呪霊操術の使い方   作:シーボーギウム

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6.地獄の探求

%月+日 曇り

 

 あの女から聞いた話を少し確かめた。あまり信じたくない話だったがどうやら本当らしい。

 やることは決まった。

 

 

%月→日 曇り

 

 あの日から、私は呪霊を使わずにいる。必要なことではあるが、純粋に戦闘時には不便だ。

 何か考えなければ。

 

 

%月#日 晴れ

 

 一つ、上手くいったことがある。呪霊の肉体を一部だけ取り込むということだ。今回のは屈服済みの呪霊だったが、これが仮に野良呪霊相手で可能なら、私自身の戦闘能力は大きく向上するだろう。

 

 

%月@日 曇り

 

 今日の任務は相手が呪詛師だった。つまらない。特別な理由が無くとも簡単に殺せただろう。

 

 

%月×日 曇り

 

 呪霊、呪詛師問わず、相手が弱すぎる。ダメだ。これではいつまで経っても意味が無い。

 

 

%月*日 雨

 

 意図せず、簡易領域に近しいことをしたようだ。今日の呪霊が領域展開をしてきた時に咄嗟の対策で展開したものがそれだ。便利だ。少し突き詰めてみようと思う。

 

 

%月○日 晴れ

 

 切呪分霊。呪霊の一部を取り込む術式をそう名付けた。対呪霊限定だが、呪霊を弱体化させることが可能だ。屈服させて取り込めば私の中で元の力を取り戻しもするようだ。

 

 

%月÷日 晴れ

 

 簡易領域に術式を付与することに成功した。領域展開と似たように領域内に入ってきた相手に強制的に術式を叩き込むことが出来る。私の場合、呪霊限定だが触れた瞬間切呪分霊をたたき込める。

 

 

%月<日 晴れ

 

 黒閃を決めた。一端は掴んだ。良い基点になる。

 

 

%月〒日 曇り

 

 やはり、相手が弱すぎる。特級なだけでは足りない。私に死を想起させるような規格外が要る。

 

 

%月$日 雨

 

 花御と遭遇した。多少、危ない瞬間もあったが、ダメだ、まるで相手にならない。対呪霊な時点で、私にはもう負ける要因が無くなっている。もはやわざとでも無ければ負けようが無い。祓いきることは出来なかったが、この分なら他もそう変わらないだろう。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

(足りない………)

 

 私を前に逃げ出した呪詛師の背を見て、ため息をついた。

 

(さっさと殺して帰ろう………)

 

 隻腕の死神。逃げながら怯えたようにそう呟く呪詛師の姿がフラッシュバックする。どうやら知らぬ間に小っ恥ずかしい二つ名を付けられたらしい。左腕に呪力を込めつつ、逃げる呪詛師に肉薄する。人を殺す感覚にも随分慣れた。

 

「待っ……!」

「待つわけねぇだろ馬鹿」

 

 拳が頭部に激突する。呪詛師の頭は水風船の如く爆ぜ、肉片を周囲に撒き散らした。鉄の如き悪臭に顔を顰めつつハンカチで手に着いた血を軽く拭う。一応コイツは二級術師を数名殺した呪詛師だ。実力は少なくとも一級相当、しかしそれでも全く相手にならない。私の足下に指先一つかけられない。

 

(この結末を知っていたらコイツは呪詛師にならなかったのかね)

 

 ふと、そんな疑問が浮かぶ。呪詛師になる気持ちは、正直よく分かる。私なら、今の時点で暴れ出せば悟も殺しうる。簡単に呪術界を転覆できるだろう。そうなれば日本が転覆するのも同義だが。

 

(まぁやらんが)

 

 私はどこまで行っても凛堂唯だ。凛堂優の姉なのだ。どれだけ呪術界が嫌いでも、目の前にあの子が現れた時に、胸を張ってあの子の自慢の姉であれる自分でありたい。それが私がまだ呪術師として禁忌を犯さずにいる最後の理由だ。

 

(帰ろう………)

 

 そう踵を返した瞬間、私はその場を飛び退いた。

 

「流石にこの程度は避けるか」

 

 聞き覚えの無い、退屈そうな、面倒そうな男の声。振るわれた刀の軌跡からして身長は相当高い。そしてその膂力と速力。異常という他ない。正体は知らない。土煙に隠れて姿も見えていない。だが私はその男が誰か、9割がた確信していた。

 

「初めましてだな、隻腕の死神」

「………そのダサい二つ名やめてくんない?」

「安心しろ、今日死ねば噂もそのうち消えるだろ」

 

 ()()()()。天与の暴君。私のいない世界で、そして今この世界で何れ五条悟(最強)の喉元に手をかけ、真の最強を生み出す立役者。

 

「依頼主は加茂か禪院あたりであってるかな?禪院甚爾」

「なんだお前、俺の事知ってんのか?後俺はもう禪院じゃねぇ、婿に入ったんでな」

「羨ましいね、クソみたいなしがらみから逃れられて」

「はっ!気が合いそうだな」

 

 臨戦態勢。先に仕掛けるか?いや、愚問だ。当たるはずも無いしカウンターで即死させられるのが目に見えている。なら────

 

ギィィィィイン!!!

 

「マジかおい」

「これでも肉弾戦は得意でね……!」

 

 待ちの戦いを挑む。振るわれた呪具の刀、おそらく特級のそれを側面から叩き折った。多少はリーチを奪えた。しかし今ので左手の骨にヒビが入った。呪力による防御マシマシでこれだ。

 

(勝ち目無し、だな)

「私のポケットマネーから依頼額の倍出すって言ったらどうする?」

「後々面倒なことになりそうでな」

「あっそ」

 

 前蹴り。当然の様に避けられる。想定済みだ。横薙ぎの一撃を仰け反って避け、ムーンサルトキック。避けられる。なんなら避けざまに太腿を切られた。マジかよ、一瞬で使い物にならなくなった。

 

「脚まで無くすの嫌なんだけど」

「死ねば関係ねぇだろ?」

「違いない」

 

 伏黒甚爾は原作にもいた四次元ポケット呪霊から別の呪具を取り出した。刺突。回避。避け切れずに傷を負う。ヤクザキック。バックステップ。内臓にダメージ。袈裟斬り。回避。避け切れずに左眼が潰される。その後も何度と攻撃を受け、避け切れずに傷を増やす。そうして、遂には立つのも難しい程の傷を負った。

 

「解せねぇな」

「………何が?」

「何故術式を使わねぇ?呪霊操術だろ?」

「あんなの、アンタには烏合でしかないでしょ」

「だとしても使わねぇよかマシだろ」

「…………縛りだよ、私の計画のためのな。ここで呪霊を使えばそれは頓挫する。確実にな。それなら死ぬ方が良い」

 

 わかんねぇな、と呟く伏黒甚爾が銃口を私の脳天へ向ける。

 

「辞世の句位は聞いてやろうか?」

「いらねぇよ」

「そうかい、あばよ特級」

 

 弾丸が、私の脳を貫いた。

 





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