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「あ゛────めんどくせぇ────!!」
補助監督、ではなく従者が運転する車内でそう叫ぶ。今日の私は特級術師凛堂唯ではなく、凛堂家当主凛堂唯だ。昨日北海道で任務を終わらせた後、飛行機で東京に戻って任務、それが終わり次第新幹線で京都へ向かい、ホテルで就寝。その後朝一で、私は禪院家に向かっている。
「あのクソジジイ死なねぇかな」
「冗談でもそういうことを言うのはよして下さい」
「だとしても私のこと舐め過ぎだろ。頼みがあるのは向こうの癖して私を呼び付けるって頭おかしいんじゃねぇの?」
まぁそこに関しては仕方がない部分があるのは分かる。コチラは五条の分家、向こうは本家。実際の権力云々はともかく、しちめんどうくさいことこの上ないが形式というものが重要視されるのは私とて理解している。
「というか私がついてくる必要ありましたかこれ?」
「晩酌付き「絶対嫌です」」
「まぁ、あのクソジジイが私に要求することは目に見えててさ、私は真逆の嫌がらせをしてやるつもりなのよ」
「大丈夫なんですかそれ………?」
「大丈夫大丈夫!禪院家の人間が総出で襲いかかってこようが悟の無限ぶち抜くよりは簡単簡単!」
最悪人体操術からの天与の肉体獲得&敷地外へ高速で離脱、虚式「茈」ブッパで終わる。まぁ反動でひと月は動けなくなりそうだが。
「んで、その嫌がらせに術式反転使うから見とけって話」
「反転術式使えませんけど」
「そこはおいおい。本気で死にかけるのが正直一番手っ取り早いんだけど、流石に弟子を殺しかけるのは嫌だしね」
「貴女ならやりそうですけどね………」
「酷くない?」
────────────
さて、到着だ。目の前に聳え立つゴミの巣窟を前に嘆息する。私は基本、御三家その他呪術界上層部が大嫌いだ。某クソ共が優を謀殺する判断に走った理由の一つでもあるからだ。
「私これ入っていいんですか………?」
「問題無い。非術師家系出身とは言え一級。歓迎こそされど邪険にはされない」
門が開く。禪院は御三家の中でも規模、という面においては圧倒的だ。分家の数に関しては圧倒的に多い最多。私が五条家の分家を凛堂以外滅ぼす前から禪院の方が多かったくらいだ。
「お待ちしておりました。凛堂唯様」
「ご案内致します」
従者、いや一応禪院の血筋の女性か。見る限り二人共呪力量はしょぼめ。家での扱いは良くなさそうだ。彼女達について行けば、辿り着いたのは広い部屋。奥に座るは禪院家当主禪院直毘人。
「良く来てくれた」
「うるせぇぞクソジジイ。歓迎なんぞ微塵もしてねぇ癖して良くそんなことほざけたな?流石は禪院家、腹黒いクソ共の当主なだけはあるな」
「ちょっ!?」
私の全力の罵倒に傑が焦りを露わにする。が、無視だ。問題無い。クソジジイの眉がピクッと動きはしたが、それだけだ。私が御三家嫌いなのは呪術界ではほぼほぼ周知の事実だ。しかし実績、実力、その他諸々。私は血筋、才能、実力、あと一応西宮曰くの可愛さと、呪術界で生きるにおいて必要とされるものを全て完璧に近い高水準で持っている。
目の前のジジイの精神をいくら逆撫でしてキレさせようが、私は一切咎められない。なんせ私がキレて暴れるなり任務をバックれ始める方がヤバいからだ。
「さっさと話せよ、態々こんなクソの巣窟に来てやったんだ。本来なら家の人間総出で大歓迎で宴でもやるべきな所を我慢してやってるんだぞ?まぁお前らとなんざ酒一滴でも飲み交わすのはごめんだがな」
「…………」
「ん?聞こえなかったか?返事がないぞ?」
「いや、いい。すまなかったな……………」
傑クソ気まずそうで草。
────────────
「本題に入る」
「茶も出ねぇのかよ」
「…………おい、茶を「要らねぇよ馬鹿。酒一滴も飲み交わしたくないって言ったの忘れたか?認知症でも発症したか?良い病院紹介してやるよ」………………」
ビキッと直毘人氏の額に青筋が走る。徹底的に彼を煽り倒す唯さんに、心臓が直接握られる様な不安感をいだきながら、止まらない冷や汗と共にどうにかこの場から離れられないか思考する。
「で?用は?」
「儂の姪にあたる双子の話だ。一人は呪力量が非術師並、もう一人も呪力量は少なく術式も構築術式と弱い。お前の術式ならどうにか「断る。なるほどOK、お前マジで忘れてるみてぇだな」」
直後、部屋の一角が吹き飛んだ。私がこの場を離れたかったのは、何も気まずいからだけじゃない。理由の大半は唯さんだ。口は弧を描いているし、言葉の抑揚を聞くだけなら愉しげなものがある彼女だが、
こんな唯さんは見た事が無い。端的に言って彼女は今、凄まじく
「耄碌したクソジジイにもう一度だけ丁寧に教えてやる」
「私の前に現れるな、現れようとするな」
「私に指図するな」
「私の目の前で声を出すな」
「もし次に同じ事をしてみろ、」
呪力が迸る。全身から冷や汗が流れ落ちるのを感じる。視線を彼女から外したい欲に駆られながら、しかしそれは出来ない。理性を超え、本能が唯さんから目を離すなと咆哮する。
それほどの、絶大な殺意。
「ぶち殺すぞ」
その言葉を最後に唯さんが呪力を抑える。
「悪いな傑、帰ろうか」
そう言った唯さんの姿は、いつもと何ら変わりなかった。
────────────
行きと同じ従者の女性達に連れられ出口へ向かう。彼女達は見るからに身体が震えている。明らかに唯さんに怯えていた。
「しっかしあのクソジジイマジでボケたのか?私が了承する訳ねぇだろうに」
私も私で、普段と変わらない彼女へ声をかけられずにいる。あの様子は尋常では無かった。聞くことも躊躇われ、先程から口を開いては閉じるを繰り返している。
しかし、唯さんはそんな私に気付いていた。
「悪いが、これに関しては私から話すつもりは無いぞ。聞きたければ悟から聞け」
「…………えぇ、分かりました」
その後しばらく無言のまま歩いていると、少女が二人、大人に寄って集って苛められていた。不快感に眉を顰める。しかしその不快感は隣で笑い声を上げた唯さんに忘却させられることとなった。
「なるほど。あのクソジジイ、私にこの光景を見せるのが狙いか」
そう言って唯さんは二人の少女の元へ向かう。
「よぉクソ共。憂さ晴らしに付き合え」
しばらくの間、重たい打撃音がその場に響いた。
「唯さん、やり過ぎです」
「死ななきゃ安い」
「安くないです」
返り血塗れでどこかスッキリした表情の唯さん。少女達は完全に彼女を警戒してしまっている。
「ま、こんなクソ共のことはどうでもいい。君が呪力量が一般人並の子か」
「だったら何だよ…………」
「私は君の完成形を知っている」
「は?」
完成形、という言葉に疑問を抱いた。少女、妹なのであろう子の前に立ち、守るように身構える彼女も眉を顰めている。
「私は正解を与えられる。君を、この世界において最強の、特級へ手をかけられる存在に変えられる。でもそれは今以上の茨の道を歩むことを意味する」
「…………」
「で、君はね、多分この後の人生虐げられるままなことに納得しない。君は喜んで茨の上を歩くタイプの人間だ」
少女の瞳は強い。身に与えられた呪縛に抗うかのように。
「だとして、あんたのことは信用出来ない」
「だろうね、だから助言だけしておこう」
「振り切れ。中途半端に持つな。全部捨てろ」
「はぁ?」
「今は理解出来なくていい。まだ自分の才能にも気付いてないようだし。じゃあね」
二人の頭を撫でてから踵を返し、手を振ってその場を去る唯さんの後を着いて歩く。いいのか、という私の曖昧な質問に唯さんは笑って返した。
「今のに気が付いたか、腕上げたな」
「それより、大丈夫なんですか」
「問題無い。私も扱い方は大分上手くなってるんだ。所謂条件起動。ま、私からの些細なプレゼントだ」
「とても些細と言える代物じゃないでしょう……………」
あの双子へ施された
「仕方ないだろ?私は双子に弱いんだ」
「…………?子供ではなく双子ですか?」
私の言葉を無視して唯さんは任務に行くぞとだけ言って車へ乗り込む。直前に見た彼女の表情は、どこか寂しげだった。
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