ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーが新たな姿を得て進化したライジングライガーの力によって強敵セードとジェノスピノを打ち破り、新たな仲間を加え、再び地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第15話「強襲、ドライパンサー」

 共和国空軍基地、そこで指揮しているツガミ大尉はかつてのライジングライガーとジェノスピノの戦場跡であるスチールエリアで共和国軍部隊がジェノスピノが落下した海中を捜索している映像を見、スチールエリアにいる捜索隊と通信を開いた。

 

 「どうだ、状況は?」

 

 「駄目です! 残骸1つ見当たりません。」

 

 「時間はいくら掛かってもいい。 見失わない内に捜索せよ!」

 

 「了解しました!」

 

 そこにディアス中佐が入り、

 

 「落ち着かない様子だな。」

 

 「当たり前です! いくら、レオたちの力で倒したとはいえ、あのジェノスピノがあれでくたばるとは思えません。」

 

 「しかし、ジェノソーザーは破壊され、そのまま深海に沈んでいったのなら、いくら生きていても再起は不可能では?」

 

 「甘いですね。中佐! ギレル中尉から話を聞いたんですが、ジェノスピノは硫酸海の深い海底から発掘され、しかもその化石には一切の損傷が無かったそうです。

 それにジェノスピノのことを調べていく内にどうやら、ゾイドクライシスではジェノスピノ以外にも世界の3分の1以上を壊滅させたゾイドの存在の噂もあるそうです!」

 

 「しかし、あくまで仮定では……」

 

 「だからこそ、警戒が必要なんです! ジェノスピノ騒動の張本人であるシーガル元准将は極刑にされ、アルドリッジ元少佐はファングタイガー改を奪われて左遷され、今はクレストウッド大統領とフィオナ皇帝との間で、停戦協定が結ばれてはいますが、帝国がまた戦争を起こすとは限りません!」

 

 「まさか、ギャレット大将から与えられた任務とは……」

 

 「そうです! 新型ゾイドの復元と開発です。実はジェノスピノの捜索と同時にこの地域での発掘作業を行ったところ、帝国軍すら見付からなかった新型のゾイドの化石が発掘されたんです!」

 

 「その化石とは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオヘリックの北方に位置する街でレオたちは休息を取っていた。バーンは端末のことを訪ね、

 

 「で、その端末ってのはどうやって探すんだ?」

 

 「サリーのペンダントでその在りかを調べているが、正確な場所がわからないから、今のところ行き当たりばっかりってことかな。

 でも、俺たちは運がいいから、これまで3つも端末を再起動させたんだぜ!」

 

 「でも、その運もいつまで続くかわかんないぜ。 次はどうするんだ?」

 

 「それは、あのちょっと怖い共和国の姉さんが今、サリーのペンダントで調べているから大丈夫さ!」

 

 「どうだかね。」

 

 バーンが見るとサリーとロックバーグ中尉はペンダントが出す地図のホログラムを調べて次の端末の居場所を探っていた。

 

 「ふ~ん、なるほどね。」

 

 「場所わかるんですか?」

 

 「情報が少ないから、何とも言えないけど、大体の位置はわかるわ。後は正確な位置だけね。

 ただ、問題は端末のある場所が帝国領と禁制地区に多いのがちょっと厄介ね。今は帝国と停戦協定を結んでいるとはいえ、帝国軍が私たちを妨害しないとは考えられないし……」

 

 「禁制地区って何ですか?」

 

 「それは……」

 

 「お願いです! もう一度入隊させてください!!」

 

 「何度言っても駄目だ! 君じゃ、軍人は勤まらん。」

 

 その時、共和国軍兵士に何度も志願する1人の青年がいた。青年は何度も兵士に志願したが、尽く断れている。それを見たレオたちは、

 

 「何だ? あいつは。」

 

 「軍の志願者かしら?」

 

 「何度いっても駄目だ。諦めるんだな。」

 

 「そんな~。」

 

 その青年が気になったレオはその青年の元に駆け寄り、

 

 「どうしたんですか?」

 

 「いや、もう一度空軍に入隊希望をしたんだが、何度も断られて……」

 

 「もしかして一度軍に入ったんですか?」

 

 「実はそうなんだが、何度も失敗続きで、教官にかなり怒られ、終いには、もうお前に無理だとか言わされて、結局止めたんだが、どうしても諦めきれなくて……」

 

 「なるほど、軍に入ったけど、軍の訓練についていけず、一度止めたってことね。 ところで、あなたどうして軍に入ったの? 軍人になりたいような雰囲気は感じられないけど、何か他に別の目的があるとか……」

 

 「実はそうなんだ。俺、世界一の飛行機乗りになるために空軍に入ろうと思ったんだ。」

 

 

 「俺はレオ、レオ・コンラッド!」

 

 「俺はジェイク、ジェイク・ラモン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 共和国空軍基地で、ツガミ大尉はディアス中佐を基地の近くにある発掘施設に案内した。そこにはクワーガに似た化石が大量に発掘された。

 

 「この化石がどうかしたのか?」

 

 「気付きませんか? この化石、一見クワーガの化石に酷似していますが、実は綿密な調査をした結果、クワーガの亜種だということが判明しました! それも通常のクワーガを上回る性能を持つとのことです。」

 

 「通常のクワーガを上回る亜種だと……」

 

 「調査によると、この亜種には樹液を体内で結晶化させた未知なる金属、アンバー素材を生み出す能力を持ち、そのアンバー素材には破損してもものの数分で再生する自己修復能力が備わっているとのこと。そして、我々はこの亜種をクワガノスと名付けました。」

 

 「まだこんなゾイドがいたとは……」

 

 「驚くのはまだ早いです。実はこの基地の近くにある内陸部の峡谷地帯にある洞窟にも新種のゾイドを発掘しました。」

 

 「何!?」

 

 ツガミ大尉が更に案内すると、そこにはギルラプターに似た未知のゾイドが化石だった。

 

 「これは?」

 

 「クワガノスと共につい最近発掘された化石です。形状はギルラプターに酷似していますが、足の爪や両前足の形状が全く異なり、ギルラプターから分岐した別種のゾイドの化石だということが判明しました。」

 

 「ギルラプターから分岐したゾイド……」

 

 「ディアス中佐は始祖鳥というのをご存知ですか?」

 

 「名前だけなら……」

 

 「ゾイドクライシス後に残った地球の文献によると、一億年前、小型の獣脚類から進化した鳥類の始祖ともいえる生物で、この化石もそれと同様にゾイドクライシス後の環境に適応するために独自の進化を遂げた飛行ゾイドらしいです。」

 

 「新たな飛行ゾイド……」

 

 「本来なら、このゾイドのライダーは、以前のスチールエリア戦でギレル中尉の乗っていたスナイプテラに乗ったディアス中佐にして欲しいとギャレット大将から要請しておりますが……」

 

 「それは無理だな。あの時、ジェノスピノの侵攻を止めるために一時、スナイプテラに乗ったが、やはり私には飛行ゾイドは向かない。」

 

 「そう言うと思いましたよ。実はこれから復元されたばかりのクワガノス3体で演習を行い、その内どちらかの成績が良かったら、そのライダーを新型飛行ゾイドのライダーに指名しようとしているのです。」

 

 「なるほど、それはいいな。」

 

 「良ければ、ディアス中佐もどうですか?」

 

 「そうだな。私もその演習を見させて貰おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティにあるプライド摂政の別荘、プライド摂政に呼ばれたスピーゲル中佐はプライド摂政のいる個室に入った。

 

 「只今、到着致しました。元帥閣下。」

 

 「よく来てくれた。」

 

 「それで、私に何の御用でしょうか?」

 

 「実は共和国軍が我が帝国と停戦協定を結んでいるにも関わらず、新型の飛行ゾイドを開発しているという情報が入った。しかもその上、そのゾイドで軍事演習も行っているそうだ。

 これは停戦協定に違反した我が帝国への宣戦布告だ。直ちにその基地を破壊せよ!」

 

 「はっ!」

 

 命令を受けたスピーゲル中佐が部屋を退出し、

 

 「今の命令どうせ建前でしょう。」

 

 「当然だ! 私の狙いはあくまであの新型のライガー。お前が入手したシミュレーションだけではまだ物足りない。

 もっと戦闘情報を集め、そのゾイド因子と遺伝子を得なければ、我々の計画に役に立たんし、第一、共和国軍の新型の飛行ゾイド等、興味はない。それに帝国軍がスナイプテラを開発して以来、制空権はほとんど帝国軍が独占していたからな。

 少しでも共和国も新戦力を出してくれないと、両国の軍事バランスが均一にならないからな。」

 

 「問題はあの小僧が誘いに乗るかしら? あのパキケドスと裏切りのガトリングフォックスも加わったらしいし……」

 

 「心配はいらん。あの小僧は共和国と帝国の小競り合いに何かと手を突っ込んできたからな。

 それにスピーゲルはあのライガーと戦いたがっていた。後は奴がライオン種との戦闘情報を集められるかだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェイクはレオたちを自分の家まで案内した。そこには地球のそれぞれの時代にあった飛行機の模型が多くあった。それを見たレオは、

 

 「凄いこんなに飛行機がいっぱい!」

 

 「俺の趣味で作ったんだ。まあ、こう見えても全部模型だけどね。」

 

 興味津々に見るレオは浮遊する羽のようなものを見付けた。

 

 「これは?」

 

 「ああ、それはつい最近見付けたもので、確か……」

 

 「マグネッサーウィングね!」

 

 「え? サリー、知ってるの?」

 

 「ええ、マグネッサーウィングにはマグネッサーシステムは磁気により浮力を発生させるシステムが搭載されて、惑星Ziの飛行ゾイドはこのマグネッサーシステムのおかげで空を飛べるようになっているの!」

 

 「へぇ~、サリー、よく知っているね。」

 

 「お爺さんから聞いたの。」

 

 その時、サリーは一際大きい飛行機を見付け、

 

 「これは何ですか?」

 

 「それは20世紀に最初に飛行機を開発したライト兄弟っていう人たちが初めて作った飛行機をボクなりにアレンジして作ったんだ!」

 

 「へぇ~、地球で最初に作られた飛行機ってこんな形なんだ。」

 

 「素敵! 惑星Ziにもこんな飛行機見たことないわ。」

 

 「もしかして、これって、飛べるんですか?」

 

 「飛べるは飛べるんだけど、どうも幾つか不具合が生じちゃって、まあ、失敗作ってとこかな……」

 

 「おいおい、てことは一度も空飛んだことないってことじゃねぇか。」

 

 「そうだけど、地球では失敗は成功もとっていう諺があるように努力すれば、いつかはその夢が叶うから、だから、俺は諦めずに頑張っているんだ!」

 

 「ジェイク……」

 

 その時、外から騒音のような音がした。

 

 「何だ? この音は。」

 

 「もしかしたら、何かが通った音かも。」

 

 レオたちがジェイクの家から出ると、空に数機のクワガノスが飛行していた。

 

 「何だ? あのゾイド。クワーガか?」

 

 「似てるけど、少し違うわね。もしかしたら新型のゾイドかも。」

 

 「へぇ~、共和国軍の奴ら、今までスナイプテラを持つ帝国軍にいい目見ないように遂に新型ゾイド開発したのか、これは中々見物だな。」

 

 クワガノスを見たサリーは感動した表情をし、

 

 「綺麗。」

 

 「そうだね。」

 

 

 しかし、それを深い森の中で、スピーゲル中佐の乗るドライパンサーが見ていた。

 

 「ほぅ、あれが共和国軍の開発した新型の飛行ゾイドか。あれで我が帝国軍にどれだけ立ち向かえるのか知らんが、少し試してやるか。」

 

 ドライパンサーは飛行している3機のクワガノスに向かってサイレントガンを放った。 サイレントガンでウィングを撃ち込まれ、飛行が困難になる3機のクワガノス、

 

 「どうした!?」

 

 「わかりません! 突然ウィングが破壊されました!」

 

 「破壊されただと!? 整備は万全のはずだが、まさか、何者かの砲撃か?」

 

 不安定な動きをする3機のクワガノスを見たレオたちは、

 

 「おいおい、あのゾイドヤバイんじゃないか?」

 

 「確かにあの高度で落下するのはかなり危険ね。アイセル少佐! 直ぐにあのゾイドと兵士の救出に向かうわよ!」

 

 ロックバーグ中尉はパキケドスBRに乗って、その場に向かう中、

 

 「一応、階級は私の方が上なんだけど……」

 

 渋々ながら、アイセルもラプトリアでクワガノスの落下地点まで行った。その時、ライガーが何か感じ取ったかのように低く唸り、

 

 「どうした? ライガー。」

 

 ライガーは何かを睨み付けるように向こうを向いていた。それを見たレオは、

 

 「もしかしたら、さっきのゾイドの異変は誰かがやったのか! 俺、ライガーと一緒にちょっと見てきます!」

 

 レオはライガーに乗り込み、

 

 「お、おい、待て、レオ! たく、ホントしょうがない奴だな。」

 

 「一応、俺も行ってこようか?」

 

 「頼みますよ、バーンの旦那!」

 

 「すみません、バーンさん、私も一緒に連れていってくれませんか?」

 

 「それは別に構わんが……一体どうしたんだ?」

 

 「心配なんです。レオとライガーが……」

 

 「あれ、君、もしかしてレオのこと好きなのか?」

 

 「そういうことではないんですが……」

 

 「ま、動機はどうあれ、確かにレオとライガーに危険が及ばないとは限らないからな。いいぜ、俺と一緒にフォックスに乗りな。」

 

 

 

 

 

 

 森の中を突き進むライガー、ライガーは匂いを嗅いで辺りを見渡すが、気配がない。

 

 「おかしい。確か、ここのはずなんだが……」

 

 その時、茂みの中から突然砲撃され、ライガーは咄嗟の判断で回避した。

 

 「今のは……やっぱり誰かがやったんだ。」

 

 ライガーは砲撃した方向に向かおうとするが、背後からも砲撃がし、ライガーはその攻撃を受けてしまう。

 

 「何!? いつの間に後ろに!」

 

 影から砲撃したのはドライパンサーだった。

 

 「現れたな。ジェノスピノを倒した例のライガー、だが、俺のドライパンサーに気付かないのを見ると、やはり、ステルス性能を見破ることまでは出来ないようだな。」

 

 更に先回りしてサイレントガンで砲撃するドライパンサー、銃撃音がしないため、正確な位置を把握できないレオ、

 

 「くそ、一体何処から攻撃してきたんだ?」

 

 その時、ライガーが地面を嗅いだ。その動作を見たレオは、

 

 「ライガー……そうだったな。もう一度見せてくれ。 お前の本能を!」

 

 匂いを頼りに茂みに飛び込んだ時、影からドライパンサーが現れた。

 

 「あれは……あの時の新型ゾイドか!」

 

 「ほぅ、少しはやるようだな。」

 

 「もしかして、お前がさっきの共和国ゾイドを撃墜させたのか!?」

 

 「そうだ。共和国の新型飛行ゾイドを破壊するという摂政閣下の命を受けて、ここに来たのだが、まさか、ジェノスピノを倒したライガーがここに来たとはな! ジェノスピノを倒したその実力見させてもらうぞ!」

 

 再び茂みの中に隠れ、サイレントガンを撃ち込むドライパンサー、ライガーはさっきの砲撃で匂いを覚えたため、その砲ドライパンサーの位置がわかり、その砲撃を回避し、直ぐに隠れた場所に攻撃した。

 しかし、ドライパンサーはその攻撃を予測したかのようにその攻撃を回避する。

 

 「ふっ、思ったよりやるな。だが、このドライパンサーはステルスだけでなく、機動性も高いんでな!」

 

 スピーゲル中佐が得意気に言った後、ドライパンサーはサイレントガンを撃ちながら、シャドウクローでライガーに攻撃した。

 

 「くっ!」

 

 「これで終わりと思うなよ。 ドライパンサー、兵器 解放! マシンブラストー!! ドライスラッシュ!」

 

 マシンブラストを発動し、A-Zドライブレードを展開し、ライガーに突っ込むドライパンサー、ライガーは何とかそれを避けるが、ドライパンサーはその身のこなしで、続けて攻撃した。

 

 「うっ! 思ったよりかなり強い相手だ。」

 

 「どうした? 貴様の力はそんなものか!」

 

 サリーを乗せたフォックスはライガーの元に着き、そこではライガーがドライパンサーの攻撃に翻弄されていた。

 

 「レオ!」

 

 「あいつはあの時の新型ゾイドか!」

 

 「バーンさん、レオとライガーを助けて。」

 

 「おう! あのやろうにあの時の借りを返してやる。」

 

 フォックスがドライパンサーに攻撃しようとしたその時、茂みから何体かの帝国仕様の黒いラプトールが攻撃してきた。

 

 「ちっ、新型ゾイド一体だけじゃなかったのか!」

 

 帝国仕様のラプトールはその身のこなしと追加されたステルス性能でフォックスに襲いかかってきた。

 

 「どうやら、帝国軍も戦力を増強してきやがったな!」

 

 墜落した3体のクワガノスの元に向かったロックバーグ中尉とアイセルはライダーの救出に入った。

 

 「大丈夫?」

 

 「ああ、心配ない。」

 

 「リズ、そっちは?」

 

 「大丈夫よ。クワガタ種ゾイドのの飛行能力で被害は最小限に抑えられたから、大したことはない。」

 

 「このまま基地まで運ぶわよ! アイセル少佐、手伝って!」

 

 ジェイクも後を追って3体のクワガノスを見つける。

 

 「あれが飛行ゾイド……あれに乗ることが出来れば……」

 

 その時、爆音がし、ジェイクがふと向こうを見ると、ライガーはドライパンサーに苦戦していた。レオとライガーを助けたくともゾイドがいないため、助けにいくことが出来ない。

 

 「レオが危ない……」

 

 少し悩んだが、辛うじて飛行可能な一体のクワガノスを見たジェイクは決心したような表情をし、そのクワガノスの元に向かった。

 

 「このゾイドはまだ動ける?」

 

 「一体は辛うじて飛行は出来るが、低空飛行しか出来ないし、残りの2体は飛行は出来なくなったが、歩くことは出来る。」

 

 「よし、なら、このまま歩いて基地まで行くわよ。」

 

 しかし、その時、一体のクワガノスが動き、そのままライガーの元に向かった。

 

 「な! 一体誰が!? (ライダーの兵士は全て救出した。今のクワガタ種ゾイドに誰も乗っていない、もしかして、自力で、または誰かが?)」

 

 

 

 

 

 

 「ライジングライガー、進化 解放! エヴォブラストー!! ライジングバーストブレイ……」

 

 エヴォブラストを発動し、ドライパンサーを攻撃するも、ドライパンサーはシャドウシールドで弾き、ライガーを吹っ飛ばした。

 

 「うわぁっ!」

 

 「確かにそのライガーの性能は高い。おそらく、俺のドライパンサーより遥かに上だ。 だが、戦闘経験は丸っきりの素人だ!

 俺はツガミ大尉のステゴゼーゲ改に敗れた後、あらゆる戦闘を経験し、中佐にまで登り詰めた。

 いくら、ゾイドの性能が高くとも、軍人でもない丸腰の民間人じゃ、話にならない。だが、帝国のゾイドに乗れば、更に性能は上がるかもしれないな。」

 

 それを聞いたレオは拳を握りしめ、

 

 「ふざけるな! ライガーは俺の相棒だ! 帝国軍の手には渡さない!!」

 

 「だったら、この俺を倒してみろ! ドライスラッシュ!!」

 

 ライガーは攻撃を避けようとするも、ドライパンサーの凄まじいスピードに付いていけず、諸に喰らってしまう。

 

 「うわぁっ!」

 

 「やはり、素人の民間人だとこの程度か……まあ、いい。フィニッシュを決めてやる。ドライスラッ……」

 

 「うわぁー!!」

 

 その時、横からクワガノスが攻撃し、ドライパンサーはそれを避けた。

 

 「何!? まだ、動けたのか! あのゾイド。」

 

 「あれは……」

 

 「レオ、大丈夫か!?」

 

 クワガノスのコクピットには耐Bスーツを着用したジェイクが乗っていた。

 

 「ジェイク、どうして?」

 

 「へへへ、お前だけ戦わせる訳にはいかないと思って。」

 

 「ジェイク……」

 

 「また、素人の民間人か。随分舐めた真似してくれるな。なら、貴様から始末してやる! ドライスラッシュ!!」

 

 「うおっ!」

 

 ドライパンサーがシャドウシールドでクワガノスを切り裂こうとするも、ギリギリで交わすクワガノス、しかし、ドライパンサーのスピードに翻弄され、交わすのが背一杯だった。

 

 「ジェイク! ワイルドブラストだ! ワイルドブラストを発動するんだ!」

 

 「む、無理だ。 俺はまだ三等兵までだったから、ワイルドブラストを発動させる訓練までは受けてはいない。だから、ワイルドブラストの発動の仕方まではわからないんだ。」

 

 「そんな……」

 

 「ふっ、身の程知らずとは正にこのこだな。まあ、いい。痛みを感じないくらいに一瞬で片をつけてやる。」

 

 ドライパンサーはサイレントガンを撃ち込み、その砲撃がクワガノスに命中し、遂に落下してしまう。

 

 「ジェイク! くそ、ライガー、早く助けるんだ!」

 

 ライガーは力を振り絞って立ち上がろうとするが、ドライパンサーの攻撃の影響で中々立ち上がれなかった。

 

 「これで終わりにしてやる。 ドライスラッシュ!!」

 

 ドライパンサーがクワガノスに迫り来た。

 

 「くそ、やっぱり、俺には無理なのか! 俺には飛行機乗りになることも、 ゾイドに乗ることも……」

 

 その時、突然、クワガノスの目が光り、その直後、ジェイクは何もしていない状態で、クワガノスは自力でエヴォブラストを発動した。

 

 「え?」

 

 「何!? ワイルドブラストを発動した! だが、今さら、遅い! このドライパンサーの攻撃からは逃れん!!」

 

 「何が起こったのか、わからないけど、とにかくやれってことだな。いくぞ、クワガノス! ええと……技はアンバージョー!」

 

 「ドライスラッシュ!!」

 

 ドライパンサーのシャドウシールドの刃がクワガノスを捕らえたその時、クワガノスは跳躍し、くるりと向きを変え、ドライパンサーの足を切り裂いた。

 

 「何!?」

 

 「スゲェ! やったぞ! あいつにダメージを喰らわせた!!」

 

 「それがどうした? たかが、一発喰らっただけで何も問題はない!」

 

 「今だ! いくぞ、ライガー!」

 

 「馬鹿め! 同じ攻撃が2度も食らうわけが……」

 

 しかし、避けようとするも、ドライパンサーは足を挫いてしまった。

 

 「なっ! まさか、さっきの攻撃で……」

 

 「ライジングバーストブレイク!!」

 

 ライガーの攻撃を避けきれず、ドライパンサーは片方のシャドウシールドを破壊された。

 

 「ぐっ! まさか、この俺のドライパンサーにダメージを負うとは……ん?」

 

 その時、ドライパンサーのコクピットの暗視スコープから多数のゾイド反応が出た。

 

 「ちっ、どうやら、共和国軍の連中が来てしまったようだな。配下のラプトールの反応も全て消えたし、これ以上戦闘を続けたら、不味いことになる。

 一時撤退だ。小僧! 今日のところは俺の負けにしてやる。だが、次はこうはいかんぞ!」

 

 そう言って、ドライパンサーはその場を去った。そこにラプトール隊を全滅させたフォックスとパキケドスBR、ラプトリアがついた。

 

 「レオ!」

 

 「サリー、どうしてここに?」

 

 「サリーがお前のことが心配で、俺とフォックスが連れていってやったのさ。」

 

 「そうだったのか。俺は大丈夫だよ! サリー。」

 

 ラプトリアから降りたアイセルとロックバーグ中尉はジェイクの元に駆け寄り、

 

 「全く、何てことをするの! こんなことしたら、あなた処罰されて当然よ!」

 

 「ご免なさい。つい……」

 

 「ついで許されることではないわ!」

 

 ジェイクがアイセルに叱られる中、ディアス中佐とツガミ大尉ののるトリケラドゴス改とステゴゼーゲ改率いる共和国部隊が到着した。

 

 「そうか……また君に助けられるとはね。感謝するよ。レオ。」

 

 「俺は大したことはありません。」

 

 「ところで、君、ジェイクと言ったね?」

 

 「は、はい!」

 

 「まさか、まだ試運転のクワガノスをワイルドブラストさせるとは思わなかった。どうだろう? もう一度共和国軍に入隊してくれないか?」

 

 「え?」

 

 「ほ、本気ですか!? 中佐!」

 

 「どうやら、彼には未知の力があるかもしれない。上手く行けば、まだ復元されていない新型飛行ゾイドのライダーになれるかもしれない。」

 

 「し、しかし、どうですかね?」

 

 「中佐、彼を再入隊させるには細心の注意を払わなければなりません。彼は少々デリケートなので。」

 

 ロックバーグ中尉の忠告に慌てたジェイクは、

 

 「ち、ちょっと俺はそんなんじゃ……」

 

 「まあ、いいじゃねぇか! これでやっと飛行機乗りの第一歩になったぞ!」

 

 「おめでとう。ジェイクさん。」

 

 「応援しているよ、ジェイク!」

 

 「レオ……よし、俺やるよ!」

 

 バズやサリー、レオの言葉を聞いてやる気を出したジェイク、しかし、そこから少し離れた場所でユウトがその様子を見ていた。

 

 「ライジングライガー……スピーゲル中佐のドライパンサーまで倒したのか。だけど、お前を倒すのはこの僕だ。この僕の手で!」

 

 ユウトの背後には巨大なランスを装備したハンターウルフ改の姿があり、その巨大ランスの先の槍が次の戦いを暗示するかのように光った。

 

 To be continued




 次回予告

 サリーのペンダントを頼りにゾイドクライシスによって廃れた市街地に辿り着くレオたち、そこには帝国軍、共和国軍が立入をタブーとしている禁制地区で、ゾイドクライシス時に何が起こったかを記す資料等が多く残っていた。
 だが、その時、ランド博士の一向もその地に訪れ、メルビル少尉の乗るギルラプター改と更に強化されたユウトのハンターウルフ改が再びレオとライガーに襲いかかる。そんな中、レオとはぐれたサリーはあるものを見つける。


 次回「導ク光 禁断ノ地」

 走り抜け、ライガー!!

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