ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 だが、それは嵐の前の静けさに過ぎず、新たな脅威が襲いかかろうとした。


第30話「始動!新タナル指導者」

 ネオヘリックシティの攻防から二日後、ボーマン博士を連れ、レオのライジングライガーに酷似したライガー・ジ・アーサーとワイルドライガーガンナーを相棒とするゼオルたちが現れたことによって、両国の首都は壊滅を逃れ、オメガレックスを鎮圧、真帝国を遂に壊滅させることに成功した。

 しかし、それでも、プライド摂政の策略とオメガレックスの謎の暴走により、両国の遺産にして、同時に拠点でもある移民船が破壊され、両首都の被害は尋常ではなく、かなりの打撃を受けることになった。

 だが、幸いにも共和国にはネオヘリックシティとは別に建設された第二の首都ニューホープが残っていたため、そこを拠点に、両国はそれぞれの首都の復興に務めた。

 破壊された帝国の移民船から、真帝国の幹部であるランドとシーガルが焼死体として発見され、これにより、真帝国が完全に滅んだことが確認され、両国の国民は脅威がなくなったと思って安心した。

 しかし、両国の軍上層部は安心しなかった。何故なら、真帝国を利用し、両国を混乱に陥れた元帝国摂政プライドがネオヘリックシティの攻防戦の後、真帝国の多数のキルサイス隊を率いて姿を消したからだった。

 帝国宰相ハワード宰相やコリンズ中将による帝国軍上層部とギャレット大将による共和国軍上層部はニューホープの軍事基地に集結し、プライドの真意とその目的を探ると同時に再び帝国、共和国に牙を向ける場合のことを想定しての対策を練る会議を開いた。

 

 「帝国の移民船の内部の調査の結果、破壊された動力源のところにランドらしき人物が焼死体として発見され、同時に粉々に破壊されたキルサイスの残骸からもシーガルらしき全身を砕かれた遺体が発見され、いずれも完全な死亡を確認。

 唯一生き残り、逮捕されたアルドリッジは収容所に収監し、この後、行われる軍事裁判で処分が決定されます。」

 

 「全く、我々帝国の歴史に泥を塗った帝国の面汚しが!」

 

 「でも、わざわざこちらが処分する前に死んだのは好都合ですよ。 余計な手間を省けて助かりました。」

 

 「ですが、今回の一連の騒動の元凶とされる元帝国摂政プライドとその直属であるラスト元大佐が真帝国のキルサイス隊引き連れて姿を消し、同じくその私兵であるセードもジェノスピノと共に海中に潜行して消息不明、思いがけないワイルドライガーの援護によって鎮圧されたオメガレックスはネオヘリックシティの海中に落下し、現在捜索を続けていますが、尚も発見されず、更に捕虜にされているサリー・ランドと元真帝国皇帝ハンナ・メルビルも行方知らずとなっています。」

 

 「それにしても、プライドの目的は一体何なのだ? 以前真帝国がオメガレックスを復活させて意気揚々としていたのに乗じてジェノスピノを使って、ネオゼネバスシティにクーデターを起こし、真帝国の奴等を迎え入れたかと思いきや、今度は逆にその真帝国に反乱を起こし、移民船を自爆させ、首都を壊滅させようとしていたが、その行動に何の意味があるのだ?」

 

 その時、ギレル少佐が声を上げ、

 

 「当初は私も真帝国を作って、帝国を乗っとることが目的だと思っていました。あの時、シーガルによるジェノスピノの侵攻作戦を阻止するために私に情報提供して、協力していましたが、どうもそれに違和感を感じていました。

 あの時はシーガルの行動を阻止する事で精一杯だったため、気付きませんでしたが、そもそもジェノスピノに乗っていたのは私兵のセードで、自身の部下なら、止めようと思えば、止められるはずなのに、丸で見てみぬふりをしていたため、それこそが真帝国建設のための計画だと確信していました。

 ただ、それが目的だとしても、今回の奴の一連の行動にやはりもう一つ違和感がありました。」

 

 「それは一体……」

 

 「以前、真帝国がオメガレックスを完成して、反乱を宣言していた時、奴はそれに乗じてクーデターを起こしていましたが、しかし、奴の狙いは真帝国ではなく、オメガレックスそのものだったのではないかと考えています。」

 

 「何!? それはどういうことだ?」

 

 「真帝国が反乱を起こして、我が帝国軍がその鎮圧のために軍を動かし、首都が手薄になっている時にクーデターを起こし、首都を制圧する。これが真帝国を作るための作戦としても説得力はありますが、それが目的ならば、わざわざシーガルの反乱を別の場所でやらせるよりも、直接首都でシーガルらと共に首都を制圧してもいいはず……

 オマケにその後は真帝国宣言の演説を初め、共和国との交渉には全てシーガルばかりが行い、奴だけは蚊帳の外で一切表に出さなかった。」

 

 「確かに奴が帝国を乗っ取り、真帝国を作ることが目的なら、わざわざシーガルに任せず、自ら表に立って、政を行ってもいいはず、実際帝国内でもシーガルよりも奴を支持するは少なくはない。なのに、それをしなかったのは確かにおかしい。」

 

 「しかも、奴が真帝国に反乱を起こしたのはロングレンジバスターキャノンで機能停止したはずのオメガレックスが再起動して謎の暴走を遂げた後でした。

 これも奴の計算の内に入っていたとするなら、奴の本来の目的がオメガレックスを手に入れることだと推測すれば、大体説明は尽きます。実際ライダーには奴の直属であるザナドゥリアス元少尉が乗っていることが確認されました。」

 

 「しかし、仮にそうだとしても、何故、移民船に爆破工作を仕掛け、首都を壊滅しようとしたのだ?」

 

 上層部の会話にコリンズ中将が割って入るかのように口を開き、

 

 「もしや、プライドの目的はオメガレックスを手に入れると同時に帝国と共和国の両国を壊滅させるつもりだったのではないのでしょうか?」

 

 「それはどういうことだ?」

 

 「そもそも、オメガレックスによる出撃がシーガルがジェノスピノ侵攻作戦の失敗の雪辱を晴らすための作戦ではあるが、同時にそれが両国壊滅のためにプライドが利用したものならば、今回の反乱の行動に説明が尽きます。」

 

 「しかし、その根拠はあるのか?」

 

 「私は士官学校以来から、プライドのことはよく知っています。私が士官学校の卒業生になった時、彼は私にこう言ったのです。

 いずれ、この地に神が現れ、進化した人類に相応しい人間を選別し、その使徒となってこの星を支配する。そしてその1人に私がなる……そう言ったのです。

 初めは単なる妄想だと思ってましたが、どうもその言葉が気になっていて、もしや、それに関係しているかと……」

 

 「もし、それが本当なら、奴は両国を壊滅させた後、一から国家を建設または予め用意していた国家を築くということになるのか?」

 

 「可能性はあります。」

 

 「だが、その神とは一体何なのだ? ましてや、進化した人類、使徒になる等、随分傲慢な考えだ。」

 

 「そういえば、確か、中将は士官学校以来から奴のことを知ってましたね。奴の経歴に関してどれぐらいまで御存知ですか?」

 

 「残念ですが、知っていることと言えば、私が士官学校に入隊する以前に先帝陛下に仕えていることしか……」

 

 「宰相殿も同じですか?」

 

 「ええ、奴のことは先帝陛下は私にすら話しませんでした。 ただ、ちょいと食えない男という雰囲気があって、警戒していて、私の独立部隊に所属していたスピーゲル中佐を監視下に置きました。」

 

 「ですが……」

 

 「コリンズ中将、どうしました?」

 

 「彼が唯一外に出たのを目撃した兵士がいるのを聞いたことがありまして……」

 

 「何か問題でも?」

 

 「いえ、プライドは普段は滅多に外に出なく、その理由を聞かれても、外の空気が嫌いなだけと言ってましたが、どうもそれが気になっていて、たまたま別荘を通り掛かった兵士の話によると、プライドはマスクもせずに外に出たと話していました。」

 

 「マスク無しでだと!?」

 

 「プライドが帝国の先代皇帝から仕えていたとするなら、年齢的に第一世代なのは間違いないはず……なのに。」

 

 「その兵士の単なる見間違いか、何かしらの治療が施されているという可能性もあるが、もしそれが本当なら、奴は第一、第二世代どちらでもない人間の可能性もある。」

 

 「とにかく、奴には十分な注意を引き付ける必要がある。それまでに我々は何としても対策を練なければならない。」

 

 「そういえば、ギレル少佐、両国の首都を壊滅から救った例の2体のライガーを従えるライダーがいたな。彼らから情報を聞き出すことが出来るのではないのか?」

 

 「実は既にツガミ大尉とバスキア大尉に聞き込みを命じていますが……」

 

 

 

 

 ニューホープの軍事基地の特別室でバルディーとマリアナにツガミ大尉、ゼオルにバスキアがそれぞれ聞き込みをしていた。

 

 「いや~、これ結構上手いぞ。マリ、お前も食べろよ!」

 

 「バルディー、もうちょっと真剣にやりなさいよ。」

 

 「いい加減、飯を食べるのを止めて、こっちの質問に答えてください!」

 

 「ンなこと言ったってよ。俺もあの禁制地区ってのは知らないんだよ。 変な奴はいるけど、21世紀の道具は幾らか手に入るし、食糧もあるから、生活には困らないけどね。」

 

 バルディーの様子を見て、やれやれと見るツガミ大尉、

 

 「ふざけるのはいい加減にして、質問に応えてくれませんかね。」

 

 「すみません。バルディーはホント、バカなもので……」

 

 「ところで、君が我が帝国軍が捕獲し、改造したワイルドライガーと共に脱走したマリアナ・エバンズ中尉なのだな?」

 

 バスキア大尉の質問に少し焦るマリは、

 

 「は、はい。もちろん、好きで脱走したわけではないですが……」

 

 「まあ、その件は上層部においおい説明しておくが……君はあの禁制地区についてどれぐらい知っている。」

 

 「残念だけど、知っていることはほとんどないわ。私たちが禁制地区に入ったのは盗賊団から逃げてからで、その時にゼオルに会ったからね。」

 

 「ゼオル……というと、我が帝国首都を救った君か。」

 

 「ああ、そうだ。でも、俺に聞き出そうとしても、それは出来ない。何せ、俺は俺と相棒の名前しか知らない記憶喪失だからな。」

 

 「君のあのライガーの名前は?」

 

 「ライガー・ジ・アーサー。残念だが、知っているのはそれだけだ。」

 

 「いつ会ったかはまでも覚えてないのか?」

 

 「ちょっとだけだが、俺が5歳の時に誰に捨てられたかわからないが、禁制地区で例の兵士に襲われた時に助けられてそれ以来、共に行動しているってだけだな。

 最も途中から合流したボーマン博士も相棒の正体は掴めてないがね。」

 

 

 

 

 

 

 「残念ですが、ツガミ大尉やバスキア大尉の話によると、大した情報は得られませんでした。」

 

 「そうか。」

 

 「しかし、オメガレックスを倒したというワイルドライガーと帝国首都を救ったあのアーサーというライガーの性能は無視出来ません。

 しかも、あのアーサーは我が帝国軍が何度も滷獲を試みて全て失敗したあの幻のライガーだということが確認されましたし、オマケにそのライダーは記憶喪失とはいいますが、あの状況の中であれだけ冷静な判断力と決断に加えて簡単に移民船のシステムをハッキングできる程の手腕、とても只の民間人に出来るものではありません。何としても、我々と共に協力を……」

 

 「だが、あのワイルドライガーは我々帝国軍が一度滷獲して逃げた個体。しかも、そのライダーの1人はブラッド元2等軍曹同様、元脱走兵で、もう1人はそのワイルドライガーを奪った元盗賊団の1人なのだぞ! そんな連中を迎え入れる等……」

 

 「しかし、そのブラッド元2等軍曹も、レオという少年と共に我が共和国及び帝国を救ってくれた。 そんなことにいつまでも拘っていてはその隙にプライドが我々に牙を向くかもしれない。 そうならないためにも、ここは慎重に議論すべきかと……」

 

 「わかりました。」

 

 「では、引き続き会議を続ける。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軍事基地の待機室で、ボーマン博士はレオたちと対面していた。

 

 「君がレオ・コンラッド君かい?」

 

 「どうして、俺の名前を?」

 

 「世界各地を回っていると、自然と情報が入ってくるんだよ。何せジェノスピノを倒した英雄だとね。」

 

 「爺さん、俺のフォックスをバイザーから解放してくれたの改めて礼を言わせてもらう。あんたのおかげで、俺は救われた。」

 

 「私はただ、苦しんでいた君のゾイドを救いたかっただけだ。」

 

 「え? てことはお前のフォックスのバイザーを外したって人は?」

 

 「そうだ。この爺さんだ。」

 

 「てことはあんたがサリーのお爺さんのボーマン博士か?」

 

 「そうだが、サリーを知っているのか? 実は行方不明の孫娘を探しているのだが、心当たりがあるのか?」

 

 「それが……」

 

 それを聞いたレオは話せないような素振りを見せ、そのレオに代わってロックバーグ中尉が口を開き、

 

 「それについては私からお話しします。」

 

 そして、ロックバーグ中尉から全てを聞いたボーマン博士は、

 

 「そうか……サリーが拐われたということは、あのペンダントを奪われた可能性が大きいな。やはり、私がランドを強く止めれば、こんなことにならなかったのだが……」

 

 「ランドって、まさか……」

 

 「フランクリン・ランド。私の娘婿にして、サリーの父親だ。現在帝国軍に所属していると聞いていたが……」

 

 それを聞いたレオは驚きを隠せないでいた。

 

 「帝国軍のランド博士がサリーの父親だって!? それって本当なんですか?」

 

 「ああ、彼は元は優秀な科学者だったが、ゾイドに対する考えが違って、よく対立することもあり、次第に狂気的な実験に手を染め、サリーを彼から引き離したが、よもや、こんなことになっていたとは……」

 

 「そんな……じゃあ、サリーは……」

 

 「ですが、そのランドは何者かに殺され、サリーは別の人物に連れていかれたと報告がありますが……」

 

 「?? ランドが!? 一体誰に?」

 

 「特定はされていないわ。考えられるとしたら、あの時、移民船にいた元帝国摂政プライドかジェノスピノに乗っていたセードか。」

 

 「プライドに、セード? その名前、何処かで……」

 

 そこにギレル少佐とディアス中佐がゼオルとバルディー、マリアナを連れたバスキア大尉とツガミ大尉と一緒に現れ、

 

 「ボーマン博士。」

 

 「私に何か用かな?」

 

 「あなたに聞きたいことがあります。あなたが何故、あの男たちと一緒にいるのか、あのライガーは何者なのか、そして我々も立ち入り出来ない禁制地区について……」

 

 「わかった。わかっているだけのことを話そう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギレル少佐とディアス中佐らはボーマン博士とレオたちを軍事基地の特別室に移動し、ボーマン博士は禁制地区のことを話し、ゼオルたちと行動を共にした時に襲いかかってきた謎の兵士を映した映像を流した。それを見たギレル少佐は、

 

 「これだ! あの時、移民船にいたあの兵士だ。」

 

 「正体は未だ不明ですが、この禁制地区を護衛する兵士と思われ、武器は主にナイフや斧、ハンマーに弓矢といった原始的なものでありながら、通常の人間を遥かに凌ぐ身体能力を持っていて、例え、銃を持った兵士でも一切太刀打ち出来ない程です。」

 

 「強化人間……なのか?」

 

 「それも不明ですが、ただ、この兵士が騎乗しているジャミンガは他のジャミンガと違い、目の色が紫色になっていて、しかも他のジャミンガと違い、不規則な動きではなく、ラプトールやラプトリアといったヴェロキラプトル種らしい動きもしています。」

 

 「移民船に侵入した時も確かにジャミンガとしては余りにしっかりしていた動きをしていた。」

 

 「そういえば、ギレル少佐。その移民船にいたジャミンガの残骸は回収していたんだったな。何か改造が施された後は無かったか?」

 

 「残念だが、解析の結果、他のジャミンガと大して変わらず、特になんの工作もなかった。」

 

 「では、一体……」

 

 「それに関して、私も調査をしていていて、一つわかったことがあった。これを御覧ください。」

 

 ボーマン博士が再び映像を開きジャミンガに騎乗している謎の兵士の背面を見ると、背中にはコードのようなものが直接接続されていて、それがジャミンガとも繋がっていた。それを見てギレル少佐とディアス中佐は得体の知れないものを見るかのような表情をした。

 

 「こ、これは……」

 

 「詳しくは解析は出来なかったが、これは恐らく、貴国の兵士がゾイドに乗るために着用する耐Bスーツにゾイドと身体を繋げる役目と似たようなものと推定される。」

 

 「しかし、耐Bスーツを着用せず、直接肉体とリンクす事例なんて見たこと聞いたこともない。」

 

 「だが、そんなことが出来るということはその禁制地区には……」

 

 「私も同じ考えです。恐らくこの禁制地区には帝国、共和国どちらでもない勢力が存在し、その勢力の情報を知られないためにこの兵士は禁制地区に入った者を排除していると推定されます。」

 

 「プライドの反乱の時にこの兵士が移民船に現れたということは、プライドはその禁制地区の出身だと……」

 

 「その可能性は十分にあり得ます。」

 

 その一連のことを聞いたレオは驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜がふけ、軍事基地の屋上で、ギレル少佐とディアス中佐は夜の空を眺めていた。

 

 「ギレル少佐、君はどう思う?」

 

 「どういうことだ?」

 

 「禁制地区のことだ。もし本当にプライドが禁制地区の出身で、最初から両国を壊滅させ、新たな国家を築くことが目的なら、我々はそうならないために先手を打って、禁制地区を攻撃しなければならない。」

 

 「だが、我が帝国及び貴国はこれまで30数年間の間、あの禁制地区に入って生存した兵士は1人もいない。オマケに首都もプライドの工作によってかなりの被害を受けている。」

 

 「だからこそ、我々は共同で軍備を拡大し、それに対抗するための力を持たなければならない。首都の復興は確かに必要だが、再びプライドが更に強力な軍隊を率いて現れたら、その時は首都壊滅よりもっと恐ろしいことになる。

 そうならないために何としても、奴等を倒さなければならない。もしかすると、最早帝国、共和国等と言っている場合ではないかもしれない。」

 

 「お前は相変わらずだな。」

 

 「どういうことだ?」

 

 「その真っ直ぐな考えだ。母国のことで背一杯なこの状況でも、迷いなく貫くその姿勢。」

 

 「それが私の信念だからな。」

 

 「その信念があったから、あの時、私のスナイプテラとお前のトリケラドゴス改が初めて一戦交えたあの時に私はお前に負けたのだからな。」

 

 「だが、お前にも母国に対する思いがあるではないか。ジェノスピノ侵攻によるシーガルの反乱を阻止するためにお前はあの時、必死になっていただろ?」

 

 「ふっ、恐らくもう戦場で再び合間見えることはないだろうが、ディアス中佐、もう一度私と我が帝国に力を貸してくれないか。」

 

 「無論だ。今となっては帝国のためはひいては共和国のためでもあるからな。」

 

 「では、よろしく。」

 

 夜の月が照らす中、ディアス中佐とギレル少佐は握手を交えた。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、レオは倉庫の中に入り、そこで修理されている最中のライガーを見つけ、ビーストライガーがジェノスピノに敗れ、再びジェノスピノと戦う前に必死に改造し、ライジングライガーに進化した時のことを思い出しながら、悲しそうな表情をしていた。

 

 「ライガー、ホント、後免。 あの時、モザイクに来たジェノスピノと戦った時、俺のせいで、お前を酷く傷付け、もうお前に無茶はさせないって、ライジングライガーになった時にそう誓ったけど、でも結局その後はハンターウルフ改の時に苦戦して、サリーを守ることが出来ず、火山地帯の時でも、サリーを助けることが出来ず、そしてロングレンジバスターキャノンを装備するっていう大役も果たしたのに、結局オメガレックスに負けて、またお前をあの時みたいに傷付けてしまった。 俺はこのままでいいんだろうか?」

 

 落胆するレオの元にボーマン博士が現れ、

 

 「君、こんなところで、何をしているんだ?」

 

 「別になんでもありません。」

 

 「もしかして、相棒のライガーのことを思っているのか? 君たちに何があったかまでは知らないが、サリーが拐われたのも、ライガーが傷付いたのもそれはきっと君のせいではない。」

 

 「でも、今まで俺は何度も自分のせいでライガーを傷つけているんです。」

 

 「ところで、君に会いたい人がいるだが……」

 

 「俺に会いたい人?」

 

 「ああ、広場の食堂に待っているが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 軍事基地の広場の食堂ではゼオルとバルディー、マリアナが夕食を食べていた。

 

 「いや~、これホントに上手いな。 禁制地区でもこんな上手いもの食べられなかったぜ。 ホント助かったよ!」

 

 「バルディー、それでも私たち、歓迎されているんじゃないの。 私なんか、まだ帝国の脱走犯のままだし、ゼオルだって得体の知れない人にもされているのよ!」

 

 「だが、それもいずれ晴れる。俺たちがこの国を助けたのは博士をサリーって言う孫娘のところに送るだけじゃなく、1日も早く俺の記憶を取り戻し、今まで逃亡生活だったお前たちにも楽な生活送って上げなきゃな。」

 

 「だからって、直ぐそんなことになるとは限らないわ。今のところはある程度の生活は保障されているけど、まだ監視体制にも当てられているのよ。」

 

 「なあに、その辺のことは何とかなる。それにプライドだったっけ? 帝国に反逆したあの元摂政、あの時の映像での奴の顔、明らかに俺のことを何か知っているような表情だった。

 もしかしたら、あいつが俺の失った記憶のことを知っているかもしれない。だからこそ、この国に入ったのさ。 それにここには俺の相棒によくにたライガーもいるから、そいつの正体も探らねばな。」

 

 そんな時、ボーマン博士がレオを引き連れ、

 

 「ゼオル、彼がライジングライガーの相棒、レオ・コンラッドだ。」

 

 「よ、よろしくお願いします。」

 

 「君が俺のアーサーによく似たライガーの相棒か?」

 

 「は、はい。ライジングライガーって言います。」

 

 「そうか。俺はアーサーの相棒のゼオル・ランスロット。只の記憶喪失の男だ。」

 

 「因みに俺はガンナーの相棒、バルディー・サンダー。よろしくな。」

 

 「実は一つ聞きたいんだが、君の相棒のライジングライガー、どうやって相棒になった? 後、元からあの姿だったのか?」

 

 「いえ、初めて会った時は紅蓮色のワイルドライガーだったんですが、それがサリーのペンダントの力で、ビーストライガーに進化して、その後、ライガーがジェノスピノに敗れて修理して改造した時にライジングライガーに進化したんです。」

 

 「ふ~ん。」

 

 「でも、オメガレックスとの戦いでまた傷ついちゃって俺は何度もライガーに辛い目に遭わせたいけない男なんです。」

 

 「でも、それって、お前のライガーもその戦いに挑むためにやったのではないか?」

 

 「え?」

 

 「話を聞くと、お前のライガー、最初の時こそは別の力で進化したようだが、ライジングライガーになるときは別に他の力を使わず、自分の力で進化したんじゃないのか?」

 

 それを聞いたレオはハッとし、

 

 「(そういえば、あの時、ペンダントの力でライガーの傷を回復させることが出来たけど、ライジングライガーになったときは、ビーストライガーになるときと似ていたけど、ペンダントの力ではなかった。)」

 

 「つまり、お前のライガーはお前を真の相棒として認め、お前の思いに応えるために進化したってことだ。」

 

 「どうしてそれを?」

 

 「何となくわかるのさ。俺がまだ小さい時、禁制地区の兵士に襲われた時に相棒のアーサーに助けられて、バルディーたちに会うまでずっと俺を守ってくれた。

 何故、あいつが俺を守るのかは、その理由はわからんが、ただ、わかることはあいつが俺のために何だってやるってこと。それだけだ。

 だからこそ、俺はあいつと共に生き、そしてあいつに認められ、キーを与えられ、ワイルドブラストする力まで与えてくれた。」

 

 「キー?」

 

 レオの疑問に答えるようにゼオルは肌見離さず、愛用しているキーを取り出し、

 

 「こいつだ。博士の話によると、帝国、共和国の連中は機械的な操作でワイルドブラストを発動しているらしいが、

 俺はこいつがアーサーをワイルドブラストさせるためのものにして、相棒の絆の象徴だ。

 これが現れてから、俺とアーサーの絆は深くなって、これまで何度も過酷なことに遭ってもそれを生き延び、ここまできた。

 

 「そうだ。俺のガンナーだって、元は只のワイルドライガーだが、改造と俺との絆があって、あのオメガレックスって奴を倒したんだぜ!」

 

 「いつから、あんたのになったのよ。それにオメガレックスを倒したのは私でしょ?」

 

 「バルディーとマリアナが助けに行った時、かなり傷付いているようだが、お前が本当に相棒のことを考えるんだな。これからのことは。」

 

 「これからのこと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禁制地区に指定されている旧オーストラリア、そこにキラーク盗賊団のミラー、アイパー、ポーチが相棒ゾイドのグソック、スパイデス、スコーピアと共に砂漠をさ迷っていた。

 

 「り、リーダー、もうダメです。」

 

 「何言ってんのよ! ここまでようやく来たのにだらしがないわね。」

 

 「そうは言っても、リーダー。あのバルディーのおかげで、変な兵士に追い回されてずっと禁制地区をさ迷って海にまで渡ったりまでしたんですよ。もう体力が限界です。」

 

 「しかも、水と食糧も完全に底付いちゃいましたし。」

 

 「ああ~、もう! だらしがない。 あたしたちはあたしたちを裏切った上に貴重なワイルドライガーちゃんまで奪ったあのクソガキに復讐するために強力なゾイドを捕まえて仲間にしてコテンパテンにするためだけを思って、ここまで来たじゃない。

 そしてあのガキに復讐した暁にあたしたちは世界最強のゾイドハンター、最初に君臨するゾイド使いとして、この地球の歴史にあたしたちの名前を永久に刻むためにあたしたちはゾイドハンターをやっているんじゃない!

 それなのに、水と食糧がないだけで、力尽きるなんて、あんた、それでも男なの!?」

 

 「じゃあ、リーダーは平気なんですか?」

 

 「当たり前よ! こんなの気合いよ、気合い!」

 

 グ~!!

 

 その時、ミラーの腹が鳴り、

 

 「うっ……」

 

 「やっぱりリーダーも腹減ってるんですね。」

 

 「う、うるさいわね! こんなの気合いで……」

 

 そう言って前に進もうとしたその時、ミラーは突然倒れ、しおれたような顔をした。

 

 「ダメ、動けない……」

 

 「リーダー!」

 

 「やせ我慢だったんですか。」

 

 「ああ~、早くあのクソガキに復讐したいけど、体が動かな~い。」

 

 「しっかりしてください。リーダー。って俺も動けない。」

 

 「俺なんか、指1本すら動けない。」

 

 3人が完全に動けないのを見たスパイデスは3人の日影として覆い、足で3人を涼ませるよう煽い、グソックとスコーピアは周囲に水がないか探した。

 

 「ああ、もう何でもいいから、誰か助けて欲しい。ん? あれなんですかね?」

 

 アッパーが砂漠の向こう側に蜃気楼による幻覚なのか、定かではないが、何かがいた。

 

 「誰かいるんですか? 早く助けてくださいよ~。」

 

 その後、アッパーは再び気絶したが、向こう側にいた者はティラノサウルス型のようではあるが、オメガレックスより少し小型の生物だった。

 

 To be continued




 次回予告

 ギレル少佐たち帝国軍とディアス中佐ら共和国軍はプライドが新たな国家を築いて再び両国に攻めいることを想定して、両首都の復興を続けながら、軍備を整えるが、レオは未だにサリーを救えるか、再びライガーと戦えるかのことでまた自信を無くしてしまう。
 しかし、そんなレオの前にゼオルとバルディーが現れ、彼を恫喝し、ライガーの改造及び、彼のライガーとの決闘を申し込む。果たしてその真意は? そしてライガーは再び立ち上がれるか!?

 次回「ライガーニ、宿ス チカラ」走り抜け、ライガー!!

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