ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーが新たな姿を得て進化したライジングライガーの力によって強敵セードとジェノスピノを打ち破り、新たな仲間を加え、再び地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第21話「帝国階級章」

 「サリー、サリー!!」

 

 レオは浚われたサリーを探し、おもいっきり、サリーの名を叫ぶが、返事は無く、何処にもその姿はなかった。

 

 「サリー、一体何処に?」

 

 「そういえば、さっき、バズがキャノンブルに乗ってた奴が拐っていったって言ってたな……」

 

 「もしかしたら……」

 

 「おい、レオ! 何処に行くんだ?」

 

 「キャノンブルのところに行くんだ! もしかしたら、あいつがサリーを拐ったのかもしれない!」

 

 そう言うと、レオはライガーに乗ってそのままリュック隊長のキャノンブルのいる方向に走っていった。ライガーが走り去った後にパキケドスが到着し、

 

 「教官!」

 

 「いい加減、その呼び方は止めなさい! ところで、レオは?」

 

 「サリーを連れ去ったキャノンブルを追っていったけど……」

 

 「キャノンブル? キャノンブルなら、私が足止めしてもう離脱したけど……」

 

 「え? それっていつ?」

 

 「ついさっきよ。それがどうしたの?」

 

 「ついさっきだって!? そんな早い時間に俺たちのいるところに着くわけがない……まさか、レオは別のキャノンブルの方に行ってしまったのか!? レオを追うぞ!」

 

 「ちょっと、どういうこと?」

 

 「レオは勘違いして、サリーを拐ったキャノンブルを別の奴だと思っているんだ! 直ぐに向かわないと!」

 

 「ちょっと、私もいく! アイセルたちはここに残って!」

 

 「え、でも……」

 

 「サリーが帝国軍の手に渡ったのなら、恐らく私たちの力では手に負えないのかもしれない。

 アイセル少佐はディアス中佐にこのことを報告して!」

 

 「わかったわ!」

 

 フォックスとパキケドスはすぐにライガーの向かった場所に走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火山地帯の軍事基地では着々とデスレックスの突然変異種の復元が進めれていた。そしてその様子をランド博士とメルビルが見ていた。

 

 「これが、デスレックスの突然変異種……」

 

 荷電粒子吸入ファンがデスレックスの突然変異種のボーン形態に取り付けられた時、巨大な轟音を立てた。

 

 「この声は……」

 

 「ふ、これは喜びの声だ。復活をずっと待ちわびていたのだな。この星に君臨するのは、お前だ、オメガレックス。」

 

 「オメガレックス……」

 

 「ところで、メルビル少尉。」

 

 「はい、お父様!」

 

 「ユウトの様子はどうかな?」

 

 「はい、シミュレーションは予想以上の成果を上げています。」

 

 「そうか……となると、やはりライダーは彼しかいない。」

 

 それを聞いたメルビルは、

 

 「お父様、ひょっとして……」

 

 「ランド博士、リュック隊長から通信が入っています!」

 

 「リュック隊長が?」

 

 ランド博士はリュック隊長と通信を開き、

 

 「私だ!」

 

 「これはランド博士、実は先程、サリー・ランドを捕らえることに成功しました。」

  

 「何!? スピーゲル中佐らにも命じたというのに、まさか、君が成し遂げるとは!」

 

 「そこで、博士にお願いがあるのですが……」

 

 「何だ?」

 

 「スナイプテラをこちらに寄越してよろしいのでしょうか? キャノンブルでは流石に博士のいる基地まで着くにはかなり掛かりますし、それにいずれ連中も追い付いてしまうでしょう。」

 

 「わかった! では、メルビル少尉に命じてそちらに向かわせる。場所は?」

 

 「今、座標を教えますので……」

 

 その時、コクピットで気絶しているサリー僅かながら目を覚まし、その時、リュック隊長がサリーがまだ幼い時に去っていた父親の姿に映った。

 

 「お父さん……?」

 

 そして、再びサリーは眠りにつき、リュック隊長は通信を切って、サリーの方を見て、ペンダントを奪い、不気味な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティの移民船の宮廷の庭では、皇帝フィオナとギレル中尉がいた。

 

 「錆びる? ゾイドも錆びるのですか?」

 

 「いえ、錆びると言ったのは、あくまでも比喩的表現で……」

 

 「理解できません。あなたがここにいると、何故、スナイプテラが錆びるのでしょう?」

 

 「自分はそろそろ戦線に戻りたいと……」

 

 「そうだ! 中尉のスナイプテラに今度、私を乗せてください。 フフ!」

 

 「けど……私のスナイプテラは観光用ではありません。第一、1人乗りです。」

 

 「つまらない!」

 

 「ギレル中尉。」

 

 そこに侍女のジーンが現れ、

 

 「外交官を通じて、共和国軍のディアス中佐から至急あなたに連絡を取りたいと……」

 

 「ディアス中佐から?」

 

 その報告を受けたギレル中尉はディアス中佐と通信を開いた。

 

 「ディアス中佐。まさか、あなたから来るとは思いませんでした。」

 

 「突然呼び出して申し訳ない。急なことがあってな。取り組み中だったか?」

 

 「いや、正直いって助かったよ。」

 

 「何か?」

 

 「いや、何でもない。それより、私に何の用ですか?」

 

 「実は君に頼みたいことがあって……」

 

 「頼み?」

 

 「実はサリー・ランドのことで……」

 

 「サリー・ランド? 確か、ジェノスピノを倒したレオ・コンラッドと一緒にいた……」

 

 「そうだ。彼女のことで少し厄介なことになってな。」

 

 「厄介なこと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロックバーグ中尉のパキケドスに敗れたリュック隊長率いるキャノンブル隊は帝国の基地に向かっていた。

 

 「くそっ! まさか、こうもことあるたびに妨害されるとは!」

 

 「隊長! ライオン種が真っ直ぐこちらに向かっています!」

 

 「何!?」

 

 「待て! サリーを返せ!!」

 

 ライガーはリュック隊長のキャノンブルに飛び込み、リュック隊長のキャノンブルはそれを回避した。

 

 「何だ? 貴様から来るとはどういうつもりだ?」

 

 「サリーを拐ったんだろ! 今すぐ返せ!」

 

 「サリー・ランドだと? 知らんぞ!」

 

 「とぼけたって無駄だ! 直ぐに返せ!!」

 

 怒り狂ったレオに従ってライガーはA-Z機関砲をキャノンブルに撃ち込むが、キャノンブルはA-Zレーザー砲で迎撃した。

 

 「どうやら、あの小僧、勘違いしているようだな。まあ、いい、この際、あのらあのライガーを潰して手柄をたててやる!」

 

 「ウォー!!」

 

 ライガーはキャノンブルに向かって突進し、キャノンブルもライガーに向かって突進し、両者共にぶつかり合った。意外にも両者共に互角だった。

 

 「ふ、キャノンブル、兵器 解放! マシンブラストー!! ナインバーストキャノン!」

 

 しかし、リュック隊長はそれを狙ったかのようにマシンブラストを発動し、至近距離でライガーに9連キャノン砲を放った。

 

 「ゼロ距離でこれだけ放てば、いくら性能が上がったライオン種でも只ではすまない。」

 

 しかし、煙が晴れると、ライガーはまだ立っていた。

 

 「こいつ!」

 

 「サリーを……サリーを返せ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火山地帯の基地では、ユウトはランド博士の命を受け、戦闘訓練を受けていた。数百人の兵士相手にたった1人で挑んでいるにも関わらず、ユウトは僅か数分で殲滅した。 そこにランド博士が訪れ、

 

 「ご苦労だった。」

 

 「はっ!」

 

 「ザナドゥリアス少尉の様子は?」

 

 「順調でございます。」

 

 「そうか……」

 

 兵士を全て倒したユウトを見たランド博士はニヤリとし、

 

 「全く驚かされる。こんな短時間でここまで向上するとは! 孤児院でメルビルと一緒にこいつを見た時から、何か強大力があると思って睨んでいたが、やはりこの目に狂いはなかった。

 このまま彼の能力を向上すれば、彼は私の野望を達成させてくれる最強の戦闘マシンになる。そうなれば、私は最強の人間とゾイドを手に入れ、この星を私の望む世界に……フフフフフ。」

 

 「博士!」

 

 「よく頑張ってくれた。君には次の任務があるので、それまで休んでいてくれ。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 トレーニングルームから離れたユウトは個室に向かうが、その途中、部屋が少し空いているランド博士の個室を通った時、写真を見付けた。

 

 「ん?」

 

 ランド博士の個室にあるその写真が気になり、ユウトはその写真を見詰めた。写真には若い男性と美しい女性が並び、もう一つには若い男性と美しい女性、ボーマン博士とサリーらしき幼い少女とその少女と仲良く手を繋いでいる幼い少年の家族写真のようだった。

 ユウトはその写真に写っている若い男性と少女、少年に何か見覚えがあるような表情をした。

 

 「この人って……」

 

 

 

 

 ランド博士の元にメルビルが気絶しているサリーを抱えたリュック隊長を連れてきた。

 

 「お父様! リュック隊長をお連れしました。」

 

 「おお、ご苦労だったな。メルビル少尉、娘は特別室に移動してやれ。」

 

 「わかりました。」

 

 メルビルはサリーを抱き抱えてそのまま去った。

 

 「まさか、君がやってくれるとは思わなかったよ。アルドリッジ少佐やスピーゲル中佐まで向かわせたというのに……」

 

 「この私だって帝国軍人です! なめてもらっては困ります。」

 

 「今回の君の働きは見事だ。どうだ? 2階級特進も考えてやってもいいが……」

 

 「結構です! それより、博士はジェノスピノに代わる新型ゾイドを開発しているそうですね。是非ともあれを見せたいので……」  

 

 「ということは君も我々の計画に加わってくれるということか?」

 

 「いえいえ、私は一軍人に過ぎません。そんな野心はございません。博士が開発している新型ゾイドがどんなものか一目見たいだけですので……」

 

 「まあ、いいだろう。だが、あれを見た時、お前は圧倒されることになるだろう。」

 

 「それは楽しみです。では、失礼。」

 

 その場を去ったリュック隊長はランド博士の目を盗んで直ぐ様、非常口に入り、研究室に入った。そこではボーン形態のオメガレックスにアーマーを装備させる段階にまで入っていった。

 

 「完全復元にはまだもう少しかかるか……」

 

 「おい、そこで何をしている!? ぐっ!」

 

 リュック隊長は自分を見付けた作業員の腹を殴り、彼の拳が作業員の身体を貫いた。リュック隊長は直ぐ様、作業員を倉庫に隠し、それと同時にリュック隊長の身体が液体金属状になり、先程殺した作業員の姿になった。

 

 「フフフ、」

 

 作業員の姿になったリュック隊長は不気味な笑みを浮かべ、研究室を後にして、火山地帯の発掘場所に向かった。リュック隊長が念入りに探すと、まだ発掘されていない場所にオメガレックスの化石とは別に新たな巨大な化石が発光していた。

 

 「やはり、ここにいたか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオとライガーは尚もリュック隊長のキャノンブルと交戦し、キャノンブルはレオのライガーに善戦していた。

 

 「さあ、早くサリーを返すんだ!!」

 

 「しつこいぞ、 貴様! 生憎だが、サリー・ランドは一度も見ていないぞ!」

 

 「とぼけるな! お前はさっき俺が戦っている間にサリーを拐ったんだろ!?」

 

 「さっきだと!? ふざけるな! 私はさっき共和国のパキケドスと交戦して、今離脱しているところだ。」

 

 「そんなはずがない! そんな嘘を言って俺を……」

 

 「止めなさい。レオ、そいつの言っていることは本当よ!」

 

 そこにパキケドスとフォックスが到着し、

 

 「ロックバーグさん、バーン。」

 

 「レオ、サリーを拐ったのは別の人間が乗ったキャノンブルだ。」

 

 「何だって!?」

 

 「その通りだ。」

 

 その時、同時にギレル中尉のスナイプテラも現れ、

 

 「あなたは……ギレル中尉!」

 

 「久し振りだな、レオ・コンラッド。話はディアス中佐から聞いている。

 ブラオ・リュック大尉、私は彼に用がある。ここで無駄な争いはしたくない。 大人しく引いてくれないか。」

 

 「なにぃ!? ふざけるな! 第一中尉のお前にそんな権限はない!」

 

 「悪いが、もう中尉ではない。皇帝陛下直々の命を受け、先程、昇進した。」

 

 その時、キャノンブルのコクピットにギレル中尉の昇進を知らせるデータが入った。それを見たリュック隊長は、

 

 「ギレル少佐だと!?」

 

 「わかったなら、さっさと引け。」

 

 「ぐぐっ……」

 

 しばらく考えた後、リュック隊長はキャノンブル隊と共に撤退していった。

 

 ライガーから降りたレオはギレル少佐の元に駆け寄り、

 

 「ギレル少佐、サリーが、サリーが!」

 

 「わかっている。直ぐに私の部隊がそのキャノンブルの捜索に向かっている。 君たちは私の指揮している基地で待機してくれないか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティの移民船の庭園で、フィオナは退屈そうにしていた。

 

 「はあ、ギレル少佐はいつ戻ってくださるのかしら……」

 

 「陛下!」

 

 そこにハヅキ・バスキア中尉が訪れ、

 

 「バスキア中尉、ちょうどよかったわ! 良ければ、お話しでも……」

 

 「いえ……皇帝陛下、実はある人物が陛下に通信を……」

 

 バスキア中尉は耳越しでそれを伝え、フィオナは信じられないような表情をした。

 

 「それは本当ですか?」

 

 「はい、陛下! くれぐれもお気をつけて。」

 

 「わかりました。」

 

 バスキア中尉からの知らせを受けて、フィオナは通信に応じた。通信の相手はシーガルだった。

 

 「ジョナサン・シーガル元准将。」

 

 「これはこれは、フィオナ陛下、ご機嫌麗しゅうございます。」

 

 「あなたの方から、連絡が来るとは思いませんでした。牢獄から脱走して、一体何をするつもりですか?」

 

 「堕ちたものですな……」

 

 「? 一体どういうことですか?」

 

 「栄光なる我が帝国軍が、まさか、共和国と和平を結ぶとは……最早かつての帝国軍が無くなわれてしまったのですね。

 ジェノスピノ侵攻作戦が成功していれば、今頃私とアルドリッジは英雄となり、この地球の覇権は全て我が帝国のものになるはずだったのに……」

 

 「平和を望む者として、当然のことです。 あなたのやっていることは只の破壊です!」

 

 「平和? 憎き共和国を潰してこそが我が帝国の平和だったはずでは!? まさか、あなたまでそこまで堕ちるとは何とも情けない。」

 

 「世迷い言を聞く気はありません。言いたいことがあるなら、言いなさい!」

 

 「我々はあなたに失望しました。最早、あなたではこれからの帝国は任せられません。

 あなたにはご退場願い、これからは我々がこの帝国を指導します。」

 

 「反乱を起こすつもりですか?」

 

 「反乱ではありません。これは革命です! 新たな帝国を築くために。」

 

 「ジェノスピノ侵攻作戦による反乱に続いて、よくそのようなことができますね。」

 

 「私は常に帝国のためを思って行動しているのです。共和国と手を組み、だらけた今の帝国を目覚めさせるために!」

 

 「投降しないなら、それ相応の覚悟が必要ですよ。」

 

 「どうぞ、ご勝手に。 何せ、我々はあのジェノスピノをも越える最強のゾイドを手にしたのですから。

 いずれ、その力を御覧になった暁には陛下も目を覚まされるでしょう。では、失礼。」

 

 通信を切ったシーガルの元にランド博士が現れ、

 

 「こんな早くに皇帝に宣戦布告するとは……」

 

 「我々の力を見せるためですよ。例のゾイド、確か、オメガレックスと言ったな。あれの完成は後どれぐらいかかる?」

 

 「ペンダントを掌握して急ピッチで行っているが、それでも早くて48時間後だ。

 だが既にザナドゥリアス少尉に帝国軍の各地の基地の襲撃を命じ、出撃させた。 それまでには時間を稼げるだろう。アルドリッジ少佐とスピーゲル中佐もまもなく戻る。」

 

 「後は、計画通りにやるだけですな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランド博士の命を受けて、ハンターウルフ改に搭乗したユウトはランド博士の個室にあった写真を思い出して少し躊躇していた。

 

 「博士は自分には子供がいないとずっと僕に言い聞かせていたけど、あの写真が本当なら、じゃあ、博士はどうして僕を……」

 

 「カタパルト射出準備に入ります!」

 

 兵士の言葉を聞いたユウトは慌ててハンターウルフ改に乗り、ハンターウルフ改はカタパルトに入った。

 

 「カタパルト射出まで、3、2、1、射出!」

 

 基地のカタパルトで射出されたハンターウルフ改はそのまま帝国軍の基地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギレル少佐に保護されたレオたちはギレル少佐が指揮する基地に待機していた。そこにコリンズ准将が現れた。

 

 「こ、コリンズ准将!」

 

 「やあ、ギレル少佐。」

 

 「な、何故あなたがここに?」

 

 「実は君が話していたレオ・コンラッドという少年に会いに来たくてね。」

 

 「レオ・コンラッドに?」

 

 「ああ、それと君が少佐になったように私は准将ではない。ハワード宰相の命により、中将に昇進した。」

 

 「中将に!?」

 

 「あなたは?」

 

 「君がレオ・コンラッド君だね。帝国軍のアドリアス・コリンズ中将だ。君のことはギレル少佐からよく聞いている。

 もちろんサリー・ランドのことも、君にはジェノスピノ侵攻作戦によるシーガルの暴走を止めてくれた借りがある。我々は全力を注いで彼女の救出に専念する。」 

 

 「ありがとうございます。」

 

 そこに1人が兵士が入り、

 

 「ギレル少佐、コリンズ中将!」

 

 「何だ?」

 

 「先程、サリー・ランドを拉致したというキャノンブルを発見しました!」

 

 「サリー・ランドは?」

 

 「いえ、発見した時には既に破壊されていて、ライダーの姿も確認されませんでした。」

 

 「ということは別のゾイドに乗り換えて逃げたということか。」

 

 「しかも破壊されたキャノンブルを調査した結果、先日に疾走したキャノンブルと同型だということが確認されました。」

 

 「何!? 強奪犯は?」

 

 「それが……不明です。」

 

 「コリンズ中将!」

 

 「何だ?」

 

 「ネオゼネバスシティにおられるハワード宰相から通信が入っています。」

 

 「宰相閣下から?」

 

 

 

 

 コリンズ中将とギレル少佐はハワード宰相からの通信に応じ、レオたちもその様子を見た。

 

 「宰相閣下、一体何があったのですか?」

 

 「実は先程、極刑に処され、先程脱獄したシーガルが皇帝陛下と通信を開き、大胆にも宣戦布告をした。」

 

 「何ですと!? シーガルが? 一体何故?」

 

 「実はある報告によると、脱獄される寸前、ランド博士が牢獄を訪れたそうだ。」

 

 「まさか、ランド博士が……」

 

 「そうだ。しかもランドはその後、軍に無断である発掘場所に向かい、軍事基地まで建設したとの報告もあった。これは間違いなく反乱だ。」

 

 「ランド博士……ジェノスピノ侵攻作戦ももとはといえば、あの男がジェノスピノを復元したことから始まった。 今度は一体何を企んでいるのだ?」

 

 サリーのことが気掛かりなレオはハワード宰相に質問し、

 

 「ハワードさん、その場所は一体何処何ですか?」

 

 「誰だね、君は?」

 

 「先程、お話ししたレオ・コンラッドです。」

 

 「教えてください! そこにサリーがいるんですか!?」

 

 「いや、正確な場所はもちろん、そこにサリー・ランドがいることも特定されていない。だが、通信を傍受して間もなくその場所が特定されるはずだ。」

 

 「お願いです! そこに俺も連れていってください!」

 

 「しかし、君は軍人ではない。民間人まで巻き込むわけには……」

 

 「お願いします! サリーは俺が守らなきゃならないんです!」

 

 焦るレオにギレル少佐は肩を撫で、

 

 「落ち着け、レオ。 いくら場所が特定されても、どんな罠が設置されているのかわからない。もっと情報を集める必要がある。」

 

 「だからって、このまま黙って見ていろって言うんですか!? こうしている間にもサリーは、サリーは!!」

 

 落ち着かないレオにバーンが口を開き、

 

 「いい加減、落ち着け、レオ! サリーのことが心配なのは俺たちも同じだ。それに今行けば、サリーみたいに捕まるのがオチだぞ。」

 

 「何だと!? バーン、俺をバカにするのか!?」

 

 「じゃあ、お前はサリーを助けるために俺たちを見捨てて行くのか?」

 

 バーンの何気ない言葉にレオは反論出来ず、

 

 「そ、それは……」

 

 落ち込むレオにアイセルは明るい表情でレオの肩を優しく撫で、

 

 「大丈夫よ! レオ。 サリーはきっと私たちの手で救い出すから、それまで待つのよ。」

 

 「その通り、いくらあのサリーでも、そう簡単にやられるタマじゃあない! それに何かあったら、俺のキャタルガで踏み潰してやる!!」

 

 その割にはあのキャノンブルにやられたそうだけど、

 

 「うっ……」

 

 ロックバーグ中尉の図星に言い返せないバズ、

 

 「とにかく、今はシーガルとランド博士の居場所を特定するのが先だ。」

 

 「コリンズ中将、ギレル少佐!」

 

 「今度は何だ?」

 

 「第七方面隊が所属する基地でハンターウルフ改に襲撃されました!」

 

 「何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気絶しているサリーは夢を見ていた。

 

 「お父さん。」

 

 「サリー、お前はここで大人しくしているんだよ。」

 

 「待って、お父さん、お父さん! はっ!」

 

 目を覚ますと、そこに父親の姿はなく、目の前にメルビルがいた。

 

 「あなたは……メルビルさん?」

 

 「久し振りね。帝国にいた時にはあなたの世話をしていたわね。」

 

 サリーは慌てて、胸を見ると、ペンダントはなかった。

 

 「ペンダント、ペンダントは何処ですか!?」

 

 「今はお父様が預かっているの。」

 

 「お願いです! 返してください! あれはお祖父さんの大事なものなの!!」

 

 「落ち着いて、でもこれはお父様のご命令なの。しばらくはここで大人しくしていて。」

 

 メルビルはその場を去り、サリーが入っている牢屋を閉めた。

 

 「待ってください、メルビルさん、メルビルさん!」

 

 

 

 

 

 

 メルビルはランド博士の元に行き、ランド博士はペンダントによる装置を開発していた。

 

 「おお、メルビル少尉か。ザナドゥリアス少尉は?」

 

 「指示通りに出撃した。」

 

 「そうか、後はオメガレックスの完成を待つだけだな。今まではオメガレックスの完成には直接端末を見つけ、それをオメガレックスに移植することを考えていた。

 だが、もう端末を探す必要はなくなった。このペンダントのシステムを応用すれば、オメガレックスは地中に埋没するどの端末からでもゾイド因子を常に補給することができるようになる。無尽蔵にな!」

 

 「はっ!」

 

 「荷電粒子砲を何発撃とうが、その力は尽きることなく、オメガレックスは正に不死身のゾイドとなるのだ。」

  

 そう言うと、ランド博士はその場を離れ、

 

 「お父様、どちらへ?」

 

 「サリーに会いに行く。」

 

 「サリーに?」

 

 それを聞いたメルビルは首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牢屋の中で抱え込んでいるサリーの元にランド博士が訪れ、

 

 「あなたは……あの時の!」

 

 「ボーマン博士の作ったペンダントは予想以上の研究成果を上げた。こいつのおかげで、オメガレックスは予定より早く完成する。」

 

 「ペンダントを返して、返してください!」

 

 「やれやれ、母親に似て向こう気の強い娘だ。」

 

 ランド博士はペンダントを取り返そうとするサリーを取り払った。

 

 「どうして、それを?」

 

 「当然だ。私は君の母のことをよく知っているからな。実に美しい娘だった。もちろんボーマン博士のことも……」

 

 サリーがペンダントを取り返した時の衝撃で、ランド博士の右腕の皮膚が破け、その中に機械の腕が現れた。

 

 「その腕は……」

 

 「ああ、確か、君の友人の腕はゾイド因子を金属化していたそうだったな。だが、私の腕はそれを模したものだ。」

 

 ランド博士が右腕の皮膚を完全に剥がすと、右腕は完全な義手になっていた。

 

 「そんな……」

 

 「この腕も私の研究の成果だ。ボーマン博士は人とゾイドの共存する世界を望んでいたが、私にとってはそんなものはくだらないものだった。」

 

 「そんなことはありません! ゾイドは私たちと同じ命を持った生き物です。人とゾイドが一緒に暮らせる世界こそが理想の世界なんです!」

 

 「果たしてそうかな?」

 

 「え……?」

 

 「ゾイドとは闘争本能を持った金属生命体。飼い慣らされているゾイドなど、もはや本来のゾイドではない!

 ゾイドは戦うことによって進化する。ゾイドは戦っている姿こそが美しく、ゾイドが最も輝く瞬間。そして、最強のゾイドだけが生き残る世界こそがゾイドの理想郷にして、私の望む世界だ。

 そうして、私は惑星Ziにいたとき、ボーマン博士の考えに異を唱え、地球に誕生するゾイドの中で最も強力なゾイドであるデスレックスの改造を施し、それにスピノサウルスの遺伝子を組み込み、最強のゾイドを開発しようとした。

 だが、実験は失敗に終わり、研究所が破壊され、私は右腕を失い、たまたま通りかかった私の息子ピーターもその事故に巻き込まれた。

 しかし、思わぬ収穫が出た。事故に巻き込まれた息子は突然右腕が金属化し、通常の人間にはない強大な力とゾイドと話せる力を得た。

 その時、私は確信した。ピーターのその力を使えば、より最強のゾイドを作ることが出来るとな。

 だが、ピーターはその力を抑えることが出来なくなり、やがて、私の手にも負えなくなり、仕方なく移民船での移動の際に捨て、代わりにピーターと同じゾイド因子を持った腕を模した義手を開発し、私の右腕に移植した。

 その後、私は帝国に入り、ジェノスピノを復元し、そして更にはそれすら凌駕するオメガレックスまで復元するようになった。」

 

 「ピーターって……じゃあ、もしかしてあなたは……」

 

 その時、サリーがまだ幼い時に去っていた父親とその父親と手を繋いでいる少年の姿が脳内に映った。

 

 「コールドスリープにいた期間が短く、ボーマン博士より先に年を取り、帝国にいたとき、私の正体に気付かなかったのも無理はない。ピーターはお前の双子の弟、そしてお前は私の娘だ。」

 

 それを聞いたサリーは青ざめた表情をした。

 

 「そ、そんな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第七方面隊が所属する軍事基地、そこではハンターウルフ改の攻撃で壊滅寸前になっていた。

 

 「こちら、第七方面隊、応援は? 応援はまだですか!? もうこれ以上は持ちこたえられません! うっ、うわぁ~!!」

 

 ハンターウルフ改はマシンブラスト技のソニックシックルで司令塔を破壊し、第七方面隊の基地を完全に壊滅した。ユウトはハンドルを強く握り、

 

 「もし、博士に子供がいたら、僕は一体何のために拾われたんだ? 何のために僕を選んだんですか?

 教えてください! 博士~!!」

 

 グオォ~!!

 

 ユウトの叫びに呼応するようにハンターウルフ改は火に包まれた基地をバックに咆哮を上げた。

 

 To be continued




 次回予告

 復活が近付くオメガレックスの力を利用し、革命を称したシーガルの反乱が始まった。帝国軍はシーガルの反乱軍鎮圧に軍を動かすが、ユウトのハンターウルフ改の猛攻に圧倒され、更にはスピーゲル中佐のドライパンサーとアルドリッジのファングタイガー改にも抑えられてしまう。
 レオたちはサリーを助けるためにギレル少佐とディアス中佐率いる共和国の援軍と協力して反乱軍と交戦していった。
 そんな中、プライド摂政は未だにシーガルの反乱を黙認し、何かを待っているような様子だった。果たしてその狙いは?

 次回「シーガル 激進!」

 走り抜け、ライガー!!

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