ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 ペンダントの力によって突如復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーを復活させた不思議な力を持つペンダントを持ち、地球の未来を左右する謎の少女サリーと共に地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第3話「内に秘めた想い」

 帝国軍基地、この基地にある巨大ゾイドの化石を帝国軍が発掘したという情報を聞き付けた共和国軍がそれを阻止するために攻撃してきたが、ランド博士の緊急通信で駆けつけたユウトのハンターウルフ改によって共和国軍は僅か数分で壊滅させられた。

 共和国軍のゾイドの残骸の山に立つハンターウルフ改、ユウトはハンターウルフ改から降り、ランド博士は彼の元に立ち寄った。

 

 「素晴らしい。やはり、私の見込んだだけのことはある。」

 

 「この程度の戦力など、大したことではありません。」

 

 「しかし、ゾイドを完膚なきに叩きのめしてはいるものの、ゾイドコアとコクピットだけは狙わないようにしているのはどういった配慮の表れかね?

 まさかとは思うが、余計な感情が入ったというのではあるまいな。」

 

 「いえ、私は帝国軍の手を汚したくありませんから。」

 

 「良かろう…。 その忠誠心も素晴らしい。流石、私が育てたエリートだ。」

 

 「それより、博士、例の化石とは?」

 

 「ああ、そうだったな。来たまえ。」

 

 ランド博士はユウトを基地の地下研究所まで案内した。そこには見たこともないような巨大な恐竜型ゾイドの化石だった。それを見たユウトは驚きを隠せないでいた。

 

 「これは…?」

 

 「驚くのも無理はない。こいつは硫酸海の深い海底に埋まっていたのをつい先日に引き上げ、ようやく発掘することに成功した巨大ゾイドの化石だ。」

 

 「硫酸海から!? そんなところにゾイドが眠っているなんて!」

 

 「実際、私も驚いている。しかし、このゾイドはかなりの生命力の持ち主のようだ。」

 

 「博士、この化石は一体どんなゾイドですか?」

 

 「保存状態が良好ではなく、化石の全貌も明らかにされていないため、今は何とも言えないが、おそらくこの世界の覇権をも左右する強大なゾイドだということは確かだ。

 現在、他の化石の発掘作業を彼女にも命じているが、人手が足りなくてな。君には私の護衛としてこの化石がなんなのか、調査して欲しいのだ。」

 

 「サリー・ランドとビーストライガーの奪還はどうするのです?」

 

 ランド博士はその任務がどうでもいいというような表情をユウトに見せ、

 

 「そんなことは後回しにすればよい! 今は、このゾイドの復元が先だ。サリーと例のライガーの奪還など、直ぐにやれる。お前なら出来るだろ!?」

 

 ユウトは少し納得いかなそうな表情をしながらも、

 

 「わかりました。 では、これからの護衛準備として、ハンターウルフ改の調整を行います。失礼。」

 

 ユウトが立ち去った後、ランド博士は発掘されたばかりの巨大ゾイドの化石を見て、

 

 「ようやく、会えたぞ。 愛しい我が子……この私が必ず復活させて見せるぞ……フフフフフ……フハハハハハハ!」

 

 

 帝国軍基地の外で、シェル軍曹はビーストライガーの攻撃でやられたバズートルの修復をしていた。そこにリュック隊長が現れ、

 

 「シェル軍曹、貴官のバズートルはかなり損傷を受けたそうですな。」

 

 「ああ、ザナドゥリアス少尉が突然、博士からの緊急命令だからといって、離脱してしまったため、私がライガーとやり合ったが、どうやら予想以上の相手で、私のバズートルはこの様だ! ところで、リュック隊長。何故あなたがここに?」

 

 「実は先ほど、ザナドゥリアス少尉が博士の護衛になったとの報告を受け、私がサリー・ランドとビーストライガーの奪還のために出撃の用意をしているところなのだ!」

 

 「とはいえ、今の私ではリュック隊長の手助けになりません。」

 

 「では、シェル軍曹、貴官にお願いがあるのですが…」

 

 「何でしょう?」

 

 

 

 

 ユウトの操るハンターウルフ改とシェル軍曹のバズートルとの戦いの後、何とか逃れたレオたちは山脈に向かって走っていった。ビーストライガーはハンターウルフ改から受けた傷がまだ癒えてなく、苦しそうな表情をしていた。

 

 「もう少しだよ。ライガー。もう少しで休憩させてやるからな。」

 

 「しっかし、とんでもないことになってしまったな! まさか、運び屋の俺たちが帝国の逃亡犯にされちまうとはな。」

 

 「しょうがないよ! あのままサリーとライガーを引き渡したら、サリーとライガーはどうなってたかわからなかったし。」

 

 「ホント、お前は御人好しだな!」

 

 「ところで、バズさん。一体何処に向かっているのですか?」

 

 「共和国領だよ!」

 

 「待ってよ! バズ。サリーのお爺さんや端末の情報がまだ掴めてないのにいきなり共和国領に行くだなんて!」

 

 「何言ってんだよ! 今の俺たちは帝国のお尋ね者だぜ。これ以上、帝国領にいたら、俺たちの身が危ないし、情報集めるなんてどう考えても無謀過ぎるぞ。

 それに、共和国領だってそこまで狭くはないから、絶対端末の居場所があるはずだし、サリーのお爺さんも帝国軍に終われているんだろ? だったら、共和国領に逃げている可能性だって十分あり得るぜ。」

 

 「それはそうだけど…」

 

 「とにかく今は共和国領に行った方が安全だ。それにそこの方が情報は一杯集まるだろうし。」

 

 「サリー、君はどうなの?」

 

 「私はバズさんの意見に賛成です。これ以上、レオたちを危険な目に逢わせたくありませんし。」

 

 「よし、じゃあ、決まりだな!」

 

 「ところで、バズ。共和国に行くのになんでこんな山ん中に行っているの? 村のところを行けば安全なのに。」

 

 「甘いな、レオ。今の俺たちは帝国の逃亡犯なんだぞ! そんな俺たちが街中や村、ましてやライガーまで引き連れて通って行ったら、目立つし、直ぐに帝国軍に見付かってしまうだろ! 

 だから、俺は帝国軍が見付かりにくい安全な場所を選んでいるんだよ。」

 

 「そうは言っても、この山、結構あるよ。それに今にも雨が降りそうだ。」

 

 レオが見上げた山はかなりの標高で、その頂上には暗雲が立ち込めていた。

 

 ライガーはひたすら山を登り続けるが、ハンターウルフ改との戦闘で受けた傷がまだ傷み、ライガーが苦しんだ。

 

 グルル…

 

 「ライガー、大丈夫か? 修理道具さえあれば、メンテナンスは出来るんだけど、生憎持っていないからな…」

 

 「お~い、レオ。待ってくれよ!」

 

 「バズ! いくらなんでも荷物持ちすぎじゃない? 重量オーバーだよ。」

 

 「これでも必要最低限の荷物は持って来てるんだぜ。」

 

 

 ゴゴゴ…

 

 その時、突然雷が鳴り、豪雨になり、更に落雷が山のところどころに落ちた。

 

 「おいおい、これは不味いぜ!」

 

 その時、バズは洞窟を見つけ、

 

 「彼処に洞窟がある。彼処に逃げよう。」

 

 バズの車とビーストライガーは洞窟の中に避難し、レオたちは暫く洞窟の中で待機した。しかし、雨と落雷は一向に止む気配はない。

 

 「どうやら、今日はここで野宿のようだな。」

 

 サリーが洞窟の中を見ると、奥に誰かいた。

 

 「ねえ、あの人、誰かしら?」

 

 「この辺のものじゃなさそうだな。」

 

 サリーはその人に近付き、

 

 「あの…」

 

 「ん? 何かしら?」

 

 「あの、ここで一体何を?」

 

 「何って、考古学の研究よ! 私は考古学者だからね。」

 

 「考古学者なのに、何でこんなところにいるんだ? こんな人気のない場所に。」

 

 「謎をつき明かしたいのよ。ここって、頻繁に豪雨や雷が起きるでしょ! そもそも天気が荒れるような場所ではないのにこんな豪雨になるなんて、変じゃない? 

 だから、その謎をつき明かそうと思ってるの! きっと、コンラッド教授もそうしてるだろうし。」

 

 それを聞いたレオは、

 

 「コンラッド教授? お父さんを知っているの?」

 

 「え? あなた、コンラッド教授を知っているの!?」

 

 「俺の父なんです…」

 

 「ウッソ―!! まさか、あのコンラッド教授の息子さんに会えるだなんて、夢にも思わなかった! で、あなたの名前は?」

 

 「レオです。」

 

 「レオ、いい名前ね! で、教授は今、元気にしてるの!?」

 

 「それが…」

 

 「ああ、実はこいつの親父さん、行方不明なんでな。今はその親父さん探しているんだ。

 因みに、俺はその保護者で運び屋のバズ。」

 

 「私はサリー、サリー・ランドです。」

 

 「サリー? あなたもいい名前ね! それに可愛い!!」

 

 「それより、レオの親父さん知っているなら、何処にいるかは知っているのか?」

 

 「私はコンラッド教授に憧れて、考古学者になった身だから、そこまでは知らないの。」

 

 「やれやれ、ようやく親父さんの情報が手に入ると思ったが、とんだ骨折り損だぜ。」

 

 「そうだ! ここで会ったのも何かの縁だから、一緒にこの山の謎を明かさない!?」

 

 「いや、俺たちは…」

 

 「協力します! もしかすると、ここにリジェネレーションキューブの端末があるかもしれません。」

 

 「お、おい、サリー!」

 

 「俺も賛成だ。ここにいてもしょうがないし、1つでも早く端末の情報を探さないと!」

 

 「全く、2人共しょうがないな。わかった! 付き合ってやるよ。」

 

 「じゃあ、出発進行!」

 

 「と、言いたいところだが、この先はどうやって行くんだ? 奥には障害物が一杯だし、生憎俺のピッケルじゃ、あれを掘り進むことは出来ないし、かといって、ライガーの力を借りようにも、あのサイズじゃ、入れないし、それにライガーは今、怪我してるし…」

 

 「そのことなら、心配ご無用!」

 

 ピー!! 

 

 その時、女性が指笛を弾き、何処からか対空速射砲を装備したラプトリアが現れた。

 

 「このラプトリアって、もしかして、あなたの?」

 

 「そう! あたしのラプちゃん、そして、自己紹介遅れたけど、あたしの名前はジョー・アイセル、アイセルって呼んでね。」

 

 「よろしくお願いいたします! アイセルさん。」

 

 「それじゃ、改め直して出発進行!」

 

 アイセルの元気な掛け声と共に、ラプトリアは爪のクレセントクローを使って洞窟の中を掘り進んで行った。ラプトリアを見たバズは、

 

 「(あのラプトリア、共和国軍が最近復元したゾイドだって、運び屋の知り合いから聞いたが、まさか、あの姉さん…)」

 

 

 

 

 

 

 

 豪雨の中、9連キャノン砲にバズートルと同じ対空レーザー砲を、後ろ足に410口径ミサイルポッドを装備したリュック隊長のキャノンブル率いるキャノンブル隊が進行していた。何かに気付いたリュック隊長は、突然動きを止め、双眼鏡で山を見た。そこにレオのビーストライガーがいた。それを見たリュック隊長は、

 

 「遂に見つけたぞ! ザナドゥリアス少尉は不在だ。この機を絶対に逃さん!」

 

 リュック隊長のキャノンブルは思いっきり走っていき、配下のキャノンブル2体もそれに付いていった。

 

 

 

 

 洞窟を突き進む中、サリーのペンダントがオレンジ色に光輝いた。

 

 「ペンダントが!」

 

 「向こうにある光とシンクロしている?」

 

 「どうして?」

 

 「何か関係があるのかしら?」

 

 「てことは、この先に何かあるってことだな! でも、ここから先はラプトリアでは無理のようだな。それにお宝の匂いはしなさそうだし、俺はとりあえず、引き返して車の荷物を整理していくよ。

 外の見張りも必要だし。」

 

 「あ、ちょっと待って! 見張りなら私がやるわよ。」

 

 アイセルとバズが一旦引き返したのを見たレオは、

 

 「もしかしたら、Ziホーミングがあるかもしれないから、俺たちはこのまま進もうか。」

 

 「うん!」

 

 レオとサリーが洞窟の先を突き進んで行くと、目の前には巨大なキューブが現れた。キューブを見たサリーは、

 

 「あれ! 端末です!」

 

 「端末だって!? この装置が?」

 

 「そう! Ziホーミングのためにお爺さんが開発したリジェネレーションキューブの端末です。」

 

 「これがその端末…」

 

 キューブに近付いたレオがキューブに左手をかざすと、端末がオレンジ色に光輝いた。

 

 「これは?」

 

 しかし、暫くすると、光は消えた。

 

 「消えた。」

 

 「きっと、レオの体内のゾイド因子と共鳴しているんだわ。」

 

 「え? 俺の体内のゾイド因子?」

 

 レオはもう一度、左手を端末に当て、再び端末は光出した。

 

 「再起動出来る?」

 

 「やってみる。」

 

 サリーがペンダントを触れると、ペンダントも光出し、端末から地球儀のホログラムが現れて、端末は全身に光出し、端末は回転し、そのまま地中に掘り進んで行った。

 

 「これでいいの?」

 

 「うん、これでZiホーミングは正常に作動したわ。」

 

 「よし、これで、1つ目の端末は無事に作動した。残る全ての端末も作動し、君のお爺さんもきっと見つけてみせる。バズたちにも報告しよう。」

 

 端末が正常に作動したと同時に外の豪雨も止んだ。洞窟の入口の手前で待機しているアイセルは何やら、通信機を弄った。雨が止んだのを見たバズは、

 

 「おや? 雨は止んだってことは、ラッキー! 今日ここで野宿することはなくなったな。

 ところで、お姉さんよ!」

 

 「何よ! 私はアイセルよ。」

 

 「ところで、そのラプトリア、何処で手に入れたんだ? ただの考古学者がラプトリアを簡単に手に入れられるとは思えないし、まさか、あんた、共和国の…」

 

 ズドン! 

 

 その時、銃声がし、

 

 「うわっ! なんだ! なんだ!?」

 

 その時、現れたのは3体のキャノンブルと銃を持ったリュック隊長とその兵士だった。

 

 「大人しく投降しろ。」

 

 「帝国軍!? おいおい、嘘だろ! まさか、こんなところまで来るとは!」

 

 ラプトリアが前に出ようとするが、アイセルは待ったをかけ、

 

 「待って、ラプちゃん。 投降するわ!」

 

 「お、おい、アイセル!」

 

 「今は大人しく従った方がいいわ。」

 

 「小僧と小娘は何処だ?」

 

 「この洞窟の奥。でも直ぐに戻ってくるわ。」

 

 「そうか、では、それまで大人しくしていろ!」

 

 レオとサリーが洞窟から出ると、目の前にいるリュック隊長と出会った。バズとアイセルは配下の兵士に取り押さえられた。

 

 「バズ! アイセル! 帝国軍か。」

 

 「そう、あの時の借りを返しに来た。さあ、大人しくサリー・ランドとライオン種を渡せ!」

 

 「何度言ってもサリーとライガーは絶対に渡さない!」

 

 「ほう、では、人質のこいつらがどうなってもいいんだな?」

 

 兵士はバズとアイセルに銃を突き付けた。それを見たサリーは、

 

 「わかりました。あなたたちと一緒に行きます。」

 

 「お、おい、サリー!」

 

 「ご免なさい。」

 

 サリーがリュック隊長の近くに来た瞬間、アイセルは兵士の足を踏みつけた。

 

 「痛っ!」

 

 アイセルはすかさず兵士をつき倒し、バズに銃口を向けた兵士も殴り倒した。

 

 「今よ!」

 

 レオもその隙を逃さず、ワイヤーでリュック隊長の拳銃を離した。

 

 「ありがとう、アイセル!」

 

 「ひゅー、やるね! お姉さん。」

 

 「私の名前はアイセルよ!」

 

 「サリー、バズと一緒に車に!」

 

 「わかった。」

 

 サリーはバズと共に車に乗り込み、レオはビーストライガーに乗ってその場を離れた。

 

 「くそ、逃がすか!」

 

 リュック隊長もすかさず、キャノンブルに乗り込み、後を追った。

 

 ビーストライガーとバズの車はリュック隊長が追ってこられないところまで逃げようとするが、リュック隊長のキャノンブルは配下の2体のキャノンブルと共に3連ミサイルポッドをライガーとバズの車に撃ち込んだ。

 

 「バズ、ここは俺がひき止める。そのまま逃げていって!」

 

 「ライガー、まだ傷付いているけど、大丈夫か?」

 

 「大丈夫! 足止めだから。」

 

 「レオ…」

 

 「大丈夫だよ。サリー。必ず戻ってくるから。」

 

 バズの車が走って行ったのを見たレオとライガーは、リュック隊長率いるキャノンブル隊の前に立ち塞がった。

 

 「ここから先は通さない!」

 

 「面白い、帝国軍に刃向かったこと公開するがいい!」

 

 リュック隊長のキャノンブルの対空レーザー砲を避けるビーストライガーだが、レオは以前シェル軍曹のバズートルとの戦いを思い出した。

 

 「今の攻撃は!? バズートルの!」

 

 「その通り、キャノンブルにバズートルのA-Z対空レーザー砲と410口径ミサイルポッドを装備したのだ。 ゾイドは武器を換装させることによってより強くなる!」

 

 キャノンブルは対空レーザー砲と410口径ミサイルポッドを同時にビーストライガーに撃ち込む。さっきは何とか避けれたものの、足の傷が治っていないため、キャノンブルの対空レーザー砲と410口径ミサイルポッドの同時発射を避けられず、直撃してしまう。

 

 「う、うわぁっ!!」

 

 更に追い撃ちをかけるように他の2体のキャノンブルも突進攻撃をし、次々とビーストライガーを吹っ飛ばした。

 

 「ぐあっ!」

 

 「レオ!」

 

 「どうやら、勝負あったようだな!」

 

 ズドン!

 その時、突然、リュック隊長のキャノンブルの前方が攻撃された。

 

 「一体なんだ!?」

 

 「御待たせ!」

 

 その時、耐Bスーツを着用したアイセルの乗ったラプトリアが現れ、2体のキャノンブルに対空速射砲を撃ち込んだ。

 

 「貴様はあの!」

 

 「ここは私に任せて!」

 

 「え、でも…」

 

 「大丈夫! こう見えても私とラプちゃんは強いんだから! 3対1なんて卑怯よ。 正々堂々戦いなさい。帝国軍!」

 

 「黙れ! このアマ。調子に乗るんじゃねぇ!! さっき殴られた借りを返してやる。」

 

 「あの2体は私が引き付けるわ。」

 

 「わかった!」

 

 「行くわよ、ラプちゃん!」

 

 2体のキャノンブルに向けて突っ込むラプトリア、

 

 「たかが、ラプトリアごときでこのキャノンブルに勝てると思ったか!」

 

 キャノンブルは3連ミサイルポッドをラプトリアに撃ち込むが、ラプトリアは小さな身体を活かして2体のキャノンブルの3連ミサイルを避けた。更にラプトリアはジャンプし、一体のキャノンブルの頭部に対空速射砲を撃ち込み、キャノンブルは角で串刺しにしようとするが、ラプトリアは瞬時に避け、キャノンブルの死角に周り、関節を狙って撃ち込んだ。更にラプトリアはもう一体のキャノンブルにも対空速射砲を撃ち込んだ。

 

 「それで、攻撃したつもりか!」

 

 キャノンブルはラプトリアに攻撃の煙幕に包まれたラプトリアに向けて突進するが、ラプトリアはそれを避け、目の前に同じ隊のキャノンブルがいた。

 

 「何!!」

 

 誤爆によって倒れる一体のキャノンブル、ラプトリアは瞬時に後方に入った。

 

 「しまった!」

 

 「行くわよ、ラプちゃん! 進化 解放! エヴォブラスト―!! 」

 

 エヴォブラストしたラプトリアは背中の爪のドスクローとスラッシュクローを前方に出し、キャノンブルに向かって走って行った。

 

 「ヘキサスラッシュ!」

 

 「うおっ!!」

 

 ラプトリアの攻撃を受けて倒れるキャノンブル、

 

 

 

 

 アイセルのラプトリアが2体のキャノンブルと戦っている間にビーストライガーはリュック隊長のキャノンブルと戦っていた。

 

 「キャノンブル、兵器 解放! マシンブラスト―!! ナインバーストキャノン!」

 

 マシンブラストしたリュック隊長のキャノンブルは9連キャノン砲に加え、新たに装備した対空レーザー砲と410口径ミサイルポッドを同時にビーストライガーに向けて放った。

 

 「くっ!」

 

 キャノンブルの猛攻に翻弄されるビーストライガー、

 

 「見たか! キャノンブルの機動性を!!」

 

 しかし、ビーストライガーはクルっと1回転し、

 

 「何!?」

 

 「機動性なら、ライガーだって!」

 

 ビーストライガーはすかさず、攻撃の態勢を取り、

 

 「ビーストオブクローブレイク!!」

 

 ビーストライガーの攻撃を受けて倒れるリュック隊長のキャノンブル、それを見たバズとサリーは、

 

 「やった! レオが勝った。」

 

 「レオ。」

 

 しかし、リュック隊長のキャノンブルは尚も立ち上がり、

 

 「そんな、まだ立ち上がれるのか!?」

 

 「ここで逃すわけにはいかない。ここで逃したら、我々は帝国の面汚しだ!」

 

 リュック隊長のキャノンブルがビーストライガーに再び攻撃しようとしたその時、

 

 ズドン!!

 

 突然、リュック隊長のキャノンブルの前方に大砲が撃ち込まれ、レオたちが後方を見ると、そこにはラプトリア隊を率い、対空速射砲を装備し、改造を施された黒いカラーリングのトリケラドゴス改とステゴゼーゲ改がいた。トリケラドゴス改とステゴゼーゲ改には共和国のエンブレムが貼られていた。

 

 

 「あれは!」

 

 「共和国軍。」

 

 トリケラドゴス改のライダーはスピーカーを通じてリュック隊長に言った。

 

 「帝国軍に告ぐ。こちらは共和国軍だ! これより先は我が共和国領だ。直ちに後退願おう。

 これ以上領内に攻撃することは我々共和国軍への宣戦布告とみなし、我が軍も貴国の軍に攻撃を加えることになる。」

 

 「た、隊長…」

 

 それを聞いたリュック隊長は歯を食い縛り、

 

 「やむを得ん! 一旦後退する。」

 

 リュック隊長のキャノンブルは他の2体のキャノンブルと共にその場を去った。

 

 「ふぅ~、助かったぜ。」

 

 「それにしても、何でこんなところに共和国軍が?」

 

 「フフフ、何でか知りたい?」

 

 「え?」

 

 その時、アイセルは見せびらかすように共和国軍の階級を見せた。それを見たレオは驚き、

 

 「え! もしかして、アイセルって…」

 

 「そう! 私は共和国軍少佐ジョー・アイセルよ。」

 

 「アイセルさん、共和国軍だったの!?」

 

 「まさか、あの胡散臭い奴が共和国軍だったなんて、不覚!」

 

 トリケラドゴス改とステゴゼーゲ改から降りた2人の将校はレオたちの元に立ち寄り、アイセルに敬礼した。

 

 「事情は先の通信で聞いた。彼らが帝国軍に追われているという者たちだな。」

 

 「あ、あの…」

 

 「君が例のライガーのライダーだね?」

 

 「は、はい! レオ・コンラッドです。」

 

 「私はサリー・ランド。」

 

 「俺は運び屋のバズ!」

 

 「私は共和国軍のクライヴ・ディアス中佐。」

 

 「同じく、共和国軍のアギト・ツガミ大尉だ。」

 

 「君たちのことはアイセル少佐から聞いている。我々も出来るだけのことで君たちを保護する。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 レオたちがリュック隊長率いる帝国軍と戦った場所から数キロ離れた場所に共和国ゾイドのラプトリア、ガノンタス、スコーピア、トリケラドゴスのボディをコクピットと内部のゾイドコアまで破壊され、バラバラに解体されたゾイドの残骸が山のように連なるなど、ユウトのハンターウルフ改以上の惨状になっていた。

 ゾイドの残骸の山の近くにレオやユウトに近い年齢の少年が座り、その横に全身ダークブルーなカラーリングで背中のツインドファングの刃先がメタリックレッドになり、目に赤いバイザーが取り付けられ、ユウトのハンターウルフ改と並ぶ特別な改造を施した帝国軍最強のファングタイガー改がいた。 少年は退屈そうな表情で、

 

 「ここもどうやらクズばかりのようだな。 これじゃ、暇潰しにもならん!」

 

 その時、少年が持っている通信機から通信が入り、

 

 『プライドか… ここの共和国軍は大したことなかったぞ! ファングタイガーのマシンブラストを使うまでもなかった。もっと骨のあるゾイドはいないのか?』

 

 「そのことだが、お前に朗報が出た! ランド博士とザナドゥリアス少尉の言っていた例のライガーがお前の近くを通ったとの情報が出た。」

 

 『ふぅ~ん、で、そいつ強いの?』

 

 「ザナドゥリアス少尉のハンターウルフ改には負けたそうだが、リュック隊長のキャノンブルを2度も敗ったそうだ。

 今、ザナドゥリアス少尉は博士と共にあるゾイドの発掘に行ったため、ライガーの相手をする者がいなくなったので、お前に頼んでいるのだが…」

 

 『あの頭の固い奴のハンターウルフに敗けた例のライオン種か… まあ、準備運動ぐらいにはなるかな。』

 

 少年は通信を切り、ファングタイガー改を見上げた。

 

 『どうやら、次の獲物はライオン種に決まりだな。せいぜい簡単にくたばらず、俺のファングタイガーのツインドファングの餌食になれるレベルであってくれよ!』

 

 少年が見上げたファングタイガー改の牙と背中のツインドファングの刃先は太陽の陽射しに照らされ光り輝いた。

 

 

 

 

 帝国軍基地、ランド博士は復元している巨大ゾイドの化石を眺めた。そこに作業員が現れ、

 

 「復元作業は順調に進んで行っています。このまま進めば、この化石がどんなゾイドか把握することが出来ます! 

 しかし、驚きました! 我が帝国軍に共和国軍のグラキオサウルスのような巨大ゾイドは手に入らないと思っていたのに、まさか、それと同等かそれ以上のサイズのゾイドを手に入れることになるとは!

 これで、我が帝国軍の大幅な戦力拡大に貢献するでしょう。」

 

 「そんなものではない。」

 

 「は…?」

 

 「私の目的は発掘ではない! 再生だ!!」

 

 「再生……ですか?」

 

 「(強きものが頂点に君臨し、世を統べるのだ。 生命体にとって、進化、適応は必然なのだ。

 人類はゾイドと共にあり、今こそ、解放すべき時なのだ!)」

 

 巨大なゾイドの化石を見たランド博士は不気味な笑みを浮かべた。

 

 To be continued




 アイセルの助けで、リュック隊長率いる帝国軍を退け、無事1つ目のリジェネレーションキューブの端末を作動させることに成功したレオたち、レオたちは共和国軍に保護されるが、そこでは帝国軍と睨み合いをしていて、しかもその帝国軍にはユウトのハンターウルフ改と並び、「悪魔の虎」の異名を持つ帝国軍最強のファングタイガー改を駆る少年がいた。

 次回

 「黒キ虎」

 走り抜け、ライガー!!

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