描写に自信はありませんが、念のため、各種タグを付しておきます。
1000文字ちょいの短編なので、軽い気持ちで読んでいただけたら幸いです。
夜の捜索で発見されたカラダは、風雨に晒されて損傷こそ激しかったが、想定していたよりもひどい有様ではなかった。衣服を纏っていない肢体の下腹部から胸にかけてのナカミは零れ、頭部を失った身体の無造作に投げ出された手足は踊り疲れて倒れたままの体でいる様だ。
壊れた人形──と称するのは、人ならざるワタシでは別の意味になってしまう。
生も死も幻想であるワタシに頭部の損失や内蔵機関の曝露を、壊れているとは呼べない。
なんにせよ、このように野で行為に及んだ理由は理解できない。
たとえ壊す目的があるにしても、秘めておくべきではないのか。
どうせなら、屋内で発見された方が、人目の集まるシチュエーションであったし、
もっと鮮やかな光景を目にすることもできた──それがニンゲンとニンギョウの差異である、
なんて思いたくはない。
擬似脳が投影を開始する苛立ちの幻想は、連鎖的に辺りから聞こえてくる音を耳障りにする。
これは、なんだろう──、いや、たしか以前、話題が出た折に聞いた覚えがある。
「これは──コオロギ、いえ、鈴虫ですか」
アタマを冷やす目的で誰へ向けたでもない言葉は、しかし
「ご名答!リーンリーンと鈴のようだろう?」
足元の明るい声に返された。
ワタシを中継として、中へ入ったことのは予め分かっていたから驚きはないが、
あまりにも能天気な声音に、擬似脳の腐爛が映ったのではないかと本気で疑ってしまい、
幻想の色が再び濃くなる。通信を遮断していなかった己の不手際を毒づきたくなる。
「──主は好き勝手乗り捨てる癖を治して下さい。抱えの技師が泣きますよ」
我ながらつまらない冗句だが、これがワタシなりの冷却の手法だ。
「奴が泣くものか!大体、もうこの型は使ってなかったし、
頭ン中まで変えられたらそれっきりだよ……しかし、
悲しい事故だよ、と目を細めて笑ってなどいる。
主は技術者として、いくつものカラダと
執着がないのか、移動の際に軽い気持ちでカラダを乗り捨てて、別のカラダへと移る悪癖がある。
捨てられたカラダの大抵は後日、抱えの技師集団によって回収されるが、
第三者に奪取されて頭脳に改造を施されればそのまま行方知れずとなってしまう。
技術流出の観点からやめるように提言をしているが、
特別規格の設計とメンテナンスの特異性から考えても、内部構造に辿り着くことは不可能で
頭脳を取り換えるくらいの改造が精々で半年使えるかどうか、だと取り合ってもらえなかった。
「──えぇ、最悪です」