ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーが新たな姿を得て進化したライジングライガーの力によって強敵セードとジェノスピノを打ち破り、新たな仲間を加え、再び地球再生のための冒険の旅に出掛けた。 


第27話「若キ プライド」

 オメガレックス出撃の報告を受け、ネオヘリックシティでの帝国、共和国の合同軍はオメガレックスを迎え撃つ準備を始め、レオたちらライジングライガーに巨大なロングレンジバスターキャノンが装備させる作業に入っていた。 そんな中、ディアス中佐とツガミ大尉はギャレット大将に呼び出され、

 

 「現在、トリケラドゴス改とステゴゼーゲ改は未だ修復中のため、今回の戦闘には参加出来ない。そこで、君たち2人には代わりにあるゾイドに乗って欲しい。」

 

 「あるゾイド?」

 

 ギャレット大将が案内し、倉庫の中に入ると、そこに白いカラーリングを施し、両脇にそれぞれA-ZレーザーガンとA-Zインパクトレーザーガンを装備した3体のギルラプターがいた。

 

 「ギャレット大将、これは……」

 

 「再びジェノスピノのようなゾイドが帝国軍に開発された場合のことを想定して、強力な近接戦闘能力を持つギルラプターの中でも、特に強力な個体を厳選し、レーザーガンでカスタムされたギルラプターLCだ。」

 

 「ギルラプターLC……」

 

 「本来は複数機体で連携を取るための量産機として復元、開発されたが、現時点ではまだ、試作段階であるため、3体しか存在しない。

 だが、この非常時にこいつを使わない手はない。この内2体をディアス中佐、ツガミ大尉に預けたいと思う。やれるか?」

 

 「はいっ! これなら、レオのライジングライガーの援護に十分いけます。」

 

 「元よりそのつもりです! 真帝国ごときに我が共和国を滅ぼさせません!」

 

 「頼むぞ!」

 

 

 

 

 

 

 同時刻にバズがロックバーグ中尉からあることを頼まれた。

 

 「え? 俺がロングレンジバスターキャノンのカートリッジの輸送とそれをレオとライガーに渡す役割をしてくれだって!?」

 

 「ディアス中佐と話をしたんだけど、そういうことになったの。」

 

 「で、でも、何で俺が!?」

 

 「オメガレックスに対抗するために少しでも戦力を拡大するためにほとんどのキャタルガにキャノンを装備した武装タイプに改造したため、ロングレンジバスターキャノンのカートリッジを運ぶためのキャタルガが足りなくなったよ。 そこで、運搬量の多いあなたのキャタルガと運び屋であるあなたが一番適任だと思って。」

 

 「おいおい、冗談だろ! レオとライガーはロングレンジバスターキャノンであのオメガレックスのゾイドコアに直接ぶっぱなす役割を与えられて、俺とキャタルガがそのカートリッジを運ぶちゅ~ことは、戦場のど真ん中に行かなきゃならねぇってことじゃないか!!」

 

 「確かにそうだけど、別にあなたとキャタルガを戦闘に参加させるわけじゃないから、大丈夫でしょ!」

 

 「たくっ、よりによって俺とキャタルガがこんな役割になるんだよ!? 冗談じゃない! 俺はそんな仕事引き受けないぜ!」

 

 「もしかして、あなたは関係ないと思っているの?」

 

 「え?」

 

 「まあ、そりゃ、帝国、共和国に属さない只の民間人だから、当たり前だろうけど……

 あなたが世話しているレオは只、帝国と共和国のためでも、自分のためでもなく、この世界のため、困っている人々のため、そして大切な人を助けるためにこの戦いに加わることを選んだのよ!

 それなのに、あなたは丸で他人事のように、自分には関係ないと思っているの? レオはあなたが世話している子じゃないの!?」

 

 「うっ……」

 

 「ゾイドクライシスや両国の戦争を引き起こしていたのはもちろん私たち人間だけど、それでも私たちは過去の過ちから逃げず、この地球に住む者として生きていかなければならない。

 第一世代や第二世代、帝国、共和国とか、もうそんなのは関係ないの! 新たな故郷としてこの地球に移住したなら、惑星Ziのような悲劇を繰り返さないためにこの地球を守っていかなければならない。それがこの地球の新たな住人となった私たちの使命だと思っている。あなただって、この地球が好きじゃないの!?」

 

 「わ、わかった。わかったよ! やってやる!! これ以上レオばっかり無茶させるわけにはいかないからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオヘリックシティに待機している帝国軍人の前にギレル少佐は激励の言葉をかけた。

 

 「真帝国の反乱から逃れてここに来た帝国軍の諸君、私は真帝国のこれ以上の暴挙を許さない。

 真帝国をほぅっておくと、我が帝国や共和国どころか、世界は滅びる。そのためにも我々は戦わなければならない。そしてこの戦いに勝ち、帝国を復興し、ゾイドクライシスで汚染されたこの地球を開拓するのだ! 諸君、私についてきてくれるか?」

 

 オオ~!!

 

 何人かの帝国軍人が自分のゾイドに搭乗する中、リュック隊長がギレル少佐の元に赴き、

 

 「ギレル少佐!」

 

 「リュック隊ち……いや、リュック大尉。何だ?」

 

 「今回の作戦には例のライガーもいるのですか?」

 

 「無論だ。今回の作戦には彼とライジングライガーが適任だという上層部の決定だからな。」

 

 「しかし、あれは手配されていたライガーですよ!」

 

 「それはあくまで、ランド博士の命令による手配だろう。それにそのランドは今や、真帝国の首謀者にして帝国の反乱者だ。 今となっては、その任務は無意味だ。そのため、今の君は隊長ではない。」

 

 「だからって、帝国の復興のためにあのライガーの力を借りるのですか!?」

 

 「君があのライガーと何度か戦っていたことは知っている。だが、我々の敵はあくまで真帝国だ。だから、ライガーも共和国も我々の敵ではない。」

 

 「しかし!」

 

 「文句があるなら、真帝国にでも寝返るか?」

 

 「うっ、ぐっ……」

 

 「時間はまだある。後は自分でゆっくり考えるのだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロングレンジバスターキャノンの装備を終えたライガーは、ディアス中佐とツガミ大尉の乗るギルラプターLC率いる共和国軍と共に作戦開始のために待機していた。

 

 「ライガー、中々似合っているよ!」

 

 グルル……

 

 「当然私も援護するが、あくまで今回の作戦の要は君とライジングライガーだ。くれぐれも気を引き閉めてくれ!」

 

 「わかっています! ところで、ディアス中佐にツガミ大尉、そのギルラプターは?」

 

 「共和国軍が新たに改造したギルラプターLCだ。私のトリケラドゴス改とツガミ大尉のステゴゼーゲ改は出撃不可能のため、今回だけ、私とツガミ大尉のゾイドになった。これで君の援護を取る!」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「しかし、いつもの愛機みたいに慣れていませんから、何処まで通用するか……」

 

 「だが、やるしかない。オメガレックスを一歩たりともこの共和国に入れさせはしない。」

 

 「ヒュー、相変わらず共和国軍はいいゾイドを開発しやがる。もっと技術があれば、お前をもっと活かしたカスタマイズが出来るんだがな。なあ、相棒?」

 

 「共和国軍に入れば、そのガトリングフォックスもより強力にカスタマイズ出来るが……」

 

 「止してくれ、俺はもう軍は懲り懲りだからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティから出撃したオメガレックス率いる真帝国部隊はネオヘリックシティに向けて進軍していた。 

 その部隊には真帝国の主力ゾイドであるキルサイス以外にも、以前のジェノスピノ護衛部隊のゾイドがいたように、オメガレックスをイメージした黒を基調としたオメガレックス護衛のギルラプターとキャノンブルもいて、その護衛部隊の先頭には若返ったランド博士の乗るハンターウルフ改がいた。

 オメガレックスの横を通り、コクピットからその存在に気付いたユウトはハンターウルフ改を見、既に何かを察したように眺め、そのままそっぽを向けた。

 

 「ふん、」

 

 「今回ばかりはザナドゥリアス大尉にオメガレックスを任せるが、これだけ若返ったのなら、この私自身が乗りたいものだな。

 それにしても、この私をここまで若返らせるとは、あの男、一体何者だ?」

 

 

 

 ランド博士は出撃する前の出来事を思いだし、

 

 「一体どうやって若返らせるつもりだ?」

 

 「フフフ、こういうことだ。」

 

 その時、プライド摂政は右手をランド博士に向けて振りかざし、その指から赤い稲妻を発生させた。

 

 「グワァ~!!」

 

 プライド摂政が発生させた赤い稲妻を受け、苦しむランド博士、しかしその稲妻を受けた時、顔の所々のシワが消え、更に白髪が緑髪に変わり、丸で時が逆行するかのように徐々に肉体が若返っていった。プライド摂政は動作を止め、

 

 「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ!」

 

 「ま、こんなもんだな。それぐらいなら、ゾイドに乗ることは出来るだろう。」

 

 近くにあった鏡を見て、若返った自分自身を見て驚くランド博士、

 

 「こ、これは! 一体何をしたのだ!?」

 

 「ちょっとした治療だ。別に大したことではない。」

 

 「治療だと!? どういう方法で?」

 

 「方法も何も、貴様のその擬似ゾイド因子を持ったその右腕の力を応用したものだ。リジェネレーションキューブの端末にはボルテックスという時間を逆行させる力があるだろう? それと同じだ。

 ま、その力をどう使うかは貴様の自由だが、精々期待外れにならんようにな。 では……」

 

 

 

 「奴はコリンズと同期で、先代皇帝から仕えていたと聞いてはいるが、まさか、奴もゾイド因子を浴びた者の1人だとでも言うのか!?

 だが、そんなことは今はどうでもいい。オメガレックスの力を共和国共に見せ付ける機会なのだ。その時チャンスを絶対に逃しはしない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進軍するオメガレックス率いる真帝国部隊を共和国軍の偵察部隊のクワガノスが発見した。

 

 「本部、こちら、目標を確認しました!」

 

 クワガノスによる偵察部隊の報告はギャレット大将のいるネオ・ヘリック・シティ作戦本部に届いた。

 

 「偵察部隊からの報告によると、オメガレックスは713平原を侵攻中とのことです。」

 

 「やはり、ジェノスピノのように水陸両用ではないため、陸路を通るしかないようだな。」

 

 「前回のジェノスピノの時は、601平原を通り、海中での移動によるルートでしたが、今回のオメガレックスは713平原によるルートで、これでも陸路では最短ルートではありますが、ジェノスピノと違い、少し遠回りになり、到着までには1日ちょいか、2日はかかると推定されます。」

  

 「となると、作戦行動までに十分時間は稼げるということだな。」

 

 「ですが、オメガレックスには例の荷電粒子砲があります。ジェノスピノの時は主武装のA-Zロングキャノンがネオヘリックを射程圏に収めるまで、およそ26時間でしたが、オメガレックスの荷電粒子砲がネオヘリックを射程圏に収めるまで17時間に短縮されています。」

 

 「となるとわざわざネオヘリックに来ずとも、射程圏に入れば、直接そこから荷電粒子砲でネオヘリックを狙うということも考えられるということか。」

  

 「しかし、その射程圏内には幾つか障害があり、正確にネオヘリックを狙える確率は低いです。」

 

 「その射程圏には2つの障害があり、1つは廃墟となっているラグスシティ、2つ目はそのラグスシティとネオヘリックシティの間に位置するアルダ山脈です。」

 

 「つまり、その2つの障害を作戦領域とし、オメガレックスを迎え撃つわけだな。」

 

 「はいっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディアス中佐とツガミ大尉の率いる合同軍の部隊にギレル少佐のスナイプテラが到着し、

 

 「ギレル少佐!」

 

 「オメガレックスを作戦領域に誘導するために私の航空部隊は先に行っておく。後のことは頼んだぞ。」

 

 「ああ、」

 

 「それと、君のその新型ゾイドの力も見させてもらうぞ! 当然いくら新型に乗っているかといってくれぐれも無茶はするな。」

 

 「心配するな。愛機がいない分の仕事はやれる。」

 

 「では……」

 

 ギレル少佐率いる帝国軍の航空部隊が先にラグスシティに向かった時、ディアス中佐は時計を見た。

 

 「しかし、遅いな。早くしないと作戦開始までの時間に間に合わないぞ。」

 

 「お待たせしました!」

 

 合同軍の元にパキケドスBR、ラプトリア、そしてキャタルガが到着した。

 

 「あれ? バズ、どうして?」

 

 「ロングレンジバスターキャノンのカートリッジをお前に渡す役割になったんだよ! やっぱりお前ばっかり戦わせるわけにはいかないからな。」

 

 「そっか、ありがとう。バズ!」

 

 「よし、これで準備が整ったな。これより、合同軍はオメガレックスを迎え撃つため、ラグスシティに進軍する!」

 

 ディアス中佐の命令を受けてレオたちと合同軍はラグスシティに向かって進軍していった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オメガレックス率いる真帝国部隊の進軍は進み、ラグスシティにまで近付いた。その時、何体かのキルサイスがオメガレックスの前方を通った時、何者かに撃墜された。

 

 「ん? 何だ。」

 

 現れたのはギレル少佐のスナイプテラとバスキア兄妹のクワーガ率いる航空部隊が真帝国部隊を襲撃してきた。

 

 「我々の任務はオメガレックスを真帝国部隊と切り離し、ラグスシティに誘導することにあって、攻撃対象はあくまで真帝国部隊だ! オメガレックスは構うな。」

 

 「了解!」

 

 「スナイプテラ、兵器 解放! マシンブラストー!! アブソルートショット!」

 

 「クワーガ、兵器 解放! マシンブラストー!! ファイヤーショット!」

 

 「クワーガ、兵器 解放! マシンブラストー!! スカイショット!」

 

 ギレル少佐のスナイプテラとバスキア兄妹のクワーガの攻撃で、次々とキルサイスが撃墜され、キルサイス隊も反撃に走った。

 

 「くっ、帝国軍の航空部隊か! だが、せっかくのオメガレックスの力を試すために邪魔はさせんぞ!

 制御トリガー解除! ハンターウルフ、兵器 解放! マシンブラストー!!」

  

 ランド博士の乗るハンターウルフ改がスナイプテラ隊を攻撃し、他の護衛仕様のギルラプター、キャノンブルもそれに続いて応戦した。そんな中、自分だけ攻撃を受けないことにユウトは疑問を抱き、

 

 「何故だ? 何故僕を攻撃しない。 この状況に僕とオメガレックスはそれほど問題ではないと言うのか? ん? この先の廃墟に多数のゾイド反応……これは……ライガー!? そうか、そういうことか。」

 

 ラグスシティのゾイド反応を見て何かを察したユウトはそのままオメガレックスで、ギレル少佐の部隊に構わず、真帝国部隊から離れて真っ直ぐラグスシティに向かって走っていった。

 

 「少佐、オメガレックスがそのままラグスシティに向かいました!」

 

 「思ったより、あっさり行ってくれたな。それにしても、こちらを一切攻撃せず、こうも早く作戦領域に行ってくれるなんて……まさか、こちらの作戦に気付いたのか?」

 

 「ソニックシックル!」

 

 「くっ!」

 

 ハンターウルフ改のマシンブラスト技を何とか回避するスナイプテラ、

 

 「今のは、ハンターウルフ改! まさか、オメガレックスに乗っているのはザナドゥリアス少尉ではないのか!?」

 

 「久しぶりだな! ギレル。」

 

 「通信……その声はランド博士! 何故、あなたがこのようなことを!? 一体何が目的だ?」

 

 「新たな時代の始まりだよ。この地球を新たなゾイドの星にするために!」

 

 「そのためにあなたは帝国を選んだのですか!?」

 

 「そうだ! だからこそ、共和国よりやり易いと思ったのだ。」

 

 「我が帝国の理念を踏みにじりやがって、あなたは絶対に許せない! アブソルートショット!!」

 

 「ソニックシックル!!」

 

 スナイプテラとハンターウルフ改の互いの攻撃がぶつかり合い、その衝撃で跳ばされるスナイプテラとハンターウルフ改、

 

 「少佐!」

 

 それを見たバスキア大尉は援護に回ろうとするが、キルサイス隊に阻まれてしまう。

 

 「くそっ、貴様らの相手をしている暇はない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オメガレックスはラグスシティに向かってそのまま進み、それを偵察隊のクワガノスが発見した。

 

 「ディアス中佐、オメガレックスが真っ直ぐこちらに向かっています!」

 

 「キルサイスやその他の真帝国の部隊は?」

 

 「全くありません! オメガレックス一体です。」

 

 「予想より早く来たな……よし、キャノンブル隊、バズートル隊、スティレイザー隊は車線上に入れ! 私の部隊は先に出て、オメガレックスを誘導する。

 レオはツガミ大尉の指示に従って、作戦開始まで待機しろ!」

 

 「わかりました!」

 

 「では、行くぞ!」

 

 指示を与えたディアス中佐はギルラプターLCでトリケラドゴス隊を率いてそのまま走っていった。

 

 

 

 

 

 

 オメガレックスはラグスシティの手前まで着き、

 

 「オメガレックス、一気に決めるよ。 制御トリガー解除! オメガレックス、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 ユウトはすかさず、マシンブラストを発動し、両脇の収束シールドが展開し、口内で荷電粒子砲を開き、ラグスシティの街に照準を合わせた。

 

 「荷電粒子砲、はっし……」

 

 その時、そうはさせじとディアス中佐のギルラプターLCがレーザーガンをオメガレックスの口内に向けて放った。

 

 「ん? レーザーガンを装備した白いギルラプター……共和国軍の新型か? だけど、そんなもので、僕のオメガレックスを止めることは出来ない。」

 

 オメガレックスはギルラプターLCの攻撃にも構わず、荷電粒子砲発射の態勢を取った。

 

 「全部隊、オメガレックスに攻撃だ! 奴に荷電粒子砲を撃たせるな!」

 

 ディアス中佐の命令を受けて、トリケラドゴス隊もすかさず、オメガレックスに攻撃した。

 そして、斜線上にリュック大尉のキャノンブル、ノックス大尉のスティレイザー、シェル軍曹のバズートルを先頭にした帝国軍の部隊が現れ、前方にオメガレックスの姿を確認したリュック大尉は、

 

 「オメガレックスは荷電粒子砲を撃つ体制に入っている。我々も加勢するぞ! 全軍、攻撃準備、目標、オメガレックス!」

 

 「撃てー!!」

 

 リュック大尉の命令を受けて、キャノンブル隊、バズートル隊、スティレイザー隊が一斉に攻撃を仕掛けた。全ての砲撃がオメガレックスに命中するも、オメガレックスは怯まず、6連誘導ミサイルと対地対空速射砲で迎え撃った。

 

 「バズートル隊、3機大破!」

 

 「スティレイザー隊も2機損傷!」

 

 「ちぃっ、これでも足りないか。ならば、マシンブラストで集中砲火、奴を蜂の巣にしろ!」

 

 「スティレイザー、兵器 解放! マシンブラストー!! プラズマウォール!」

 

 「バズートル、兵器 解放! マシンブラストー!! アバランチファイヤー!」

 

 「キャノンブル、兵器 解放! マシンブラストー!! ナインバーストキャノン!」

 

 マシンブラストした帝国軍部隊は一斉にオメガレックスに向けて砲撃し、オメガレックスは全身が炎に包まれた。

 

 「砲撃止めー!!」

 

 「これで、少しでも奴の装甲に傷が付いていればいいが……」

 

 「いや、それだけのことを考慮しての部隊だ。いくらなんでも無事に済むわけがない。」

 

 「ノックス大尉、シェル軍曹、奴はジェノスピノ同様、並みのゾイドではない。くれぐれも油断するな!」

 

 そして、煙が晴れてその姿が見えたが、オメガレックスは傷が付いているどころかジェネレーターパーツによるシールドを発生していた。

 

 「あ、あれは……」

 

 「あの時のシールド……」

 

 「しかもあれだけの攻撃を喰らっていながら、無傷だと!?」

 

 「誰も僕を止めることは許さない……いや、この戦いに勝ち、この歪んだ世界を破壊することが僕の目的だ!」

 

 シールドのおかげもあってか、既にオメガレックスは荷電粒子砲発射の準備を整っていた。

 

 「いかん! 荷電粒子砲が来る!! 直ちに斜線から退避しろ!!」

 

 「逃がさない! オメガレックス、ファイヤー!!」

 

 荷電粒子砲が放たれ、逃げ遅れた帝国軍部隊は一気に消し飛ばされ、そして、そのビームはレオたちのいるラグスシティにも向かってきた。

 

 「不味い! レオ、一旦この場から離れるぞ!!」

 

 ビルの屋上から見ていたバーンはツガミ大尉の部隊やレオに指示し、一旦離れるが、荷電粒子砲の強力な威力に吹っ飛ばされてしまう。

 

 「ぐっ……」

 

 「うわぁっ!」

 

 オメガレックスの荷電粒子砲によって、帝国軍の大半が破れ、同時にラグスシティの街も半分以上が消し飛ばされた。

 

 「行くぞ、オメガレックス。この地球のために、今のこの世界に終止符を打つ!」

 

 グロロォォ~!!

 

 ユウトの言葉に応えて咆哮を上げたオメガレックスはゆっくり進んでいった。

 

 「うっ、ぐっ……」

 

 「大丈夫か!? リュック大尉、ノックス大尉、シェル軍曹!」

 

 「ああ、心配はない。だが、今の衝撃で、ゾイドのダメージが大きい。暫くはまともに動けない。」

 

 「わかった。奴は私が引き受ける。トリケラドゴス隊、引き続きオメガレックスに攻撃を続けろ! 私は奴の注意を引き付ける!」

 

 「了解!」

 

 「行くぞ、ギルラプターLC!」

 

 ディアス中佐のギルラプターLCがレーザーガンでオメガレックスに攻撃し、トリケラドゴス隊もそれに続いてオメガレックスに砲撃した。

 しかし、オメガレックスは6連誘導ミサイルと対地対空速射砲でトリケラドゴス隊を次々と粉砕していった。

 

 「くそっ、オメガレックス、私が相手だ!」

 

 ギルラプターLCはオメガレックスの目の前に立ちはだかり、

 

 「ギルラプターLC、進化 解放! エヴォブラストー!! ウィングショットガン!」

 

 エヴォブラストを発動して、ウィングショーテルを展開したギルラプターLCはレーザーガンを撃ちながら、オメガレックスに向かっていった。

 

 「ウォー!!」

 

 しかし、オメガレックスはウィングショーテルを口で喰わえ、そのまま投げ飛ばした。

 

 「ぐわぁっ!」

 

 「そんなものでは僕とオメガレックスを止めることは出来ない!! オメガレックス、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 オメガレックスはディアス中佐のギルラプターLCに向けて荷電粒子砲の照準を合わせた。

 

 「しまった!!」

 

 「喰らえー!!」

 

 ドドドド!!

 

 その時、フォックスとツガミ大尉のギルラプターLCがオメガレックスに攻撃した。

 

 「バーン、ツガミ大尉!」

 

 「荷電粒子砲が来て、嫌な予感がしていたと思って来ていたが、やっぱりこうなっていたか!」

 

 「少し早いが、早速行動に出るしかないですね。」

 

 「先ず、あの荷電粒子砲を何とかしないと、せっかくのロングレンジバスターキャノンを奴に一発喰らわすことが出来ないからな。」

 

 「我々だけでも、奴を食い止める!」

 

 「ようし、行くぜ、フォックス! ガトリングフォックス、進化 解放! エヴォブラストー!! ファントムガトリング!」

 

 エヴォブラストしたフォックスとギルラプターLCのレーザーガンで同時にオメガレックスを撃つが、またもやシールドで防がれた。

 

 「何!?」

 

 「駄目だ! 奴には強力なシールドが張られている。あのシールドを破らない限り、オメガレックスにダメージは通らない!」

 

 「あの時のシールドはまだ健在だったのか! しかし、これではせっかくの作戦が……」

 

 「大尉、俺に考えがあります。いっちょ、付き合ってくれませんか?」

 

 「どうするつもりだ?」

 

 「正面じゃなく、奴の死角を狙うんですよ!」

 

 そう言うと、フォックスはオメガレックスの正面に突っ込まず、オメガレックスの両脇に走っていった。

 

 「そういうことか!」

 

 バーンの狙いに察したツガミ大尉もギルラプターLCでフォックスとは逆のところに走っていった。

 

 「行くぜ! ファントムガトリング!!」

 

 横から攻撃を加えるフォックスとギルラプターLCに、オメガレックスは荷電粒子砲を撃つのを止め、足でフォックスとギルラプターLCを踏み潰そうとした。フォックスとギルラプターLCは回避しながら、砲撃した。

 

 「ようし、いいぞ! 後はこのまま奴を翻弄し……」

 

 しかし、油断したところで、オメガレックスの尻尾が目の前に現れ、フォックスは振り払われてしまった。

 

 「バーン!」

 

 ギルラプターLCが助けに入るが、すかさず、オメガレックスはギルラプターLCも凪ぎ払い、2体に対地対空速射砲を放った。

 

 「バーン、ツガミ大尉!」

 

 「ワリィ、旦那。動けそうにない。」

 

 「すみません、中佐。へまをやらかしました。」

 

 「無茶をしやがって!」

 

 フォックスとツガミ大尉のギルラプターLCが動けないのを見て、オメガレックスは再び荷電粒子砲を撃つ体制に入った。

 

 「くそっ、あのシールドを何とかしなくては!」

 

 「俺に考えがあります!」

 

 その時、レオの通信が入り、レオは崩れたビルの屋上から荷電粒子砲を撃とうとするオメガレックスにロングレンジバスターキャノンの照準を合わせた。

 

 「レオ、何をする気だ!?」

 

 「俺がロングレンジバスターキャノンであのシールドを破壊します! 通常の火器がダメなら、これで!」

 

 「だが、レオ! ロングレンジバスターキャノンは旧型と違い、連射は出来ない上に弾数は6発しかない。余り、無駄遣いはするな!」

 

 「わかっています! ですから2発であのシールドを破り、残りをオメガレックスに命中させます!」

 

 「無茶はするな!」

 

 コクピットの中で、ユウトはライガーの存在に気付き、

 

 「あれは? 確か、帝国にいた時の教育で教えられた伝説の武器、ロングレンジバスターキャノン……しかもそれをライガーが装備しているだって!? 面白い、荷電粒子砲とやりあう気か。」

 

 そう言うと、オメガレックスはすかさず、荷電粒子砲の照準をライガーに向けた。それを見たバズは慌てて、

 

 「うわぁっ! こっちに向けた。レオ、大丈夫なんだろうな!?」

 

 「くっ、」

 

 レオはオメガレックスが荷電粒子砲を発射する寸前を狙って神経を研ぎ澄ました。

 

 「今だ! 行くぞ、ライガー!! ロングレンジバスターキャノン、発射!!」

 

 ロングレンジバスターキャノンの両門から放たれた2発の弾丸が放たれ、それがオメガレックスに命中し、オメガレックスは体勢を崩し、荷電粒子砲の照準がかなりずれ、別の方向にある山脈に直撃した。

 

 「よし、あのオメガレックスに1発噛ましたぜ!」

 

 「くっ! システムに異常……さっきの衝撃でジェネレーターパーツが作動しなくなって、シールドが暫く展開出来なくなっている。 流石は伝説の武器といったところか……でも、荷電粒子砲はまだ使える。」

 

 体勢を整え、再び荷電粒子砲を撃つ体勢に入るオメガレックス、

 

 「げっ! まだ動きやがる。」

 

 「バズ! カートリッジを。1発だけでいい!」

 

 「1発? おいおい、いくらなんでもそれじゃ、足りないだろ!!」

 

 「いいから、黙って言う通りにして!」

 

 「わ、わかった!」

 

 「弾は残り4発……でもオメガレックスのゾイドコアに直接ロングレンジバスターキャノンを撃ち込むために、弾を更に使うわけにはいかない。

 なら、1発で荷電粒子砲を破壊して、残り3発でオメガレックスのゾイドコアに撃ち込んでやる。

 いくらどんなに強力な兵器でも、砲口に攻撃すれば、容易に破壊できるはずだ!」

 

 「オメガレックス、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 「レオ! あいつの動きは私が食い止める。」

 

 パキケドスBRがオメガレックスのところに向かおうとしたその時、多数のキルサイス隊がライガーたちに攻撃してきた。

 

 「何!?」

 

 「真帝国の援軍だと!?」

 

 空中からの爆撃を受けて上手く狙いが定まらないライガー、

 

 「くっ、これじゃ、狙えない!」

 

 パキケドスが対空速射砲でキルサイス隊を複数撃墜するも数の多さで手間取ってしまう。別のキルサイスがパキケドスの背後に入るが、それをディアス中佐のギルラプターLCが撃墜した。

 

 「中佐! まだ、ギルラプターは傷ついているのに……」

 

 「まだ動ける。それにここで黙ってみているわけにはいかない! 

 レオ! 敵の援軍は私とロックバーグ中尉が引き付ける。君はオメガレックスに集中するんだ!」

 

 「わかりました!」

 

 体勢を整え、オメガレックスの荷電粒子砲に向けて照準を合わせるレオ、

 

 「さっきの感覚を思い出すんだ。さっきのようにいけば、上手くいくはず!」

 

 「今はシールドは使えないけど、シールドだけだと思うなよ!」

 

 シールドが使えなくなった代わりにオメガレックスは6連誘導ミサイルと対地対空速射砲でライガーに向けて放った。

 

 「うっ、ぐっ!! ライガー、耐えれるか!?」

 

 グルル……

 

 「このチャンスを逃さないと、オメガレックスは倒せない。」

 

 「喰らえ! オメガレックス、ファイヤー!!」

 

 「今だ! ロングレンジバスターキャノン発射!!」

 

 荷電粒子砲とロングレンジバスターキャノンの攻撃がぶつかり合い、その凄まじい衝撃で、ライガーたちは吹っ飛ばされ、周囲の街も一瞬で消し飛んだ。

 

 「うひぃ~、俺まで飛ばされちゃった。キャタルガ、大丈夫か?」

 

 「うっ、う~ん。皆大丈夫か?」

 

 「何とか。」

 

 「俺とフォックスも無事だぜ!」

 

 「レオ、レオは!?」

 

 「俺とライガーは大丈夫です!」

 

 「そうか……オメガレックスはどうなった?」

 

 ディアス中佐が見ると、そこに瓦礫の山が出来ていた。

 

 「やった……のか? ん?」

 

 その時、突然瓦礫の山が動き出し、オメガレックスがその中から這い上がってきて、オメガレックスは何事もなかったかのように身体をブルブル動かし、更に装甲も無傷だった。

 

 「嘘だろ……」

 

 「馬鹿な! あれを喰らって……」

 

 「もう一度喰らえ! オメガレックス、ファイヤー!!」

 

 「いかん!」

 

 ライガーたちは回避するも荷電粒子砲の衝撃で飛ばされ、その1発で全ての街は消し飛び、ラグスシティは建物の影を無くし、完全に何もかもない焼け野はらに変えていた。

 

 「僕は止められない。いや、止まるわけにはいかないんだー!!」

 

 グロロォォ~!!

 

 オメガレックスの咆哮が焼け野はらになったラグスシティ全土に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから数キロ離れた先の禁制地区にある遺跡にライガー・ジ・アーサーとワイルドライガーガンナーが待機し、それから降りたゼオル、バルディー、マリアナ、ボーマン博士が遺跡の中に入っていき、置くに進むとそこに何者かに掘り起こされたような巨大な穴があった。

 

 「ここに端末の反応があったのだが、どうやら、1足遅かったようだな。」

 

 「ん? なあ、これなんだ?」

 

 「どうした? バルディー。」

 

 「これだよ、これ!」

 

 バルディーが指差したのは壁画のようなものだった。その壁画には青いティラノサウルスを崇める人々の姿描かれていた。

 

 「これは……似ている。あの時、立ち寄った、石化したアンキロックスが眠っていた遺跡の壁画に似ている。」

 

 「ねぇ、こっちにもあるわ!」

 

 マリアナが見つけた反対側の壁画には4体の赤いライオンが複数の白い象と戦う姿や謎の怪獣のようなものに白い象や不気味な姿の兵士が平伏す姿や謎の怪獣が胸から出した光線のようなもので、生物たちを殺し、世界を焼き払う姿が描かれていた。

 

 「これは……ゾイドなのか?」

 

 「それにこれはゾイドクライシス時のものではなさそうだな。」

 

 「ええ、むしろもっと前、数千年以上前なのは確かね。」

 

 「どうやら、我々や元々この地球にいた人類すら知らない裏の歴史が紛れているようだな。」

 

 To be continued




 次回予告

 荷電粒子砲とロングレンジバスターキャノンの同時の撃ち合いでも決定的な打撃を与えられず、オメガレックスは進撃を進め、荷電粒子砲で障害を排除しながらネオヘリックシティに向かっていた。
 レオはオメガレックスの侵攻を食い止めるため、オメガレックスを追うが、既にネオヘリックシティは目と鼻の先にあった。
 そんな中、真帝国皇帝として認められないメルビルの元にサリーが現れ、それぞれの思いを語った。

 次回「2人の皇帝」走り抜け、ライガー!!

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