もし「この妄想の詳細を知りたい」という意見が多々ありましたら、二話目に解説的なモノを投稿しようとは思います
誰もいないはずの撮影スタジオ。そこに一台のテレビとその前に食い入るようにして画面を眺める存在がひとつ。それは童、翁、若人、女人、赤子と、瞬く間に移り変わる不可思議な存在であった。そしてその見つめる画面にはシンジが駅のベンチで座るシーンが映っていた。そのシーンから、式波アスカや綾波レイ、渚カオルなどが映し出されたのちに成長した碇シンジが胸の大きい良い女と共に手を繋いで駅のホームの階段を駆け上がる様子を映したのち、駅の外を映した。手を繋いだ二人はそのまま画面外へと消え、後は現実を映すばかりであった。その一部始終を見ていた画面の前の存在は…
「…すばらしい」
一言そう呟いた。それは真に思ったことが胸の奥から溢れ出た結果漏れた一言であったが、その存在が今思っていることを的確かつ簡潔に表していた。
「すばらしい、すばらしいぞ!まさかこのような展開になるとは!私が創り出したこの世界の呪縛から逃れるばかりでなく、現実の元となった世界へと変えることで二度と生命の実を食べた者たちと知恵の実を食べた者たちの子孫同士が争う世界にならないようにするとは!しかも魂のない存在にも空いた魂を入れることで見事に対応した!」
その存在は非常に興奮しながら、誰かに語りかけるわけでもなく、ただ自分のほとばしる思いを爆発させていた。そしてその思いはその程度では終わることはなく
「さらになんなんだあれは!人が創り出した槍だと!?素晴らしい、こんな展開は初めてだ!他の知恵の実を持つ存在を追加しても、6本の槍と神の領域を与えても、殆ど同じことばかり繰り返していた世界が!たった一人のマリアによってこうも変わるとは!すばらしい、人の持つ力とは、こんなにも変わった結末をもたらせるのか!!」
己の思いを爆発させた存在は、その興奮を少し落ち着かせ、一息つく。そしてその少しばかり冷静になった存在は、幾つもの姿へと移り変わりながらこの先の行動を口に出す
「見たい」
「このすばらしい結末を」
「この世界が生まれ変わる様子を」
「人の力が生み出す奇跡を」
「繰り返していた世界に終止符を打つ様子を」
「「「「もう一度!見たい!」」」」
満場一致でもう一度見たいという結末になったその存在は、無垢な子供のように綺麗な目をしたままテレビの前に手をかざす。まるで古いテレビのツマミを回すかのような動作で少し時計回りに手を動かすと
「「「「新たな世界を!」」」」
グルッ!と反時計回りに手を動かす、まさに直前
「そうはさせないよ」
突然照明が消え、一瞬スタジオが暗闇に陥ると勢いよくスタジオの扉が開く。その先にいたのは…
「神の子…碇シンジが何故ここに?」
大人となり、声も低くなった碇シンジがそこにいた
「世界を再び作り直すことなんて、させないよ」
決意を決めた声に対しテレビの前の存在は
「何をしにきたのかは知らないが、我らの思いがあれば世界は変わる。君の選択もなかなか面白かったが、この結末以外も見てみたいのでな。この世界も新しい結末を辿るんだよ」
何も考慮することなく、己の意思を揺るがさないのであった
「例えば…エヴァ四号機等の槍に貫かれもせず、使徒に侵食もされなかったエヴァンゲリオン、最後にホームで分かれるタイミング、13号機が勝った場合の結末…可能性はどれだけでもある。その可能性が辿る結末を、私たちは知りたいんだ」
老若男女に移り変わっていくテレビの前の存在は、何の目的で語るかもわからないままに己の思いを語り続ける。その目は虚で、自分に酔っているようであった。だが、その語りは突如止まることになった。なぜならばこのスタジオが突如崩壊し始めたからである。壁や天井にひび割れが入り、機材や道具も壊れていく
「な、なぜ…このような事態が…」
慌てふためくその存在に、シンジは
「この世界はこの結末で終わり。もう変わらない、変わらなくていいんだ。だから、その辿る可能性や結末は自分の中の妄想にだけして欲しいんだ。この世界も僕も、君たちのような存在をもう欲していないんだ。だから…」
しかしその言葉は途中でテレビの前の存在によって遮られる
「まさか!まさか現実とこの世界の繋がりを断つと言うのか!」
理解ができない、と子供のように喚くその存在は、ふと気づいたことをシンジに問う
「お前…自らが戻れなくなっても良いというのか!?」
その問いにシンジは…
「もちろん、覚悟のうえだよ」
その発言とともにスタジオに大きくひび割れが入り、その隙間へと消え失せるテレビの前の存在。その直後にさらにスタジオは崩壊していく。その間、碇シンジは覚悟と寂しさの混ざった顔で崩壊するスタジオを眺めていたシンジは突如背中に柔らかい感触を感じ、それと共に目を隠される
「…だーれだ」
「胸の大きいいい女」
「正解!」
駅のホームでやった会話をした二人は見つめ合う。シンジの方はやや困ったような顔をする。そのシンジに対してマリは
「言ったでしょう、どこにいても必ず迎えにいくって」
そのセリフにシンジは少し照れながらも頷き、そっと唇を合わせた。それと共に現実とエヴァの正解を繋いでいたスタジオは消え、二人の姿もエヴァの世界でも現実の世界でもないどこかへと消えていくのであった。