お人好しな提督と訳あり艦娘たちで送る日常系コメディ!
艦これSSシリーズとして書いてみることにしました。気まぐれで適当に書いていきます。
前回の掌編と世界観共通です。
東京都内某所。大田区と品川区の境界付近……の品川区側。品川駅からバスと歩きで三十分かかる、地図には載ってない人工島。
ここに、深海棲艦という化け物に対処する機関の拠点、通称「鎮守府」が設置されている、のだが……ここは、ほかのそれより少し事情が違うようであった。
「で、雪風。なにしてんの?」
「ちょっと準備です。……時雨を引き上げるための」
そう言って、ショートボブの茶髪に桜のヘアピンが印象的な艦娘、陽炎型駆逐艦八番艦の雪風は、スクール水着を着て腕を回す。興味津々に足を動かしてる金髪の痴女を横目に。
「えー、それよりあたしとかけっこしようよー」
「それはあとで。早くしないと時雨が死んじゃいます。本人はそうしたいんでしょうけど……私が困りますっ」
そう言って見つめた大海原。その視線の先には。
「ほら、時雨がまた自沈しようとしてますよ。艤装を外したら普通の女の子なんですから……あ、沈んだ」
……黒髪の少女が海中に沈んでいくところであった。
「もう見慣れちゃったけど……早く助けないとね」
「ですね。というわけで、いってきます!」
言うが早いか、雪風は助走を付けて、華麗に海へダイブ。艦娘も艤装を付けなければ普通に泳げるのである。
「……艤装使って走っていった方が早い気もするけど」
島風があきれながら様子を見守り。
二人の少女が房総半島と鎮守府のちょうど中間地点から顔を出してきたのは、およそ十分後のことであった。
「ふう。疲れました。島風、お茶持ってきてください。最速で。ふたりぶん」
「お、おうっ」
「精が出るな、雪風」
「あっ、しれぇ」
目にもとまらぬ速度で駆け出した島風に代わって現れたのは、この鎮守府の責任者。司令官とか提督とか呼ばれる男である。
「また時雨か……」
「そうです。気持ちはわからなくもないんですけどね」
雪風は引き上げたばかりの黒髪の少女に心臓マッサージを施しながら苦笑。それから。
「幸運艦って、それほど幸運ってわけでもないんですよ」
こんなことを言って、人工呼吸を始め。
「ごほっ、げほげほっ」
「あっ、時雨。起きましたか」
「ああ……すごく気分は悪いけどね。早く死にたいよ」
そうして、死にたいが口癖の、希死念慮を患った時雨が起き上がったのであった。
ここは「東京新島警備府」。東京湾内のタンカー護衛、および対深海棲艦の哨戒活動を主にする、横須賀鎮守府の支所的存在。しかし。
「おかえりーっ。友達連れてきたよー」
「おう、ただいま。本部に入れるなよー」
艦娘たちは公立小中学校に通い。
「提督さん、こんにちはー。ほら、みんないっしょに」
『こんにちはぁーっ!』
保育園のお散歩コースになってて。
「きょうも幼女がカワイイな!」
「そうですね長門さん。ふふふ……」
提督と重鎮がロリコンの変態で。
「……しれいかん」
「そうか、おむつか。長門さん、仕事のほう頼みます。……弥生、行こうか」
――ここに配属される艦娘は、何故だか色々と複雑な事情を抱えてたりすることがあったりするのである。
「……さっさと行っちゃったね、提督」
「かまってほしかったんですか? ……すこしは嫁のことも気遣ってほしいところですけど」
「ははは……。まあ、すごく忙しいから仕方ないよ。弥生ちゃんなんか、ほら」
時雨は少しだけ笑って、いまにも鉄筋コンクリート製の建物へと入ろうとしている二人――先ほどの提督と、薄水色の髪をした睦月型駆逐艦三番艦を指さす。
「ですねぇ……。虐待で心も体も壊されておむつが手放せなくなったなんて、悲劇的にもほどがありますよ」
「そんな子にも手を差し伸べて。ほんと、お人好しだよね、あの提督」
「……でも、ああいう、お人好しなところが好きだったりするんですけどね」
「君、改二になってから明らかにデレたよね」
ため息を吐いて頬を赤く染める雪風を、時雨が笑い。
「ああもう、酒です酒! 酒とセックスでみんな忘れちゃいましょう!」
それをごまかすように雪風が叫んで。
「一応未成年だから……」
「あー忘れてた……。じゃあコーヒーっ! カフェインで酔いましょう!!」
「だね! ……致死量超えれば死ねるし」
そうして二人は居酒屋鳳翔へと足を運ばせたのであった。
「おうっ?」
ちなみに、戻ってきたら誰もいなくなっていた岸壁にて一人、島風が首をかしげたのはおよそその十秒後のことであった。