも、そしてバイトの面接でも隣。

 

少しだけ運命を感じてしまっても仕方ない。それからというのは皆様の思う通りである。

 

しかしながら、SPEACEは新しくデビューしたPoppin’Partyやドラマーが代わり一転したCHiSPA、今や普通となった大ガールズバンド自体の礎を築いたGlitter*Greenのライブを千秋楽として幕を閉じてしまう

 

あっという間に終わってしまったSPEACEだが、スタッフに閉館の知らせが入ったのは前々日の事だった。

 

「ちょ、オーナー!SPEACEが閉館ってどういうことですか!?」

 

「私はやりきった、だからもう未練はない。それだけだよ」

 

「まだ、俺ら、俺はやりきってないっすよ」

 

「じゃあ此処の運営やってみるかい?お前みたいな青二才にできるかは分からないけどね」

 

急な引退発言に啓斗は抗議するがオーナー、もとい都築詩船に正論を言われ仕方なく納得する。

 

「その代わりと言ってはなんだけどお前達には次の働き場所を用意した。色んな所に声をかけたから私の名前を言えば通じると思うよ」

 

「は、はぁ。因みにオーナーはどこがいいと思います?」

 

「そうだねぇ…新しくできるCiRCLEか若者に人気なdubか。それともその内リューアルするGALAXYだね」

 

「そうですか。オーナー、いや都築さん。短い間でしたが今までありがとうございました」

 

啓斗はその後礼をしてSPEACEから離れる。今までの感謝とこれからの不安を胸に残して。

 

 

 

一週間後、啓斗はライブハウスdubに来ていた。理由は簡単、dubが一番彼の家から近かったからだ。いくら都築詩船のコネ(?)があるとしても必ず採用される訳ではない。というか啓斗の場合とてつもなく緊張していた。

 

「あの…すみません、dubさんで間違ってないですか?」

 

「はい、そうですよ?あっ、もしかして詩船さんの所の方?」

 

「そうです。SPEACEから来た神崎啓斗と申します」

 

「そうなんだ、よろしくね神崎くん。私はdub(ここ)でライブハウスやらせてもらってる香取美乃梨(かとりみのり)だよ。気軽に声かけてね」

 

その瞬間、啓斗の採用が決定した。それからというもの啓斗は毎日のようにバイトをして過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今日はバイトである。いつも通りの一日。になる筈だったのだが。

 

「カンザキ!こっちの機材早く運びなさい!」

 

「カンザキじゃなくてコウサキだし、しかも俺はあんたの召使いでもなんでもねぇ!しかも出会ってすぐだろっ!」

 

特徴的なヘッドホン、あまり手入れしていないように見える濃いピンク色の髪。自称バンドのプロデューサーの肩書きを持つこの少女は玉田ちゆ、またの名をチュチュ。

 

チュチュは小柄な為ある程度力のある啓斗を使いたいように使っていた。

 

「てかさ、チュチュさんや。メンバーいないんだろ?だったらなんで毎日機材運ばなきゃいけねえの?」

 

「それは…いつか来るかもしれないから、サイッキョーの演者が来るからよ!」

 

「あのなぁ、俺だって毎日暇じゃねぇの。しかも結構筋肉痛だし。おい、俺居ない時美乃梨さんとか他の人に任せてる訳じゃねぇよな?」

 

「……ごめんなさいっ!最近スカウした人間が来るかもと思って…」

 

「それならそうって言えよ。ちょっと口荒げてごめんな、謝るわ」

 

相当訳有りな少女に手を焼きながらも仕事を終わらせて帰宅しようとする啓斗だが、突然足が止まる。

 

何故かというと今店に入ってきた女性が夢の中に出てきた少女と酷似していたからだ。

 

似ているだけだ、だって遠くに行ってしまったじゃないか。そう自分に言い聞かす啓斗だったが、不思議な事に啓斗の足は動いてしまう。

 

静かな筈なライブハウスだが啓斗の耳には無数ノイズが駆け巡って離れない。

 

「あの…すみません。ある人にここに来て欲しいと言われたのですが、どうすればいいですか?」

 

「あっ、はい。少々お待ちください」

 

声が、脚が。自分の言うことを聞かなくなった事を啓斗は感じていた。

 

 

 

 

大きな機材が置かれているが人が一人しかいない。その部屋に二人、啓斗とベースを担いだ少女が入ってきた。少女とチュチュが何かをするようなので部屋を出ようとすると声がかかる。

 

「あの。よかったらこのまま見ていってくれませんか?」

 

「は、はい。そうですね。チュチュさんもいいかな?」

 

「別に私はワカナが演奏を見せてくれればそれで問題はnothingよ」

 

チュチュには断られると思って話を振った為逃げ場をなくす啓斗。この行為がそこまでのいみを持つことを啓斗はまだ知らない。

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