楽しんでいただけると嬉しいです。感想等もお待ちしております(強欲)
日曜の昼下がり、神崎啓斗はアルバイトをしていた。緊張しているのが目にとれる。
何故ならたえが啓斗の働くdubに来ているからだ。来ていると言ってもPoppin’Partyとして、ではない。RAISE A SUILENのサポートメンバーとして来ている。
だからといってただ見惚れている、という事もチュチュの無理難題の仕事をクリアしなくてはいけないのでできない為、真面目に働いていた。
そんな啓斗をずっと眺めるレイ。その眼はどこか蕩けているようで焦点もあっていない。そんなレイに気付いたのか、マスキングこと佐藤ますきはレイに声をかける。
「あ〜コウサキだっけ?アイツの事好きなのか?」
「まっ、ますき⁉︎これは、その違くて///」
「顔立ち整ってて優しいとかモテそうだな」
嫌な予感がしたのか苦虫を噛み潰した様な顔をした後にますきを睨む。別にますきが何かをした、という訳ではないのだが。
険しいレイの顔を察したたえがレイに抱きつく。だがそれは今のレイにとって逆効果だ。
「花ちゃん、どうしたの?」
「レイが悲しそうな顔してたから。ダメだった?」
「ううん、そうじゃないよ。ちょっと考え事」
ただし、レイはそんな事で揺らぐほど弱い人間ではない。反撃のジャブこそ打たないがいつでも攻撃できるよに準備をしている。使えるものは使う、という事だろうか。
レイはますきにアイコンタクトを送るとますきはスタコラと啓斗の方へ足を向けてゆく。
「おい、コウサキ。ちょっとこっち来い」
「え、お金持ってないのですみません」
「わたしがRASの一員なの分かって言ってんのか?それと、レイの使いだ。頑張れってよ」
「冗談だっての。それだけのために?ありがと佐藤。佐藤もライブ頑張って」
「おう、そうする為にサポートよろしくな」
啓人は拳を上げてカッコよく去ろうとしたが、美乃里に見つかり首根っこを摘まれて退場という、実に滑稽な姿で関係者専用入口に消えていく。
ステージは静寂に包まれていた。そこに一筋のスポットライトが当たり、二本、三本とどんどん個数が増えていき5人の少女達が姿を現す。
静まり返っていた会場内は熱気を取り戻し始める。レイとたえの息の合った音に激しいますきの音が捻じらせそれが美しい一つの音となる。
啓人は動かなかった。動けなかった、というのが正しいのだろうか。
今の啓人を言葉で表すのならば魂を奪われる、これしかないだろう。
「おーい、啓人君?仕事、仕事。見惚れるのもいいけど彼女達の為にも頑張ろ?」
「そうですね。あ、美乃里さん。これからのライブスペースの使用状況って見れます?」
「これだけど…どうしたの?」
「いや、なんとなく、、、は?チュチュ!あんにゃろ自己中にも程があるっつうの」
啓人が見た書類には所狭しとRASの名が。だがしかし、啓人が怒っている点はそこでは無い。
9月11日。花咲川と羽丘の合同文化祭があり、Poppin’Partyの2周年の記念ライブをする日でもあった。
午前から午後までびっしりと日程が組まれていて途中で抜ける事は出来ないだろう。
啓人は走り出す、チュチュの元へ。
啓人は一人になり帰り支度にを行っているチュチュに声を掛ける。
「チュチュ、話いいか?」
「何かしらコウサキ、質問なら手短にして欲しいけど」
「お願いだ、一日だけ、それだけ、ライブを中止にして欲しい」
「無理わね」
深々と腰を下げるがあっさりと一言で否定されるのだが、そこで引き下がる程軽い気持ちでは来ていない。
再び歩き出そうとしているチュチュの腕を強く掴んでいる。そこには啓人のプライドなど存在していない。
ただひたすらにたえの事を考えている男の行動であ理解されない、他人からは一切理解されないであろう。であっても啓人は決してチュチュの腕は離すなどありえない。啓人の顔を見ればわかることだ。
「しつこいわね、なら一つ条件を満たしなさい。そしたらタエは来なくてもいいわよ」
「条件ってなんだ?」
「それは、タエと変わっても支障が出ない程のギタリストを連れてくる事。それで手を打ってあげるわ」
「分かった、それでいいんだな?」
「もちろん。約束はきっちり守るわよ」
そうは言ったが啓人にはギタリストのアテはないし、たえと同等、もしくはそれ以上の者を探し出すことは不可能に近いだろう。
後二週間半。啓人の戦いの幕が上がる。