ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・アベラス

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 だが、それは嵐の前の静けさに過ぎず、新たな脅威が襲いかかろうとした。


第35話「脱出! ゼロメタル帝国」

 エリア51にいるマリたちから、通信を受けたディアス中佐とギレル少佐はマリからゼロメタル帝国のゾウ型ゾイドが不振な行動を起こした報告を受けた。

 

 「例のゾウ型ゾイドが全員撤退した?」

 

 「私たちが追い返した後、各基地から、ゼロメタル帝国のゾイドが次々と撤退した報告を受け、そちらに知らせたんです。」

 

 「しかし、何でまた?」

 

 「わかりません。ですが、何かしらの意図はあるかと……」

 

 「わかった。こちらの件が終わり次第、直ぐにそちらに向かう。」

 

 「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ワシントンDCの改装中の研究所で、ドクターマイルスとプライドはゾウ型ゾイドが基地から撤退していく姿を見ていた。

 

 「さっきまで優勢だったのに、いきなり撤退させるとはどういうつもりだ? プライド。」

 

 「ゼロファントスはまだ完成されたばかりで、本調子ではない。 

 それに帝国、共和国だけ相手にするなら、奴等ごときがゼロファントスを攻略するための対策が出るのは早々ないが、連中にゼオルという厄介なガキもいる。

 これ以上戦闘を続けると弱点に気付き、何かしら対策を寝られる可能性があるからな。」

 

 「敢えて撤退させて、攻略を防いだということか。」

 

 「代わりにセードには引き続き基地の破壊を命じている。ジェノスピノ自体は奴等は一度戦っているとはいえ、セードの操縦技術があれば、いくら一度倒したゾイドでも攻略出来るようなものではないからな。」

 

 「お前が育てただけあって、流石だな。 奴がここに来た時に受けさせた訓練や強化改造の実験でもかなりの実績を上げている。

 恐らくあれは覚醒したばかりの殿下すら僅かに上回っている程のものだ。一体どうやって育てた?」

 

 「何も……ただ、奴の好きなようにさせただけだ。 何せ、まあまあ優秀だが、お前より一段落劣る帝国のゾイド技術者の実父から虐待を受け、それ以来、奴は一切人を信じられず、過酷な人生を強要させた世界そのものを憎みながら生きてきた。 

 私はその憎悪に漬け込んで、奴を引き込んだだけだ。我々の野望のための駒としてな。」

 

 「なるほど、憎しみの感情。それが奴の強さの秘密か。」

 

 「そういった単純な感情に支配された者は、進む道は一つだけになり、それ以外には走らず、他のことに左右されないため、非常に扱いやすい。

 故にその感情によってその者の意思と精神は統一され、何者にも勝る力を得るようになる。そして人はその感情に流されやすく、やがて、それが戦争の火種になる。人間はそういった感情が非常に強い。

 それらの感情を利用すれば、我々はより進化した人類になり、我等の神が復活した暁には、その一つの意思によって統一される理想の世界が生まれるのだ。」

 

 「帝国に潜入し、共和国との戦争を誘発させて混乱に陥れるだけでなく、思わぬ戦利品が手に入ったということか。」

 

 「奴は我がゼロメタルの切り札でもあるのだからな。」

 

 「それは楽しみだな。」

 

 「それはそうと、確かボーマン博士の娘を捕虜にして、その娘が必要だからといって、元真帝国の小娘と一緒に連れて帰ったが、何に使うつもりだ。」

 

 「ペンダントの所有権ですよ。 何せボーマン博士はペンダントが我々の手に渡らないように、予めペンダントの使用権をあのサリーとかいう小娘にインプットし、それ以外の者が手にしても作動しない仕組みになっているのだからな。

 せっかく殿下の力によってペンダントがD因子に染まった今だからこそ、本当の所有者が誰か所有権を変えなければいけないのですよ。」

 

 「そういうことか。流石にボーマン博士はセードのあの愚かな父親程の小物ではなかったそうだな。」

 

 「既にグリードのオメガレックスのボディの大半の修理が終わったと報告されていますので、そろそろ最後の仕上げとして、ジェネレーターパーツのペンダントを……」

 

 「わかった。なら、呼び出すとするか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じく旧ワシントンDCの研究所の特別室では、再会したユウトの余りの変わりようにメルビルは泣き崩れた。

 

 「うっ、うっ、ユウト、どうして……」

 

 「メルビルさん。」

 

 その時、特別室に3名のゼロメタル帝国兵士を連れたラストが入った。

 

 「プライドとドクターマイルスが呼んでいるわ。」

 

 「あんたたちをここに連れていった目的を果たして欲しいとね。」

 

 「一体、私たちに何をするのですか?」

 

 「それは行ってみないとわからないわ。さあ、とっととついてきなさい!」

 

 ゼロメタル帝国兵士が攻撃の姿勢を見せる中、サリーとメルビル、クリスタは渋々彼らについていき、オメガレックスが修理されている倉庫に入っていき、そこにオメガレックスとコードで接続されているペンダントが入っている装置があり、その横にドクターマイルスとプライドが待っていた。

 

 「これは……?」

 

 「ペンダントの所有権を変更させるためのものだ。かつて科学船がゾイドクライシス時の地球に着陸する寸前にボーマンが予めペンダントの所有権をサリーにし、そのパスワードをある人物に託し、我々には扱えないようにした。

 だが、このペンダントが覚醒した殿下のお力によってD因子に染まったことによって、その所有権を変えなければならない。

 そして、そのパスワードをクリスタ、貴様が知っている。クリスタ、パスワードをサリーに教え、直ぐにペンダントの所有権を変えるのだ。」

 

 「やっぱり、あなたたちの狙いはペンダント…それじゃ、船に反乱を起こしたのは……」

 

 ドクターマイルスは拳銃を取り出し、クリスタとサリーに向け、

 

 「それを貴様らが知る必要はない。貴様らは今言ったことを実行するだけだ。さあ、やるのだ!」

 

 「わかりました。サリー、パスワードを伝える。その装置に入力して!」

 

 クリスタは渋々従い、サリーもそれに従って装置の前に立った。

 

 「サリー……」

 

 「大丈夫よ、お母さん。」

 

 「zoid2025。」

 

 パスワードを聞いたサリーは装置に入力し、

 

 

 「よくやった。」

 

 ドクターマイルスはプライドの方を向いて低く頷いた後、サリーに拳銃を向け、同時にゼロメタル帝国兵士もクリスタとメルビルにナイフと弓を突き付けた。

 

 「な、何をするの!?」

 

 「何って…そりゃ、もう用はないということだ。このペンダントを完全に我々のものにする。そのためだけに貴様らをここに連れてきた、それだけだ。目的さえ達成すれば、後はもう用はない。

 最も貴様らを人質に取るという手もあったが、最早そんな状況ではないし、そもそもそこにいる元真帝国の廃帝の小娘も人質の価値すら無くなったからな。さらばだ、サリー・ランド。」

 

 「サリー!」

 

 ズドン!

 

 銃声が部屋中に響き、サリーは思わず目を瞑ったが、どういうわけか、全く痛みを感じず、目を開けると、目の前にはメルビルがいて、サリーの目の前に倒れてしまった。

 

 「メルビルさん!」

 

 「ほぅ、わざわざ庇ったのか。まあ、どちらにせよ、早かれ遅かれだがな。」

 

 メルビルはサリーを庇って撃たれるも、咄嗟の判断でいったため、何とか心臓には当たらず、致命傷は避けたが、脇腹に直撃したため、大出血を伴ってしまった。

 

 「メルビルさん、どうして……」

 

 「あなたがこんな目に遭ったのも、ユウトがこうなったのも全て私の責任よ。だから、せめて私だけでも……うっ!」

 

 「しっかりして! メルビルさん。何もあなただけが死ぬなんて、そんなの認めれない。」

 

 

 「遺言はそれぐらいか? なら、そろそろさっきの続きとしようか。」

 

 ドクターマイルスが再び再び2人に銃口を向けた時、クリスタは非常時に持っていた催涙弾を投げ、ドクターマイルスとプライドの視界を遮った。

 

 「さあ、今のうちよ!」

 

 「ちいっ、追え!」

 

 サリーたちが外に出たその時、目の前にバイザーの色が紫色になっているギルラプター改とゼロメタル帝国兵士が待ち構えていた。

 

 「そんな……」

 

 ギルラプター改はサリーたちに近付くが、その時、ギルラプター改のバイザーが赤になったり、紫になったり、突然苦しむような素振りを見せた。

 

 グルル、グルル……ガアァ……

 

 それを見たメルビルは、

 

 「もしかして、バイザーの負荷が更に悪化している。それもそうよ。ろくに整備もせず、ずっと見張っているのだから……」

 

 メルビルは脇腹を押さえながら、ギルラプター改の前に出た。

 

 「メルビルさん!」

 

 「お願い、ギルラプター! そこを通して。 それ以上、ここにいたら、あなたは死んでしまうわ。 だから、あなたはここから逃げて!」

 

 グッ、グギャア~!!

 

 苦しむギルラプター改にメルビルはそっと右手でギルラプター改に触れた。

 

 グオ~!!

 

 その時、ギルラプター改のバイザーが赤くなり、同時にギルラプター改が狂ったようにゼロメタル帝国兵士を蹴散らし、そっとメルビルに寄り添った。

 

 「もしかして、私たちを逃がしてくれるの?」

 

 しかし、既に後ろにドクターマイルスとプライド、ゼロメタル帝国兵士もその場に着いていて、

 

 「メルビルさん、サリー、早く、ここから離れましょう。」

 

 「わかりました。」

 

 サリーとクリスタ、メルビルは混乱したギルラプター改に乗って、ギルラプター改はそのままゼロメタル帝国兵士を蹴散らしながら、走っていった。

 

 「まさか、洗脳が完了していたはずのギルラプターの洗脳が若干ながら切れるとは……」

 

 「一部だけとはいえ、それでも帝国のイヴィル先帝より受け継いだゾイド因子が影響したのか……

 だが、我々にとってはそれほどの脅威ではないから、放っておいても問題はないと思うが、やはり始末する必要はあるな。

 ドクターマイルス、改造が完了したキルサイスはいるか?」

 

 「キルサイスで追撃させるのか?」

 

 「ゼロファントスではギルラプターの足には追い付けない。それにキルサイスは飛行も可能で、ゼロファントスより何かと小回りが効くからな。念のため、ラストにも出撃させる。」

 

 「了解した。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギルラプター改はゼロメタル帝国領内の森林を目一杯走っていく。

 

 「メルビルさん、しっかりして!」

 

 「うっ……」

 

 しかし、頭上には既にキルサイス隊が追い付いており、次々と上空からライフルを放った。

 

 「きゃあ!」

 

 メルビルは力を振り絞り、操縦捍を握った。

 

 「メルビルさん、ダメ! そんな傷では……」

 

 「心配ない。私は軍人だから、これくらいの傷は平気よ。行くよ、ギルラプター。」

 

 脇腹を抑えながら、メルビルは操縦捍を動かし、同時にギルラプター改の混乱も少し収まり、追うキルサイス隊に対空速射砲を撃ち込んだ。

 キルサイス隊は散開し、狙いにくいようにメルビルとギルラプター改を翻弄させたが、メルビルは帝国軍の訓練の時の勘を取り戻し、まぐれながらも一体撃墜させることに成功する。

 しかし、キルサイス隊は無人なのか、そもそもキルサイス自体が洗脳されているか、定かではないが、仲間の内の一体が撃墜されても、他のキルサイスは気にも留めず、連携を崩さずに散開しながら、ギルラプター改を攻撃した。

 

 「くっ!」

 

 ギルラプター改は以前彼女が乗っていたゾイドでもあったため、メルビルはギルラプター改とシンクロしていたが、ドクターマイルスによって撃たれた脇腹の痛みが更に激化し、出血し、狙いが逸れてしまう。

 

 「うっ!」

 

 「メルビルさん!」

 

 キルサイス隊はその隙にギルラプター改の右足を撃ち抜き、ギルラプター改は体制を崩してしまう。

 

 「きゃあ!」

 

 キルサイス隊は更に追い討ちをかけようとするが、突然攻撃を止め、その場に留まった。キルサイスの奇妙な行動に少し疑問を感じるも、サリーとクリスタはメルビルの傷の手当てをしようとしたその時、突然木々が次々と斬り倒され、目の前にバイザーの無いファングタイガー改が現れた。それを見て驚愕するサリーたち、

 

 「ファングタイガー改……しかし、あれはアルドリッジの!」  

 

 「ムシケラの癖によくやるじゃない。でも、その身体じゃ、まともに戦うことすら出来なさそうね。」

 

 「その声は……」

 

 ファングタイガー改に乗っていたのはラストだった。 

 

 「プライドの命令で、雑魚の始末ってのはどうもやる気が出なかったけど、一番気に入らないあんたの始末をあたしが出来ると思えば、俄然やる気が出るわね。」

 

 「くっ!」

 

 ファングタイガー改はレーザーガンを放ちながら猛スピードでギルラプター改に迫ってきた。ギルラプター改も対空速射砲で応戦しようとするが、さっきのキルサイスの砲撃で片足を撃たれたため、思うように狙えず、ファングタイガー改に吹っ飛ばされてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時同じくして、エリア68の軍事基地で、ボーマン博士は転生したフォックスが新たなボディに慣れるための最終調整を行っていた。

 

 「後、数十分で、フォックスは新しい身体に慣れ、本調子を取り戻すだろう。」

 

 「ようやくか。ようし、これであのジェノスピノにリベンジしてやる!」

 

 「だからって、あんまり無茶しないの。」

 

 「そういえば、アイセル。ロックバーグ中尉は?」

 

 「何でも、ハント大佐からの急な呼び出しでニューホープに戻ったらしいけど……」

 

 「なんだよ。せっかく俺のフォックスの力を見ることが出来たのにじれったい女だな!」

 

 「ホラホラ、そんなこと言っていると、またロックバーグ中尉にお仕置きされるわよ。」

 

 「アホ言うな。ニューホープにいるのに聞こえるわけないだろ。」

 

 「あら、知らないかしら? 彼女、ああ見えて実は地獄耳なの。しかも密かにスパイも派遣しているらしいし……」

 

 「げっ! まさか、そのスパイって……」

 

 「冗談よ! 冗談。そんなことするわけないじゃない。彼女ってああ見えて結構優しいから。」

 

 「たくっ、脅かすなよ。」

 

 「ハハハ、ん?」

 

 その時、突然、レオの左腕が何かに反応してオレンジ色に光った。

 

 「俺の左腕が反応している。しかも、これは……」

 

 グルル……

 

 左腕を通じて、レオの脳内にライガーの声が聞こえた。

 

 「ライガーか! 一体どうしたんだ?」

 

 ガルル……

 

 「サリーがこの近くにいる……まさか!」

 

 それを聞いたレオは直ぐにその場から離れようとし、

 

 「ちょっと、レオ! 何処行くの?」

 

 「ちょっと見回りに行ってきます。」

 

 そう言うと、レオは部屋を退出した。

 

 「もう、一体どうしたのかしら?」

 

 「あの様子……まさか!」

 

 レオの様子を見たバーンは何かを察したような表情をした。

 

 

 

 

 

 

 

 ラストのファングタイガー改の容赦ない追撃によって遂にギルラプター改は力尽き、全身が傷だらけになってしまう。

 

 「うっ、くっ……」

 

 「やれやれ、元軍人の割にはホント大したことないわね。よくそんな腕で軍人になれたものだわ。 ま、あんな下衆な老いぼれの言いなりになっているんだから、仕方ないわね。じゃ、死んで!」

 

 ファングタイガー改が止めを刺そうとしたその時、

 

 「メルビルさん! くっ、」

 

 突然、サリーがギルラプター改のコクピットから出て、ファングタイガー改の前に立ち塞がった。

 

 「サリー!」

 

 「??? 何のつもり?」

 

 「メルビルさんとお母さんをやるくらいなら、私をやって!」

 

 「サリー! 何を言っているの?」

 

 「へぇ~、他人を救うため、自分を犠牲にするっていうの? 随分おめでたい考えじゃない! 本気でそう思っているの?」

 

 ラストの睨み付ける表情にも怯まず、サリーは頷いた。

 

 「そうよ!」

 

 「ホント、人間ってバカね。憎しみをぶつけてただ、戦争を繰り返すだけの下等生物のはずなのに、こんなわざわざ自分を犠牲にして、他人を救おうなんて考える奴までいるなんて、ホント、バッカみたい。」

 

 「いいえ! 私はただ、これ以上皆が傷付くのが見たくないだけ。 帝国にいたとき、私は何度も傷付いて死んでいったゾイドや人々がいた。

 だから、私はお爺さんの目指した世界を実現させるために私は今、ここにいる。

 人もゾイドも二度と傷付けあわず、争わない、そんな世界を実現するために、そのためには、例え、この身がどうなっても構わないわ!」

 

 「全く、ベラベラ、ベラベラ、お花畑のような綺麗事をほざいちゃって……ホントはあたしよりスタイルのいい、そこの生ぬるい女を殺りたいんだけど……その、甘っちょろいことを言う奴があたしは一番大っ嫌いなのよ!! 死ねぇ~!」

 

 ファングタイガー改が前足の爪でサリーを殺そうと動き、サリーが目を瞑ったその時、何処からか謎の衝撃波が頭上のキルサイス隊を撃墜させ、同時にファングタイガー改まで襲った。

 

 「な、何!?」

 

 謎の影が現れ、サリーの目の前に立ち、ファングタイガー改の前に立ち塞がった。その影を見たラストとサリーたちは驚きを隠せなかった。

 影の正体は以前、オメガレックスの共和国襲撃の際にランドを乗せるも、そのランドを見捨て、何処かへと去ったハンターウルフ改だった。

 

 「あなたは……」

 

 「ああ? お前はハンターウルフ? でも、共和国襲撃で老いぼれを乗せていたから、一緒に死んだんじゃないの?」

 

 現れたハンターウルフをよく見ると、両目共にバイザーが破壊されているが、人によるものではなく、自分で破壊したように所々バイザーの破片のようなものが残っていて、身体のあちこちにも傷があった。

 

 「へぇ。あの老いぼれを裏切って自由になったのね。でも、どういう理由であたしの前に現れたのか、知らないけど、あたしに歯向かうこと後悔してあげるわ。 ファングタイガー改、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 

 

 マシンブラストしたファングタイガー改とハンターウルフ改の攻撃がぶつかっている時、ライガーは森の中を駆け抜けていた。

 

 「ライガー、急げ、急ぐんだ! この反応、間違いない、サリーだ。サリーが俺を待っているんだ。 待っていろ、必ず助けに行くから。」

 

 

 

 ハンターウルフ改はソニックシックルを放つが、ファングタイガー改は尽くデスファングで迎撃し、ハンターウルフ改はファングタイガー改に飛び掛かるも、それを払い除けられてしまう。

 

 「ハンターウルフ!」

 

 「全く、無駄な時間を使ってしまったわね。まあ、そこまで死にたいなら、そこの小娘と一緒にあの世に送ってあげるわ。 死ねぇ~!」

 

 ファングタイガー改がハンターウルフ改とサリーに止めを刺そうとし、サリーが目を瞑ったその時、

 

 「ライジングバーストブレイク!」

 

 森の中からライガーが現れ、ライガーのタテガミブレードがファングタイガー改のデスファングを防ぎ、ファングタイガー改は一時後退した。

 

 「何!?」

 

 目の前に青いライジングライガーが現れて少し戸惑うも、何の迷いもなく、

 

 「もしかして、ライガーなの?」

 

 「サリー、大丈夫かい?」

 

 「その声は……レオ!」

 

 「随分待たせたね。でも、もう大丈夫だ。」

 

 「良かった、ホントに良かった。」

 

 レオの声を聞いたサリーは思わず嬉し涙を流した。

 

 「サリー……」

 

 「おや、誰かと思えば、ライガーのガキじゃない。」

 

 「ファングタイガー改!? まさか、アルドリッジ? でも、声が違う……」

 

 「あら、直接会うのは初めてだったかしら。あたしはラスト。帝国ではプライドと一緒にいた帝国軍大佐だったけど、今はゼロメタル帝国の者よ。」

 

 「真帝国を利用したゼロメタル帝国の人間はプライドだけじゃなかったのか。」

 

 「そうそう、確か、このタイガーの前のライダーとやりあってくれたおかげで、今から殺すそこの小娘を拐う手助けをしてくれたのには礼を言わせてもらうわ。」

 

 「礼? 一体何を言っているんだ?」

 

 「これを見れば、分かるかしら?」

 

 コクピットから出たラストは身体が液体金属状になり、リュック大尉の姿になった。それを見て驚愕するレオとサリーたち、

 

 「そんな……じゃあ、あの時、サリーを拐ったリュック隊長って……」

 

 「そう、変身したあたしよ。 最初からあいつらを囮として使わせてもらったの。その方が何かとやりやすいからね。

 もちろん成れるのはこれだけじゃないわ。例えば、こんな姿にもね。」

 

 再び液体金属状になって今度はメルビルの姿に変身した。

 

 「あたしとしては、こっちの方が好きだけどね。」

 

 「お前は、お前は一体何なんだ?」

 

 「あら、失礼しちゃうわね。 あたしたちは偉大なる神に仕えるゼロメタル帝国の使徒よ。 そのあたしたちにそんな口を聞くなんて随分無礼じゃない。

 でも、まあ、どちらにせよ。あんたも最初から始末するつもりだったし、あんたもここで死になさい。」

 

 「そうか、お前がサリーを拐ったんだな。許さない! 行くぞ、ライガー!」

 

 「あら、そんなにあの甘ちゃんの小娘のことを思ってたの? これが思春期ってやつかしら? ホント、人間ってバッカみたい。 でも、それであんたの弱点が諸バレよ!」 

 

 再び液体金属状に変化したラストは今度はサリーの姿に変身した。

 

 「うっ……」

 

 それを見たレオが動揺する隙に瞬時にコクピットに乗り込み、デスファングでライガーに襲いかかった。ライガーはそれをタテガミブレードで防ぐが、ファングタイガー改は至近距離でレーザーガンを放った。

 

 「くっ、ライガー!」

 

 ライガーはA-Z機関砲を放つが、ファングタイガー改はそれを全てレーザーガンで迎撃し、更にライガーより数倍のスピードで直ぐに後ろに回り込み、ライガーを吹っ飛ばした。ライガーは反撃に移るも、間に合わず、ただ、一方的に攻撃されるだけだった。

 

 「くっ、最初に戦った時やアルドリッジが乗っていた時より、攻撃もスピードも桁違いだ。」

 

 「どうしたのかしら? もう反撃してこないの?」

 

 「っ、ライガー、後ろだ!」

 

 「遅い!」

 

 ライガーが後ろを向いたその時、ファングタイガー改はそれより速く後方に回り、ライガーにサンダーテイルで攻撃した。

 

 「ぐっ、ガアァ~!!」

 

 「レオ!」

 

 ファングタイガー改のサンダーテイルの放電で、レオ共々力尽きてしまうライガー。

 

 「あらあら、一度はセードのジェノスピノまで倒したのに、意外とあっけないものね。 まさか、この姿になっただけで、こうも取り乱してしまうなんて、人間ってどこまで脆いのかしら?」

 

 「レオ、しっかりして!」

 

 「まあ、いいわ。あんたをこれ以上生かすと後々面倒になるから、さっさと死んで!」

 

 ファングタイガー改がデスファングを振り下ろそうとしたその時、突然、何処からかガトリングが放たれ、ファングタイガー改のデスファングを防いだ。

 

 「?? 何、何なの?」

 

 ラストは辺りを見渡すが、周囲には何もなかった。

 

 「何処なの?」

 

 再びガトリングが2連放たれ、それが全てファングタイガー改に直撃した。

 

 「ちいっ! また光学迷彩な何かで姿を隠している奴かしら? だったら、こいつで……

 ? レーダーが反応しない。そんな、最新鋭のレーダー装置のはずなのに。」

 

 その時、2連のガトリングに加え、更に速射砲による一斉砲撃が放たれ、それら全てがファングタイガー改に直撃した。

 

 「ぐっ、一体何なの?」

 

 ラストが前を見たその時、倒れているライガーの横に青色のアーマーと背中に2つのロングガトリング、両後ろ足に5連速射砲を装備させたブルーシャドーフォックスが現れた。

 

 「バーン、どうして?」

 

 「お前の様子がちょっとおかしかったから、フォックスの最終調整が終わった後、直ぐに後を追ったんだよ! たくっ、ホント、お前は無茶しやがるぜ。」

 

 「セードのジェノスピノに倒されたはずのあの死に損ないの狐か。 なら、あんたから、斬り刻んであげるわ。」

 

 ピピッ!

 

 「ん? さっきの攻撃で機体のかなりの損傷……? まさか、あの狐までパワーアップしたのか!? とはいっても、このまま戦闘を継続すれば、こっちが不利になる。 ちいっ、ここは一旦引くしかないわね。」

 

 状況を判断したラストはそのまま撤退していった。

 

 「たくっ、何だよ。せっかく生まれ変わったフォックスのエヴォブラストをお見舞いしてやろうと思ったのに。 でも、まあ、お前が無事で何よりだ。レオ。 そしてサリー! お帰り。」 

 

 「バーンさん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧ワシントンDCの研究所にいるプライドとドクターマイルスの元にラストが立ち寄り、

 

 「ようやく追い詰めたところにあのライガーのガキたちが現れ、制御から離れたハンターウルフとギルラプターと共に追跡部隊を蹴散らされて、取り逃がしてしまったわ。」

 

 「そうか……では、サリーらはあの小僧の元に戻ったということか。」

 

 「どうするの?」

 

 「構わん、放っておけ。今更、奴等の元に戻ったところで何も出来はしない。 

 それにペンダントの所有権が殿下のものになったことでオメガレックスの修理は完了した。これで奴等の殲滅は秒読み段階になった。」

 

 To be continued




 次回予告

 相棒になったハンターウルフとギルラプター、そしてライガーたちの助けによってようやくサリーたちを救出することに成功したレオたち。
 レオはサリーたちからゼロメタル帝国の真相を聞くが、ゼロメタルでは既にオメガレックスの修復が完了し、ユウトは帝国殲滅を宣言、オメガレックスに乗り込み、自らゼロメタル帝国軍を率いて帝国領に進撃を開始した。ジェノスピノの脅威もまだ続く中、レオが取った行動は……

 次回「進撃! 暗黒の破壊要塞」走り抜け、ライガー!!
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