ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

1 / 86
 ゾイド、それは銀河の彼方に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。


第1話 「再星」

 とある銀河系、一隻の艦船が宇宙を航行していた。その船から乗組員と艦長の声がし、

 

 「反転ブースト展開、出力90%! どんどん引き寄せられていく。艦長! 限界です!」

 

 「ジェネレータ起動、カウント開始。」

 

 「よし、全速前進、ゲートに向かう!」

 

 「下層部脱出完了。ポッド残数ゼロです!」

 

 空間が歪み、ゲートのようなものが現れ、艦船はゲートを抜け、月の裏側に出た。 そして、その艦船から謎の光が放たれ、無数の光はコアとなって地球の上空に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球、西暦2025年、アメリカ、ニューヨーク、上空から無数の光輝く種が流星のように降り注いだ。それと同時に巨大な機械の姿をしたブラキオサウルスが現れ、更に様々な動物の姿をしたメカが現れ、街を蹂躙していった。

 同時に世界各地に地殻変動と異常気象が起こった。そして世界のテレビもそれを中継し、人々は混乱に陥った。

 

 「世界の各地で頻発している大規模な地殻変動、そして未曾有の異常気象の原因は1週間前に宇宙から飛来した巨大な飛行物体の墜落と何か関連があるものとして、現在……」

 

 「怪物です! 地殻変動に続いて今度は奇怪な姿の怪物たちが都心部に出現しました! 生物なのかメカなのか未知の怪物たちが街を破壊していきます!」

 

 

 

 街を蹂躙し、破壊していく機械の身体を持った正体不明の生物は他の生物と争いながら暴れていった。

 ブラキオサウルス型が町を進み、タイガー、カブトムシ、クワガタ、ワニ、ゴリラ等、様々な動物の姿をしたメカのような怪物が次々と町を破壊していった。

 謎のメカ生命体の登場と共に発生した地殻変動や台風で海にある揺れる空母が突然両断され、海から巨大な鋸を持つ巨大なスピノサウルス型のメカが現れ、咆哮を上げ、同時に地殻変動で噴火した火山の下から緑色の光線が放たれ、周囲の都市や山脈をまるで核兵器のような威力で一瞬で壊滅させ、その中からは巨大なティラノサウルス型のメカが現れ、火山の噴火や雷がなると同時に目一杯咆哮を上げ、その咆哮が世界の滅亡を暗示するかのように世界各地は地殻変動によって全て壊滅した。

 

 

 突然現れた金属の肉体を持つ謎の巨大生物の正体は、地球から約6万光年離れた惑星Ziに住む金属生命体ゾイドだった。本来地球に存在するはずのないゾイドが謎の宇宙船とコアのような謎の物体の飛来によって突然現れ、大規模な地殻変動によって地球は一度滅んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから100年後、新地球暦30年、帝国領の旧ロンドンに巨大な亀裂に沿って荒廃した街を走る1台の車があった。その車にはバズ・カニンガムと名乗る男とレオ・コンラッドという赤髪と少年らしい幼さ、中性的な容姿をした少年が乗っていて運び屋の仕事をしていた。

 その横を横切るかのようにカイコガ種ゾイドのキャタルガが現れ、そのコクピットに乗っているバズの知り合いは、

 

 「よう、バズ! 相変わらず、まだそんな時代遅れの車に乗っているのか? ゾイドに乗れば、そんな苦労は無くなるぜ。」

 

 「悪いな、俺はこう見えてオーソドックスなんでね。」

 

 「けど、いつかはそいつも無くなるぜ。」

 

 知り合いの乗るキャタルガがそのまま去ったのを見たバズは、

 

 「やれやれ、最近、元々地球にあった産物を使わずにどいつもこいつもゾイドを使うようになって来やがった。

 レオ、いい加減、お前も何かいいゾイド見つからんのか? お前さんの親父は優秀な考古学者だと聞いた。

 だとするなら、お前もゾイドのことはよく知っているはずだろ?」

 

 「そうは言っても、俺はまだ、父さん程ゾイドのことには詳しくなくて… 」

 

 「言っとくが、もしゾイド見付けられなかったら、今月の家賃全て払ってもらうぞ。」

 

 「家賃!? ちょっと待ってよ。バズ! 家賃なんて発生してたの!?」

 

 「あったり前だろ! 親がいなくて、独り身のお前を無償でお泊まりさせる程、俺はお人好しじゃないんでね。」

 

 

 家に着いたバズとレオは次の運び屋の準備をする中、レオはバズの車をいじっていた。

 

 「おいおい、何やってんだ? レオ。」

 

 「何って、もし、ゾイド見付けられなかった代わりにバズの車を飛行船に改造しようと思って。」

 

 「たく、俺の車を勝手に弄んないでくれよ。もし、これで壊れたりでもしたら、その修理代全部お前に払って貰うぞ。」

 

 「そんな……」

 

 「ま、ゾイドの知識はともかく、改造のセンスは中々だな。」

 

 「父さんから学んだからね。」

 

 「けど、何で俺の車を飛行船になんかしようとしているんだ?」

 

 「だってよ。今まではイージスバレーを迂回する行路を通ってきたけど、そのイージスバレーを飛び越えれば、最短ルートで行けるし、今よりずっと楽になるんだよ

!」

 

 「肝心の荷物はどうするんだよ?」

 

 「そ、それは、まだ考え中だよ。」

 

 「まあ、確かにあの厄介な亀裂のおかげで、いつも遠回りになるが、あれのおかげで、ジャミンガの連中は街に襲いかかって来ないから、助かっているけどね。

 あ、そうだ。レオ。 次の運び屋の仕事は夜からだから、その間にお宝探しに付き合ってくれないかね?」

 

 「お宝?」

 

 「レアメタルは高値で売りさばけるからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バズとレオはイージスバレーを抜け、かつてゾイドクライシスで崩壊した街に入った。街はゾイドクライシスの規模を物語るかのように荒れ果てていた。バズとレオは車から降り、

 

 「いいタイミングだ! どうやら今日はジャミンガはお留守のようだ。」

 

 「急いで、レアメタルを回収しよう。」

 

 ビルの中に入るバズとレオ、そこには崩れた幾つもの古代生物の化石があちこちに散らかっていた。

 

 「ヒュー、どうやらここは博物館のようだな。」

 

 「レアメタルはここの発電機室にありそうだ。」

 

 「ここにゾイドの化石もありゃ、一石二鳥なんだがな。」

 

 「そう簡単に見つかるわけないよ。 ん?」

 

 突然、レオが立ち止まり、

 

 「いやいや、ここは博物館だぜ! もしかしたらゾイドの化石を集めているかもしれないぜ。 ん? おい、どうした? レオ。」

 

 レオの脳裏にライオン種のような骨格が浮かび上がり、その骨格の目が光り、徐々に姿が形成され、ライガーが現れ、レオに向かって吠えた。

 

 ガオ~!!

 

 「おい、レオ! レオ!」

 

 「は!」

 

 「どうした? 顔色が悪いぜ。」

 

 「あ、いや、何でもないよ。」

 

 「おや、ひょっとして何か良いもんでも見付けたのかな?」

 

 「そんなもんじゃないよ。」

 

 「とりあえず、レアメタル回収しようぜ!」

 

 「あ、待ってよ! バズ。」

 

 

 

 

 

 荒廃した街にマスクをした1人の少女が歩いていた。少女は周囲を徘徊している中、倒れたビルの下から全身が錆び付いたボーン形態のラプトールの群れがゾンビのような動きで少女に襲いかかってきた。ジャミンガだった。

 少女はジャミンガから必死に逃げようと走るが、あっという間にジャミンガに取り囲まれてしまった。少女はあっという間に逃げ場を失い、パニックになってしまった。

 

 「きゃあぁー!!」

 

 

 

 

 

 

 博物館から多数のレアメタルを回収したレオとバズ、レオは何か聞こえたかのような反応をした。

 

 「ん?」

 

 「どうした? レオ。」

 

 「いや、誰か声が聞こえたような…」

 

 「声? 冗談はよせ。第一こんなところに人がいるわけないだろ。 ジャミンガがうようよいる街だぜ。

 さて、レアメタルも大量に手に入ったわけだし、ジャミンガの連中が来ない内にさっさとずらかろう。」

 

 「きゃあぁー!!」

 

 再び少女の悲鳴がし、それを聞いたレオは、

 

 「やっぱりだ! 誰かいるんだ。俺、ちょっと見てくる。」

 

 「おい、ジャミンガが来たら、どうするんだよ!?」

 

 「その時はバズだけでも逃げて。」

 

 走り去るレオを見たバズは呆れ果て、

 

 「たく、さっきも変だったし、とうとうあいつ、幻聴まで聞こえちまったのか?」

 

 

 

 

 

 

 ジャミンガは少女を喰らうように少々に襲いかかってきた。少女はジャミンガの口を避けるが、大量のジャミンガを全て避けきれずパニックになってしまう。少女が諦めかけたその時、少女を真っ先に喰らおうとした先頭のジャミンガにレオが突進し、他のジャミンガもワイヤーで動きを止め、ジャミンガたちを撹乱させた。レオは少女の側に立ち、

 

 「君、大丈夫?」

 

 「あ、ありがとう…」

 

 「こいつら、ジャミンガだ! 早く逃げよう。」

 

 しかし、その隙を狙うかのようにジャミンガは少女とレオに襲いかかってくる。レオは少女をなんとか守るが、ジャミンガの牙がレオの背中に刺さり、出血してしまう。同時に少女もその衝撃でマスクが取れ、素顔が現れた。少女は傷ついたレオを気遣うように、

 

 「だ、大丈夫ですか?」

 

 「大丈夫だよ! それより、君、怪我は…」

 

 素顔を見せた少女を見たレオは何か今までにない感情が表れた。ジャミンガは尚も襲いかかってきた。レオは少女の手を握り、ジャミンガの群れから逃げようとした。

 

 「早く、ここから離れよう。」

 

 「待って、呼吸器が!」

 

 「今は後だ! とにかく奴等から離れよう。」

 

 レオは少女の腕をしっかり握り、走って行った。しかし、ジャミンガの群れは尚もレオと少女を追いかけていった。

 

 「これじゃ、キリがない。」

 

 その時、レオはビルの隙間を見付けた。

 

 「こっちだ!」

 

 レオは少女と共にその隙間に入って行った。ジャミンガたちもそこに入ろうとするが、狭すぎて入れず、遂に諦めて向こうへ行った。ジャミンガが諦めたのを見たレオはほっとため息をつき、

 

 「ようやく、諦めたか。ここまで来れば、大丈夫だ。」

 

 しかし、喜んだのも束の間、助けた少女は突然苦しみ出した。

 

 「ごほっ、ごほっ、ごほっ!」

 

 「おい、君大丈夫か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオは少女ををレアメタルを回収した博物館の隣のビルの中にあるソファに寝かせ、バズに一連のことを説明した。

 

 「で、この子がマスクをしていたって!?」

 

 「だから、ほら、呼吸が苦しそうだよ。」

 

 「地上でマスクが必要ってことは、俺たちより1つ上の世代だ。彼女はどう見たって、まだ10代の女の子だぜ。しかも、お前より年下のようだし。」

 

 「でも……」

 

 「とにかく、話は後だ。ジャミンガが来る前にさっさとここからずらかろう。」

 

 「待てよ、この子を放っていくのかよ!?」

 

 「そんなことまで手回ってられねぇよ。車を取ってくるぞ。」

 

 そう言ってその場を立ち去るバズ、レオは苦しむ少女を見て、

 

 「やっぱり駄目だ。このままほうって置いたら、この子が死んでしまう。君のマスクを取ってくる。」

 

 マスクを取りに行こうとするレオに、少女が起き上がり、

 

 「待ってください。ごほっ、ごほっ、逃げて……軍が来る。」

 

 「軍?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ズドン、ズドン! 

 

 襲いかかってくるジャミンガたちを対空速射砲を装備した帝国軍のラプトール、スコーピア部隊が一斉射撃を開始した。ジャミンガは武装もなく、全身が錆び付いているため、帝国軍のゾイドに敵うわけなく、全て全滅した。キャノンブル、キャタルガも現れ、キャノンブルのコクピットから1人の帝国軍将校が現れ、破壊したジャミンガの頭を踏みつけた。

 

 「は、ゾイドのなり損ないが、土に還れ!」

 

 「リュック隊長! これを。」

 

 1人の兵士は少女のマスクを発見し、それをリュック隊長に見せた。それを見たリュック隊長は、

 

 「キャタルガは街の出口を塞げ! 後は全員少女を捜索だ。」

 

 「了解!」

 

 「け、たかが、1人の少女を捜すのにこんなところまで来ることになるとは。」

 

 その時、生き残った数体のジャミンガがリュック隊長の背後を狙うかのように、ゆっくり、ゆっくりと近付いて行った。

 

 ズドン、ズドン!

 

 その時、再び砲撃がし、リュック隊長に襲いかかろうとしてきたジャミンガは一瞬で破壊された。

 現れたのは、目にバイザーが取り付けられ、全身が黒いカラーリングになっていて特別な改造を施した帝国軍最強のハンターウルフ改だった。

 ハンターウルフ改のコクピットから降りたのは、細身で、綺麗な銀髪のロングで、一見少女にも見えそうな中性的な容姿をした16歳の少年だった。少年を見たリュック隊長は、

 

 「ユウト・ザナドゥリアス少尉か…」

 

 「あれくらいの不意討ちに気付けないようでは、サリーを探し出すことは出来ませんよ。リュック隊長。」

 

 「黙れ、あれくらいのことなど、直ぐに見破っている!」

 

 「隊長、お分かりかと思いますが、サリー・ランドは帝国の脱走犯、すなわち、我々に命じられているのは彼女の生け捕り。

 もし、殺したりでもしたら、人道的行為に違反し…」

 

 「黙れ! 貴様は博士の助手としてこの付近にいるとされるライオン種ゾイドの捜索を命じられているのだろ? だったら、貴様の任務は少女の捜索ではない。」

 

 「ですが、サリーの捜索には私にも博士から命ぜられています。私はあなたが余計なことをなさらないよう、注意をしているだけです。

 私は引き続き、例のライオン種のゾイドを捜索します。サリーが見つかりましたから、一応報告してください。では、」

 

 そう言って少年はハンターウルフ改に乗ってその場を立ち去った。立ち去るハンターウルフ改を見たリュック隊長は歯を食い縛り、

 

 「くそ、何故あんな若僧に気を遣わせなければならないのだ!?」

 そこを瓦礫の下から様子を見ていたレオは、

 

 「何で、帝国軍がここに? まさか、あの子が言っていた軍って…」

 

 レオは急いで少女のいるビルに急いで戻った。少女のいるビルに帝国軍兵士が入り、帝国軍兵士は少女を見付けた。兵士は無線で報告しようし、

 

 「こちら…」

 

 その時、無線機がワイヤーで飛ばされ、兵士たちはレオによって蹴散らされた。それを見て唖然とする少女、レオは少女に寄り添い、

 

 「早くここから逃げよう。」

 

 その時、足音がし、リュック隊長と帝国軍兵士がレオたちの前に現れた。

 

 「サリー・ランドだな。大人しく我々の元に来てもらおうか。」

 

 それを聞いたレオはリュック隊長に、

 

 「この子をどうするつもりだ?」

 

 「民間人のお前がそれを知る必要はない。さあ、その少女を渡すんだ。」

 

 「嫌だ!」

 

 「そうか、そんなに死にたいか。撃ち殺せ!」

 

 少女は声を上げ、

 

 「止めて!」

 

 「ふん、」

 

 「あなた方と行きます。だから、この人には手をないで。」

 

 「来るんだ。サリー・ランド。」

 

 それを聞いたレオは、

 

 「(サリー・ランド? それがこの子の名前…)」

 

 少女はゆっくり、リュック隊長の元に行き、

 

 「行っちゃ駄目だ!」

 

 ププー!!

 

 「ん?」

 

 その時、車のクラクションが鳴り、リュック隊長はその音に釣られ、レオはその隙にワイヤーで天井の照明を落とした。煙が晴れるとそこにレオと少女はいなかった。

 

 「くそ、逃げたか。」

 

 レオはサリーを抱き抱え、バズの車まで行った。

 

 「どちらまで?」

 

 「帝国軍がいないところ!」

 

 「帝国軍? おいおい、レオ。お前何やらかしたんだ?」

 

 「説明は後だ! 早く車を出せよ!!」

 

 「料金は高く付くぞ!」

 

 走り去るバズの車を見たリュック隊長は無線で、

 

 「絶対に逃がすな! ラプトール、スコーピア、西に転回しろ。ターゲットが逃げた。 私のキャノンブルもこちらに回せ。」

 

 それを聞いた1人の兵士は、

 

 「リュック隊長、ザナドゥリアス少尉に報告は?」

 

 「そんなもん、必要ない! 奴にはゾイドの捜索をさせておけ。」

 

 バズの車を帝国軍のラプトールとスコーピアが追ってきた。

 

 「おいおい、帝国軍のゾイドとカーチェイスなんて聞いてねぇぜ!」

 

 「バズ、もっとスピード出せる?」

 

 「出せるけど、こっからはきついぞ? お嬢さん、しっかり捕まってな!」

 

 それを聞いた少女はきょとんとし、

 

 「え?」

 

 バズは車を目一杯出し、一気にラプトール、スコーピアとの距離を離した。レオと少女は必死に掴まり、

 

 「うわあぁ~!!」

 

 「きゃあぁ~!!」

 

 「絶対に逃がすな!」

 

 ラプトールとスコーピアは対空速射砲を撃ちながら、バズの車を追った。

 リュック隊長はキャノンブルのコクピットに乗り、コクピットのケーブルがリュック隊長の着用しているスーツに接続し、キャノンブルのコクピットが起動した。

 

 「キャノンブル、発進!」

 

 キャノンブルはバイザーを輝かせて起動し、そのままバズの車のところに向かった。

 

 「サリー・ランドは私の手で捕らえる。 あんな小僧に名誉は渡さんぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちがレアメタルを回収したところにハンターウルフ改が待機し、ユウトはコクピットから降りて中を捜索していた。あちこちに散らばっている化石を見ながら、発信器を見て、

 

 「ゾイドらしき化石は見当たらないが、間違いなくここに普通のゾイドではない反応がある。それにしても一体何処に?」

 

 ズキッ、

 

 その時、少年に頭痛が走り、

 

 「この反応… やはり、近くにいる。」

 

 少年は周囲を散策して歩き回った。その時、突然下の瓦礫で足を滑らし、地下に落ちてしまった。

 

 「う、うわあぁー!!」

 

 少年が目を覚ますと、目の前にライオン種らしきゾイドの骨格があった。

 

 「あった。これだ。博士が探していた例のライオン種のゾイド。 

 骨格の形状は以前帝国軍が復元していたワイルドライガーに酷似しているが、この反応は明らかに並みのワイルドライガーの反応ではない。」

 

 少年はそのゾイドの骨格に手を触れるが、突然少年の身体に電流が走った。

 

 「う、うわあぁー!!」

 

 少年は電流で突き飛ばされた。

 

 「あらゆるゾイドを従えてきたこの僕を拒否するゾイドがいるなんて…」

 

 その時、ゾイドの骨格がオレンジ色に輝いた。それを見た少年は、信じられないようか光景を見るかのように、

 

 「これは…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国軍のラプトール、スコーピアから必死に逃げるバズの車、ラプトール、スコーピアは対空速射砲をガンガン撃ち込むが、バズは右往左往に車を動かしながら、ラプトールとスコーピアの攻撃を避けて走って行った。レオとサリーは酔いそうになりながらもしっかり捕まって行った。サリーはますます苦しみだし、レオはサリーをしっかり抱き抱えた。

 

 「君、大丈夫? バズ! これ以上無茶な運転は危険だ!」

 

 「んなこと言っても、あいつら俺たち殺す気だぜ! 早く逃げないと!」

 

 街の出口に入ろうとしたその時、キャノンブルが目の前に現れ、バズは急ブレーキを駆けた。

 

 キキー!!

 

 バズはキャノンブルを避けようとするが、キャノンブルは3連ミサイルポッドをバズの車に撃ち込んだ。避けきれず、その衝撃でバズの車はスリップしてしまう。キャノンブルに乗っているリュック隊長は、

 

 「小僧、いい加減、サリー・ランドを渡せ。でないと車ごと吹っ飛ぶことになるぞ。」

 

 レオはサリーを抱き抱えて車から出た。

 

 「そうだ。そのままこちらに渡せ。」

 

 レオはリュック隊長が目を離した隙に逃げる準備をしているが、背後にはラプトールとスコーピアが待ち構えていた。

 

 「貴様に逃げ場はない。諦めて大人しくサリー・ランドを渡すんだ。」

 

 逃げ場がないとわかってレオが諦めかけたその時、突然、少女のペンダントがオレンジ色に輝いた。

 それと同時に博物館にあるライオン種の骨格の目が光り、更に全身の骨格もオレンジ色に光り輝いた。

 

 「なんだ、これは?」

 

 強烈な光りで少年は腕で光りを遮るが、光りが収まるとそこにライオン種のゾイドの骨格の姿はなかった。

 

 「何!? 一体何処に?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャノンブルが片足でレオと少女を踏み潰そうとしたその時、突然、ビルの瓦礫から巨大な影が現れ、リュック隊長のキャノンブルに体当たりした。キャノンブルはその衝撃で倒れ、巨大な影はキャノンブルに向かって吠えた。

 巨大な影は紅蓮色のワイルドライガーだった。それを見たレオは、 

 

 「こいつは、ワイルドライガーなのか?」

 

 紅蓮のワイルドライガーはレオをじっと見詰めた。それを見たレオは、

 

 「もしかして、俺に乗れってことなのか?」

 

 ワイルドライガーはゆっくり頷いた。

 

 「よし、わかった!」

 

 レオは少し戸惑ったが、立ち上がろうとするキャノンブルと背後のラプトール、スコーピアを見て、覚悟を決め、

 

 「バズ、この子を頼む!」

 

 「お、おい、レオ!」

 

 レオは少女をバズに渡し、そのまま紅蓮ワイルドライガーのコクピットに乗った。

 

 「行くぞ、ワイルドライガー!」

 

 ガオ~!!

 

 ラプトールとスコーピアは紅蓮ワイルドライガーに向けて一斉砲撃するが、紅蓮ワイルドライガーはそれを全て瞬時に避け、一瞬でラプトール、スコーピア隊を一気に壊滅させた。

 

 「凄い、凄いぞ、ワイルドライガー!」

 

 ラプトール、スコーピア隊を倒した紅蓮ワイルドライガーはキャノンブルに向かって咆哮を噛ました。紅蓮ワイルドライガーを見たリュック隊長は、

 

 「あれは、ワイルドライガー。しかし、軍のデータにはどれも該当しない。新種の亜種ということか……

 面白い、ついでにあのライガーも鹵獲して我が帝国軍の戦力に加えてやる。」

 

 キャノンブルは紅蓮ワイルドライガーに突進し、紅蓮ワイルドライガーはそれを難なく避けた。

 

 「上手く避けたつもりのようだが、今度はそう上手くいかんぞ。」

 

 キャノンブルは紅蓮ワイルドライガーに3連ミサイルポッドを撃ち込んだ。

 

 「う、ぐ……だぁ、」

 

 キャノンブルのミサイルを喰らって苦戦する紅蓮ワイルドライガー。

 

 「くそ、ワイルドブラストが出来れば… そうだ。ライガー! ワイルドブラストできるか?」

 

 それを聞いた紅蓮ワイルドライガーは頷いた。

 

 「ようし、行くぞ、ワイルドブラス…」

 

 しかし、ワイルドブラストを発動しようとしたその時、コクピット中に電流が迸り、レオとライガーが苦しみ出した。

 

 「ぐ、ぐわあ~!!」

 

 グオ~!!

 

 「レオ!」

 

 それを見たリュック隊長は、

 

 「バカめ、耐Bスーツ無しでワイルドブラストを発動出来るものか!」

 

 キャノンブルは紅蓮ワイルドライガーに向かって突進し、角を紅蓮ワイルドライガーの身体に突き刺した。キャノンブルの角が紅蓮ワイルドライガーの身体に深く突き刺さった。それを見た少女は見ていられないように両手で目を隠した。

 

 「ああー!!」

 

 キャノンブルはそのまま紅蓮ワイルドライガーを振り回し、ビルの方に叩き潰した。

 

 「本当のワイルドブラストを見せてやる。制御トリガー解除、キャノンブル、兵器 解放! マシンブラストー!! 9連キャノン砲をお見舞いしてやる。喰らえー!!」

 

 マシンブラストしたキャノンブルの9連キャノン砲のドレッドシールドが開き、キャノン砲を紅蓮ワイルドライガーに撃ち込んだ。キャノン砲をまともに食らい、崩れたビルの瓦礫の下敷きになってしまう。 コクピットのレオはその衝撃で気絶してしまう。

 

 「最初(はな)から、ゾイドのスペックが違うのだ!」

 

 「レオ、立て! 逃げろ!」

 

 コクピットの中で力を振り絞って起き上がろうとするレオ、しかし、紅蓮ワイルドライガーもダメージが大きく中々起き上がれない。迫ってくるキャノンブルを見たレオは悔やみ、

 

 「くそ、俺は何も出来ないのか! せっかく相棒ゾイドに乗れたっていうのに、あの子を守れず、ライガーまで見殺しにしてしまうなんて、俺はなんて無力なんだ!」

 

 レオは拳を叩きつけたその時、少女のペンダントが再び光り出した。オレンジ色に光り輝くペンダントを見た少女はペンダントを握りしめ、ライガーの元に向かった。

 

 「お、おい!」

 

 キャノンブルが紅蓮ワイルドライガーの近くまで来た時、少女はペンダントを紅蓮ワイルドライガーに向けて投げた。

 その時、紅蓮ワイルドライガーは再びオレンジ色に輝き、装甲のアーマーの姿が変わり、ライガーの姿が徐々に変わっていった。同時にコクピットにいるレオにもその光りが降り注ぎ、左腕が金属化していった。

 ペンダントの力で姿が変わったライガーは紅蓮のワイルドライガーから白いアーマーと赤いタテガミを持つライガーに変わった。それを見た少女は、

 

 「ビースト… ライガー…。呼吸が。」

 

 姿が変わったライガーを見たレオは、

 

 「ビーストライガー… それがお前の本当の名前なのか?」

 

 レオの問いにライガーはゆっくり頷いた。ビーストライガーの姿を見たリュック隊長は驚愕し、

 

 「何!? 姿が変わっただと! どういうことだ?」

 

 「ようし、行くぞ、ビーストライガー。お前の力を見せてみろ!」

 

 キャノンブルはビーストライガーに向かって突進するが、ビーストライガーはそれを難なく避け、キャノンブルにぶつけて突き飛ばした。

 

 「さっきより、動きが早くなっているが、どちらにせよ、同じことだ。もう一度9連キャノン砲を喰らえ! ナインバーストキャノン!!」

 

 キャノンブルは再び9連キャノン砲を放ち、ビーストライガーはその砲撃を喰らって再び崩れたビルの瓦礫の下に潜ってしまう。それを見たサリーは、

 

 「は!」

 

 「言ったはずだ。ゾイドのスペックが違うとな!」

 

 しかし、ビーストライガーは瓦礫の下から現れ、全くの無傷だった。

 

 「何!?」

 

 コクピットにいるレオの左腕が突然光だし、ビーストライガーはレオに何か言いたいかのように頷いた。

 

 「よし、いくか!」

 

 それを見たサリーは、

 

 「ワイルドブラストする気なの?」

 

 「ビーストライガー、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 ビーストライガーのタテガミクローが前に展開し、ビーストライガーはキャノンブルに向かって走って行った。

 

 「バカめ、ワイルドブラストをしたところで、耐Bスーツ無しではその衝撃に耐えられるわけがない。 ナインバーストキャノン!!」

 

 キャノンブルは向かってくるビーストライガーに9連キャノン砲を撃ち込むが、ビーストライガーはレオと上手くシンクロし、キャノンブルの9連キャノン砲の弾の動きが全てわかるかのようにかわし、突っ込んでくるキャノンブルと激突する。 

 

 「ビーストオブクローブレイク!!」

 

  激突の末、シーザーはキャノンブルの角を折る。

 

 「バカな!私のキャノンブルがここまで!」

 

 「へへ、やったぜ、ビーストライガー!!」

 

 「車は直った。急いで逃げるぞ!」

 

 「よし、今度こそ、脱出だ。」

 

 倒れたキャノンブルから降りるリュック隊長、兵士たちはリュック隊長を気遣い、

 

 「隊長! お怪我は?」

 

 「大したことはない。」

 

 逃げるビーストライガーを見たリュック隊長は、

 

 「あれがボーマン博士の研究成果か… なるほど、ランド博士や軍上層部があれだけ躍起になるわけだ。」

 

 コクピットの中にあるレオは手袋を外し、金属化した左腕を見た。

 そこを高層ビルの屋上でハンターウルフ改から降り、双眼鏡でビーストライガーを見たユウトは、

 

 「あれがビーストライガー… 帝国軍のどのデータにも載っていない紅蓮色のワイルドライガーが更に姿を変えるなんて、ランド博士に報告しなければならないようだな。」

 

 そう言ってユウトはハンターウルフ改に乗ってその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (帝国領のバルトア地帯)

 バズの知り合いが乗るキャタルガが走っている中、コクピットに何か反応があった。

 

 「やけに強い反応だな。」

 

 反応が最大になったところでキャタルガが地面にスリップしてこれ以上進めないのをを見たバズの知り合いは、キャタルガを止め、コクピットから降りた。

 

 「ここいらが限界か… 大人しく待っていろよ。」

 

 バズの知り合いはキャタルガに待つよう指示を出し、ロボットを引き連れ、発信器付きのゴーグルを付け、反応を便りに進んだ。

 

 「メタルハンノウ、カクニン!」

 

 「ジャミンガは? … オシッ!」

 

 「キョリ1.658」

 

 「Zハンノウナシ アンゼンヲカクニン。」

 

 「あれは遺跡群か? あそこから反応が出たのは、間違いない。 あのデカいのは何だ?」

 

 バズの知り合いはその場所に走って行った。

 

 「… ハァッ、ハァッ、ハァッ… 」

 

 ゾイドクライシスで崩れ落ちた遺跡群に辿り着き、そこにあったのを見たバズの知り合いは驚愕する。

 

 「これは、何だ!?」

 

 そこにあったのは4つのコアが埋め込まれたゲートのようなものだった。

 

 To be continued




次回予告
 
 ビーストライガーを相棒にし、リュック隊長率いる帝国軍を退けてサリーを助けたレオとバズだったが、レオたちは逃亡犯にされ、帝国軍に追われるようになった。
 しかし、そんなレオたちの前に帝国軍最強のハンターウルフ改が襲いかかってきた。
 
 次回
 
 「追奔 襲撃! 帝国軍」

 走り抜け、ライガー!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。