ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 しかし、それは真帝国を利用したプライドによる陰謀で、プライドはユウトを皇位継承者とするゼロメタル帝国の建国を宣言、ライジングライガーとよく似たアーサーとワイルドライガーガンナーを相棒とするゼオル、バルディー、マリアナを新たな仲間に据え、レオたちは帝国、共和国の合同軍と共にゼロメタル帝国と戦うことになった。


第37話「進むべき道」

 ゼロメタル帝国仕様のキルサイス、ディメパルサー、ディロフォス隊を率い、ユウトの乗るオメガレックスはネオゼネバスに向けて着実に近付いてきた。そして帝国軍基地エリア12に着くと、オメガレックスは動きを止め、

 

 「さて、始めるか。オメガレックス。」

 

 グロロォ~!!

 

 「オメガレックス、マシンブラスト……ファイヤー。」

 

 ユウトの静かな掛け声と共にオメガレックスはマシンブラストを発動し、エリア12に荷電粒子砲を発射し、エリア24と同じく一瞬の内に壊滅させた。

 

 「さあ、滅びの序章だ。もうお前たちに逃げ場はないよ。」

 

 エリア12を破壊して再び足を進めるオメガレックス、

 

 

 

 

 

 

 

 オメガレックスが帝国軍基地を破壊しながら進むことはコリンズ中将とギレル少佐のいるネオゼネバスの司令室にも届いた。

 

 「オメガレックス、エリア12を破壊し、尚も侵攻中。 このまま直進すれば、後9時間でネオゼネバスに着いてしまいますが、ネオゼネバスが荷電粒子砲の射程圏に入るのは後4時間。」

 

 「ロングレンジバスターキャノンとワイルドライガーガンナーであれだけのダメージを負ったにも関わらず、まさか、あの短期間で修理を終らせてしまうとは…ネオゼネバスの復興もまだ途中だというのに……」

 

 「コリンズ中将、一刻の猶予もありません。何としても奴がネオゼネバスに辿り着く前に粉砕しませんと。」

 

 「しかし、今の戦力では、オメガレックスに対抗する戦力がない。 ギャレット大将が共和国の援軍を寄越してくれたとはいえ、それで食い止められるかどうか……」

  

 「ですが、オメガレックスなら以前退けたことがあります。レオ・コンラッドのライガーとロングレンジバスターキャノン、そしてアーサーとワイルドライガーガンナーも!」

  

 「実はそのことについて、ギャレット大将から報告があったが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、ニューホープの軍事基地で、ディアス中佐がレオたちの前である重大なことを話していた。

 

 「ロングレンジバスターキャノンが使えないですって?」

 

 「ああ、実は何らかの影響で一度目覚めたオメガレックスが君のライガーに重傷を負わせた時にロングレンジバスターキャノンもかなりの損傷を受け、とても、オメガレックスがネオゼネバスに辿り着くまでに修復することは不可能な状態になっている。」

 

 「それじゃ、前みたいにオメガレックスを倒すことは出来ないってことですか?」

 

 「そういうことになる。」

 

 「ディアス中佐、グラビティキャノンは使うことは出来ないのですか?」

 

 「完成はしているが、最終調整がまだ済んでおらず、それにあれをネオゼネバスに運ぶにはかなり時間がかかるため、オメガレックスが辿り着くまでには間に合わない。」

 

 「となると、一番の頼みの綱は……」

 

 「以前、何らかの影響で目覚めたオメガレックスを退けたアーサーとワイルドライガーガンナーだ。実はザナドゥリアスによる中継の後直ぐにネオゼネバスに向かったとの報告があったから、後は彼らが着くのを待つだけだな。」

 

 「へぇ~、相変わらず、抜け目のない奴らだな。」

 

 「だが、それでも、安心は出来ない。敵はオメガレックスだけでなく、キルサイスに加え、ディメパルサーと確認されていないディロフォサウルス型のゾイドまでいる。戦力が未だ未知数のため、出来るだけ、多くの援軍を出さなければ……」

 

 「ギャレット大将!」

 

 「何だ?」

 

 「帝国軍の先発隊がオメガレックスと交戦したとの報告がありました。」

 

 「直ちに映像を繋げ!」

 

 「はいっ!」

 

 映像を流すと、そこには帝国軍先発隊のキャノンブル、バズートル、スティレイザー隊がオメガレックスに攻撃し、オメガレックスは誘導ミサイルで牽制していた。

 

 「ボクが来て、帝国も必死になって少しは骨のある相手を出してくれるかと思ったけど、やっぱりたかが知れているね。

 この程度の奴らなら、わざわざ荷電粒子砲使わなくても楽勝だけど、ドクターマイルスとプライドがわざわざ用意してくれた護衛の力を見る実験台になってもらおう。ディメパルサー、ディロフォス。」

 

 オメガレックスが攻撃を止め、後退していき、代わりにディメパルサーがオメガレックスの前に出、更にディロフォスがその前に出た。

 

 「ディメパルサー、ディロフォス、マシンブラスト。」

 

 ユウトの命令と共に新たに帝国とは違う兵器改造が施されたディメパルサー、ディロフォスがマシンブラストを発動した。

 

 「ディメパルサー、ブレイクマッドオクテット。ディロフォス、ブレイクジャミング。」

 

 マシンブラストしたディメパルサーがスペクターフィンから電磁パルスを発生し、それをディロフォスのディスラペルとディスシールズが更にそれを拡散させ、帝国軍先発隊に向けて発射させた。

 拡散した電磁パルスは帝国軍先発隊全てに降り注ぎ、電磁パルスを食らった帝国軍ゾイドはバイザーが更に発光し、身体のあちこちに火花が飛び散り、次々と爆破し、一瞬の内に先発隊のゾイドは全滅し、破壊されたゾイドの残骸が全て石化してしまった。

 

 「ハハハハ、凄い。凄い! こんなゾイドでもこれだけの力を出すなんて、ドクターマイルスも随分面白いものを送ってくれたものだ。

 もうオメガレックスの出番がないほどだよ。これは色々と使い道がありそうだ。ネオゼネバスに着くまでの余興になる。ハハハハハ、ハハハハハ!!」

 

 

 映像を見たギャレット大将たち及びネオゼネバスにいるコリンズ中将たちも唖然としていた。

 

 「まさか……我が帝国軍がこうもあっさりと……」

 

 「まさか、ゼロメタルがここまでの戦力を持つとは……」

 

 「ギャレット大将、一刻の猶予もありません。早く、援軍を!」

 

 「うむ。」

 

 

 

 

 

 そして、その映像はレオたちも見ていて、ボーマン博士は拡散した電磁パルスとそれによって一瞬で破壊された帝国ゾイドをじっくり見ていた。

 

 「う~む。」

 

 「ボーマン博士、どうしたんですか?」

 

 「これを見て欲しい。」

 

 ボーマン博士はレオたちにディメパルサー、ディロフォスのブレイクマッドオクテットとブレイクジャミングを喰らって破壊される映像を再び巻き戻しした。

 

 「これがどうしたんですか?」

 

 「よく見て欲しい。 ディメパルサー、ディロフォスの電磁パルスを受けた時の帝国ゾイドのバイザーが……」

 

 「これって、確か、俺のフォックスが帝国軍の演習中に暴走した時に似ている。」

 

 「確かに似ているが、君のフォックスの暴走はあくまでバイザーの制御に抗ったものだが、これは少し違う。

 おそらく、この電磁パルスはバイザーに何らかの作用を起こし、ゾイドに対する負荷を更に上げ、それに耐えられなくなったゾイドが自己破壊を起こしてしまったのだろう。」

 

 「つまり、ゼロメタルのディメパルサー、ディロフォスの電磁パルスには帝国ゾイドのバイザーに有効な力を持っていると?」

 

 「そういうことになる。」

 

 「じゃあ、バイザーを取り付けていない共和国ゾイドなら、あの電磁パルスには無効なのですか?」

 

 「いや、一概にそうとも言えない。ディメパルサー、ディロフォスの電磁パルスはほとんどのゾイドには有効だが、このディメパルサー、ディロフォスには帝国ゾイドのバイザーにも影響を与えるように改造されているため、帝国ゾイドが喰らったら一気に全滅させてしまうという帝国軍にとってはかなり厄介なゾイドということになる。」

 

 「そんな、オメガレックスだけでも厄介なのに…博士。電磁パルスを防ぐ方法はあるんですか?」

 

 「無くはないが、今からでは、その対策をするのは遅すぎる。とにかく我々がネオゼネバスに着く前にこのことをゼオルに報告せねば!」

 

 ボーマン博士は通信を取った。

 

 「ゼオルか。実は君に報告したいことがあるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロメタル帝国の本拠地である旧ワシントンDCの研究所内でプライドとドクターマイルスは映像でディメパルサー、ディロフォス隊による戦闘を見ていた。

 

 「やはり、貴様の改造技術は目を見張るものがあるな。」

 

 「当然だ。ディメパルサーの電磁パルスにはゼロファントスと並ぶ性能が判明し、更にその性能を最大限に発揮するために量産化しやすく、より扱いやすいゾイドの開発のためにジャミンガに遺伝子操作を加えたディロフォスを生んだのだ。

 そのため、これだけの数があれば、ディメパルサーの電磁パルスの有効射程距離は飛躍的に伸び、その威力は倍増する。そしてキルサイスには電磁波遮蔽コーティングが施されているため、その射程圏でも戦闘を行うことも可能。最早、この部隊に隙はない。」

 

 「戦いは質より量とはよく言ったものだ。 いくら最強のゾイドでも、一体ではどうしようもならないことがあるからな。」

 

 「物量作戦は戦場においては、最も有効な戦術だ。例えば、自然界に生息するグンタイアリは単体での強さは大したことではないが、群れれば、最強の肉食獣をも死滅させるほどの地上最強の生物になる。そしてそれに最強のゾイドが加われば、更に磐石になる。」

 

 「最強ゾイドに余りに固執する余り、雑魚兵を強化する発想が生まれないランドや真帝国のバカ共では出来ないことだな。」

 

 「まあ、あの帝国軍に対抗するための技術はないですが、問題はあの小僧です。」

 

 「ゼオルか。確かに奴がいると、何らかの方法で対策される危険性がある。早めに始末しないとな。」

 

 「ただ、それも間に合えばの話ですけどね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティのハワード宰相の司令室で、スピーゲル中佐は進軍するオメガレックスの様子を見ていた。

 

 「ゼロメタル帝国、まさか、ここまでの戦力を持っているとは……」

 

 「スピーゲル中佐。」

 

 「何だ?」

 

 「ゼオル・ランスロットなる人物がこちらに到着したと報告がありました。」

 

 「わかった。直ぐにこちらへ通せ。」

 

 「はっ。」

 

 

 

 ゼオルとバルディー、マリの乗るアーサーとワイルドライガーガンナーが帝国軍の3体のキャノンブルに連れられ、ハワード宰相の別荘に入り、アーサー、ワイルドライガーガンナーから降りたゼオルたちは司令室に入った。

 

 「宰相殿からの指令でこちらに来た。ゼオル・ランスロットとその取り巻きのバルディーとマリアナです。よろしく、スピーゲル中佐。」

 

 「おい、ちょっと待て! 誰が取り巻きだ!? 俺たちはお前の保護者だろ!」

 

 「止しなさい、バルディー。 帝国ではそういうことになっているから。」

 

 「では、早速、宰相閣下の元へ……」

 

 「その必要はない。」

 

 「何?」

 

 「今、貴国の宰相殿はまだ議会にいて、捕虜になっているメルビルっていう人のことで手一杯と聞いた。ましてや、この戦闘中にわざわざ人に会うという悠長なことをしている場合ではない。」

 

 「どうしてそれを?」

 

 「共和国のお偉いさんに聞いたのでな。貴国に着くまではそちらの情報も必要だと思ってな。」

 

 「(そこまで考えて……しかし、本当にこの男、何者だ? ギレル少佐の話では、少なくとも、軍人ではないと聞いたが、一体……)」

 

 「さて、本題に入るが、どうやら敵は厄介な電磁パルスを使っているらしいな。」

 

 「敵はディメパルサーとディロフォサウルス型のゾイドによる強力な電磁パルスで我が帝国軍の先発隊を全滅させた。

 ディメパルサーは我が帝国軍も所有しているが、あんな電磁パルスを発生させる個体やあのディロフォサウルス型のゾイドも初めて見た。」

 

 「ボーマン博士によると、ディロフォスといって、ディロフォサウルス種の新種ゾイドだと判明し、ディメパルサー同様の電磁パルスを発生し、自然個体によるものか、改造によるものか不明だが、バイザーに負担をかけ、ゾイドの体内を自己破壊させるものとのことらしい。」

 

 「何!? では、バイザー付きゾイドの我が帝国軍は圧倒的不利だということか?」

 

 「そうとも限らないが、少なくとも、貴国のゾイドにとっては相性最悪の相手ということだ。」

 

 「ならば、我が軍全てのゾイドのバイザーを外せば……」

 

 「だが、今、そんなことをする暇はない。 こうしている間にもオメガレックスがこちらに近付いている。今はオメガレックスとゼロメタル帝国軍に対する対抗策を早急に練る必要がある。」

 

 「だが、そんな手があるのか? 敵が我が軍のゾイドのバイザーにダメージを与えるものなら、それに対する対抗策がない。」

 

 「そういえば、敵のディメパルサー、ディロフォスが攻撃した映像はあるんだよな? そこから、その電磁パルスの射程圏を把握出来るか?」

 

 「何故、それを?」

 

 「今、その電磁パルスに対する対抗策がないなら、その射程外に入り、その距離をキープして攻撃すれば、まともにやりあえるはずだ。出来るか?」

 

 「わかった。やってみる。」

 

 「ああ、それと、バルディー、マリ。お前たちもガンナーと共に先に出撃してくれ。」

 

 「へ? 俺たちが先に? お前はどうすんだ?」

 

 「俺はここに残って、お前たちを指揮する。俺のアーサーは近接向きだから、あのディメパルサー、ディロフォスに太刀打ちするのはかなり難しい。万が一、あれを喰らったら、アーサーにも甚大なダメージをくらっちまうからな。

 だが、遠距離向きな上にオメガレックスの装甲も貫けるミステルテイン砲もあるガンナーなら、オメガレックスやあのディメパルサー、ディロフォスを倒すことは出来る。ロングレンジバスターキャノンが使えない以上、今回の作戦の要はお前たちになる。 やれるか?」

 

 「わかった! 任しとけ。」

 

 

 

 別荘の医務室の外では、ハワード宰相がジーンに事情を話していた。

 

 「では、ここで大規模な戦闘が起きる可能性があると……」

 

 「ああ、ゼロメタル帝国の勢力は予想以上のもので、真帝国を遥かに上回るものだ。 だから、今回は私自身も出る場合もある。

 もし、そうなったら、お前は陛下とハンナ殿下と共にネオゼネバスから脱出して欲しい。」

 

 「そんな、あなたを置いて逃げるなんてことは…もちろん、陛下もそれは望みません。」

 

 「私にはハンナ殿下が孤児にされ、プライドに利用されたことを知らず、真帝国の反乱を許した。これは私の責任でもある。」

 

 「でも!」

 

 「これは、私の望んだ決断だ! 私はガイロス時代から代々帝国に仕え、生涯帝国に仕えることを誓った男だ。

 滅びたかつての故郷、惑星Ziから逃れ、この地で、我が帝国をガイロス以前に栄えていたゼネバスの名を取って、首都にネオゼネバスの名をつけ、ようやく新天地を開いたのに再び惑星Ziと同様の悲劇を起こすわけにはいかない。

これは私のけじめだ! わかってくれ。」

 

 「わかりました。」

 

 ジーンは渋々その言葉に従い、医務室に入り、ハワード宰相はその場を去った。 医務室では、メルビルの傷は徐々に快方に向かっていた。

 

 「これなら、大丈夫です。」

 

 「ホントに申し訳ありません。真帝国の皇帝である私の罪を軽くするようにしただけでなく、傷の手当てまで…」

 

 「母親は違っても、私とあなたは姉妹です。それに妹が姉を助けるのは当然ですから。」

 

 「陛下。」

 

 「ジーン、どうだったの?」

 

 「敵の戦力が思った以上に高く、オメガレックスが首都に着くのは時間の問題のため、直ぐにシェルターに避難せよと宰相閣下の命令です。」

 

 「オメガレックス…じゃあ、ユウトはやっぱりここに?」

 

 「ユウトって……もしかして、ゼロメタル帝国の?」

 

 「はい。私が孤児だった時、一緒にいて、私に優しくしてくれた子です。」 

 

 「そういえば、その人も、あなたと同じく、ランドの養子に迎え入れたそうね。でも、あいつはあなたと違って、今や、帝国に牙を向く者よ。」

 

 「いえ、あの子はそんな子じゃない。私の知っているユウトはもっと優しい子なの。 お願い! 陛下。ユウトを救って上げて。 」

 

 「でも、そんなこと…私には……」

 

 「お願いします! あの子を助けてください。」

 

 「御姉様……」

 

 

 

 

 

 

 

 オメガレックスを迎え撃つため、ニューホープでは、ディアス中佐たち共和国軍がネオゼネバスに向かう準備をし、レオもライガーに乗り込もうとしたその時、彼の元にサリーが現れた。

 

 「サリー、どうしたの?」

 

 「レオ、ホントにオメガレックスと戦うの?」

 

 「ネオゼネバスを破壊しに行くんだ。それを止めなくてはならない。」

 

 「でも、あれにはユウトさんが乗っているの。」

 

 「俺もあいつとは何度も戦っているから、あいつのことは知っている。あの時、帝国軍基地で戦った時にわかったんだ。あいつがゾイドを破壊兵器に利用して、こんなことする奴じゃないって。」

 

 「だったら!」

 

 「わかっている。だから、あいつに何があったか知らないけど、止めなくちゃいけない、そしてもう一度あいつに問う。」

 

 「なら、私も一緒に連れていって! 私もレオの力になりたい。」

 

 「駄目だ。サリーをそんな危険な目に遭わせるわけにはいかない。それに君はゾイドにだって乗れない。そんな君を戦いに行かせないよ。」

 

 「でも!」

 

 「大丈夫。俺を信じて。 きっと必ず戻ってくる。もう俺は前の俺じゃない。」

 

 「レオ、そろそろ行くぞ。」

 

 「わかった! じゃ。」

 

 レオはそう言うと、そのままライガーに乗り込み、共和国軍と共にニューホープを出た。

 

 「レオ……」

 

 走り去っていくライガーを見て悲しそうな表情をしたサリーは倉庫の中に入っていき、そこには捕獲されたハンターウルフ改とギルラプター改がいた。

 

 「私はいつも、レオの足を引っ張ってる。いつも、レオに守られてばっかりで、私は何も出来ず、捕まってお爺さんから渡されたペンダントだって捕られたままになった。

 ゾイドクライシスで傷付いたこの星を再生するために何度も頑張ったのに、どうして、私はいつもそうなの。もう守られてばっかりなのは嫌なの。私だって、レオや皆の役に立ちたい。」

 

 サリーが自分を責めて涙組む中、ハンターウルフ改とギルラプター改がそっと寄り添い、サリーを起こした。

 

 「あ、ありがとう。御免ね。あの時、私やお母さん、メルビルさんを助けてくれたのに、あなたちにも何も出来なくて。」

 

 グルル……グル。

 

 しかし、ハンターウルフ改とギルラプター改は何か言いたげに頷いた。

 

 「え? もしかして、私の力になりたいの?」

 

 グルル……

 

 「もしかして、あなたたちも、他の人やゾイドを助けたいと思って、私たちを助けてくれたの?」

 

 グルル……

 

 その時、ハンターウルフ改が伏せて、首のコクピットが開閉した。

 

 「私を乗せてくれるの?」

 

 グルル……

 

 その言葉にハンターウルフ改とギルラプター改が頷き、サリーは何か吹っ切れたような表情をして、乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 ビー、ビー、ビー!

 

 突然、軍事基地に警報が鳴り、ゼロファントスに対する研究をしていたハント大佐とボーマン博士、クリスタがそれに気付いた。

 

 「何だ? 何が起こった!?」

 

 「大佐!」

 

 「何だ?」

 

 「滷獲した元帝国軍のハンターウルフとギルラプターが突然、暴走し、基地から脱走しました。」

 

 「何だと!? まさか、こんなときに! 直ぐに2体のゾイドの再捕獲に当たれ!」

 

 ボーマン博士は周囲を見渡し、

 

 「クリスタ、サリーは何処に行った?」

 

 「レオたちが出撃した後、倉庫のところに向かったけど……まさか!」

 

 

 

 ニューホープから脱出し、サリーを乗せたハンターウルフ改とギルラプター改は真っ直ぐネオゼネバスに向かって走って行った。

 

 「レオ、待ってて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスの司令室で、ゼオルとスピーゲル中佐、コリンズ中将が指揮を取り、その指揮の元、バルディーとマリの乗るワイルドライガーガンナーが帝国軍本隊と共にネオゼネバスの市街地で待機し、ギレル少佐とバスキア大尉もスナイプテラやクワーガに乗り込み、警戒態勢を取っていた。

 

 「コリンズ中将、スピーゲル中佐。エリア5の基地が先程、オメガレックスの荷電粒子砲で壊滅したと報告がありました。」 

 

 「遂にそこまで……各自引き続き警戒態勢を! 何としても、奴をネオゼネバスに入れるな。」

 

 

 エリア5を破壊し、オメガレックス率いるゼロメタル帝国軍は徐々にネオゼネバスに向かっていた。

 

 「フフフ、これで帝国の首都までもう少しだね。 ムシケラ共、思いしるがいい!」

 

 To be continued




 次回予告

 ネオゼネバスに刻一刻近付いていくオメガレックス、しかし、レオたちはネオゼネバスへ向かう途中に突如現れたセードとジェノスピノに足止めを受けてしまう。
 そんな中、ゼオルたちはスピーゲル中佐やギレル少佐と共にネオゼネバスでオメガレックスを迎え撃つが、ゼロメタルのキルサイス隊とディメパルサー、ディロフォス隊に苦戦してしまい、オメガレックスが優勢になってしまう。
 帝国軍が劣勢の中、オメガレックスの前にあるゾイドが現れる。果たして、そのゾイドとは?

 次回「決戦! ネオゼネバス」走り抜け、ライガー!!

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