3月20日。
恋人同士になってから一回目のライトくんの誕生日が近づいてきている。
誕生日に何をあげよう?
と、さっきからずっと考え込んでます。
頭の中でライトくんを思い浮かべては手帳の赤で囲まれた日付を見る。
やっぱり、一番ベタなのは好きなものを作る、だよね。
そしたら、マカロンを作ることになるんだけど……
うん、作れる気がしないよ。
でも、他に思い付かないし…。
作ったらきっとライトくん喜ぶよね!
よし、そうと決まったらまず作り方を調べて、材料を買ってこなくちゃ。
放課後に、時間を作って……。
せっかくだし内緒にしたいから、こっそり……。
できるかな?
相手はあのライトくん。誤魔化すのは苦手だし、何かしようとするのはばれちゃうよね。
そうして私は学校の調理室を放課後に借りることにした。
もちろんライトくんには先に帰ってもらっている。
とりあえず一時間くらいは時間を確保した。
まず始めにメレンゲ作り。
家から持ってきたハンドミキサーでここは手早く混ぜる。角がたった頃合いでココアパウダーなどを混ぜ込んでいく。
ゴムベラに持ちかえて切るように混ぜ合わせていく。
あとは絞り袋で絞って、オーブンで焼けば土台の完成……のはずが。
若干ひび入ってるし、円形が汚い。何回かやり直してみるけどもちろん上手くいかない。
さすがマカロン。繊細だわ。
これじゃあ材料買ってももったいない。
どうしよう。
悩んだ末、私は今レイジさんの部屋にいる。
椅子に座って本を読んでいたレイジさんは顔をあげこっちを見る。
「話はわかりました。が、私が手伝う理由はありませんね」
ばっさり、切られてしまった。
でも、これも想定内!
「レイジさんにはマカロン作りを手伝ってもらいたいんです。こればっかりはレイジさんにしか頼めないんです。お願いします!」
私はおもいっきり頭を下げた。
レイジさんがため息をつく。
「まさかとは思いますが貴女、他の兄弟にも頼むつもりですか?」
確信をついた質問に私は頷く。
またまた、レイジさんがため息をつく。
「呆れた。彼らが手伝うわけないでしょう?そうそうに諦めてしまいなさい」
そこで一呼吸おいて、こういった。
「まぁ、他の兄弟がやるのなら、手伝って差し上げてもよろしいですが」
その言葉に私はほんとですか!?と思わず聞く。
「他の兄弟が手伝ったらですよ」
嬉しそうにする私にレイジさんが微笑する。
よし、なんとしてもアヤトくんたちにも手伝ってもらおう!
次に私はアヤトくんとカナトくんのところに向かった。二人は遊戯室でダーツをしていた。
「アヤトくん、カナトくん。ちょっといいかな?」
ちょうど今矢を投げようとしたところだった。
「お、チチナシじゃねぇか。ちょうどいい。俺様に血をよこせ」
「ちょっとアヤト。抜け駆けしないで下さい。ユイさん、僕にも吸わせてください」
二人はぐいぐい、私との距離を積めてくる。
それを手で制しながら、本題に入った。
「今日は二人に頼みたいことがあるの。ライトくんのことなんだけど」
ライト、の言葉を聞いた瞬間に二人は嫌な顔をした。
三つ子なんだから、そんな嫌な顔をしなくてもいいのに。
「で?何だよ」
明らかにさっきより不機嫌だ。ちょっと怖いけど、引くわけにはいかない!
「ライトくんの誕生日が近いじゃない?だからマカロンを作ろうと思うんだけど…」
「僕の誕生日も近いのに…」
「え?」
「僕の誕生日も近いのに、どぉしてライトなんですか!?」
カナトくんが大きい声をあげる。
「ライトには美味しいものをあげて、僕には何もないんですかぁ!?」
そんなの、絶対に許さない。
カナトくん、怖いよ。
「ちっ、うるせえっての。おい、チチナシ。このヒストリック何とかしろ。お前のせいだろ」
ご、ごめんねアヤトくん。
でもどうにかっていわれても私、カナトくんのことよくわからないし、アヤトくんの方が知ってるんじゃ…
「あ?俺様がそんな面倒なことするわけないだろうが」
ですよね~。
「か、カナトくん。いったん落ち着いて」
「ぐすっ、ぐすっ……僕だって甘いもの食べたいんです……誰も僕に構ってくれないからぁ…」
カナトくんが泣き出してしまった…!
どうしよう、凄く罪悪感を感じる。
「カナトくん。カナトくんにお願いしたいのは味見なんだ。カナトくん、甘いものよく食べてるからぴったりだと思うの。どうかな?」
「ぐすっ、僕が味見ですか……?」
目をうるわせて、カナトくんが私を見る。
「う、うん。どうかな?だめかな?」
「おい、チチナシ。俺にも食わせろ!!」
ちょ、ちょっとアヤトくん。襟をつかまないで。
苦しいよ。
「うるせぇ!!とっとと食わせろ!」
今はさすがに無理だよ…。
材料とか使いきったし、ちゃんとした手順とかもこれから確認するし。
出来たら教えるから今は我慢して。
「ちっ。じゃあたこ焼き作れ」
あとでね。
「俺は今すぐ作れっていってんだよ!!」
アヤトくんがビリヤード台をバン!と叩く。
だ、だから、今は時間がないの。
それにたこ焼きができるまで時間かかるんだから結局アヤトくん怒るでしょ。
「……いいからとっとと作れ!!」
「アヤト。うるさいです。ユイさんが困ってるじゃないですか」
泣き止んだカナトくんが冷たい目でアヤトくんを見る。
あ、カナトくん、引き込み成功かな?
「あとね、二人にはもう一個頼みたいことがあって」
二人が同時に私を見る。
「ライトくんにできるだけばれないようにしたいの。だから、キッチンとかにライトくんが入らないようにして欲しいんだ」
やるなら徹底的に、ね。
「分かりました」
カナトくんがあっさり承諾してくれた。
「その代わり、キミのマカロン、美味しくなかったら……分かりますよね?」
テディを持ってニコッとカナトくんが笑った。
あとはアヤトくん。
私とカナトくん、二人でアヤトくんを見る。
「あ?」
不機嫌なアヤトくん。
これは…駄目かな。
「別にアヤトは手伝わなくていいですよ。僕が全部もらいますから」
その言い方にムカついたのか、アヤトくんも承諾してくれた。
よし、あとはシュウさんとスバルくんだね。
「だる男とスバルか。どっちから聞くんだ?」
うーん。
シュウさんはいつも寝てるし、スバルくんは棺桶にいるからなぁ。
どうしよう。
「まぁ、助けがいるなら俺様に言えよ?」
じゃあな、といってアヤトくんは遊戯室から出ていった。
「なら、僕も。マカロン出来たら教えてください。楽しみにしてますね」
そういってカナトくんも遊戯室から出ていく。
うーん、どうしよう。
スバルくんの棺桶開けられないしな。
スバルくん、基本部屋にいることが多いし。
シュウさんは寝てて起きてくれないだろうし。
ダメもとでシュウさんの部屋に行ってみよう。
私は遊戯室をあとにした。
シュウさんの部屋にいこうと、長い廊下を歩いていたとき、背後からいきなり抱き連れた。
「どこいくの?ビッチちゃん?」
っ!
耳元に愛しい人の吐息がかかる。
「ライトくん」
顔が少し赤くなったのが自分でも分かる。
「んー、おっかしいなぁ。ビッチちゃんから他の男の匂いがするんだけど。浮気かな?」
妬いちゃうなぁ。
ちっともそんなことを思ってないはずなのにむくむくと、罪悪感が募る。
ううん、負けちゃダメ。私の意地よ。
「浮気はしてないよ。ライトくんのため」
「ほんとぉ?」
ら、ライトくん。ちょっと手!!
とこ触ってるの!?
「ん~?コイビトらしいとこ?」
恋人らしいって何…!!
ろ、廊下でやらないで……。
「もぉー。ビッチちゃんてば、顔赤くしちゃって、いやらしいなぁ」
ちっ、違うよっ。
「僕に触られるのイヤ?」
そういう言い方ずるいよ…
「どっち?いってくれないと分からないよ…?」
絶対分かってるよね。
じゃないとわざわざ耳元でいってこないよね?
もう。
「嫌じゃないよ」
こうやって素直に答える私も私だな。
すっかり骨抜き状態だ。
私がそう答えるとライトくんは満足げに私を抱き締めた。
「ライトくん?」
いつまでも離してくれないのでライトくんの顔を見る。
「んーん。何でもない。じゃ、またね」
ひらひらと手を振ってライトくんはいってしまった。
ライトくんどうしたんだろう?
でも、いってくれて良かった。今のうちにシュウさんのとこにいこう。
シュウさんの部屋につき、数回ノックする。
もちろん、返事はない。
声を一応かけてからそっと、ドアを開ける。
いつものようにベットで寝てると思った私は少し面を食らった。
そこに、シュウさんはいなかった。いや、普通はいないものだけどシュウさんだから、いると思ったの。
どこにいるのだろうと考えていると…
「何?あんた。勝手に人の部屋に入ってきて」
シュウさんの声が聞こえたので見てみると、風呂上がりでした。しかも、タオル一枚。
「へ!?しゅっ、シュウさん!?」
あわてて、視線をそらす。
「うるさい。わめくな」
鬱陶しそうにシュウさんはため息をついた。
「何?」
な、何でシュウさんが服ぬいでるんですか……!!
「はあ?悪い?」
悪くないんですけど、シュウさんいつも服脱いでなかったですよね?
「まぁ、確かにいつもは脱いでないな」
何で今日に限って脱いでるんですか?
「汗かいて、服がまとわりついて気持ち悪かったから。地球温暖化とか、ほんとめんどくさ」
着たままお風呂入っても、服はまとわりついてくると思うんですけど。
いや、この人たちに普通を求めちゃだめだよね。
「で?何の用?」
髪を拭きながら、シュウさんはベットに座る。
早く服きてほしいなぁ……目のやり場が……!
うぅ。いやでもシュウさんが、目に入る。
何でいつも寝てるのにこんないい体してるの…。
「変態」
はい!?い、今何て言いました!?
「人の体をじろじろ見てるあんたが変態だっていった。あんた、ライトに似てきたんじゃないの」
えぇ。そこは似たくないです。
「ま、あんたはもともと淫乱だからお似合いか」
素直に喜べないんですけど。
不満だというように眉間にシワを寄せるとシュウさんはクスクスと笑い始める。
「って、こういうやり取りをしにきたわけじゃなくって!」
危ない危ない。あやうくシュウさんのペースにのせられるとこだった。
「ライトくんの誕生日のお祝いをしたいんですけど、てつだ…」
「やだ」
即答しないで下さい。
「お願いします!ライトくんにサプライズしたいんです」
「めんどくさい」
チョーカー型音楽プレイヤーを首につけ、イヤホンを耳につける。
音楽を流すと、シュウさんは服を着ずに寝そべる。
「いや、ちょっとライトくんの気を引くようなことをしてくれればいいんです」
「なおめんどくさい。他を頼れ」
そのまま、目をつむってしまう。
うぅ。どうしよう……。
「ほんとになんでもいいんです。音楽の話とか…」
あわてて言ってみるものの、全然だめだな。
どうしよう。一人でも欠けたらレイジさんに手伝ってもらえない。マカロンなんて難しいもの一人でなんか作れないよ……。
「音楽?」
え?
シュウさんは片目だけ開けて私を見ている。
「はっはい。シュウさんのおすすめでもあれば」
寝返りをうってシュウさんは天井をあおぐ。
「おすすめ。ねぇ?」
シュウさんが意味ありげにつぶやく。
な、何ですかその目は。
シュウさんは綺麗な弧を口に描いて言った。
「いいぜぇ?あいつに音楽をすすめればいいんだろ?」
は、はい。それで、時間稼ぎをしてくだされば。
「引き受けてやる」
一息にそういってシュウさんは再び目を閉じる。
ほんとにその格好で寝るみたい。
どんな心境の変化かは分からないけどありがとうございます!!
よし、あとはスバルくんだ。
スバルくん、部屋にいるといいんだけど。
スバルくんの部屋のドアをノックする。シュウさん同様、返事はない。そっと、ドアを開ける。
スバルくんらしい、いたってシンプルな部屋。
薄暗い部屋をほのかな灯りが照らす。
私は右側にある特に装飾のない棺桶を叩く。
「スバルくんいる?」
蓋を開けようと押してみてもびくともしない。
「スバルくん?」
うーん、いないのかな?
あとは庭園かお城にいってるのかな?
クリスタさん、元気かな……?
そんなことを考えていると、ガタンと音がした。
ゆっくりと棺桶の蓋が開く。
暗闇のなか、赤い瞳が際立って見える。
「どうした?」
完全に棺桶を開いて、上半身を起こす。
うんとね、協力してほしいことがあって。
「な、なんだよ」
俺になんの用だよ。
私が真剣にいったからか、スバルくんも真剣になる。だからこそ、多分拍子抜けした。
「ライトくんの誕生日のサプライズを手伝ってほしいの!」
「……」
スバルくんが無言になった。
「で?何すんだよ」
えっとね、マカロンを作ろうと思ってて、でも、それをライトくんにはばれたくないから皆に手伝ってもらおうと思って。
「他のやつは了承したのかよ」
驚いたスバルくんに私は頷いて答える。
「俺はなにすればいいんだ?」
スバルくんは特に反論をいわない。
「いいの?」
思わずそう聞く。
「いいもなにもまずは聞いてからだろ」
スバルくんてどうしてこんなにも優しいんだろう。すごく心にしみるよ。
「ライトくんをキッチンに立ち寄らせないってこととお買い物を手伝って欲しいなって」
「あぁ、分かった」
頑張れよ。
まるで私を見守るかのような優しい笑顔をスバルくんは向けてきた。
少し気にかかったけどレイジさんのとこに報告にいこう。
そこからは本当に大変だった。全員の協力が決まった瞬間にレイジによるスパルタ指導が始まった。ユイは何度も怒られつつも、アヤト&カナトによる適切なアドバイス、そして、スバルの労いにより少しずつ上達していった。
そんな中、ライトは一人廊下を歩く。
最近何をやっているのやら、全く構ってくれないユイのもとへちょっと追及しようと足早に歩く。
「おい、ライト」
どこからか、声をかけられる。
「アヤトくん?どうしたのさ」
誰もいないはずの場所にライトは声をかける。
暗闇から一人の影が伸びる。
「よぉ」
アヤトは壁に寄りかかる。
「どこいくんだよ」
答えは分かりきってるだろうに意地悪く聞く。
「最近構ってくれない薄情さんのとこ」
もう用は終わったと言わんばかりにライトは足を進める。
「やめとけ」
もちろんアヤトが止める。
「アヤトくん、何様のつもり?」
「何様も何も俺様だ。あいつを悲しませたくないなら大人しくしとけ」
ユイは自分のために必死に隠して物事を進めている。そのために他の兄弟の手を借りて。
それが全部僕のためなのは分かっている。それでも面白くないと感じてしまう自分がいる。
他の誰かなら、他の兄弟に関わっていようとどうでもよかった。むしろ、それを嫌がる人間の姿は想像しただけで高揚した。
けれど、彼女は違う。始めはそうだったのにイイと感じなくなったのはいつからだろう。
人はきっとこれを執着、と呼ぶ。
ふぅ、とライトはため息をつく。
困らせるのも楽しいだろうけど、笑った顔だってみたい。
得意気にプレゼントを渡す姿は絶対に可愛いと思う。
かといって暇だし。
「アヤトくん、暇潰し付き合ってよ」
「俺様は生憎暇じゃないんでな」
じゃあな、と手を振ってアヤトは部屋へと戻る。
絶対暇でしょ。
少し口を尖らせてみる。
誰かで遊べないかなぁ。
廊下を歩きながら考える。
昔なら女の子と遊んでいたが、今は論外だ。遊戯室いこうかな?
そう思うと、どこからかバキバキと何かが壊れる音が聞こえた。
もちろんスバルだ。また、部屋で暴れているんだろう。
「お。」
いいこと思い付いた。
嬉しそうに笑いながらライトはスバルの部屋に足を入れる。
「スーバールーくーん」
わざとらしくスバルを呼ぶ。
ちょうど壁に足が埋まっていた。
わお。
「どうしたのさ?そんなにイライラしちゃって」
ライトは棺桶に腰をかける。
「あ?うぜぇ。消えろ」
ライトを睨みながらスバルは足を壁から抜く。
「つれないこと言わないでよ。ビッチちゃんが構ってくれないんだから」
ライトの柔らかな視線とスバルの鋭い視線がぶつかる。
ライト、すごく楽しそう。
「何で俺なんだよ」
そう言われ、ライトはほんとに嬉しそうに答えた。
「スバルくんてば、ビッチちゃんのこと好きでしょ~?」
スバルは口を開けたまま黙る。
数回まばたきをした後、肯定するようにはあ!?といった。
「んなわけあるかっての!頭でもいかれちまったんじゃねーだろーな!?」
顔真っ赤ですよー。大丈夫ですかぁ?
「あはっ。スバルくん、そんなあからさまに否定しなくても…」
おかしくてライトはお腹を抱えて笑い出す。
「ちっ…だからなんだよ」
お、認めた。
「ビッチちゃんに最近優しくしてるみたいだけど、僕のだからね?」
自信満々にライトはいいきった。
え、何?ライトはわざわざこれいうために来たの?嫌味?
「消えろ」
うん、怒るのが普通。
「はいはい。言いたいことはいえたからね。退散しますよ」
立ち上がるとスバルを一瞥してから部屋を出ていった。
「チッ」
壁をガンと殴る。
別に下心あってあいつに優しくしてるわけじゃねえっての。
すでに部屋を出たライトに向かってボソッといったあと、棺桶に手をかけた。
「ライトくん!」
部屋にいたライトにユイが抱きつく。
「ビッチちゃん、おかえり」
「待たせちゃってごめんね」
3月20日、当日。
ユイは無事にマカロンを完成させた。
ライトくんが珍しくイヤホンをしている。
「曲でもきいていたの?」
イヤホンを外すライトに意外そうにいった。
「んふっ」
ライトは嬉しそうに笑った。
「後で聞かせてあげるよ。それで、僕のお姫サマは僕を放って何をしてたのかな?」
「お誕生日おめでとう、ライトくん。はい、これ」
綺麗にラッピングされた包みを渡す。
ライトは中から1つマカロンを取り出す。
「わぁ、マカロンだ。大変だったでしょ?しかもわざわざ色違いにしてさ。ありがとう」
頭をひと撫でされて、ユイは嬉しそうに笑う。
「口にあえばいいけど……食べてみて?」
初めて作ったから感想を早く聞きたいのだろう。
食べて食べてと、急かすユイに触れながらライトは要望を口にした。
「はい、ビッチちゃん」
ユイにマカロンを渡した。
「?」
「あーんして?」
………。
「え!?」
ユイの顔がみるみる赤く染まる。
「ほーら。早く」
ライトは口を開けて待っている。
おそるおそるユイはマカロンをライトの口に持っていく。
ライトはユイの指ごと口に入れた。
「らっっっ…!?」
「んー?」
構ってくれなかった罰だと言いたげにユイの言葉に耳をかさない。
ライトの舌がユイの指をなめる。
「んっ……」
「すごく気持ち良さそうだね?」
ライトは軽く牙をたてる。
それがどこかもどかしい。
「ら、ライトくん」
ライトは横目でユイをみる。すごい嬉しそう。
「どーしたの?ビッチちゃん」
本当は分かってるくせに……。
なんて悪態をつきたくなってしまう。
でも今日はライトくんの誕生日。我慢我慢。
「私の指じゃなくてマカロン食べて」
言うのも恥ずかしい……
「はーいっ」
潔い返事をしてライトはマカロンを頬張っていく。
「ごちそうさまでした。すごい美味しかったよ、ユイ」
耳元でライトは囁いた。
いつもより低くて心地よい、甘い声。
「はっ、反則だよ!」
「僕からしてみればキミの方が反則だよ?かわいい顔してさ…食べたくなってくる」
獣の目をしたライトははい、といってイヤホンを渡してくる。
「お姫サマに、一曲どうぞ」
ユイは素直にライトからイヤホンを受け取って耳に当てる。
ユイは顔を真っ赤にしてライトの胸を叩いた。
「あれ?ビッチちゃん。こういうことがしたかったんじゃないの?」
肩をすくめて大げさにいう。
むくむくと怒りがわいてきた。
だって、だって、あれって……!!
女の人の声が脳裏を巡る。
「おっかしいなぁ。シュウからビッチちゃんのオススメだって聞いてたのに」
「しゅ…シュウさんのばかぁ!」
あいつに音楽をすすめればいいんだろ、じゃないですよ!!これ、音楽じゃないっっ。
あぁ、今頃1人でくつくつ笑ってるのかな……
「シュウにしてやられたって感じだね」
CD返すときに1つくらい文句言っておく?
「うん。いっとく」
真面目にいったユイをみてライトは笑う。
「もう、そんなに笑わないでよ。ライトくん」
ごめんとライトはお腹を抑えながら言う。
「んふ。それじゃあ、お姫サマ。今宵は僕と過ごしてくれますか?」
ユイに手を伸ばしてライトは聞いた。
「はい」
レイジが液体の入った試験管を振りながら時計を見る。
「さて、混ぜた薬が効いてきた頃ですね。明日にでも彼女に感想を聞いてみましょうか」