ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

34 / 86
 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 だが、それは嵐の前の静けさに過ぎず、新たな脅威が襲いかかろうとした。


第34話「誕生! 青キ狐」

 エリア68の帝国軍基地、エリア56の共和国軍基地を襲撃したセードのジェノスピノから逃れたレオたちはエリア68の基地に避難していた。基地の中で、レオたちは病棟に入れられているバーンのことを心配していた。

 

 「バーンとフォックス、大丈夫かな?」

 

 「医者とボーマン博士が全力を尽くしているから、今はそれを信じましょう。」

 

 「くそっ、どうしてだよ。 ボーマン博士がせっかくライガーを生まれ変わらせたのに何でまたこうなるんだよ!」

 

 「レオ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちが防衛していたエリア56を破壊した後、セードとジェノスピノはゼロメタル帝国のゾウ型ゾイドを率いてエリア57を襲撃した。戦闘は僅か数十分で終わり、ジェノスピノとゼロメタル帝国のゾウ型ゾイドは無傷のまま、エリア65の基地を壊滅させた。

 

 「結局、ここも雑魚ばかりだったか。やれやれ、せっかくパワーアップしたこの力を試すいい機会なのに、いつもの雑魚掃除に戻ってしまうとは……

 オメガレックスに敗れてパワーアップしたあのライガーも少しは楽しませてくれるかと思ったが、とんだ期待外れだったな。 ま、所詮奴等もその程度の器に過ぎなかったか。俺のことを少しでも足止めして、楽しませてくれる相手になるかと思ったのに……行くぞ、ジェノスピノ。」

 

 ギュオォ~!!

 

 ジェノスピノは咆哮を上げた後、水中に潜り、ゼロメタル帝国のゾウ型ゾイドも霧に紛れて姿を隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリア68の軍事基地の司令室で、ギレル少佐とディアス中佐は姿を見せたゼロメタル帝国のゾウ型ゾイドの映像をニューホープにいるコリンズ中将やギャレット大将ら両軍の上層部に送っていた。

 

 「これが姿を現した例のゾウ型ゾイドです。」

 

 「なるほど、確かにバイザーらしきものが取り付けられているが、これは明らかに我々帝国軍のゾイドではない。」

 

 「我々共和国軍でも、こんなものは初めて見ます。」

 

 「ということはこのゾイドは地球産のゾイドではないのか?」

 

 「ボーマン博士と共に軽く調べたところ、何処にも地球産ゾイドらしい特徴が見当たらず、地球産ゾイドではないということは確かなようです。」

 

 「地球産ゾイドではないということは……まさか、惑星Ziのゾイドだというのか!?」

 

 「確かに惑星Ziにもエレファンダーといったゾウ型ゾイドは確認されていますが、このゾウ型ゾイドにはそのどちらとも全く違う構造をしていて、それによると……」

 

 「まさか、地球でも惑星Ziのどちらのゾイドでもないのか!」

 

 「それはまだわかりません。ただ、惑星Ziにも、通常のゾイドとは成長過程や身体の構造が全く異なるバイオゾイドの存在がいたように、もしかすると、このゾイドは我々でもまだ確認されていない惑星Ziのゾイドだという可能性もあります。」

 

 「となると、やはり、このゾイドを捕獲して、生態を詳しく調べないと、その正体は掴めないということか。」

 

 「はい。」

 

 「ギレル少佐、ディアス中佐、何としてもそのゾイドを一体だけでも捕獲し、ゼロメタル帝国の侵略を阻止するのだ。」

 

 「了解しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちが病室の前で待つ中、バーンが病室から現れ、額には包帯が巻かれ、左腕が骨折していた。レオたちは心配してバーンの元に駆け寄り、

 

 「バーン! 大丈夫なのか?」

 

 「ああ、医者によると、フォックスが吹っ飛ばされた衝撃で気絶していただけだが、額と左腕の傷が深いため、しばらくは出撃を控えて安静にしていろだと。」

 

 「ホント、ムチャする人ね。」

 

 「しょうがねぇだろ。レオとライガーがあんなんなっちまって、助けに行かねぇわけにはいかないだろ。」

 

 「そりゃ、そうだけど……」

 

 「バーン!」

 

 レオたちの元にアイセルとバズが現れ、

 

 「アイセルにバズ、ニューホープにいたんじゃなかったの?」

 

 「バーンがジェノスピノの襲撃で重傷を負っていたって聞いたから、ニューホープから飛んでいったの。それより、身体は?」

 

 「ああ、大したことはない。しばらくすりゃ、その内出撃出来るようになる。それより、ロックバーグ中尉、フォックスは?」

 

 「今、ボーマン博士が修復してるけど……」

 

 「どうなんだ?」

 

 「それが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロメタル帝国領の旧ワシントンDC、そこの研究所で、プライドとドクターマイルスが両国の基地を襲撃している映像を見ていた。

 

 「流石だ。ドクターが復元したゼロファントスは期待通りの性能を見せている。」

 

 「当然だ。ゼロファントスは我等の神が我々より先に地球に到着した時に遺跡に残した情報とあのボーマン博士の娘に、帝国領に侵入した帝国、共和国のゾイドの残骸で復元したのだ。

 それにゼロファントスは我等の神の卷族でもある。それがたかが、旧人類国家ごときに負けるわけがない。」

 

 「そうだな。ところで、お前は最近、ディメパルサーの復元にも力を入れているようだが……」

 

 「ディメパルサーの高周波パルスはかなり使えるのでな。だが、奴一体ではその力を存分に発揮できない。

 そこでクローン技術で大量生産を施し、更にジャミンガの身体を媒体にディメパルサーとゼロファントスのゾイド因子と遺伝子を組み込み、ラプトールやラプトリアより扱いやすい個体に作り替える実験をしているのだ。」

 

 「ほぅ、」

 

 「最も何体かは、実験に失敗し、不完全になったものを我等の神の生け贄か、破棄したがね。」

 

 「ところで、それは完成しているのか?」

 

 「一応は……だが、まだ実用出来る程ではないので、もう少し時間が必要だ。そういや、何でもお前はあの旧人類の貧弱な帝国から興味深いカマキリ種のゾイドを多数手に入れたそうだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 エリア68軍事基地の研究室でボーマン博士は傷付いフォックスの修理に当たっているが、かなり苦戦していた。その時、走ってきたバーンとレオたちが入り、

 

 「ボーマン博士!」

 

 「バーンか。傷の具合は?」

 

 「問題ねぇ。それより、俺の相棒だ。フォックスはどうなんだ?」

 

 「思ったより酷い。ジェノスピノの火炎放射とロングキャノンによる同時攻撃で、アーマーのほとんどが破壊され、ボーンの損傷も激しい。 このままではフォックスが死ぬのは時間の問題となっている。」

 

 「博士、 何とか助けることは出来ないんですか!? あの時、フォックスのバイザーを外した時みたいに!」

 

 「出来なくはないが……その場合、アーマー及びボーンの一部を丸ごと作り替えるか、予め作った別の身体にゾイドコアを移植させる方法があるが……この基地にはそれだけの技術がない。」

 

 「そんな……なあ、お願いだ! ボーマン博士。 何とか助けてください。俺も何だってします。」

 

 「私も出来るだけのことはする。しかし、技術が足りないのだ。」

 

 「だったら、帝国、共和国の上層部に頼めばいいじゃないですか!」

 

 「とはいっても、私はあくまで一科学者にしか過ぎず、国の軍を動かせる程の権力はない。それに仮に頼めても、ここはニューホープともかなり離れていて、フォックスの新たなボディを一から作っても、間に合わないのだ。」

 

 「嘘だろ……こんなところで、相棒を失っちまうなんて、一緒にこの世界を旅しようって誓ったのに……嘘だ、嘘だ、嘘だ~!!」

 

 「何泣いている。元帝国の一軍人が何とも情けない。」

 

 悔し涙を浮かべるバーンに声をかけ、現れたのはリュック大尉とノックス大尉、そしてシェル軍曹だった。

 

 「あんたらは、リュック、ノックス両大尉にシェル軍曹。 一体名西に来たんだ?」

 

 「何ってちょうど我々の要望に応えられる機会が来たから、ここに来たんだ。それも貴様の要望にも応えられるものだ。」

 

 「どういう意味だ?」

 

 「ついてこい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギレル少佐とディアス中佐、ツガミ大尉とバスキア大尉は再びゼロメタル帝国のゾウ型ゾイドの映像を見ていた。

 

 「この映像を見る限りでは、やはり、このゾイドは背中に取り付けられている武器庫のようなものから、爆弾を投げ付けるというスタイルのようだな。」

 

 「となると、それがこのゾイドのワイルドブラストか……」

 

 「だが、あの時では、共和国ゾイドのエヴォブラスト、帝国ゾイドのマシンブラストのように発動するときのタイミングや発光らしきものがなかった。エヴォブラスト、マシンブラスト、どちらでもないものか、そもそもワイルドブラストではないゾイドということもあり得る。」

 

 「ディアス中佐!」

 

 「何だ?」

 

 「エリア51にいるマリアナ・エバンズという人物から通信が届きました。」

 

 「元中尉から? 繋げ。」

 

 ディアス中佐が通信が開くと、目の前に両手でピースしているバルディーが画面越しになっている映像が届いた。

 

 「あ、届いてる? 届いてる?」

 

 「はっ?」

 

 ディアス中佐とギレル少佐がえ? って表情をする中、マリがバルディーをどかし、

 

 「ちょっとどきなさいよ! 失礼でしょ。」

 

 「いや、でも届いてるか届いてないかの確認は必要でしょ。」

 

 「あんたはデリカシーってもんがないのよ! どきなさい。」

 

 マリに思いっきり突き飛ばされた姿を見て、ディアス中佐とギレル少佐は唖然としていた。

 

 「失礼、中佐に少佐!」

 

 「一体、どうしたのだ?」

 

 「実は私たちがあのゾイドを追い返した後、連中が不振な行動をしたのです。」

 

 「何!? それは一体?」

 

 「それが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 リュック大尉らがバーンたちを連れ、倉庫に入るとそこにはアーマー全身が青色で、背中に2つのロングガトリングと両後ろ足に5連速射砲を装備させたフォックスだった。

 

 「これは……」

 

 「お前が脱走した後、復元した研究者がガトリングフォックスを捨てきれずに復元データを基に再現、新たに改造を施したプロトタイプだ。

 だが、最もこれはあくまで再現で、ゾイドコアを持たない只の器のため、これを動かすために何度も移植しやすいゾイドコアを探したものの、フォックスのゾイドコアでしか受けつかなかったため、このまま御蔵入りになったのだ。」

 

 「まさか……」

 

 「そうだ。死にかけているお前のフォックスのゾイドコアをこいつに移植させて蘇生させるのだ。」 

 

 「何で、あんたたちはそこまで……」

 

 「帝国の脱走兵を助けるのは我々の役目ではない。だが、貴様はこれまで何度も我々帝国を助けてくれた。最も貴様の罪を帳消しにするかしないかは別だが、 同じ反乱者でも、貴様は真帝国を創ったシーガルやランド共とは違い、優秀な戦士だということだ。

 それにガトリングフォックスは元々我が帝国の希望でもあった。だから、その希望をジェノスピノやあの得体の知れない帝国ごときに破壊されるわけにはいかない。頼む。こいつで、ゼロメタル帝国を倒す希望になってくれ。」

 

 「リュック大尉……」

 

 「ブラッド元二等軍曹。貴様の罪の件については、リュック大尉と共に、私も出来るだけのことはする。だから、もう一度我々と協力してくれ。」

 

 「ノックス大尉、あんたまで……わかった。その要望受け入れてやる。ボーマン博士、いけるのか?」

 

 「ゾイドコアの移植は今回が初めてだが、全力を尽くしてみせる。」

 

 「頼んだ、博士。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ワシントンDCの倉庫で、ジェネレーターパーツとペンダントを応用し、オメガレックスの修理が行われていた。その研究者の元にユウトが立ち寄り、

 

 「ブレイブ・グリード。修理はどうなの?」

 

 「これは、これは、ザナドゥリアス殿下。 ペンダントのおかげで、作業は順調に進んでいます。このまま行けば、オメガレックスは後少しで修復できます。」

 

 「ふ~ん、修理が終わってそれだけなの?」

 

 「いえいえ、ペンダントのゾイド因子が変化したこともあって、ジェネレーターパーツに更に改良を施し、オーバーヒートの心配もなく、シールドを発生させることも可能になりました。これで、オメガレックスは攻守ともに隙のない完璧なゾイドになりました。」

 

 「へぇ~、それは楽しみだね。」

 

 「どちらへ?」

 

 「そのペンダントの最初の持ち主にも会いに行こうと思って、そのお礼をね。」

 

 「それはそれはよい心がけです。」

 

 「じゃ、後はよろしく。」

 

 ユウトがその場から立ち去ると、グリードは深くため息をついた。その時、ある女性の声がし、

 

 「随分、不満があるようね。」

 

 「ラスト、どういうことだ? あれは我々の望んだ皇帝陛下にしてはまだ不完全だ! せっかくペンダントも手に入れ、計画通りゾイド因子も変化したのに、どうしてあんなのになった?」

 

 「まだ、そう焦る必要はないわ。今の状況では、まだ我等の神を復活させるためのゾイド因子はまだ集まっていないのだから。」

 

 「しかし、それなら、攻めてあれをゼロメタル帝国の完全な皇帝に……」 

 

 「それなら、心配ないわ。そのために、このオメガレックスの力が必要なの。 こいつの力を存分に発揮すれは、間違いなく、我等の神復活のためのゾイド因子は集まるな。」

 

 「期待に応えた改造は施したが、ホントに信用できるんだろうな?」

 

 「あたしとプライドが失敗するとでも?」

 

 「ちぃっ、まあ、いい。とにかく、オメガレックスはこちらに任せる。あれの管理は任せたぞ。」

 

 「じゃ、宜しくね。」

 

 

 

 

 

 施設の特別室でメルビルが窓の外を見ると、ギルラプター改が周囲を警戒していた。

 

 「メルビルさん、どうですか?」

 

 「駄目、あのギルラプターが周囲をウロウロしているから、中々脱け出せる機会がない。」

 

 「そんな……」

 

 その時、扉が開く音がし、誰かが特別室に入っていった。その人物はユウトだった。

 

 「あなたは……ユウトさん。」

 

 「サリー、知っているの?」

 

 「私を帝国軍に推薦して、お世話になった人です。」

 

 「君があのペンダントの持ち主だね。あれのおかげで、オメガレックスの修理は後少しになったし、更に強力にすることが出来るようになったよ。」

 

 「!? ペンダント、ペンダントを何に使うのです?」

 

 「決まっているよ。前の戦闘で、随分壊れたオメガレックスの修理と強化だよ。あれ、結構使えるからね。」

 

 「お願いです! ペンダントを返してください。あれには端末を正常に作動させるための力があるんです。あれがないと、地球を清浄化することができません。」

 

 「わかってるよ。そんなこと、随分うるさい子だね。 だから、あれはボクとボクの帝国のために使わせるだけだよ。」

 

 サリーは以前帝国にいたとき、ランドと違ってメルビル同様に自分に対して優しく接した時のユウトとの違和感を感じた。

 

 「あなたは……あなたは、本当にユウトさんですか?」

 

 「何言ってんの? ボクはこのゼロメタル帝国の皇位継承者のユウト・ザナドゥリアスだよ。それ以外の誰でもない。」

 

 ユウトの自惚れたような表情を見て、サリーは丸で別人を見るかのような表情をした。

 

 「ユウト! どうして? どうして、あなたがゼロメタル帝国の皇位継承者なの?」

 

 「ん? 誰だい、お前。」 

 

 「ハンナよ! ハンナ・メルビル。 あなたと一緒に孤児院にいて、一緒に御父様に拾われて帝国にいた……」

 

 「孤児? 帝国? 御父様? 何言ってんの? このボクが孤児だなんて冗談きついね~。 ボクに父親なんていないし、このボクこそが神に近い存在だからね。 それに君に会うのは今日が初めてだから、君のことなんて知らないよ。」

 

 それを聞いたメルビルは青ざめた表情をした。

 

 「そんな……どうして……ユウト。 お願い、目を覚まして! もう一度思い出して! あなたはそんな人じゃない。」

 

 「目を覚ます? それなら、覚めているよ。この世界に君臨するゼロメタル帝国の皇帝としてね。」

 

 「いえ、違う! あなたは本当はもっと優しい……」

 

 「うるさいな~。」

 

 バシッ! 

 

 何度も説得するメルビルをユウトは容赦なくつき倒した。

 

 「メルビルさん!」

 

 「ユウト……」

 

 「全く、どうして人間はこうも無礼なものばかりなのかね? そんなに無礼なことをするなら、今すぐ殺してもいいけど……いいかな?」

 

 ユウトの不気味で邪悪な顔で睨み付ける表情を見て、メルビルはかつて、帝国でいたとき優しく接し、誰よりも自分のことを思ってくれた時のユウトとは余りの変わりように手足がガタガタ震え、怯えていた。ユウトは再びメルビルを叩こうとしたその時、

 

 「殿下、それぐらいにしてください。」

 

 「ん? ラストか。でも、こいつ、ボクに……」

 

 「そいつらにはもう少し役に立つことがあります。それに殿下はまだまだやらなければならないことがあります。」 

 

 「ちぃっ、わかったよ。 命拾いしたね。」

 

 渋々ながらも、ラストの言葉に従い、ユウトは特別室を退出した。

 

 「ユウト……どうして……どうしてなの?」

 

 メルビルはそのまま泣き崩れてしまい、サリーはそんなメルビルを優しく抱いた。

 

 「メルビルさん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリア68の帝国軍基地の倉庫で、ボーマン博士は汗を流しながら、フォックスのゾイドコアをリュック大尉らが用意した新たなボディに移植し、遂にそのゾイドコアをその新たなボディに埋め込み、作業を終えた。

 

 「よし、後はゾイド因子を注入し、フォックスが目覚めるのを待つだけだ。」

 

 ボーマン博士は装置を発動し、フォックスの元のボディと新たなボディに接続しているチューブからはゾイド因子がフォックスの元のボディから新たなボディに流れ込んでいた。レオたちが息を飲む中、チューブのゾイド因子は注入を終え、フォックスの新たなボディがオレンジ色に発光した。

 

 「フォックス……」

 

 しかし、暫くすると、その輝きが消え、フォックスの目の色まで消えてしまった。ボーマン博士が慌てて装置を見ると、フォックスの生命反応が徐々に弱くなっていた。

 

 「そんな……そんな、馬鹿な。」

 

 「博士、これは……」

 

 「失敗じゃった。フォックスのダメージを考えずに目の前の希望にばかり目にいってしまって、別のボディに移植するための力がフォックスには残っていなかったのだ。」

 

 「それってつまり……」

 

 「フォックスはもうじき死ぬ。」

 

 それを聞いたレオたちも驚愕し、絶望的な表情になった。

 

 「そんな……フォックスが……」

 

 バーンはフォックスの基に駆け寄り、

 

 「嘘だろ……おい、冗談だって言ってくれ! あの時、誓ったよな? 俺とお前だけで、この広い世界を走り抜こうって……

 その誓いを果たせずに、ここで死ぬのかよ? お前は! 俺たちの絆はここで途切れるのかよ!? 何でだよ? 何でこうなるんだよ……」

 

 泣き崩れたバーンがフォックスの身体に何度も叩き、レオを悲しい表情になるその時、レオの左腕がオレンジ色に光った。

 

 「これは?」

 

 同時にフォックスの身体もオレンジ色に光り、再び目の輝きを取り戻し、徐々にフォックスが起き上がり、遂に立ち上がった。それを見たバーンとレオたちは信じられないような光景を見るかのような表情をした。

 

 「フォックス……」

 

 グルル……

 

 「フォックス!」

 

 目覚めたフォックスはバーンの元に寄り添い、バーンも嬉し涙を流しながら、フォックスに抱き付いた。

 

 「博士、これは?」

 

 「うん、バーンの気持ちに応えたいと、死にかけのフォックスが最後の力を振り絞って、ゾイド因子も同時にそれを応え、新たな身体の全身に行き渡らせることに成功し、蘇生することに成功したのだ。」

 

 「そんなことが……」

 

 「これが、人とゾイドの絆による為せる技ということか。」

 

 「人とゾイドの絆による為せる技……」

 

 ボーマン博士の言葉を聞いたレオはその言葉に深く共感し、バーンとフォックスの方を向いた。

 

 「人とゾイドによる絆……それがあれば、今度こそ、ジェノスピノとも。」

 

 ヴォ~!!

 

 復活したフォックスは目一杯咆哮を上げ、その咆哮が基地中に響いた。

 

 To be continued




 次回予告

 バーンのフォックスが遂に復活し、ゼロメタル帝国ではオメガレックスの修復が間近に迫り、サリーたちはゼロメタルからの脱出及びユウトとペンダントの奪還に向かう。
 しかし、帝国のドクターマイルスはその計画を察知し、兵士たちに彼女たちの抹殺を向かう。サリーたちは何とか兵士から逃げようとするも、サリーたちを監視しているギルラプター改に阻まれるが、メルビルがある力を使い、変化が起きた。 果たしてサリーたちは脱出出来るのか?

 次回「脱出! ゼロメタル帝国」走り抜け、ライガー!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。