ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーが新たな姿を得て進化したライジングライガーの力によって強敵セードとジェノスピノを打ち破り、新たな仲間を加え、再び地球再生のための冒険の旅に出掛けた。 


第26話「ソレゾレノ 進ム道」

 ネオゼネバスシティの移民船ではフィオナと共に亡命したジーンの代わりにシーガルの命令で侍女になった者は残っていたフィオナの礼服をメルビルに着させ、シーガルはメルビルを真帝国の皇帝とする戴冠式の準備に取り掛かっていた。

 

 「う~ん、流石に前皇帝と同じ色じゃ、ありきたりすぎてつまらないわね。やっぱりハンナ様に相応しい青にしたほうがいいわね! ねぇ、ハンナ様?」

 

 しかし、メルビルは侍女の問いかけに応じず、不服な表情をしていた。

 

 「どうなされました? せっかく孤児の生活から脱け出して皇帝にまでなられたのに、何処か不満でもあるんですか?」

 

 「あります。 いくら、私が先代皇帝の血を引いているからって、これは帝国への反逆です! そして、私も立派な反逆者です!」

 

 「でも、今回の作戦が成功すれば、真帝国は正式な帝国となり、あなたも正式な皇帝になり、逆に前皇帝のフィオナは反逆者となる。それでよろしいじゃ、ありませんか!」

 

 「よろしくありません!! こんなこと許されることではありません!」

 

 「あらまあ、随分お優しいこと……いや、御人好しというべきでしょうか。こんな者を皇帝にする真帝国も所詮たかが知れています。」

 

 「?? どういうことですか?」

 

 「あなたは何も知らないだけです。何故なら、あなたは確かに先帝の血を引きますが、真のゼネバス皇帝の血筋の者は他にいますからね。」

 

 「……?」

 

 侍女の言葉に疑問を抱くメルビルの元にシーガルが入り、

 

 「おい! まだ終わらんのか!?」

 

 「もうしばらくです。 それに閣下、今はハンナ様のお着替え中ですので、立ち入りはご遠慮ください。」

 

 「とにかく、早くしろ! 今日は我が真帝国の記念すべき日になるのだからな!!」

 

 そう言って退出するシーガル、

 

 「さて、ハンナ様、国民の皆様がお待ちしておりますので、急ぎましょう。」

 

 「……」

 

 

 

 

 

 

 

 戴冠式の時間が来た時、真帝国軍兵士は帝国市民を強制的に移民船にある宮廷の広場に誘導され、そこにシーガルと正装に着替えられたメルビルの姿はあった。

 正装姿はフィオナと来ていたのと似てはいるが、フィオナと違い、青色であり、また、普段の軍服姿とはガラリと変わり、フィオナ同様、先帝の血を引くかのような上品な姿になっていて、真帝国軍兵士に渋々従った帝国市民はその姿に惹かれた。 そして、シーガルが帝国市民の前に演説を始め、

 

 「諸君、いよいよ我が真帝国の正式な樹立を始める。真帝国が誇る最強のゾイドであるオメガレックスが共和国を滅ぼし、我らのハンナ様が治める真の帝国がこの地球に君臨するのだ! さあ、今こそ、称えよ! 真帝国を! そして、ハンナ様を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオヘリックシティの大統領官邸で、ハワード宰相の言葉に気になっていたフィオナはハワード宰相に問い掛けた。

 

 「ハワード宰相、やっぱりあなたは知っていたんですか!?」

 

 「ええ、今まで陛下に御兄弟が居られないといっていましたが、あれは嘘です。

 実はあなたには姉上様がいたのです。それがあのハンナ・メルビルです。」

 

 「どうして、その事を今まで黙っていたのですか!?」

 

 「それは、ハンナ殿下はあなたの姉上様ではあるのですが、実は腹違いの姉なのです。」

 

 「腹違い……」

 

 「あなたは先帝イヴィル陛下の正室の娘なのですが、実は先帝陛下には側室が居られ、その間に生まれたのがハンナ殿下なのです。

 しかし、側室の娘を皇位継承者にすることは周囲の反発が強く、そしてあなたが生まれた時、帝国の反乱の引き金を引く要因にされる危険性があったため、ハンナ殿下をどうするか、先帝陛下と共に対策を練っていましたが、ある者がハンナ殿下を皇族の縁を切り、その権利を奪って孤児院に入れさせることを提案されたのです。」

 

 「そ、そんなことを……」

 

 「もちろん先帝陛下は断固拒否したのですが、帝国を二分させないために、やむなくハンナ殿下を犠牲にするという選択肢を選ばねばならなくなり、写真も処分したのです。 それがまさか、反乱軍に拾われることになり、処分したはずの写真まで残っていたとは……」

 

 「それで、それを提案したのは一体誰ですか?」

 

 「その者の名は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティのプライド摂政の別荘、サリーは牢屋から別荘の個室に移動され、窓からメルビルの真帝国皇帝即位の戴冠式を見ていた。そこにプライド摂政が入り、

 

 「決心はついたのか?」

 

 「……」

 

 「ふ、まあ、そう焦ることではない。もうしばらく考える時間はある。だが、決断は時には早める必要があるぞ。」

 

 

 プライド摂政が部屋を去った後、サリーはレオに言った言葉を思い出した。

 

 「(私はあなたと会えて良かった。あの時、レオと会っていなかったら、帝国軍に捕まっていたかもしれないし、ずっと1人のままだった。

 

 でも、レオのおかげで、私はこうして沢山の仲間に会えた。例え、どんなことがあっても私はレオから離れない。それにもし、私が捕まっても、レオははきっと助けに来てくれる。私はレオを信じているから!)

 レオ……ごめんなさい……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオヘリックシティの大統領官邸、

 

 「まさか、現皇帝フィオナ陛下に姉妹がおられたとは!」

 

 「大統領! グズグズしている暇はありません。一刻も早く真帝国を叩きませんと!」

 

 「わかっている。」

 

 「大統領閣下!」

 

 「何だ!?」

 

 「ネオゼネバスシティから通信が開いています。」

 

 「繋いでくれ。」

 

 通信を開いた時、その相手はシーガルだった。

 

 「ご機嫌よう、大統領。」

 

 「シーガル、一体何の用ですか?」

 

 「もちろん、要求です! 既に我らのハンナ様は我が真帝国の皇帝となられた。最早、帝国は我々のものになったのです!」

 

 「だが、それは我が共和国は認めない!」

 

 「認めなくても構いません。何故なら、今日は共和国最後を決める日になるのですから。」

 

 「何!?」

 

 「我々の要求はただ1つ、貴国に亡命している前皇帝フィオナと元宰相ハワードをこちらに差し出し、我が真帝国に無条件降伏することです。」

 

 「断ったら、どうするのだ?」

 

 「かつて、私が以前ジェノスピノによる共和国侵攻作戦を進めたように、今度はオメガレックスによる侵攻作戦を開始します。」

 

 「何だと!?」

 

 「もちろん、我が真帝国に降伏すれば、市民の安全は保証します。ただ、我が真帝国に全ての領土の明け渡し、武装解除をしなければなりませんがね。」

 

 「そんな不当な要求は認めんぞ!」

 

 「でしたら、共和国はオメガレックスによって破壊されることになります。それでよろしいのですか?」

 

 「大統領……」

 

 「構わん!! 我々は貴様の愚かな要求に従うほど、愚かではない! それに貴様らがまた再び我が共和国を襲うのであれば、我々がそれを叩き潰してやる!」

 

 「では、交渉不成立ということでよろしいですね。共和国が我が真帝国のオメガレックスによって滅ばされる日を楽しみにしていますよ。」

 

 シーガルは直ぐに通信を切り、

 

 「大統領……」

 

 「ギャレット大将、ディアス中佐。」

 

 「はっ!」

 

 「遂にあれを使うときが来たようだ。直ぐに帝国軍と共に作戦行動に入れ!」

 

 「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオヘリックシティの軍事基地で、シーガルの真帝国建国宣言の演説を見たレオたちは驚きを隠せなかった。

 

 「しっかし、驚いたな! まさか、ランド博士側に皇帝の娘がいたなんてな。これで益々俺たちは帝国のお家騒動に巻き込まれるわけか。」

 

 「あの時、私のパキケドスと戦ったあのギルラプターが皇位継承者だったなんて、気付かなかったわ。 だから、あのランドとかいう博士は彼女を助手にしてたのね。」

 

 「けど、一番問題なのは、あのオメガレックスだろ? 俺とフォックスはあの場にはいなかったから、助かったけど、あんなものを諸に受けたら、いくら光学迷彩の相棒でも人溜まりもないぜ。」

 

 「確かに今の真帝国にとって、一番のバックは彼女ではなく、オメガレックス。あのゾイドがいる限り、真帝国は益々増長するわね。しかも、近接戦闘向きだったジェノスピノと違い、遠距離戦向きのゾイドだから、以前のようにはいかないわ。」

 

 「心配すんなって、それでもレオとライガーはあのジェノスピノを倒しているんだぜ! オメガレックスだって倒せるさ。なあ、レオ! レオ?」

 

 バズの呼び掛けに応じず、レオは静まり返っていた。

 

 「どうした? レオ、しらけちゃって。」

 

 「俺、どっちを選べればいいのかわからないんだ。あの時はサリーを助けることに精一杯だったから、オメガレックスのことなんて上の空だったけど、あの荷電粒子砲の威力を見て思ったんまだ。

 もし、このままオメガレックスを放っておいたら、帝国と共和国は滅んでしまう。だから、帝国と共和国の皆も助けなきゃって思った。

 でも、こうしている間にもサリーはずっと不安になっている。彼処でサリーがどんな目に遭わされているのか知らない。

 きっとサリーは俺がいなくて苦しくて、怖い思いをしている。そんなところに一分一秒も置いていけない。けど、帝国と共和国の皆も放ってはおけない。俺はどっちを選べばいいんだ?」

 

 「全く、相変わらずガキだな!」

 

 「!? な、何だと! バーン、俺がガキだって!?」

 

 「当たり前だろ! お前は俺たちと比べたらまだガキだぜ! そうじゃないのか?」

 

 「そ、それは……」

 

 「それによ、状況を考えれば、どっちを選べばいいのか一目瞭然だぞ! 仮にお前がサリーを優先して助けに行った場合、サリーがいるのは帝国の首都のど真ん中だ。帝国の本隊と戦わなければならない。

 例え、侵入に成功したとしても、そこは真帝国の本拠地にして独壇場、当然罠はある。そうなったらサリーみたいに捕らわれるのがオチだ。それでも行くのか?」

 

 「うっ……」

 

 「まあ、お前がどっちを選ぶかは自由だが、残される仲間のことを考えなければ、捕らえられた仲間を救うことは出来ないぜ?」

 

 「……!!! ごめん、俺、またカッかして……」

 

 「心配することはないわよ。レオ! サリーが心配なのは私たちも同じなんだから。 それにここで焦ったら、何も出来ないわよ。」

 

 「そうよ、レオ。先ずはオメガレックスを倒すことが先よ。今、真帝国が正式な国家と名乗れるようになっているのはそもそもオメガレックスの力があるから、あれさえ抑えることが出来れば、真帝国は最大の戦力を失い、大打撃を与えられる。 

 そうなれば、帝国と共和国の合同軍で真帝国を袋のネズミにして、一気に抑えられ、サリーを助けることだって出来るわ。」

 

 「そうか! オメガレックスさえ倒せば、真帝国は力を失い、合同軍と一緒にサリーを助けることが出来る。

 そうだ、ありがとう。バーン、ロックバーグさん、俺、俺のやるべきことがわかったよ! 

 俺は帝国と共和国の皆を助けるためにオメガレックスを

倒す。そして、サリーを必ず助けてみせる!」

 

 「ようやく、腹が決まったようだな。」

 

 レオの決心がついた時に、ディアス中佐とギレル少佐がレオたちのところに現れ、

 

 「レオ、バーン、ロックバーグ中尉。実はオメガレックスに対する作戦会議を始めるのだが、来てくれないか。」

 

 「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティの移民船の倉庫で、ランド博士はオメガレックスに取り付けていたジェネレーターパーツの最終チェックを終えていた。

 

 「フフフ、これでいい。これで何者もオメガレックスを止めることは出来ない。ペンダントがある限り、オメガレックスは史上最強のゾイドなのだ。」

 

 「随分と楽しくやっているようだな。」

 

 そこに現れたのはプライド摂政だった。

 

 「摂政……」

 

 「オメガレックスの最終調整は終わったのか。」

 

 「はい、これで、オメガレックスは万全の状態になり、文字通りこの星に君臨する真の破壊龍となりました。」

 

 「そうか。ところで、貴様は出撃しないのか? オメガレックスの力を存分に見れるチャンスだぞ!」

 

 「出来れば、そうしたいが……だが、いくら疑似ゾイド因子を注入したこの腕を持ってしても、老いには勝てない。」

 

 「なるほど、老いとは恐ろしいものだな。肉体が衰え、疲弊するだけでなく、思想すら枯らしてしまうとは……」

 

 「もっと若ければ、ゾイドに乗り、存分にその力を使えるのだが……」

 

 「なら、若い姿になれば、いけると言うのか?」

 

 「そうだ。」

 

 「ほぅ、面白い。なら、試してみようか。」

 

 「何!? どういうことです!」

 

 「だから、若返らせるのだよ。全盛期の貴様がそれほどの力を持つのかどうかをな。」

 

 「馬鹿な! そんなことが……」

 

 「どうした? ゾイドに乗って、思う存分暴れたいと思わんか?」

 

 「(こいつは一体、何を考えているのだ?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クレストウッド大統領の命を受けたギャレット大将とディアス中佐は真帝国のオメガレックスに対抗するための対策を練、ディアス中佐はツガミ大尉を初めとする共和国軍将校とギレル少佐を初めとする帝国軍将校、そしてレオたちを集め、オメガレックスに対抗するための作戦会議を開き、その対策を話した。

 

 「前回の火山地帯での戦闘においてオメガレックスの戦闘力は極めて強大と推定される。

 このまま放置すれば、かつてのゾイドクライシスと同じ惨劇が起こるのは必須…… そこで大統領閣下は密かに共和国軍が開発していた禁断の兵器の使用を検討し、議会からもその承認を得た。」

 

 「その兵器とは?」

 

 「ロングレンジバスターキャノン強化型とグラビティキャノンだ。」

 

 「オオ~!!」

 

 それを聞いた帝国軍将校は驚きを隠せなかった。

 

 「ロングレンジバスターキャノンとグラビティキャノンといえば……かつて惑星Ziでの共和国が誇る最大最強のゾイド、ゴジュラスとウルトラザウルスが装備していた伝説の武器。

 特にグラビティキャノンはあのデススティンガーやデスザウラーに対抗するための武器として使われたとも聞いたぞ!」

 

 「まさか、共和国は密かにそんなものを再現していたとは!」

 

 「両兵器共、我が共和国が万が一、かつて惑星Ziを壊滅に陥れたあの忌まわしき存在であるデスザウラーと同等のゾイドが出現した場合のことを想定して開発したものだが、帝国軍とのパワーバランスを崩さないために帝国軍との戦争では使用しないよう、しばらく禁断の兵器として封印していた。

 だが、今の我が共和国及び帝国軍にあのオメガレックスを対抗できるゾイドは存在しない。そこでこの両兵器を投入することにした。

 試作段階ではあるが、両兵器はかつてゴジュラスやウルトラザウルスが装備していた旧型のデータを元に、大型ゾイドだけでなく中型ゾイドにも装備可能なようによりコンパクトに改良した。

 だが、グラビティキャノンはウルトラザウルスが装備していたのと同等のエネルギーを圧縮することは不可能となり、やむなくパワーを落とした状態に改造はしたものの、それでも強大なパワーに変わりはなく、未だ未完成のままで、とてもオメガレックスの侵攻までには完成出来ない。」

 

 「では、どうするのだ?」

 

 「そこで、我々はロングレンジバスターキャノン強化型を使用した作戦に出る。このロングレンジバスターキャノン強化型はグラビティキャノンと違い、かつてゴジュラスが装備していたのと同等のエネルギーの圧縮に成功しただけでなく、それの数倍以上のエネルギーまで凝縮させることにまで成功した。

 そのため、連射こそは出来なくなったものの、グラビティキャノンと比べ、弾数に余裕がありかつ旧型の強化版として中型ゾイドにも扱えるようになった。

 オメガレックスの装甲がどれ程までかは不明だが、こいつでオメガレックスのゾイドコアを撃ち込み、機能停止に追い込ませる。」

 

 「オオ~!!」

 

 「ところで、ギレル少佐。オメガレックスのゾイドコアが何処にあるか特定出来るか?」

 

 「ランド博士がジェノスピノを復元した時に知ったのだが、ジェノスピノのゾイドコアは胸部にあることが判明し、恐らくオメガレックスも同じ場所に位置していると推定される。」

 

 「そうか……ロングレンジバスターキャノンは当初、グラキオサウルスに装備させる予定だったが、大型ゾイドだと、その位置にあるゾイドコアを狙うのは流石に不可能か……」

 

 「かといって、いくら中型ゾイドに装備出来るようにコンパクトに改造したものでも、それほどのものを俺のスナイプテラに装備していては、機動性が落ちてしまう。 そちらに装備可能な中型ゾイドはいないのか?」

 

 「私のトリケラドゴス改とツガミ大尉のステゴゼーゲ改はオメガレックスの荷電粒子砲の影響で、かなりの損傷を負い、とても戦闘に出せる状態ではない。

 ロックバーグ中尉のパキケドスBRもいるが、既に重武装ゾイドを更に武装させたら、機動性がかなり落ちてしまう。」

 

 「では、我が隊のキャノンブル、スティレイザーに装備させるのは?」

 

 「直接、オメガレックスのゾイドコアに撃ち込む必要があるため、出来るだけ足の速いゾイドに装備させなければならない。果たしてキャノンブルとスティレイザーの足で何とかなるのか……」

 

 「俺がやります!」

 

 堂々と声を張り上げたのはレオだった。

 

 「レオ……」

 

 「いないのなら、俺にやらせてください! 俺とライガーなら出来ます!」

 

 「確かにジェノスピノを倒した功績とロックバーグ中尉のパキケドスBRのシミュレーションから考えたら、君のライジングライガーこそが一番適任になる。

 だが、今回の作戦は以前のスチールエリア戦とは違う。何故なら、相手のオメガレックスにはあの最強の兵器、荷電粒子砲を備えている。

 ジェノスピノと違い、あれを1発でも喰らえば、いくら君のライジングライガーといえども、一瞬で消されてしまう。そうなったら、君の命の保証はない!」

 

 「わかっています! でも俺、やっとわかったんです。以前の火山地帯での戦いで、俺はサリーのことばっかり考えていてオメガレックスがどれ程のゾイドなのか、全く知ろうとせず、1人で基地に突っ走って結局皆にまた迷惑をかけて、ジェイクの助け無しでは、彼処から脱出することは出来なかった。

 それでわかったんです。オメガレックスを倒して、共和国や帝国の皆を助けないと、サリーを助けることなんて出来ないって!

 だから、お願いです! ロングレンジバスターキャノンは俺とライガーにやらせてください!!」

 

 「レオ……」

 

 ディアス中佐がしばらく考える中、ロックバーグ中尉とバーンも声を上げ、

 

 「ディアス中佐、彼にやらせてください。 彼の安全は私が保証します!」

 

 「もちろん、レオには俺もいるぜ! 俺とフォックスの援護なら、絶対に成功させてみせる!!」

 

 「わかった。では、ロングレンジバスターキャノンの装備はレオのライジングライガーにする。異論はないか?」

 

 それにギレル少佐とツガミ大尉が声を上げ、

 

 「異論はない。彼の実績は私も知っている。何せ、彼は共和国だけでなく、我が帝国の救世主でもある。再び救世主になってくれるなら喜んで協力する。 それに航空での援護は私とスナイプテラの得意分野だからな。」

 

 「私も同感だ。彼は民間人とはいえ、ライジングライガー共に軍人である我々より、多くの可能性を秘めている。となると、適任は彼以外にいません。

 むしろ一番心配なのは、二等兵になったばかりで、まだ、軍の規律にも慣れていないラモン二等兵です。」

 

 「確かに、火山地帯戦ではギリギリとはいえ、かなり遅い出撃だったし、ソニックバードという我が軍最高の航空戦力を持っているにも関わらず、彼には荷が重い。」

 

 

 

 

 

 「ヘックション!!」

 

 「どうした? ジェイク、風邪か?」

 

 「いや、何処かで、俺のことを噂しているような気がして……」

 

 

 

 

 「よし、では、これからロングレンジバスターキャノンの扱いを教える。やれるな? レオ。」

 

 「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティでは、共和国侵攻に向けての出撃準備が整えられており、ユウトもオメガレックスに乗る準備をしていたが、ユウトはランド博士の元に従っていていてよいのか迷っていて、オメガレックスに乗り気ではなかった。

 

 「どうした?」

 

 そんな彼の元に現れたのはプライド摂政だった。

 

 「プライド閣下。いえ、何も……」

 

 「隠す必要はない。ランドがメルビルと君を政治利用やオメガレックス創造のための道具にするために拾い、そのために表だけ父親を演じていたことを知ってしまったのだからな。

 親子の情すら無いとは、人間とは実に身勝手な生き物だ。」

 

 「閣下は知っていたんですか?」

 

 「いつかは話そうと思っていた……だが、若い君にそれを話せば、ショックは大きいだろうと思って、しばらく黙っていたが、それが今になるとはな。」

 

 「僕はどうしたらいいんですか? 今まで誰も手を取り合えない中、博士だけが僕を拾ってくれてずっとあの人を本当の父親と思って何度も尽くした。

 それがただ、最強のゾイドを作り、操るための道具として利用していたなんて……もう僕は誰も信用出来ない。

 いや、あの時、僕が孤児院にさえいなかったら、誰もオメガレックスを操る人間がいなくなって、ハンナだってあの人に拾われず、こんなことにされることはなかった。

 全ての元凶は僕なんだ。僕が変な力を持ったおかげで、化け物扱いにされ、僕を救ってくれたハンナまでこんな目に逢わせてしまった。僕なんかこの世に生まれなければよかったんだ!!」

 

 「誰も運命の歯車を止めることは出来ない。それは神が定めたもの、君があの孤児院に入れられ、あの愚かな人間に拾われたのもまた運命……

 だが、運命は君を見捨てたわけではない。君がオメガレックスに乗れるようになったのは、君の父上が望んだことなどだよ!」

 

 「!??? 僕の父さんを知っているの?」

 

 「そうだ。私は君の父上をよく知っている。私が帝国に入ったのも元はと言えば、君を捜すためだ。

 そして、君が帝国に入った時、私の直属の兵士にしたのも君を迎え入れるためだった。」

 

 「教えてください! 僕の本当の父さんは誰なんですか!? 父さんは何処なんです? 生きているんですか!?」

 

 「それを知りたいのなら、この任務を達成することだ。」

 

 「この任務を?」

 

 「共和国は私にとっても目障りな存在、この真帝国に協力しているのも、あくまで利害の一致で協力しているだけに過ぎない。

 それに私の望んでいる帝国はこんな脆いものではない。もっと強大で、神の支配する帝国だ。」

 

 「神?」

 

 「君の父上は偉大な存在だった。正に神に等しい存在だ。君はその神の子として生まれ、耐スーツ無しでもハンターウルフ改やあらゆるゾイドを操り、そしてオメガレックスをもリスク無しで操れるようになった力を持っているのも、その血を分けた分身だからだ。

 ユウトよ。君はあの愚かな人間と真帝国の道具で終わる存在ではない。この汚れた世界を正しい方向に導くためにこの世に生まれたのだ。」

 

 「僕が?」

 

 「恐れることはない。オメガレックスを手に入れた君に歯向かえるものは存在しない。その力を思う存分使い、君を只の道具扱いにしたあの愚かな人間と真帝国、そしてこの地球を汚れさせた人間共に天罰を下し、新しい世界を築くのだ。」

 

 「っ……」

 

 ユウトはしばらく考えた後、拳を握りしめ、

 

 「閣下、その言葉信じていいのですね?」

 

 「私は嘘はつかない。何故なら、いずれ我々は神の使徒となるのだからな。」

  

 「神の使徒……」

    

 「そうだ、神の使徒だ。」

 

 「あなたは一体何を?」

 

 「いずれ、わかる。だが、そのためにはこの戦いで後に君は隠された力を呼び覚まさなければならない。

 君はまだその力をまだ完全には使いこなせていない。君がその真の力を手にした時、自らの運命と共に新世界の扉が開かれるのだ!」

 

 「僕の力……」

 

 

 

 

 キルサイスを初めとした多くの真帝国部隊がゾイドに乗り込んだ中、ユウトもオメガレックスに乗り込み、決心したように操縦桿を握り、

 

 「僕はもう迷わない! 僕は僕自身の運命に従う。そしてこいつと共に世界を壊し、僕がハンナを救う! 行くぞ、オメガレックス!!」

 

 グロロォォ~!!

 

 ユウトの言葉に呼応するように目を輝かせたオメガレックスは咆哮を上げ、前進して基地の入り口から出て、真帝国部隊はその後についていった。その中には放棄されたはずのハンターウルフ改も紛れていた。

 

 「フフフ、ようやく決心がついたか。これで私の野望を達成することが出来る。さあ、オメガレックスよ、存分に暴れるがよい。」

 

 ユウトがオメガレックスに乗ってライダーがいなくなったはずのハンターウルフ改にはランド博士が乗り込み、しかもその姿は現在の姿ではなく、30代後半の姿になっていた。

 

 To be continued




 次回予告

 シーガルの命を受けて、遂にユウトの乗るオメガレックス率いるキルサイスを初めとした真帝国部隊がネオヘリックシティに向けて侵攻を開始した。
 そしてオメガレックス侵攻に伴い、ロングレンジバスターキャノンを扱う役割を与えられたレオとライガーは合同軍と共にオメガレックスを迎え撃つ準備を進めた。
 だが、プライド摂政の工作によって若返り、真帝国の部隊に紛れたランド博士が丸で勝利を確信したような不敵な笑みを浮かべた時、ユウトとオメガレックスはある行動を取った。
 
 次回「若キ プライド」走り抜け、ライガー!!

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