ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 ペンダントの力によって突如復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーを復活させた不思議な力を持つペンダントを持ち、地球の未来を左右する謎の少女サリーと共に地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第11話「願イ、輝ク時」

 ジェノスピノの侵攻を受け、壊滅した要塞都市モザイクから少し離れた場所にテントを張るディアス中佐率いる共和国部隊。共和国軍兵士はディアス中佐に報告し、

 

 「ジェノスピノはコースを北東へ微修正し、尚も進行中です!」

 

 「やはりジェノスピノの目標はネオヘリックで間違いないな。我々は、第7地区のオルセン部隊と合流し、体制を立て直す」

 

 「はっ!」

 

 「私も医療部隊が到着次第、後を追います」

 

 「負傷者を頼んだぞ! 我々は直ぐにでネオヘリックに向かう。」

 

 「ディアス中佐!」

 

 「何だね? ツガミ大尉。」

 

 「我々の愛機は先程のジェノスピノとの戦闘で、かなりのダメージを負っている。 この状態でネオヘリックに戻ってもまた、先の戦闘の二の舞になるだけだ。

 幸い、この先の向こうにジェノスピノに狙われなかった基地がある。ここは基地に向かって、ゾイドを修理し、ジェノスピノを迎え撃つための体制を立て直すのが先決かと……」

 

 「ん……確かにそうだな。この状態で、再び我々のゾイドを戦場に出すのは余りに酷だ。 それにレオのライガーを修理するためにも……その場所が必要だ。

 アイセル少佐! 彼のライガーの状態は?」

 

 「予想以上に酷く、破損した装甲の切っ先が内部メカまで食い込んでるとのことらしいわ。」

 

 「そうか……我々は近くの基地に向かう。そこで少佐はレオのこと、ビーストライガーにしてやれることがあれば最善を尽くしてくれ。」

 

 「ありがとうございます!」

 

 

 

 傷付き、変わり果てたライガーの姿を見たレオは悲しそうな表情でライガーに声をかける。

 

 「ごめんよライガー。無理をさせてしまって……」

 

 「レオ……」

 

 それを見たサリーは励ますことが出来ず、レオを思いやって表情を歪める。

 その時、ライガーに異変が起きた。ライガーの体表から色が失われ、石化が進行していき、目からも色が失われ、ライガーは眠りについてしまった。それを見たレオは再びライガーに駆け寄った。

 

 「ライガー! ライガー! ライガー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モザイクを壊滅させたジェノスピノは、アルドリッジ率いる護衛部隊から離反し、単身ネオヘリックを目指していた。

 

 「今日の戦闘は消火不良だったな。」

 

 その時、ジェノスピノが何か言いたいな素振りを見せると同時にセードの右腕が発光した。右腕を見たセードは、

 

 「そうか……お前もそう思うか。確かにそうだよ。あのライガーは俺を楽しませてくれると思ったが、どうやら、逆に俺をイラつかせるだけの不良品だったよ!

 仕留め損ねちまったが、まあ、あの傷じゃ、その内死ぬだろう。あの時、共和国を助けるようなバカな真似しなけりゃ、こんなことにならなかっただろうに! バカな奴だ。

 ん? 何故、ファングタイガーや護衛部隊を置いて行ったかって? ふん、あのアルドリッジとあの程度の部隊ごときで、俺と貴様の護衛が務まるとまでも思うか?

 かつてゾイドクライシスで世界を壊滅させた貴様とこの俺が揃えば、護衛等必要ない。今や、俺と貴様こそが最強なのだからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 共和国首都ではギャレット大将がシーガル准将を通信で呼び出そうと試みていた。

 しかし、シーガルは共和国からの通信が入ったと部下から伝えられるもそれを一蹴した。

 

 「閣下、共和国から通信が来ましたが……」

 

 「返答は同じだ。ジェノスピノ対策に戦意専心中と伝えておけ!」

 

 「はっ!」

 

 「もはや対等の立場ではないのだよ、共和国。 ところで、プライド閣下からの通信は?」

 

 「いえ、何も……全く連絡がありません。」

 

 「作戦は順調にいっているのに、何故閣下は我々の働きを称賛してくれないのだ? この作戦が成功すれば、更なる出世も約束してくれると言っていたのに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プライド摂政の別荘の個室で、プライド摂政とラスト大佐が対面していた。

 

 「大分頑張っているみたいね。 このままいけば共和国首都も目前らしいわ。」

 

 「そうか……ところで、モザイクでの戦闘中に例のライガーが乱入してきたそうだが、そっちはどうなった?」

 

 「止めを刺し損ねたけど、瀕死の状態で、死ぬのは時間の問題ってことかしら。」

 

 「ふ、なら丁度いい。あのライガーはその内始末する予定だったから、先に仕事が終わって助かる。」

 

 「その影響もあってか、ジェノスピノもすっかりあの子に従っているらしいわよ。Z-Oバイザーの制御が意味をなさないかのようにね。」

 

 「通常のゾイドはZ-Oバイザーを取り付ければ、簡単にその制御に従う。意志の強いゾイドは例外だが……奴にはゾイド因子を持った右腕がある。

 奴は右腕を通じて、ゾイドとコミュニケートを取り、敢えてゾイドに意志を持たせた状態で服従させる、それが奴の能力だからな。例え、Z-Oバイザーを取り付けたゾイドでもな! かつてのファングタイガー改がそうだったように。」

 

 「本来なら、ユウトにもそれが備わっているけど……」

 

 「ユウトはまだ未覚醒だ。今はジェノスピノに乗っているセードの方が順調だが、何としてもユウトにはセード以上の力を持つ者に覚醒させなければならない。我々の計画のためにな!」

 

 「そのユウトだけど、先程ランドが端末の反応があったからって、メルビルのスナイプテラと共にハンターウルフ改で出撃したらしいけど……」

 

 「端末を回収してくれるのはありがたいが、端末をランドのためだけの研究材料にされるのは困る。 あれは本来、我々が持つものだからな!」

 

 「私が連中についていって、端末を回収しようかしら?」

 

 「そうだな。いくら私に従っているとはいえ、ランドに好き勝手やらせるわけにはいかないからな。」

 

 「それはそうと、ギレルが左遷されたコリンズのいる収監施設に行ったそうだけど、どうする?」

 

 「そっちはこちらに任せろ! 奴には私がやった方がいいからな。」

 

 「もしかして敢えて敵に塩を送るというつもり?」

 

 「結果的にはそうなるが、ま、ギレルごときが動いたところで、セードの乗るジェノスピノを止められるとは思えんがな!

 最も計画の障害にならないため、万が一のことを考えて、スピーゲルも共和国軍妨害のために出撃させた。」

 

 「スピーゲル……? 最近昇進したっていう……」

 

 「そうだ! 同時にガトリングフォックスの失敗の経験を生かして新たに開発された新型ゾイドを与えて、その実地テストも兼ねて行かせたのでな。」

 

 「手は緩めないつもりなのね。」

 

 「そうでもしないと、計画に支障が出るからな。」

 

 「では、私はランドの監視のために出るわ!」

 

 「ああ、だが、くれぐれも悟られるな。」

 

 「私もそう甘くないからね。」

 

 部屋を退出したラスト大佐は耐Bスーツ無しで、黒いスナイプテラに搭乗し、プライド摂政の別荘から出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 帝国の収監施設、ギレル中尉は左遷されたコリンズ准将の面会を求めたが、見張りの兵士に

 

 「会わせられないとはどういうことだ!? コリンズ准将と面会するだけだ。」

 

 「これは規則です! いくらギレル中尉と言えども、お通しすることは出来ません。お帰り願います。」

 

 「それでも入ると言ったら?」

 

 「規則違反で中尉を捕らえます!」

 

 「くっ、」

 

 それを聞いて渋々離れるギレル中尉、そこにバスキア少尉とバスキア准尉が現れ、

 

 「ギレル中尉、今回のコリンズ准将左遷とジェノスピノのプロジェクトには私たちも納得出来ません! 絶対にシーガルらの陰謀に間違いありません! ここは軍上層部に抗議すべきかと……」

 

 「だが、その確証も無しに軍上層部に伝えても効果はない。下手すれば我々もコリンズ准将の二の舞になりかねない。」

 

 「だからって、このまま黙って見ていろというのですか!」

 

 「そのつもりはない。だが、何としてもあの無能な上官共の暴走を何としても阻止しなくては……」

 

 「その件なら、私も協力する。」

 

 ギレル中尉とバスキア兄妹の前に現れたのはプライド摂政だった。

 

 「こ、これはプライド閣下!」

 

 「今回の件は紛れもなく、私の命令を無視したシーガルらの反乱だ。コリンズ准将の左遷は全てあの男の策略だからな!」

 

 「しかし、何故閣下はシーガルらを止めなかったのですか?」

 

 「どうやら、奴はコリンズだけでなく、私も左遷させようとし、私の私兵であるセードをたぶらかし、今回の反乱に至り、共和国首都制圧の際に追い落とすつもりで、現在奴は私すらも特定出来ない場所に逃げ込んだようだ。」

 

 「何て奴だ! やはり奴に帝国軍を任せるわけにはいかない!」

 

 「私は今すぐ帝国議会に行き、ことの次第を伝える。君たちはシーガルらに対する対策を任せる。」

 

 「了解しました!」

 

 「では……」

 

 プライド摂政がその場を去った後、バスキア少尉はギレル中尉に、

 

 「ギレル中尉。どういたしましょう? シーガルらの対策といっても、我々だけでは……」

 

 「この際、背に腹はかえられないな。 ディアス中佐に会いに行く。」

 

 「共和国と手を組むのですか?」

 

 「これは帝国の未来のためなのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 共和国の野営基地、そこで、サリーとアイセルはライガーの修復を行い、レオはモザイクの戦いの影響で、ライガーを傷付けたのは自分のせいだと思い込み、体躯座りで落ち込んでいた。

 サリーはペンダントを石化したライガーの身体にかざし、ペンダントが僅かに発光した。

 

 「どう、ライガーの状態は?」

 

 「かすかですが、ペンダントから鼓動のようなものを感じます、ライガーは生きています!

 ただ、かすかな反応のため、今にも消えてしまいそうなくらいに弱いものです……」

 

 「何とかして、ライガーを助けなくちゃ! サリー、私にも手伝わせて!」

 

 「はいっ! ありがとうございます。」

 

 

 

 ライガーを修復するサリーとアイセル、落ち込むレオを見たバーンとバズは、

 

 「レオ、相当落ち込んでいるようだな。」

 

 「そりゃそうだ! ようやく手に入れた相棒があんだけボロボロになっちまったんだ。ショックも大きいだろう。 こんなとき、ボーマン博士がいたらなあ……」

 

 「ボーマン博士?」

 

 「何だ、知らないのか? ボーマン博士は地球のZiフォーミング計画の中心人物で、第一世代の人だ。」

 

 「第一世代……そういえば、フォックスのバイザーを外してくれた人って、確か第一世代だった気がするが……」

 

 「お、おい、待て! それってボーマン博士じゃないのか!?」

 

 「いや、名前は聞かなかったから、ボーマン博士かどうかは保証は出来ないが……確か、孫娘とか、端末や船の反乱がどうのこうとか言っていたな。」

 

 「おい、それ、ボーマン博士に間違いないじゃねぇか!! それで、その人は何処に行った?」

 

 「いや、わからねぇ。あのまま森の中に進んでいってて、何処に行ったかすらわからん。」

 

 「何だよ! せっかく博士の重要な手掛かりが見付かったというのに!」

 

 「しょうがねぇだろ! お前らにそんな事情があるなんて知らなかったし、それにあの時、まだ仲間じゃなかっただろ!」

 

 「まあ、そりゃそうだけど……結局、骨折り損のくたびれもうけか。」

 

 「そういえば、ディアス中佐たちはどうしたんだ?」

 

 「もう行っちゃった! 何でもジェノスピノを食い止めるための作戦を立てるためだって。」

 

 

 ライガーの身体の石化を取り除く作業をする中、サリーは落ち込んだレオを見て、

 

 「絶対に助ける。今まではレオとライガーばかりが戦って、私は何も出来ず、レオに守られてばっかりだったけど、今度は私がレオとライガーを救わなきゃ!」

 

 ライガーを死なせないためにサリーは力一杯作業に取り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディアス中佐とツガミ大尉が指揮する共和国軍野営基地。 そこに帝国軍のスナイプテラと2体のクワーガが基地に接近し、警報が鳴り響いた。

 警報で接近してきたスナイプテラの姿を映像で見、映像を見たディアス中佐はその機体がギレル機であると認めた。

 ディアス中佐は接近したスナイプテラと2体のクワーガへの攻撃のために迎撃行動に入ろうとした部下を制する。

 直後、スナイプテラのスピーカーから声敷地内への着陸の許可を求めるギレルの声が響く。

 

 「共和国軍、こちらは帝国軍のギレル中尉だ。着陸許可を求める。」

 

 ギレル中尉の言葉に疑問を抱くツガミ大尉は、

 

 「目的は何でしょう。もし、帝国軍が言う造反組の一味だとしたら……」

 

 「奴に攻撃の意思があれば我々はとっくに全滅している。着陸の場所を指示してやれ。」

 

 「はっ!」

 

 

 

 

 

 個室で対峙するギレル中尉とディアス中佐、

 

 「ディアス中佐。あなたに話がある。」

 

 「話を聞こう。」

 

 「単刀直入にいう。コリンズ准将の汚名をあなたに晴らしてもらいたい。」

 

 「どういう意味だ?」

 

 「コリンズ准将はジェノスピノの完成を前にして左遷された。」

 

 「左遷? ではジェノスピノを指揮しているのは……」

 

 「シーガル准将だ。コリンズ准将を妬むシーガルがジェノスピノの指揮権を奪った。謀反という汚名だけをコリンズ准将に残して。

 だが、コリンズ准将は決して共和国との全面戦争を望んでいたわけではない。」

 

 「コリンズ准将の名声と人柄は、私も知っている。だから帝国の猿芝居には我々も気づいてはいたが……ただ、確証はつかめなかった。ところで、なぜ共和国軍人である私に?」

 

 「あなたは俺が認める数少ない軍人の一人だからだ。」

 

 「それは光栄だな。」

 

 「本来なら、コリンズ准将の名を受け、ザナドゥリアス少尉がジェノスピノを操縦するはずだった。

 ライダーの座をあのバーサーカーに奪われたのも動機の一つだが、何より俺の恩人であるコリンズ准将を冒涜したことは絶対に許せん!」

 

 「ザナドゥリアス少尉?」

 

 「プライド閣下直属にして、ハンターウルフ改のライダーだ。」

 

 「ザナドゥリアス……それがあのハンターウルフ改のライダーの名前なのか。

 私はてっきり、その人物がジェノスピノのライダーかと思っていたが……」

 

 「彼は帝国で随一のエリートにして、人情を重んじる男だ。彼がライダーだったら、こんなことはしないはずだ!」

 

 「なるほど、確かにハンターウルフ改には、我々共和国軍もかなり痛い目に逢ってはいるが、ファングタイガー改程の悪名はない。ということは、ジェノスピノのライダーは……」

 

 「セードだ。」

 

 「やはり、あいつだったのか。」

 

 「奴はプライド閣下の私兵でありながら、勝手な行動を取り、その余りに好戦的な性格から、帝国内でもバーサーカーと呼ばれている。」

 

 「あんな奴にジェノスピノを渡してしまったら、共和国どころか、我が帝国すらも崩壊してしまう。」

 

 「君は帝国軍を裏切るつもりか?」

 

 「まさか。俺は帝国に忠誠を誓った軍人だ。ジェノスピノをできれば俺の手で奪い返したところだが、俺は帝国を裏切るわけにはいかない。

 コリンズ准将の遺志を継ぐためにも……だからこうしてあなたに……」

 

 「うむ、話はわかった。だが何にせよ、ジェノスピノの進撃を食い止めることが大前提だ。かつて地球の1/3を壊滅したと言われているジェノスピノに、何か弱点はあるのか?」

 

 「生憎、ジェノスピノに弱点はない。だが……」

 

 「だが?」

 

 「ジェノスピノを乗りこなすには優れた身体能力と高度な操縦テクニック、そして、通常の人間にはない強靭な精神力を必要とする。その上ライダーへの負担は通常のゾイドの比ではない。

 だが、奴はザナドゥリアス少尉同様、耐Bスーツ無しで、ゾイドを乗りこなせる程の者で、その条件を全てクリアしている。」

 

 「つまり、打つ手無しということか?」

 

 「さっきも言ったが、奴はバーサーカーと呼ばれる程の好戦的な男だ。僅かな賭けだが、唯一のウィークポイントは……」

 

 「奴の性格ということか……」

 

 「奴に戦場を提供すれば、奴も誘いに乗っかるはずだ。」

 

 「そのための策があると?」

 

 「俺のスナイプテラと部下のバスキア兄妹がいれば、僅かだが、勝機はある。」

 

 「君の部下とスナイプテラを使えと?」

 

 「とはいえ、下手に動けば、私とバスキア兄妹が帝国の反逆者にされてしまう。だが、プライド閣下がシーガルらの反逆を帝国議会に伝えてくれる。

 その後に私とバスキア兄妹が帝国の反逆者となったシーガルらの行動阻止のために君の指揮下に入り、ジェノスピノの誘導に入る。」

 

 「仮定の話だが、もしジェノスピノのライダーがザナドゥリアス少尉だったら?」

 

 「ゼロだ! 何せ、彼ほど優秀な者はいない。」

 

 「フッ。はっきり言いやがる。」

 

 

 

 

 

 

 

 夜の中、セードは途中の廃れた街にジェノスピノを止め、コクピットの映像のルートと時計を見、

 

 「共和国首都まで、後11時間か……つまり、明日でいよいよネオヘリックに着くということだ。少し休むか。」

 

 その時、セードの右腕が再び発光した。

 

 「ん? 何故、そのまま行かずに休むかって? ふっ、わかってないな。 共和国の連中に少しだけ絶望を長引かせるんだよ!

 簡単に終わっちまったら、詰まんないだろ? それにネオヘリックに行けば、流石の連中も総力戦で俺たちを迎え撃つはずだ。これはそのための力に備えるための休息だ。

 ま、いくら時間を与えたところで、共和国の連中が俺たちを倒せる手立てがあるとは到底思えんし、精々無駄なあがきをさせて、俺たちの楽しみを長引かせてくれりゃ、それでいい。

 それにしても、共和国を潰してしまったら、もう敵はいなくなって、戦場も無くなっちまうが、まあ、暇だったら、この際、帝国も潰してやるか。」

 

 そう言うと、セードは静かに睡眠に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国軍のある基地、深い地下からリフトアップしてきた黒いヒョウ型のゾイドが現れた。帝国軍がガトリングフォックスに代わって新たに開発、復元されたドライパンサーだった。

 そのゾイドにプライド摂政の命を受けたスピーゲル中佐が搭乗した。

 

 「耐Bスーツ正常に作動。ドライパンサー発進!」

 

 ドライパンサーはカタパルトで勢いよく発進し、漆黒の闇の中を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 共和国野営基地、アイセルは少し休憩するが、サリーは手を緩めず、作業を続けた。

 

 「サリー、ライガーを助けたい気持ちはわかるけど、そんなに無理をしたら、身体によくないわ。」

 

 「いいえ、大丈夫です! いつも私を守ってくれたライガーを救うためにもこれぐらいは大したことありません!」

 

 それを見たアイセルは、

 

 「思ったより、強い子ね。」

 

 サリーの強い意志に動かされ、アイセルは再び作業に取り掛かった。そんな中、脱力したレオは小言で、

 

 「やっぱり、ライガーの相棒はサリーが良かったのかな? サリーが相棒だったら、こんなことにならなかったし、こんな傷を負わせることもなかったし……」

 

 それを見たバーンは飲んでいた缶を握り潰し、レオの元に行き、

 

 「おいおい、どうした? 少年。 責任を自分に押し付けていながら、相棒の傷の手当ては女2人に任せるのか? だらしない奴だな。」

 

 「だってそうじゃないですか。 無理はしないってサリーと約束したのに結局無理をさせてしまってライガーをこんな目に遭わせたんです。これじゃ、父さんに顔向け出来ない。」

 

 それを聞いたバーンはイラつき、レオの胸ぐらを掴んだ。

 

 「ふざけるな! 死にかけの相棒を目の前にして、貴様は見殺しにするのか!!」

 

 それを見たサリーたちは慌てた。

 

 「ば、バーン。いくらなんでも、それは言い過ぎよ。」

 

 「どうなんだ!! 貴様はそれで良いのか!?」

 

 「うっ……」

 

 「お前とライガーの付き合いがどれくらいかは知ったこっちゃねぇが、フォックスはまだ三流の軍人で、ただ出世することしか能がなかったこの俺に自由に生きることを与えてくれた。

 もしフォックスがいなかったら、俺はただ出世欲のためにゾイドを道具扱いにして、帝国軍にいたかもしれない。

 だが、そんな俺に新しい人生を与えてくれたのはフォックスだった。 フォックスは俺にとって身体の一部、むしろ俺と一心同体と言ってもいい!

 もし俺がお前の立場だったら、例え、フォックスが死にかけだろうと、どんな手を使っても助けてやる! この俺自身の存在も無くなっちまうからな!」

 

 「バーン……」

 

 その時、サリーのペンダントが発光し、サリーはライガーがペンダントの力で紅蓮ワイルドライガーからビーストライガーに進化した時のことを思い出した。

 

 「レオ! ライガーが助かる方法があります! 私に力を貸して!!」

 

 それを聞いたレオはサリーとバーンの真剣な表情で腹を括ったかのようにそれまでの脱力感が無くなったように立ち上がり、

 

 「わかった。サリー手伝うよ。」

 

 「レオ……」

 

 サリーは安心したように笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 共和国軍野営基地の周囲でツガミ大尉はステゴゼーゲ改に乗り、ラプトリア隊を率いて周囲の警戒に回っていた。

 

 「今夜は異常ないようだな。よし、全軍基地に戻るぞ!」

 

 「はっ!」

 

 その時、ラプトリア隊が何者かの砲撃を受けて次々と倒れた。

 

 「おい、どうした? 何だ! 何が起きているんだ!?」

 

 「サイレンサーか! 敵だ!! 分散しろ!」

 

 森にいる黒い影はラプトリア隊だけでなく、ステゴゼーゲ改にも砲撃を加えた。

 

 「くっ、敵は一体何処から攻撃してきたのだ?」

 

 「ふっ、流石の奴でも、このドライパンサーの位置は正確には掴めないようだな。」

 

 スピーゲル中佐は不敵な笑みを浮かべ、ドライパンサーは闇夜に紛れて、ステゴゼーゲ改に突進した。

 

 「ぐっ! くそ、一体誰だ?」

 

 その時、目の前にドライパンサーが現れた。それを見たツガミ大尉は、

 

 「Z-Oバイザーなら、帝国軍のゾイドに間違いないが、あれは初めて見るゾイドだ!」

 

 「久し振りだな! ツガミ大尉。」

 

 「その声は、ビクター・スピーゲル大尉か!?」

 

 「いや、違う! 今はビクター・スピーゲル中佐。そしてこいつは裏切ったガトリングフォックスに代わって新たに開発された俺の新しいゾイド、ドライパンサーだ!」

 

 「昇進したのか! しかも新型ゾイドだと!? 前はキャノンブルに乗っていたのに!」

 

 「お前のステゴゼーゲ改に俺のキャノンブルが破壊された後、更に過酷な訓練を受けて、より高みへと昇り、今の地位を経て、この新型ゾイドを手に入れたのだ。」

 

 「ということは、俺へのリベンジということか。」

 

 「それもあるが、ジェノスピノの進攻を邪魔されると色々と面倒なのでな!」

 

 「ということは貴様も帝国の反乱分子か!?」

 

 「さあな。だが、お前が相手なら、こいつの実力を試せるいいチャンスだ。 制御トリガー解除! 兵器 解放! マシンブラストー!! ドライスラッシュ!」

 

 「くっ!」

 

 ステゴゼーゲ改はマシンブラストしたドライパンサーの攻撃を避けようとするが、そのスピードに付いていけず、直撃してしまう。

 

 「何て速さだ! あの成りでこれだけの機動力を持つとは……!」

 

 「どうした? その程度か。」

 

 ドライパンサーは更に3連サイレントガンでステゴゼーゲ改に砲撃した。

 

 「ぐっ! どうやら、こいつは本気でかからないと不味いようだ。 ステゴゼーゲ、 進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 「そうこなくちゃ、面白くない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちは基地にある物全てかき集めて装置を組み立て、その装置と接続している幾つかのコードをライガーの身体に張り付けた。コードが接続している装置にサリーはペンダントを差し込んだ。

 

 「ライガー、お願い生き返って!」

 

 その時、シーザーの身体が発光し、石化したシーザーの身体がみるみるうちに姿を変えていく。それを見たレオは驚愕し、

 

 「お、お前は!!」

 

 To be continued




 次回予告

 サリーのペンダントの力で、不完全ながらも復活するライガー、それを喜ぶサリーたちだったが、レオは共和国を壊滅させようとするジェノスピノを止めるためにライガーと共にもっと強くなりたいと願う。
 だが、その時、前回の基地での戦闘の屈辱を晴らすべく、アルドリッジの乗るファングタイガー改がレオとライガーに襲いかかってくる。タイガー改に苦戦する中、再びライガーに変化が起こる。

 次回「引キ出セ! 更ナル本能」

 走り抜け、ライガー!!

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