花で奏でる。   作:斉藤努

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第4話

 レイは驚きを隠せないでいた。何故なら恐らく、絶対自分の幼馴染みである人間にまた出会うことができたからだ。しかしあちらは気づいていないようで声はかけることができない。

 

幼馴染みの店員に案内されて機材がしっかりセットされている部屋に入る。その時久しぶりに会った幼馴染みに演奏を聞いて欲しいと思うレイ。

 

 レイはこれから帰るだろうからと思っていたが店員が大丈夫と言うので演奏を聞いてもらうことになった。

 

ベースのチューニングを済ませ、少し音を確認するとレイは他の誰でも無い、自分だけの音を響かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チュチュが用意した音源とベースの重低音が部屋の中を迸る。啓斗は心臓が止まる程の錯覚を覚えた。

 

「……すごい」

 

「ふふっ、ありがとうございます」

 

レイの少し遠慮がちの微笑みに吸い込まれそうになる啓斗。そんな事は知らずにチュチュは帰り支度を始める。それに気付かずレイと啓斗は大量の機材をしまっていく。

 

「あはは、手伝ってもらっちゃってすみません」

 

「私が使ったんですからいいんですよ。それと……後で少し話できませんか?」

 

「は、はい。すぐ帰り支度するので入り口で待っていてください」

 

初対面の筈なのに押してくるレイに警戒する啓斗だが断る理由もないので返事を返す。その時にレイが笑顔を見せた事に啓斗は気づいていない。

 

 

 

 

 秋に入り少し寒くなった、しかしまだ夏の風が残っている様な気もする夕暮れ。

 

「あっ、お待たせしました。そういえばお名前を聞いてなかったんですけど…」

 

「そうですね。でも一回どこか座れる場所に行きませんか?」

 

 

どこにでもある普通の公園。こんな時間に男女一組がベンチに座っている所を見たら誰もがカップルだと思うだろうが別にそういう訳ではない。

 

「自己紹介ですよね。私和奏レイっていいます。けいくん、覚えてる?」

 

 その瞬間。風が、音が、呼吸が止まった。まるで内臓が迫り上がる様な意味悪さが啓斗を襲う。

 

一方レイは苦しそうにしている啓斗に手を伸ばす、が。この間見た光景を思い出してその手を引っ込める。

 

「改めて久しぶり。レイちゃん。元気だった?」

 

「うん…。けいくんも元気そうだね。凄い大きい」

 

そう言って昔の様に頭を撫でるが、先程の事もあるのか。些か手が震えている。啓斗は気持ちがいいのが半分恥ずかしいのが半々で困っていた。

 

「大人っぽいのは変わってないよ。ちょっと涙が出そうになっちゃった」

 

「けいくんは凄い変わったね。……帰ってくるの遅くなってごめん」

 

啓斗はそれを聞いて今まで忘れていた事に罪悪感を覚えるがレイの笑顔を見るとそんな感情は消え失せていく。

 

「あのさ、けいくん、いや啓斗くん。私ね、久しぶりに二人で弾きたいんだ」

 

「え、あ、ベース!?レイちゃんが離れてから辞めちゃって……」

 

「そっか…しょうがないね。残念」

 

「レイちゃんにまた会えたし復帰しようかな」

 

その後も他愛もない会話を繰り広げながらそれぞれの帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飾り気のない質素な部屋の中で一際存在感を放ち、尚且つ黒光りしている啓斗のベース。啓斗は独りでベースとにらめっこをしていた。

 

「ああは言ったものの、大分埃かぶってるし修理してもらった方がいいのかなぁ。弦とかもボロボロだし……」

 

啓斗が試しに弦を弾く(はじく)が、張りがいい加減な為緩い音が空気と共に消えていく。

 

啓斗はベースから目を離すと部屋の中にあるアルバムを棚から引き抜く。それを開くと幼きレイと啓斗の写真が沢山あり中には二人でベースを弾いている物もある。

 

自分の小さい時の写真を見ていて長い時間が経っていることに気付くと風呂に入り食事は摂らずに床に入った。

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