ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・アベラス

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーが新たな姿を得て進化したライジングライガーの力によって強敵セードとジェノスピノを打ち破り、新たな仲間を加え、再び地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第18話「少年ノ 思い」

 ユウトとランド博士はハンターウルフ改に乗り込み、キャタルガ隊を率いて再びゴールデンゲートブリッジ付近の禁制地区に赴き、謎の宇宙船の残骸があった場所に着いた。そこには宇宙船の姿はなく、その跡には巨大なファンがあった。それを見たランド博士は驚きを隠せないでいた。

 

 「こ、これは……」

 

 「博士、これは一体?」

 

 「直ぐにこいつを回収する。 準備にかかれ!」

 

 「わかりました。」

 

 しかし、そこにジャミンガが現れ、ユウトはそれに戸惑った。

 

 「うっ……ジャ……ミンガ……」

 

 ユウトは後退りし、ジャミンガがランド博士とユウトに襲いかかろうとしたその時、ランド博士が右腕をかざし、ランド博士の右腕がオレンジ色に輝いた。

 その右腕の力の影響か、ジャミンガは動きを止め、そのまま立ち去っていった。ジャミンガが立ち去った後、ランド博士は右腕を抑え、苦しんだ。

 

 「うっ……」

 

 「博士!」

 

 「心配するな。それより、あのファンを回収するぞ!」

 

 「はいっ!」

 

 ランド博士の指示を聞いたユウトはキャタルガ隊を呼び、ファンをキャタルガ隊に回収させた後、再びハンターウルフ改に乗ってネオゼネバスに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝都ネオゼネバスシティの移民船の王宮の庭園で、帝国皇帝フィオナは侍女のジーン・エレシーヌ・リネを連れ、ギレル中尉とバスキア兄妹を招待していた。

 

 「中尉。」

 

 「はいっ、 皇帝陛下。」

 

 「とても似合ってますよ。それ、」

 

 「は、はぁ……」

 

 「フフフフフ、一緒にお茶をいかがですか?」

 

 「いえ、自分の役目は陛下の御身を御守りすることです。」

 

 「お話を聞かせてください。」

 

 「話……」

 

 「私は外の世界を知りません。私はここで生まれ、ここで育ちました。王族社会のことしか知らないのです。」

 

 「それに何の御不満が……世の中は陛下が落胆するようなことばかりです。」

 

 フィオナはまるで外に出るかのようにギレル中尉の前を通り、スナイプテラを見詰めた。

 

 「赤き死神……中尉のことを聞き、興味を持ちました。」

 

 「それで、私を?」

 

 「ここから連れ出してくれとまでは言いません。けれど、冒険の夢くらい、見させてください。」

 

 2人の会話にバスキア准尉が、

 

 「陛下、かようなお話はお止めください! そんなことして、もし宰相閣下や摂政閣下にご迷惑を掛けたら、どうするのです!?」

 

 「自分も同じです! 陛下には帝国皇帝としての自覚を持って頂きたい。」

 

 「もうっ、 バスキア准尉も少尉も、冗談が通じないのですね。」

 

 「ここにおられましたか!」

 

 現れたのはハワード宰相だった。

 

 「ハワード宰相。」

 

 「ジーン! 皇帝陛下の侍女なら、もっと陛下をしっかりさせてください!」

 

 「申し訳ありません。ですが、陛下がどうしてもギレル中尉と会いたいと申してまして……」

 

 「全く! 陛下、会見はどうなされたのですか? これからプライド摂政と会う約束のはずでしたが……」

 

 「それが、摂政は私とは会わないと申していて、今、こうしています。」

 

 「なっ! 帝国摂政でありながら、皇帝陛下に顔すら会わせないだと!! なんて無礼な男だ! くそっ、先帝陛下は何故あのような男を摂政に!?」

 

 「それくらいにしてください。ハワード。私は確かにこの帝国の皇帝ではありますが、余り政治には不向きです。 それにプライドが摂政になってくれたおかげで、帝国もここまで発展したのですから。」

 

 「それが困るのです! いつまでもあの男に頼ってばかりいては! それにそのおかげで、帝国内では陛下よりもあの男を支持する者が多数いるのです!!

 それでは陛下の威厳が益々落ちてしまいます。 陛下には先帝陛下と同様に立派になってもらいませんと!」

 

 「い、いえ……そんな……」

 

 「ハワード宰相! その責任はこの私が取ります! この命に替えましても!!」

 

 「ギレル中尉、いくら、コリンズ中将の教え子だからって、まだ若い君が陛下の護衛は荷が重い!」

 

 「いえ、そんなことはありません! 私はコリンズ中将と共に帝国に忠義を誓った者。その者が陛下の護衛を務めることはこの上ない名誉のことです!! 必ず、宰相の御期待に添えます。」

 

 「その言葉、信用していいのだな?」

 

 「はいっ!」

 

 そう言うと、ハワード宰相はその場を去った。

 

 「ギレル中尉。」

 

 「はいっ!」

 

 「もしかして本当は私と一緒にいたいのですか?」

 

 それを聞いたギレル中尉は慌てて、

 

 「な、何を仰るのですか!? わ、私は軍人です!!」

 

 「ウフフ、顔が赤くなっていますよ。」

 

 「こ、これは……違います。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティの移民船の下にあるプライド摂政の別荘。

 

 「フィオナとの面会を拒否したって?」

 

 「ああ、そうだ。」

 

 「そんなことしていいのかしら? あの頑固な宰相が黙っていないわ。」

 

 「ふん、あんな世間知らずの小娘なぞ、会わせる顔等ない! 所詮は城にこもっているだけの只のお飾りの存在だ。」

 

 「過去の惑星Ziにも幼子を皇帝にしたことがあったけど、今度はあのじゃじゃ馬の小娘を皇帝にするとは……ホント呆れるわ。」

 

 「あんなものは皇帝の器ではない。皇帝とは本来圧倒的な力と絶対的なカリスマ性を持つ、そう、即ち、神に等しい存在がなるべき者がなる地位なのだからな。」

 

 「あたしたちがいなかったら、今頃共和国に吸収されていたでしょうね。 それより、ランドがまた禁制地区に入って、例のものを回収したらしいけど……」

 

 「それならそれでいい。あの一件であの船は消えた。これで奴があの船の秘密を知ることはないのだからな。暫くあれは奴に好きなようにする。」

 

 「では、このまま泳がすつもり?」

 

 「そうだ。暫くは我々が手を出す必要はない。ところで、ユウトは?」

 

 「ランドのいる研究所にいるけど。」 

 

 「そうか……奴にはもっと強くなってもらわなければな。奴こそが我々の計画の最終フェーズなのだからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禁制地区から巨大なファンを回収したランド博士とユウトはプライド摂政の別荘にある研究室に戻った。そんな2人の元にメルビルが迎えていた。

 

 「お父様! ユウト! 無事だったんですね。」

 

 「ああ、心配をかけたな。実はあの禁制地区から興味深いものを発見し、しかも調査をした結果、とんでもない代物だということが判明した。それをお前に見せてやりたいと思ってな。」

 

 「そんな凄いものが発見されたんですか!?」

 

 「ああ、そうだ! ユウト、お前もどうだ?」

 

 「僕は結構です。ここのところ、ずっと働きっぱなしですので、僕は一旦休息を取らせていただきます。」

 

 そう言うと、ユウトは部屋から退出した。それを見たメルビルは少し心配そうだった。

 

 「ユウト……」

 

 

 ユウトはプライド摂政の別荘の庭で少し休み、自身が植えた紫色のバラを見ていた。

 

 「これまで、僕は博士のためにどんな戦いにも耐えていた。でも、ジェノスピノには僕を乗せてくれなかった。それにあいつとの決着もまだついていない。僕はこのままてでいいのだろうか……」

 

 ユウトは過去のことを思い出していた。10年前、銀髪で形の整っていた美少年であったが、服装がみすぼらしく、靴もろくに履いていない彼は帝国、共和国どちらの領域におらず、そこが禁制地区なのか定かではないが、1人で廃墟になった旧市街地に暮らしていた。

 両親の顔も覚えておらず、そもそも何故、自分がここにいるのか、両親は生きているのか、死んでいるのか、そして自分は何処から来たのか、自分の本名は何なのかも知らなかった。

 そんな中でも幼い彼はずっと1人で旧市街地を転々としながら、生きようと必死に生活していた。誰も助けに来ず、誰の手も借りられず、ずっと1人で……

 そして、夜になれば、その暗闇が更に孤独さを増し、彼の恐怖を引き立てた。

 しかし、彼を恐怖に落とし入れたのは、闇だけではなかった。それはリジェネレーションキューブの不完全なZiホーミングによって現れ、人々を脅かしているゾイドならざる金属生命体ジャミンガだった。

 一般的にジャミンガはリジェネレーションキューブの端末の不正常な作動によって生まれたとされているが、そもそも何故そのような存在が生まれるのか、そもそも地球を再生させる程の強大な力を持ったリジェネレーションキューブの端末も開発者であるボーマン博士も全て把握しているわけではなく、未だ謎の多い物である。

 ジャミンガはまるで何か力を求めているのか、獲物を駆る猛獣のようにユウトに襲いかかってきた。

 ジャミンガは他のゾイドと違い、ゾンビのように敵味方関係なく、見境無しに人間を襲うのが普通であったが、どういうわけか、他の人間が旧市街地に来ても一切見向きもせず、ユウトにだけ襲いかかり、それが昼夜問わず続き、まだ幼い彼の恐怖を更に増幅させることになった。もちろんこのジャミンガの不可解な行動は彼自身も知らなかった。

 その生活が数ヵ月間続き、彼が街中で倒れると、ある人物が彼を拾い、ある場所に連れていかせた。その場所は親のいない身寄りのない子供たちを保護する孤児院だった。

 今まで誰も助けなかった中、初めて自分を助けてくれた人物が現れ、それまでの孤独生活から脱却するようになった孤児院での生活、だが、それもユウトの孤独さを更に増幅させるだけだった。

 数ヵ月間以上に渡る1人の生活、ジャミンガによる執拗な追跡等を何度も経験してきた影響か、誰にも声を掛けることが出来ず、また孤児院の子供たちもユウトの見た目に反して何か得体の知れない何かを感じ取って、彼との距離を完全に離していた。

 ここでも再び孤独が彼を襲う。子供たちが遊んでいる中、ユウトは1人、孤児院の端しっこに座っていた。

 

 「僕は一体何処から来たんだ? 僕は何のためにいるんだ?」

 

 しかし、そんな彼の元にある1人の少女が手を差しのべた。

 

 「どうしたの? こんなところにいて。」

 

 ユウトに声を掛けた少女はまだ幼いハンナ・メルビルだった。

 

 「お前には関係ないだろ。」

 

 「そんなことないよ。君、1人なんでしょ? だったら、私と遊ぼ。」

 

 「何で、お前がそこまで僕に構う?」

 

 「だって、君だけ一人ぼっちにするわけにはいかないじゃない。私はハンナ。 君は?」

 

 それを聞いたユウトは不思議と今までの孤独感から解放されるようにメルビルに距離を置こうとしなかった。

 

 「名前なんて無いよ。知らないから。」

 

 「そう……可愛そうに。じゃあ、私が代わりに名前をつけてあげる。ユウトって名前はどう?」

 

 「ユウト……いいよ。」

 

 「じゃあ、ユウト。私と一緒に遊ぼ!」

 

 メルビルに誘われたユウトは不思議と1人でいる殻を破り、自然にメルビルと打ち解けあった。今まで誰も助けてくれず、ただ1人で生きていた自分に初めて手を差しのべてくれたメルビルに特別な感情を抱くようになった。

 しかし、その数日後、その生活が一変する事態が起こった。孤児院に複数のジャミンガが襲いかかってきた。突然、襲いかかってきたジャミンガに子供たちは我先へと逃げた。

 しかし、1人逃げ遅れた子が倒れ、メルビルはその子を助けようと駆け寄る。

 

 「ハンナ!」

 

 ユウトはメルビルを助けようとするが、孤児院に入るまでに自身の恐怖の根源であったジャミンガを目の前にして、その場を動くことができない。

 ジャミンガは直ぐ側に来て、メルビルとその子は死を覚悟した。だが、ジャミンガは突然動きを止めた。

 メルビルは恐る恐るジャミンガに触れ、ジャミンガはメルビルに擦れよった。

 それを見た子供たちは驚きを隠せなかった。

 

 「どうなってんだ? 何で、ハンナには襲わないんだ?」

 

 その他のジャミンガもメルビルに近付こうとしたその時、ユウトの脳内にかつての市街地での逃亡生活が映った。それを思い出したユウトは混乱し、発狂した。

 

 「う、ウワァー!! 消えろ! 消えろ! 消えろー!! もう僕の前に現れるなー!!!!」

 

 それを聞いたジャミンガは突然びくつき、まるでユウトに怯えるかのように後退りし、すごすごと退散していった。その様子にメルビルを初め、他の子供たちもそれに驚き、怖がった。子供たちの目を見たユウトは再び孤独感を感じた。

 その後、メルビルは周囲の子供たちから遠ざけられ、それまで一緒にいた友達さえも彼女から離れた。

 

 「なあ、ハンナと一緒にいなくていいのか?」

 

 「別にいいだろ! あいつ、ジャミンガを従えるような奇妙な奴だからよ。」

 

 「でもよ! それより、もっとヤバい奴いるじゃねぇか。」

 

 陰口を言われながら、メルビルは1人本を読んでいた。だが、子供たちが最も距離を置き、恐怖していたのはメルビルではなく、ユウトだった。

 本来、他のゾイドと違い、感情や意思を持たないゾンビのような存在のジャミンガがユウトの発狂した声で、まるで恐怖を感じ取ったかのように引き下がらさせる程の力を持つユウトにはまるでこの世のものとは思えないような存在に見えていた。

 

 「知っているか? あいつ、狂ったような声を出して、ジャミンガを追い払ったんだって!」

 

 「しかも、ジャミンガが怖がったみたいだったそうだぜ!」

 

 「もしかしてあいつ、人間じゃないんじゃないか?」

 

 「きっとそうだぜ! だって、あいつ、俺たちと会っても全然、口聞かねぇしよ!」

 

 「でも、ハンナだけはあいつに構っているけど……」

 

 「あいつも変な能力持っているからな。似た者同士って奴だろ!」

 

 そんな陰口を言われる中、ユウトは孤児院の端で1人佇んでいた。

 

 「僕は一体誰なんだ? 僕は何故ここにいる?」

 

 しかし、メルビルだけは彼を構ってくれた。

 

 「どうしたの?」

 

 「お前には関係ないだろ。」

 

 「そんなことないよ。」

 

 「あっちいけ! 僕に構うとお前は益々他の奴から離れられるだろ! だから、僕なんてほっといて友達のとこにいけ。」

 

 「もう、いないわ。友達なんて……」

 

 悲しそうなメルビルの表情を見て、ユウトはメルビルから遠ざける他の子供たちの姿を見た。

 

 「ごめん、僕が来たから、こんなことに……」

 

 「ううん、あなたは悪くない。」

 

 それから数日後、孤児院にある1人の男が現れた。それはランド博士だった。

 

 「あなたは?」

 

 「君たちは自分の力に自信を持てないだけだよ!」

 

 「それってどういうこと?」

 

 「私と共に来い! お前たちにチャンスを与える。そして、お前たちに新しい名前を与える。

 お前たちは今日から私の息子ハンナ・メルビル、ユウト・ザナドゥリアスだ。付いてこい!」

 

 それを聞いたユウトとメルビルは疑うことなく、ランド博士に付いていった。

 それから数年後、ランド博士の養子となって、新しい名を与えられ、ゾイドの知識を始めとしたありとあらゆる教育を受け、ユウトとメルビルはマニノフ大尉の元で軍事訓練を行った。

 

 

 

 

 

 砂漠地帯帝国軍仮設基地でユウトとメルビルはマニノフ中尉と共に量産型スナイプテラで演習を行っていた。

 

 「メルビル少尉、少し遅れてるぞ!」

 

 「申し訳ありません! 大尉殿。」

 

 「全く、君は相変わらずだな。もし、戦場にいたら、あっとういうまに落とされるぞ!」

 

 「す、すみません。」

 

 「それにしても、ザナドゥリアス少尉の腕は目を見張るものがある。メルビルより年下で、まだ16の少年だというのに、初乗りでここまでこの機体を乗りこなせるとは!」

 

 仮設施設でその様子を帝国技術者とランド博士がその様子を見ていた。

 

 「メルビル少尉は、まだ士官学校をでたばかりの新兵で、不安定ながらもある程度は乗りこなしているが、このザナドゥリアス少尉という男は一体何者だ!?

 メルビル少尉と同じ士官学校を出たばかりの新兵でしかもまだガキだというのに!」

 

 「メルビルもだが、ユウトには特別な凄まじい力を持っているのだよ。彼とメルビルなら、私の野望を実現してくれる。」

 

 ランド博士がユウトとメルビルに期待を寄せる独り言を発したその時、仮設施設にサイレンが鳴り、帝国軍のクワーガが仮設施設に入った。

 

 「マニノフ大尉、共和国軍が我が部隊を破り、真っ直ぐこの施設に向かっています! 急ぎテストを中止して全軍の撤退命令が出ました!」

 

 「何!? まさか、共和国軍がここまで来たというのか! 仕方ない。全軍に告ぐ。直ちに基地から撤退せよ! 博士も急いで退避を……」

 

 「大尉、連中は私に任せてください。」

 

 マニノフ大尉の命令に反し、ユウトはスナイプテラで、その共和国軍の元に向かった。その時のユウトの表情は冷静ながらもまるで死に場所を探しているような表情でもあった。それを見たメルビル少尉は助けに行こうとするが、ランド博士はメルビル少尉のコクピットに通信を開き、

 

 「お前は行くな! メルビル。」

 

 「お父様、どうしてですか!? 彼1人だけ行かせるわけには!」

 

 「構わん。ここは彼に任せるのだ。 彼はそう簡単にやられるタマではない。」

 

 

 

 

 

 

 

 共和国軍が仮設施設の近くまで来ると、目の前にユウトの乗る一体のスナイプテラが突っ込んできた。

 

 「何だ?」

 

 ユウトのスナイプテラはガトリングを撃ち込み、ラプトリア隊を撃破し、ガノンタス隊の足まで破壊した。それを指揮している共和国軍将校は、

 

 「スナイプテラ一一機でやるではないか! だが、容赦はしない! 全軍、撃てー!!」

 

 共和国軍の部隊が一斉にユウトのスナイプテラに砲撃するが、ユウトのスナイプテラはそれを難なく、それを交わし、

 

 「スナイプテラ、兵器 解放! マシンブラスト。 アブソリュートショット!」

 

 すかさず、マシンブラストを発動したユウトのスナイプテラはA-Zスナイパーライフルで正確に共和国部隊のゾイドを一体一体正確に撃ち、まるでドミノ倒しのように次々と撃破された。それを見た共和国軍将校は驚きを隠せず、

 

 「そんな……たかが、スナイプテラ一機で我が共和国部隊が一瞬で……」

 

 終いには共和国軍将校の乗るトリケラドゴスのみとなり、遂にそのトリケラドゴスも破壊され、つい先程まで帝国軍を苦戦させた共和国部隊がたった一機のスナイプテラによって一瞬の内に壊滅された。その時間は僅か数分。

 その様子を見て、マニノフ大尉を始めとした帝国軍将校及び帝国技術者も唖然としていた。

 

 「なっ、こんなことが……ギレル中尉のスナイプテラより劣る量産型スナイプテラでここまでやるとは……」

 

 帝国技術者の横にいたランド博士は不気味な笑みを浮かべた。しかし、メルビルだけは心配そうな表情をした。

 

 「フゥ~、こいつらも僕を倒せる程の相手じゃなかったか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 数ヶ月後、ユウトはその後の訓練も実績を上げ、スナイプテラ以外にもランド博士が最初の改造ゾイドであるギルラプター改のシミュレーションでも数十体のラプトールを僅か数秒で殲滅し、3体のキャノンブル相手でも機体に傷をつけられることなく、壊滅させた。

 これには多くの帝国軍将校及び技術者も目を見張るようなものがあるようにユウトに注目し、ランド博士は自分が望んだ姿になってくれて期待を寄せていた。

 しかし、映像のユウトにはほとんど無表情で、メルビルは訓練に従事しながらもユウトのことが気掛かりだった。

 

 

 

 やがて、その実力を見込まれて帝国摂政プライドに呼ばれるようになった。ランド博士に連れられ、ユウトとメルビルはネオゼネバスシティのプライド摂政の別荘に入り、帝国最高の実力者であるプライド摂政に会った。彼の横にはラスト大佐とセードがいた。

 

 「よくやった、ランド博士。優秀なエリートを育てたようだな。」

 

 「お褒めいただきありがとうございます。閣下。ですが、勘違いはしないでください。ザナドゥリアス少尉とメルビル少尉は私の息子ですので……」

 

 「そのつもりはない。私は君のせがれを私直属の軍人として推薦したいだけなのだ。

 ユウト、メルビル、よくここまで来てくれた。君たちは私の直属として仕えることになったのだ。君たちは私の命令だけに従うだけで、軍に縛られないのだ。これは君たちエリートのみ与えられた特権なのだ。」

 

 「ありがとうございます! 閣下。」

 

 「あ、ありがとうございます。」

 

 ユウトの何気ないお礼を聞いたメルビルは不安そうな表情をした。

 

 「ユウト……」

 

 「それと、私の私兵のセードだ。ユウト、君と同い年でほぼ同じ実力を持つエリートだ。仲良くしてやってくれ。」

 

 「はい、よろしく……」

 

 ユウトが握手を交わろうとすると、セードはその手を払った。

 

 「この俺に気安く触るな! 貴様、随分他の連中に歓迎されているようだが、間違えるなよ。

 この帝国で最強なのはこの俺だからな。所詮貴様はどう足掻いてもNO2でしかならないのだからな!」

 

 「そうか……でも、いつまでもお前が上だと思うなよ。いずれその上に僕が立つんだから。」

 

 「ふん!」

 

 セードと対面したユウトは彼にライバル心を抱き、プライド摂政に連れられ、別荘に入っていった。

 

 

 

 

 それから数日後、

 

 「なるほど、流石だ。身体能力だけでなく、IQもかなりの高さだ。やはり、君は私に仕えるに相応しい者だ。」

 

 「ありがとうございます! 閣下。」

 

 「ただ、君の専用機がメルビル少尉と同じスナイプテラというのが非常に勿体ない。そう、私の私兵のセードのファングタイガー改のようにな!」

 

 「ファングタイガー改?」

 

 「ランド博士が特別な改造を施した帝国最強のゾイドだ。彼はそれで数々の実績を上げ、共和国の大部隊すらも一瞬で壊滅し、共和国から悪魔の虎とさえ、呼ばれたほどだ。 だから、君にもそれと同等のゾイドを与えたいのだが……」

 

 「閣下!」

 

 「何だね? ランド博士。」

 

 「実は既にザナドゥリアス少尉に相応しいゾイドが完成しております。」

 

 「ほぅ、」

 

 

 ランド博士がプライド摂政、ユウト、メルビルを連れてある倉庫に着くと、そこにファングタイガー改と同様の兵器改造されたハンターウルフがいた。

 

 「博士、これは?」

 

 「ファングタイガー改と同時期に開発していたハンターウルフ改だ!」

 

 「ハンターウルフ改。」

 

 「実はこの時のためにザナドゥリアス少尉に相応しい最強のゾイドを開発していたのだ。これがあれば、お前はファングタイガー改にも比毛を取らない最強のライダーになるのだ。」

 

 「素晴らしい! 素晴らしいよ。ランド博士。」

 

 プライド摂政はユウトの肩を撫で、

 

 「ユウト、今日からこれが君のゾイドだ! 更なる活躍を期待しているぞ。」

 

 「ありがとうございます! 閣下。」

 

 ハンターウルフ改がユウトの専用ゾイドになった後、その後の戦歴は目まぐるしい成果を上げ、やがて、それはセードのファングタイガー改と同等かそれ以上にもなるようになった。

 プライド摂政の別荘の庭で1人紅茶を飲んでいるメルビルの元にユウトが立ち寄り、ユウトは紫色のバラを渡した。

 

 「これ、君にあげるよ。」

 

 「あ、ありがとう。どうしてこれを?」

 

 「き、君のために植えて育てたんだ。君に合う色をね。最近元気がないから……」

 

 「ありがとう……でも、元気がないのは私の方じゃないの……」

 

 「え……」

 

 「最近、あなたからすっかり笑顔が無くなって、まるでただ、戦うために生きているようなあなたが心配で、せっかくお父様の元で暮らしているのに……」

 

 「ハンナ、君は博士のことを父親と思っているの?」

 

 「もちろんよ! だって、あの人は孤児だった私たちを受け入れて大切に育ててくれた、例え、血が繋がっていなくても私とあなたはフランク・ランドの子供なんだから!」

 

 「僕は君が羨ましいよ。」

 

 「え……」

 

 「僕は君ほど素直じゃない。僕は博士を素直に父親とは呼べない。博士は閣下と共に僕に凄く期待しているけど、本当に僕をそれほど必要としているのか、 ただ、僕を戦うためだけに生かせているのかわからない。

 僕は今までずっと1人で生きていた。誰も助けてくれず、誰も僕を受け入れてくれず、ずっと1人だった。

 でも、君だけは僕を受け入れてくれた。君がいたから、僕は幸せだった。だから、僕は君が幸せにいて欲しいんだよ。」

 

 「それでいいの? ただ、私が幸せになるだけで……」

 

 「僕には僕自身の幸せなんかわからない。両親の顔だって知らないし、生きているのか、死んでいるのかすらもわからない。

 本当の両親が誰なのか、僕が誰なのかそれを知りたがっている心が邪魔して、博士を父親と呼べず、ただ、ひたすら戦っていた。

 そうしていく内に段々と戦うためだけに生まれてきたような気がしていった。でもそれでいいのかもしれない。ただ、戦って生きていれば、そんな心も忘れて楽になれるかもしれない。」

 

 「違う! お父様はこの戦争を終わらせたいために戦っているの! あなたを戦いの道具に使っているなんてそんなこと、お父様は望んでいない!!」

 

 「本当に博士は僕を必要としているの?」

 

 「そうよ! そうでなきゃ、私たちを引き取ってくれないわ!」

 

 ユウトは教育を受けた時にランド博士が言ってた言葉を思い出した。

 

 「(いいか、この世に生き残れるゾイドは強いゾイドのみ! 弱いゾイド等、強いゾイドが生き残れるための道具に過ぎない。もちろん、人間もな!)」

 

 「なら、僕は戦って戦って強くなる! それで博士が僕を認めて息子と思ってくれるなら、僕は最強の存在になるために! そして、セードを、あいつを越えてやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 過去を思い出したユウトは、

 

 「でも、どうして博士は僕をジェノスピノに乗せてくれなかったんだ? 僕がまだ弱いってことなのか? あいつにも勝てなかったから……」

 

 ユウトは摘み取ったバラを握り潰し、研究室に戻っていった。その時、部屋でランド博士とメルビルの会話を聞いた。研究室で2人は巨大なファンを見ていた。

 

 「これは……?」

 

 「荷電粒子吸入ファンだよ!」

 

 「荷電粒子吸入ファン?」

 

 「そう、かつて惑星Zi最強の兵器である荷電粒子砲を撃つためのものさ。実はこの化石はゾイドクライシス時に出現したゾイドの化石だということが判明した。」

 

 「でも、どうしてこんなものが? ゾイドクライシスにはそんなものが使えるゾイドはいないはずなのに……」

 

 「私も一瞬目を疑ったよ。しかもこいつはあのジェノスピノと同等かそれ以上の力を持つゾイドとも判明している。」

 

 「ジェノスピノ以上の力を持つゾイド?」

 

 「メルビル、デスレックスを知っているな?」

 

 「もちろんです! デスレックスは帝国軍が複数の個体の復元に成功しましたが……」

 

 「そうだ。だが、復元した個体はどれも不完全だったり、制御不能な個体ばかりで、どれも使い物にならず、全て投棄した。

 デスレックスは強大なゾイド故、ゾイドクライシス後の世界に長くいられず、他のゾイドよりも早く石化したため、復元してもその環境に耐えられず、どうしても不完全な個体ばかりになってしまった。 この個体も同じく。」

 

 「では、この化石はデスレックスの……」

 

 「いや、突然変異といっていいものだ。詳しいことは不明だが、あの地区にあった船による何らかの力で、こいつは荷電粒子砲を撃つことができる個体に進化したようだ。

 だが、荷電粒子砲を放つには空気中にある荷電粒子をこの吸入ファンで取り込み、それを体内でエネルギー変換をしなければ、放つことが出来ないため、ゾイドクライシス時の地球には空気中にある荷電粒子が余りに不足していて、この個体は一発の荷電粒子砲を放っただけで、直ぐに機能停止してしまった。」

 

 「情報が少なかったのは、このゾイドはゾイドクライシス時の環境に耐えられず、絶命してしまったため、ジェノスピノ程の破壊をすることが出来なかったってことですか?」

 

 「そうだ。だが、そもそもの原因はゾイドクライシスの影響による不完全な環境によるものだ。それを改善するための装置さえあれば、こいつを再び甦らせることができる。」

 

 「その装置とは?」

 

 「リジェネレーションキューブだ。ボーマン博士が地球再生のために開発したあの端末さえ手に入れば、その問題は解決する。」

 

 「では、博士はもしかして……」

 

 「そうだ! 私はこの化石にリジェネレーションキューブの端末を取り込む。そうすれば、史上最強兵器、荷電粒子砲を使え、ジェノスピノをも凌駕する真の破壊龍が誕生する!  

 史上最強のゾイドを作るためには私はどんなことだってするのだ。」

 

 そんな2人の会話をユウトはドア越しで聞いていた。

 

 「ジェノスピノすらも凌駕する真の破壊龍だって? まさか、博士は僕にジェノスピノを乗せなかったのは、それに乗せるため?」

 

 その時、作業員の1人がランド博士に報告し、

 

 「博士、その個体の化石が眠る場所が判明しました!」

 

 「何処だ?」

 

 「火山地帯です!」

 

 「そうか……では次はそこに向かう。全作業員も直ぐに準備にかかれ!」

 

 「博士、プライド閣下には?」

 

 「心配はいらん。報告する必要はない。ユウト! いるのだろ?」

 

 「はいっ!」

 

 「直ちに火山地帯に向かう。出撃準備にかかれ!」

 

 「了解しました!」

 

 ユウトはハンターウルフ改に乗り込み、

 

 「ジェノスピノをも凌駕するデスレックスの突然変異種……それに乗ることが出来れば、僕が最強の存在になる。」

 

 ランド博士が自分をデスレックスの突然変異種に乗せることを期待して、ユウトはランド博士とメルビルの乗るスナイプテラインペリアルガードやその他のキャタルガ隊と共にデスレックスの突然変異種の化石が眠る火山地帯に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禁制地区の海辺に突然津波が発生し、海辺のあらゆるものが流されていった。そして津波発生と同時にある巨大な突起が現れ、現れたのはスチールエリアでレオのライジングライガーに敗れ、海に消えたジェノスピノだった。海上から姿を現したジェノスピノはジェノソーザーがレオのライジングライガーによって破壊され、身体の至るところが傷だらけになっていた。

 そして、コクピットの中のセードはスチールエリア戦後にずっと海中を泳いでいたため、それの影響で疲弊した表情をしていた。

 

 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……くそっ、あのライガーとそのライダー! この俺と」

 

 セードが見渡すと、そこにはゾイドクライシスの影響で半分埋まり、朽ち果てた自由の女神像や崩れたエンパイアステートビル、そして廃墟となった街並み、ここはニューヨークだった。

 

 「どうやら、帝国領ではないようだが、まあ、いい。ここなら、ある程度の材料はあるだろう。そしてジェノスピノを修復し、奴に復讐する!」

 

 ジェノスピノが街中に入ろうとしたその時、突然霧が発生し、霧からジャミンガに騎乗したラプトール、ラプトリア、ガブリゲーター、ドライパンサーの頭部を模した謎の兵士が領域に入らせまいと、ジェノスピノの周囲を取り囲んだ。

 

 「何のつもりだ? まさか、この俺を侵入者扱いか? 残念だが、俺にはそんなもん関係ない!

 ましてや、そのザコのジャミンガで俺を止められるとでも思ったのか!?」

 

 ジェノスピノがロングキャノンを放とうとしたその時、謎の兵士たちが道を開け、霧の中からある人物が現れた。

 

 「ん? 何だ。貴様は!」

 

 「セード・ランドだな。 我々は貴様を待っていた。」

 

 「何だと……」

 

 To be continued




 次回予告

 端末の反応があった場所に向かうレオたち、そこには人1人もいない謎の遺跡のあった村だった。端末を探す中、レオたちは村を守護するアンキロックスに出会う。
 この村に何故人がいないのか、アンキロックスは何故人のいない村を守るのか、それを探るうちにレオは父のことを思い出していた。

 次回「村ノ 守護神」

 走り抜け、ライガー!!
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