ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーが新たな姿を得て進化したライジングライガーの力によって強敵セードとジェノスピノを打ち破り、新たな仲間を加え、再び地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第22話「シーガル 激進!」

 レオたちのいる軍事基地で、コリンズ中将とギレル少佐はシーガルとランド博士のいる基地の場所を特定した。

 

 「場所は第14地区にある火山地帯か……だが、そう遠くはないな。」

 

 「ですが、1つ問題が……」

 

 「何だ?」

 

 「先程、ハンターウルフ改が壊滅させた第七方面隊の基地を初め、火山地帯付近の基地を次々と襲撃していて、完全に封鎖している状態です。」

 

 「なるほど、まず先に基地の周囲を制圧して徐々に領土を広げ、防衛戦を張るつもりか…… となると、シーガル率いる反乱軍の本拠地のルートを封鎖しているハンターウルフ改を排除する必要があるが……ハンターウルフ改のライダーは誰だ?」

 

 「ザナドゥリアス少尉ですが……」

 

 「何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火山地帯の基地で、シーガルとランド博士がハンターウルフ改が第七方面隊と第八方面隊の基地を壊滅させた映像を見ていた。

 

 「流石は博士の育てたご子息ですな。」

 

 「この計画のために私は彼を育てたのだからな。」

 

 「ところで、同じくご子息であるメルビル少尉にはこの計画の全貌は話したのですか?」

 

 「いや、まだだ。彼女にはもう少し進行してから話す。先に話してしまうと少々ショックが大きいだろうからな。」

 

 そこにアルドリッジ少佐とスピーゲル中佐が戻り、

 

 「只今、戻りました。シーガル閣下!」

 

 「おお、戻ってくれたか。」

 

 「申し訳ございません。任務は失敗しました。」

 

 「構わんさ。既にオメガレックス完成の準備は整っている。ザナドゥリアス少尉がハンターウルフ改で帝国軍と交戦している。 お前たちも直ぐに出撃し、目一杯暴れろ!」

 

 「はっ!」

 

 シーガルから出撃命令を受け、再びドライパンサー、ファングタイガー改に乗り込みに向かうスピーゲル中佐とアルドリッジ少佐、その途中、アーマーの取り付け作業が終わっているオメガレックスを見掛けた。

 

 「うっひょ~! これがオメガレックスか!! 中々いいじゃないか。閣下と博士は誰をこいつに乗せるつもりなんだ。 ま、おれが乗れば、思う存分狙い撃って、あの小賢しいライオン種を滅多内にしてやるがな!」

 

 「止せ、アルドリッジ。オメガレックスは並みのゾイドじゃない。下手したら、命取りだぞ! それにお前が乗り換えたら、タイガーは一体誰が乗るんだ?」

 

 「は? 何言ってるんだ。絶大な力を行使することが真の帝国、そして強大な力を持つゾイドは帝国に必要な道具だ。より強いゾイドがいたら、そいつに乗り換えればいい問題だろ!」

 

 「でも、そんなことしたら、タイガーが可哀想だな。今まで一緒に戦っていたセードがジェノスピノに乗り換えていなくなった代わりに乗ってくれたのがお前だからな!」

 

 それを聞いたアルドリッジはスピーゲル中佐が通信を開いて何か通信機をいじっているのを見つけ、

 

 「黙れ! そういうお前は一体何をやっているのだ!?」

 

 「あ、失礼、誤解させたか。実は他の軍にも出撃するための指令を送ってな。いくら俺たち2人でも流石に帝国軍をまともに相手をさせるのはきついからさ。」

 

 「けっ、まあ、いい! とっとといくぞ!」

 

 「おいおい、階級が上の俺に命令するなよ。」

 

 スピーゲル中佐が咄嗟に隠した通信機の宛先にはある帝国要人の名前が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火山地帯周辺に近い帝国軍基地を襲撃しているハンターウルフ改の映像を見たコリンズ中将とギレル少佐は、

 

 「なんてことだ! かつて帝国のバーサーカーとしてジェノスピノでも猛威を振るったセードのみたいに襲撃してしまうとは……」

 

 「ザナドゥリアス少尉はランド博士の養子だ。おそらく博士の命令で動いているのだろう。」

 

 「出来れば、彼とは戦いたくなかったが、仕方あるまい。」

 

 「ギレル少佐! 共和国軍のディアス中佐から通信が入っています。」

 

 「繋げ!」

 

 「こちら、共和国軍のディアス中佐だ。」

 

 「ディアス中佐、一体何があったのですか?」

 

 「実は大統領閣下の元にもシーガルからの通信が入った。」

 

 「共和国大統領にもだと!?」

 

 「その通信を録音しているので、今からその映像を送る。」

 

 ディアス中佐の言葉と共にコリンズ中将とギレル少佐のいる基地にその映像が送られた。

 

 「シーガル!」

 

 「今のだらけた帝国を生み出した元凶である共和国よ!直ちに我々の正規な帝国軍に降伏せよ! さもなくば、まもなく完成するオメガレックスの力を見せつけられ、共和国は壊滅することになるだろう! 返事はオメガレックス完成までに待ってやる。」

 

 その映像を見たコリンズ中将とギレル少佐は、

 

 「なんてことだ! シーガルの奴、皇帝陛下だけでなく、共和国大統領にも宣戦布告をするとは!!」

 

 「しかし、オメガレックスとは一体何だ?」

 

 その質問に答えるようにシーガルの映像からディアス中佐の通信に変わり、

 

 「実は以前から、私の同僚のツガミ大尉がジェノスピノによる共和国侵攻以来から、あることを調べていた。」

 

 「あること?」

 

 「ああ、どうやらそれによると、ゾイドクライシス時にジェノスピノと同等かそれ以上の力を持つ強大なゾイドが世界の3分の1以上を壊滅させたということが記録で確認された。おそらくそれがオメガレックスかと……」

 

 「まさか、ジェノスピノ以外にもそんなゾイドがいたとは……」

 

 「信じられないかもしれないが、事実だ。もしそれが復元されたら、以前のジェノスピノ以上の脅威になるかもしれない。」

 

 「ランド博士め、全く何てことを!」

 

 「先程、大統領閣下から攻撃許可の命令の許可が出て、帝国軍と協力して制圧せよとのことで、今そちらに向かっているところだ。」

 

 「それは助かる。こちらも皇帝陛下の攻撃命令の許可が下り次第、出撃するつもりだ。」

 

 「では、そちらに着いたら、また連絡する。」

 

 ディアス中佐の通信を切った後、ギレル少佐は少し考えた。

 

 「どうした? ギレル少佐。」

 

 「いや、後は彼にどう説明すればいいか、少し迷っているんです。」

 

 「彼というと、レオ・コンラッド君のことか?」

 

 「彼には以前のジェノスピノ侵攻にも随分助けられたが、いくら実績があっても彼は軍人ではない。我々と違い、只の民間人で、しかも子供だ。

 これ以上、彼を巻き込むのは軍人である私のやるべきではない。出来れば、サリーの救出も全て我々の手でやらなければならない。」

 

 「それで、彼にどう説明すると……」

 

 「それは……」

 

 

 

 

 

 

 

 基地の個室で、バーンたちはギレル少佐たちからの報告を待っていた。そこにディアス中佐との通信を終えたアイセルとロックバーグ中尉が入り、

 

 「教官……いや、中尉。」

 

 「ディアス中佐によると、どうやら、ランド博士によって脱獄したシーガルが帝国に反乱を起こし、共和国にも宣戦布告してきたそうよ。」

 

 「シーガルって……確か、ジェノスピノを暴走させたっていう悪党か! 脱獄してまた反乱起こすとは、懲りねぇ奴だな。」

 

 「先程、大統領閣下から攻撃命令の許可が降りて、帝国軍と合同でそれを鎮圧する作戦で、後は帝国の皇帝陛下の攻撃命令の許可が下り次第、出撃するつもりよ。」

 

 「てことは、俺たちも出撃するのか?」

 

 「あなたはそもそも帝国の脱走兵だから、出撃する必要はないでしょ? それにまだ帝国のお尋ね者だし。」

 

 「あ、そうか。レオと同行してて忘れていたが、俺たちまだ帝国軍に追われていたんだった。」

 

 「てことは、俺たちは静観ってことだな。俺のキャタルガは戦闘向きじゃないし……」

 

 「とかなんとか言って、本当はただ、戦闘に出たくないだけだろ?」

 

 「ところで、レオはどうしたの?」

 

 「1人で考えたいといって、ライガーのいるところまで言っちゃったけど……」

 

 「多分、拐われたサリーのことが気掛かりかも知れねぇな……」

 

 

 

 

 

 バーンたちのいる部屋から離れて、レオは倉庫でライガーの足元で座り込み、黙りこんでいて、サリーの言葉を思い出していた。

 

 「サリー……」

 

 「(私はあなたと会えて良かった。あの時、レオと会っていなかったら、帝国軍に捕まっていたかもしれないし、ずっと1人のままだった。

 でも、レオのおかげで、私はこうして沢山の仲間に会えた。例え、どんなことがあっても私はレオから離れない。それにもし、私が捕まっても、レオははきっと助けに来てくれる。私はレオを信じているから!)」

 

 「サリーがあれだけ信用していたのに、俺はサリーを守ってやれなかった。

 アンキロックスも救ってやれなかった……そんな俺がサリーを守ることなんてできなかったんだ。」

 

 グルル……

 

 「ライガー、本当に俺はダメな奴だよ。1人の女の子を守れない、一体のゾイドも救うことが出来ない。 こんなんじゃ、父さんに顔向け出来ない。」

 

 落ち込むレオにライガーは片足でレオを取っ払った。

 

 「痛っ! ライガー、一体何するんだよ!?」

 

 突然のことにレオは怒りだすが、ライガーは何かを訴えるかのようにレオを睨み付けた。

 

 「ライガー……」

 

 グルル……

 

 「ライガー、俺を励ましたいのか。でも、だからって、サリーを守れなかった俺がサリーを救うことなんて出来ない。やっぱり、俺はお前の相棒には相応しくなかったんだ!」

 

 ガオォー!!

 

 落ち込むレオにライガーは力強く吠え、レオはその衝撃で倒れ、ライガーは再びレオを睨み付けた。

 

 「ら、ライガー……そうだ。俺はアンキロックスを救えなかった。だから、サリーは俺が守るって決めたんだ。

 こんなところでたち止まっていてもサリーは喜んでくれない。ありがとう! ライガー。お前のおかげで目が覚めたよ!」

 

 グルル……

 

 それを聞いたライガーは安心したような表情をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第八方面隊の基地を破壊したユウトはハンターウルフ改から降り、少し考え込んでいた。

 

 「親が誰なのか、僕が何処から来たのか、僕は何も覚えてなく、覚えることもなく、僕はずっと博士の元で育っていった。

 メルビルと一緒に孤児院にいた僕を拾ってくれた博士は最初は迎えに来てくれた僕の本当の父さんと信じ、慕ってきた。

 けど、博士は僕の秘密なんて一言も喋ってくれなかった。そして、あの部屋にあるあの写真に映っていた少女は間違いなくサリー……そして、その隣にいた少年はあいつに似ていた。

 今思えば、僕がサリーに初めて会った時に僕にサリーを推薦させるよう命じたのも、サリーを新型ゾイド開発の科学者に任命させたのも博士だった。

 サリーが博士の娘なら、あの時、何かと博士に目をつけられていたのも説明がつく。

 でも、もしそうなら、僕は一体誰の子供なんだ。なんで博士は僕を息子にしたんだ? 僕は何のために選ばれたんだ? 答えが知りたい、その答えがわからなきゃ、僕は何のために戦っているのか、わからない……」

 

 その時、突然、第11方面隊の基地に何か爆発したような音がし、それに気付いたユウトは双眼鏡でそれを見た。そこには、ドライパンサーとファングタイガー改が基地を襲撃していた。

 基地のバズートル隊がファングタイガー改に向けて、一斉砲撃をするが、タイガー改は無傷だった。

 

 「そんな攻撃びくともせんわ! ファングタイガー、兵器 解放! マシンブラストー!! デスファング!」

 

 マシンブラストを発動したファングタイガー改は目の前のバズートル隊を一瞬で壊滅させた。

 

 「フン、手ごたえのない奴らだ。」

 

 「基地を何としても死守せよ!」

 

 指揮官の命令を受け、数十体のキャノンブルが立ちはだかり、マシンブラストを発動して、一斉砲撃を行うが、ファングタイガー改はそれをすんなり回避し、銃撃を加えながら、キャノンブルの攻撃を妨害してその隊に迫り、デスファングで次々と破壊していった。

 

 「今の帝国がこの程度の力しか持たないとは、やはり見限って正解だったようだ。」

 

 その様子を見ながら、他の部隊と交戦しているスピーゲル中佐は、

 

 「アルドリッジの奴、随分張り切っているようだな。ま、そうでなきゃ、張り合いがないがな!」

 

 「撃てー!!」

 

 「おっと、」

 

 スティレイザーの砲撃を難なく回避したドライパンサーは攻撃の姿勢を取った。

 

 「なら、こっちもいっちょやるか! ドライパンサー、兵器 解放! マシンブラストー!! ドライスラッシュ!」

 

 マシンブラストを発動したドライパンサーはファングタイガー改に勝るとも劣らない機動力でスティレイザーの隙を作って足と兵装を破壊していった。しかし、同時にアルドリッジと違い、敢えてコクピットは破壊しなかった。ドライパンサーの凄まじい攻撃によって、スティレイザーのライダーは次々と降りて離脱していった。その様子を見たユウトは、

 

 「アルドリッジ少佐とスピーゲル中佐が彼処まで戦っているなんて……シーガル准将はこの戦いは革命と言っていたけど、もしかしたら、この戦いに博士が僕を選んだ本当の目的がわかるかも!」

 

 そう思い、ユウトは再びハンターウルフ改に乗り込み、別の基地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火山地帯の牢屋の中で、サリーは抱え込んでいた。

 

 「私がまだ、幼い頃、お父さんはゾイドの研究のためにピーターと一緒に私の前から姿を消した。その後、お爺さんはお父さんとピーターは死んだと言っていたけど、まさか、本当に生きていたなんて……それもピーターを捨てたなんて……お爺さん、レオ、私はどうしたらいいの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティの移民船の中にある帝国議会にハワード宰相が立ち寄った。

 

 「皆さん、全員揃いましたな。 今回お集まり頂いたのは他でもない。シーガルの反乱についてのことです。

 今回、フィオナ皇帝陛下はまだ公に出られないため、私が代理として出席させていただきます。今回の反乱については私は全面的な徹底抗戦を軍に命じ、既に皇帝陛下からもその許可は出ている。後は議会の承認のみですが、何か異論は?」

 

 1人の貴族院議員が手を上げ、

 

 「宰相殿、1つよろしいでしょうか?」

 

 「何でしょう?」

 

 「フィオナ皇帝陛下はまだ若く、公に出られないのは当然ですが、何故このような緊急の時に摂政であるプライド卿が御出席されていないのですか?」

 

 「それに関してですが、以前からプライド摂政に何度も通信をしているのですが、全くの応答がなく、やむなく摂政殿不在で、行うことが決定されました。」

 

 「バカな! プライド卿は摂政に就いて、何度も我が帝国のために尽くし、政務も全て行ってました。そのプライド摂政が欠席なさるのはおかしい。決議は摂政が来るまで待った方が……」

 

 「私も同感です! 摂政殿無しで、我々の判断で決めるのは不公平です。それまで待ちましょう。」

 

 「宰相殿、決議はもう少し待たれては……」

 

 「皆さん、しばし、お待ちを……確かに摂政殿が不在の状態で決めるのは不公平です。 しかしそれでよろしいのですか?」

 

 「どういうことですか?」

 

 「この非常事態なのですよ! いくら待っても何の報告も無しに通信に応じないのなら、我々の判断だけで決めなければならないこともあるのです! もし、その間に待って、シーガルの反乱軍がネオゼネバスシティに進攻したら、どうするのです!? それはあなた方の判断ミスになりますよ。」

  

 「しかし!」

 

 「未だ若くとも、フィオナ陛下はこの帝国の皇帝です。既に皇帝陛下は迅速な対応としてこの私に軍の出撃命令の許可を出しています。 皇帝陛下の命令が出ているなら、それでいいではありませんか!

 後は議会の承認だけです! 私は反乱軍鎮圧のための出撃命令を実行する! 異論はありませんか!?」

 

 その言葉を聞いて少し考える議員たち、

 

 「確かに、これは摂政殿の許可があろうとなかろうと、既にわかりきったことです!」

 

 「そうです! 第一、反乱の首謀者は前回のジェノスピノ侵攻作戦で反乱を起こし、極刑にまで処されたあのシーガルです。おまけに共和国にまで宣戦布告までして再び戦争を引き起こす愚行までやるあの男に最早心を許す必要はありません!!」

 

 「私も賛成です!」

 

 「直ちに軍に出撃命令を下すべきです!」

 

 「全員の意見が一致したようなので、私は直ちに帝国の英雄コリンズ中将に伝えます。」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第八方面隊の基地が襲撃された報告はギレル少佐にも届いた。

 

 「くそ、反乱軍にはアルドリッジにスピーゲル中佐までいるのか! コリンズ中将、本国からの命令はまだですか?」

 

 「まだ、連絡がないが……」

 

 「コリンズ中将、ギレル少佐、本国にいるハワード宰相から通信が入りました!」

 

 「ハワード宰相から?」

 

 コリンズ中将とギレル少佐はハワード宰相からの通信に応じた。

 

 「コリンズ中将、ギレル少佐。たった今、議会の承認が出た。これより、君たちは反乱軍鎮圧のための出撃命令を下す!」

 

 「了解しました!」

 

 「ところで、ハワード宰相。」

 

 「何だ?」

 

 「今回の命令に何故、プライド摂政ではなく、あなたの指揮になったのですか?」

 

 「どういうわけか、摂政は私の通信に全く応じず、しかも議会にも欠席した。だが、何が起ころうと我が帝国は共和国と共に平和を守るために戦う。 君たちもそれに肝に命じておけ!」

 

 「はっ!」

 

 「ギレル少佐、共和国軍がこちらに到着しました!」

 

 「よし、来たな。」

 

 「ギレル少佐。」

 

 「はいっ!」

 

 「私はこのことを他の基地にいる隊にも伝える。君は共和国軍の元に……」

 

 「わかりました!」

 

 「各方面の基地に伝える! 本国から反乱軍鎮圧のための出撃命令が出た。各方面の基地は直ちに出撃準備を!」

 

 コリンズ中将の通信は各方面の基地の軍に行き渡り、次々と出撃の準備をしていた。

 そして、その中にはリュック大尉、シェル軍曹、ノックス大尉もいてそれぞれのゾイドに乗り込んだ。

 

 「全く、こんな形で軍から命令が来るとは!」

 

 「久々の出撃がまさか、帝国内の反乱とはな。」

 

 「只でさえ、ブラッド元二等兵の問題もあるのに、また裏切り者が出るとは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディアス中佐の乗るトリケラドゴス改とツガミ大尉乗るステゴゼーゲ改率いる共和国軍は基地に到着し、それを歓迎したギレル少佐の元にトリケラドゴス改から降りたディアス中佐が立ち寄った。

 

 「お待ちしてました。ディアス中佐。まさか、あなたと共闘する日が来るとは……」

 

 「今までは、敵としてだったが、今回は違う。我々は君たち帝国軍とこの世界の平和のために戦うつもりだ。」

 

 「私のスナイプテラを最初に敗ったあなたとトリケラドゴス改の力、もう一度見せてもらいますよ。」

 

 「もちろん、ジェノスピノの時のヘマはやらかしはしない。」

 

 「ディアス中佐、お待ちしておりました。」

 

 そこにロックバーグ中尉とアイセルも現れた。

 

 「ロックバーグ中尉、アイセル少佐、君たちも来てくれたか。よし、我が軍はこれより直ちに帝国軍と共に反乱軍の基地に向かう。」

 

 「待ってください!」

 

 声を上げたのはレオだった。

 

 「レオ……」

 

 「俺も一緒に連れてきてください。」

 

 「駄目だ! これは帝国と共和国の問題だ。君は出撃する必要はない。」

 

 「でも、これまで何度も一緒に戦ってきたじゃありませんか!」

 

 「今回は以前のジェノスピノと違い、本格的な戦争だ。ましてや、軍人ではない君まで巻き込むつもりは……」

 

 「いえ、一緒に連れてきてください! お願いします!」

 

 「レオ……」

 

 「サリーは、サリーは俺の手で守らなきゃならないんです。サリーは俺を信用していたけど、俺のミスで、サリーは拐われてしまった。

 それは俺のせいなんだ。こんなところで、ただじっと見ているだけじゃ駄目なんだ! ライガーは俺に言ってくれた。サリーは俺の力で救ってやれと、

 だから、お願いです! 俺も一緒に連れて行ってください!!」

 

 「レオが行くなら、俺たちも一緒に行くぜ!」

 

 「バーン、バズ!」

 

 「レオにはちょいと手を焼いているからな。その世話は俺に任せろ。

 それに俺は未だ、帝国の脱走した犯罪者だからな。罪滅ぼしも兼ねて、俺たちも出撃するぜ! な? バズの旦那。」

 

 

 「う~ん、まあ……俺は出来るだけ、戦闘は避けたいが……レオ1人行かせる訳には行かないだろうからな。」

 

 「そういうことだ。文句はないか? ギレル少佐。」

 

 「なるほど、まさか、裏切りの君までくわわってくれるとは……いいだろう。なら、君のその腕、確かめさせてもらうぞ! 但し、レオの監視は任せる。」

 

 「ああ、俺とフォックスの力を見せてやるぜ!」

 

 「では、我々はこれにより、各方面の基地の部隊と合流しながら、シーガルの率いる反乱軍のいる火山地帯の基地に向かう。全軍出撃だ!」

 

 「オオォー!!」

 

 全ての帝国、共和国の兵士がゾイドに乗り込み、反乱軍のいる火山地帯の基地に向かう中、レオはライガーのコクピットの中で拳を握りしめた。

 

 「待っていろ、サリー。必ず助ける。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティの別荘にいるプライド摂政はシーガルがフィオナ、クレストウッド大統領に送った映像を見ていた。

 

 「ふん、シーガルの奴、随分デカく出たな。 ま、そのおかげで、ジェノスピノ侵攻作戦から止まっていた帝国と共和国の動乱は再開されたわけだ。

 このまま帝国、共和国の矛先がシーガルとランドに向けてくれれば、こちらの計画は第二段階に移行できる。ランドがオメガレックスの完成に力を注いでくれてるおかげで、こちらも既に新型ゾイドの開発は完了している。後は帝国、共和国がシーガルらに集中している間までに奴が戻ってくれるだけだが……まあ、奴の心配はないか。

 それにしても、こんな非常事態でもわざわざ議会の承認が必要とは……皇帝であるフィオナもまだ小娘で公に出られんとは、やはりこの帝国はまとまりがない。本来帝国とは絶対的な力と神のごとき存在の者が皇帝として支配する国家なのだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火山地帯の基地では、シーガルが基地にいる全ての兵士に向かって演説していた。

 

 「諸君、我々はこれにより、帝国、共和国の連合軍と徹底抗戦に挑む。だが、これは反乱ではない、革命だ!

 腑抜けた帝国の上層部を目覚めさせ、真なる帝国をと戻そうではないか!!」

 

 「オオォー!!」

 

 そんな中、メルビルはその様子を悲しそうな表情で見ていた。

 そして、基地の作業室ではアーマーの装着が完了し、オメガレックスの完成がいよいよ秒読み段階にまで入っていた。その様子を見ていたランド博士は、

 

 「遂に完成する。この地球で復活した崇高なる荷電粒子砲を愚かな連合軍に見せてやる! フフフフフ……フハハハハハハ!!」 

 

 

 

 

 

 オメガレックスの完成が近くなったことに不気味な笑いを上げるランド博士、そして、その事を知らずに火山地帯の基地に向かって、海岸沿いを通るレオたちと帝国、共和国の合同軍。その時、ある帝国兵が海岸を見て、何か異常に気付いた。

 

 「お、おい! 海岸、海岸を見てみろ!」

 

 1人の帝国兵の通信に応じたもう1人の帝国兵は海岸を見るが、何もなかった。

 

 「あ? 何だ。何も見えねぇぞ!」

 

 「いや、さっき何かいたんだ! 何かとてつもないデカイ奴が!!」

 

 「デカイ奴? 何いっているんだ!? そんなもんいるわけねぇだろ!」

 

 「そうかな……気のせいではないような気がするんだが……」

 

 合同軍が通りすぎた後、海中に巨大なゾイドが潜行していて、合同軍とは正反対のルートを通っていて、その先にはネオゼネバスシティがあった。

 

 To be continued




 次回予告

 徐々に復活が近付いていくオメガレックス、レオやギレル少佐たち帝国、共和国の合同軍はオメガレックス復活の阻止のためにシーガル率いる反乱軍との全面交戦に挑み、火山地帯の基地に向かっていく。
 だが、その時、スチールエリアでレオとライガーに倒されたはずのセードとジェノスピノが完全修復された状態でネオゼネバスシティに現れ、襲撃してきた。
 一体何故? そして、その時に起こすプライド摂政の動きとは?

 次回「復活、灼熱ノ斬撃龍」

 走り抜け、ライガー!!

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