ネプ短編まとめ   作:烊々

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 12/10ネプテューヌワンドロお題『オレンジハート』にて投稿させてもらったものです。
 時系列はシスターズvsシスターズで、以前投稿したもの( https://syosetu.org/novel/253584/3.html )とは別パターンの話になります。


オレンジハートリオリジン ( 天王星うずめ )

 

 

 暗く黒い闇の奥深く、光届かぬ深遠へと堕ちていくうずめ。

 底らしきものに足が付くと、目の前の何かに気取る。

 

「……久しぶりだな」

 

 そして、目の前の暗闇に声をかけた。

 

「久しぶり、か」

 

 帰ってきた言葉は、囁くような小さな声だったが、それから放たれる重圧にうずめの表情は強張る。

 

「……何の用だい?」

「言わなくてもわかるだろ?」

「ああ、わかるよ」

 

 声の主は嘲笑うかのように語り出す。

 

「【オレ】に『力を貸してください』って【俺】が言いにきたのを、ね」

 

 黙り込むうずめに対し、声の主『暗黒星くろめ』は更に言葉を続ける。

 

「……プラネテューヌは堕ちた。ねぷっちは姿を消した。残されたぎあっちたちは、バズール現象によるシェアの低下で力を発揮できない。だからこそ、ねぷっちたちとは力の源が異なる【俺】だけが、今のゲイムギョウ界でフルスペックで戦える。そうだろう? けど、【俺】だけの力じゃ復活した犯罪神マジェコンヌには勝てない。だから、オレに力を借りに来た。そういうことさ」

 

 うずめの記憶は、心の奥深くに閉ざされているくろめにも共有されている。そして、うずめが何を思い、何を為しに来たのかも。

 

「でも、オレにゲイムギョウ界の滅亡を止める理由はないよ。そもそも、それが目的だったんだから」

「それは、昔の【オレ】だろ?」

「今は違う、そう言いたいのか? それともそう信じたいのか?」

 

 その言葉の中には、少しの苛立ちがあった。

 苛立ちは敵意へと変わり、敵意は戦意へと変わる。

 

「【俺】が今までオレに会いに来なかったのは、オレたちが心の中で再び出会えば、また主導権を巡り戦いが起きるからだ」

 

 猛争事変最後の一騎打ちは、決着ではなかった。あの時、うずめは暗黒星くろめを完全に倒すことはできていなかったのだ。

 

「あの時、オレを受け入れるという裏ワザでようやくオレに勝てたことを、【俺】自身もわかっているんだろう? そして、次戦えば勝てる保証はない。負けたら身体の主導権を奪われる。だから、【俺】はオレを心の奥深くに閉じ込めたわけだ」

「……」

「だったら、オレに会いにくればこうなる事を、わかっていた……だろ!」

 

 言い終わると同時に突き出されるくろめの拳。

 

「……っ!」

 

 うずめは辛うじて防御し、距離を取る。

 そして、掌にオレンジのシェアクリスタルを顕現させた。

 

「女神化か。懸命な判断だね。平和で腑抜けていた【俺】と、【俺】の心の中で力を蓄えていたオレとじゃ、変身しなければその差は埋まらない」

 

 ぶつかり合うオレンジハートとくろめの打撃。両者一歩も引くことはない激戦が繰り広げられる。

 そもそも、心の中での戦いでは身体へのダメージはない。

 殴り合いではあるが、どちらが心が先に折れるかの我慢比べのようなものである。

 

「……そうだよね。わかってる」

 

 戦いが続く中、何かを察したオレンジハートは呟き、くろめに微笑みかける。

 そして、突き出されたくろめの拳を、両手を広げて受け入れた。

 

「……!」

 

 くろめの拳は、オレンジハートを貫いた。

 

「よく……わかったじゃないか」

「……痛くないね」

「当たり前だ。オレは【俺】自身、オレの拳を受け入れることに、痛みなどあるものか」

「ゲイムギョウ界を、みんなを憎んでたんじゃなかったの?」

「憎悪、か。そんなもの、【俺】に受け入れられたあの日から少ししたらどこかへ消えてしまったよ」

「だったら、こんなまどろっこしいことしなくてもよかったのに」

「【俺】は、何もかもを失ったオレに残された最後の砦のようなものだ。それが無くなれば、本当にオレは全てを失う。だから、【俺】にはもう戦ってほしくなかったんだ」

 

 くろめの身体が黒い光となり、オレンジハートに吸収されていく。

 

「【俺】がオレを拒んだなら、オレは【俺】を叩き潰して追い返すつもりだったさ。けど、【俺】はオレを受け入れた。オレが力を貸す理由は、それだけで充分なんだよ」

 

 うずめは、猛争事変が集結してからも、暗黒星くろめというもう一人の自分を理解しようとしていた。

 自分へ向けられた悪意の記憶を掘り起こし、くろめが生まれた理由を理解し、全てを知った上で、もう一度くろめに向き合う機会を作ろうとしていた。

 そして、ただそれだけのことが、くろめにとっての救済でもあったのだ。

 

「……今度こそ、オレたちは一つとなろう。オレの中の力を、全て【俺】に託す。これで【俺】はオレを含めた【俺】自身の全ての力で戦える。そうしたらもう、誰にも負けはしないさ」

 

 くろめが完全にオレンジハートに吸収されると、全ての闇が消え、そこはオレンジ色に光り輝いていた。

 

「……ありがとう、くろめ」

 

 オレンジハートは、意識を心の中から、心の外へと戻していく──────

 

 

 *

 

 

「さて、今回の主役はぎあっちなんだけど」

 

「うずめが……いや、うずめたちがいっちょ世界を救ってあげようかな!」

 

 

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