ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 しかし、それは真帝国を利用したプライドによる陰謀で、プライドはユウトを皇位継承者とするゼロメタル帝国の建国を宣言、ライジングライガーとよく似たアーサーとワイルドライガーガンナーを相棒とするゼオル、バルディー、マリアナを新たな仲間に据え、レオたちは帝国、共和国の合同軍と共にゼロメタル帝国と戦うことになった。


第39話「内なる邪悪な力」

 オメガレックスの前に立ちはだかるハンターウルフを見て、ユウトは不思議がっていた。

 

 「何だ? こいつは。」

 

 「お願い、ユウト。もう止めて!」

 

 「何だか知らねぇが、貴様から始末してやろうか!」

 

 オメガレックスが荷電粒子砲をハンターウルフに向け、照準を合わせた。

 

 「オメガレックス、ファイ……」

 

 その時、

 

 「グングニル!」

 

 ビルの壁を突き破ったアーサーが現れ、ランスでオメガレックスの顔をぶつけ、オメガレックスは荷電粒子砲の照準をずらし、別の方に放ってしまった。

 

 「大丈夫か?」

 

 「あなは……」

 

 「お前はボーマン博士の……どういう理由で、そのゾイドに乗ってここに来たのか知らないが、取り敢えず下がってろ。ここは戦場だからな。」

 

 「でも!」

 

 「言うことを聞け。死にたいのか?」

 

 「っ……」

 

 「何だ? お前は。」

 

 「お前がオメガレックスのライダーか。 それにしても、よく考えたな。わざわざあれだけ強力な力を持った別動隊を囮にして、本隊の光学迷彩を利用して、別動隊を本隊と見せかける演出までするとはな。」

 

 「ん? 何故、それを?」

 

 「引っかかっていたのさ。通信でマリが言ってた、ディメパルサー、ディロフォスが電磁パルスでオメガレックスの幻影を見せていたってことにね。

 バイザーとゾイドコアに負荷をかけて自己破壊させる程の威力を持つ電磁パルスと、更にそれを拡散させるディロフォスの支援、それだけの力を持っているなら、下手な小細工を使わず、力押しで十分制圧は可能だ。

 なのに、何故、幻影を見せる機能までつける必要まであったのか……引き離したかったんだろ? ガンナーをお前から!

 ガンナーは前のネオヘリック戦で、お前とオメガレックスを大破させたことがあったから、またもう一度まともにやり合ったら、面倒だと考え、別動隊のディメパルサー、ディロフォスの力を見せ付け、バルディーとマリをエリア1に向かわせるように誘った…違うか?」

 

 「……」

 

 

 

 

 

 ゼオルの推理している時にビルの瓦礫に隠れていたキルサイスがその様子を傍観し、、バイザーがカメラとしてその姿を旧ワシントンにいるプライドとドクターマイルスの元に映像を映していた。

 

 「気付いたようだな。あの小僧。」

 

 

 

 

 ゼオルの言葉を聞いたユウトは特に言うことはなかった。

 

 「へっ、図星のようだな。」

 

 「随分、推理ごっこが好きな奴だね。でも、君1人で、ボクとオメガレックスに勝てると思うのかい?」

 

 「ああ、確かに俺のアーサーは近戦向きだ。バルディーとマリのガンナーみたいに荷電粒子砲を迎撃することは出来ねぇ。 だが、当たらなきゃ問題ねぇ!」

 

 その時、突然アーサーが物凄いスピードで走り、オメガレックスは前足で掴もうとするが、アーサーは瞬時にA-Z機関砲で撃ち抜き、バイザーにランスをぶつけ、その衝撃で、オメガレックスの左目のバイザーにヒビが入った。

 

 「こいつ!」

 

 「バルディーとマリのガンナーは遠距離向きのため、火力は断トツだが、武装が多いため、代わりに機動力が少し落ちている。 だが、俺のアーサーは近接戦闘向きで、尚且つ機動力はこっちの方が圧倒的に上だ!」

 

 「こいつ、ウザい」

 

 オメガレックスはアーサーに誘導ミサイルを放つが、アーサーはそれを難なく交わし、突き進むが、オメガレックスも誘導ミサイルの爆風を盾にして、尻尾で凪ぎ払い、さしものアーサーもそれに直撃してビルに激突してしまう。

 

 「くっ、思ったよりやるな。」

 

 しかし、ゼオルが目の前を見たその時、既にオメガレックスは荷電粒子砲を撃つ体制になっていた。

 

 「しまっ!」

 

 「オメガレックス、ファイ……」

 

 ドカン! 

 

 その時、突然、突然、何か強大な砲撃がオメガレックスに直撃し、オメガレックスは別の方向に荷電粒子砲を放った。

 

 「今のは……」

 

 その時、現れたのは以前、ネオゼネバスを襲撃したジェノスピノと戦った時と違い、背中に巨大な対空速射砲とミサイルポッド、両腕に2連装キャノン砲を装備したハワード宰相専用の巨大ナックルコングだった。

 

 「遅れてすまない、話はスピーゲル中佐から聞いた。」

 

 「帝国の宰相殿か。」

 

 「喰らえ、化け物!」

 

 ハワード宰相専用ナックルコングは装備している全ての火器をオメガレックスにぶつけ、崩れたビルの下敷きになっていった。

 

 「ゼオル、こいつは私がやる。お前はゼロメタル帝国軍を!」

 

 「いや、こいつはあなただけで、手に負える相手じゃない。 俺も加勢する。」

 

 「しかし!」

 

 「向こうの連中はあなたの部下のスピーゲル中佐率いる独立部隊が相手している。それにバルディーとマリのガンナーはゼロメタルの別動隊に足止めを喰らっているが、あれで早々やられる程度の者じゃない。

 バルディーとマリの部隊がこちらに来るまでの時間さえ、稼げばいい。そうすれば、敵を袋のネズミにして、一気に叩ける。」

 

 「わかった、そうしよう。」

 

 崩れたビルの瓦礫から、現れたオメガレックスは2体の前に立ちはだかり、

 

 「また増えたの? まあ、いいや。せいぜいボクの遊び相手になってくれよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハワード宰相専用ナックルコングによって反れた荷電粒子砲の爆風は破壊された移民船が倒れている地下のシェルターにも響き、そこに逃げ込んだフィオナ、ジーン、バスキア中尉、メルビルもいた。

 

 「キャアッ!」

 

 「陛下、大丈夫ですか?」

 

 「大丈夫よ、ジーン。」

 

 「どうやら、思った以上の戦闘になっているようですね。」

 

 「バスキア中尉、外はどうなっているのです? ユウトは?」

 

 「それはここでは確認出来ません。ですが、ここにいれば、安全です。ここは万が一、移民船が自爆するようになった場合を想定して作られたシェルターですから、荷電粒子砲に耐えることも出来るでしょう。」

 

 「バスキア中尉、教えてください。 帝国はユウトをどうするんですか?」

 

 「今や、帝国、共和国両国の脅威となっているゼロメタル帝国の皇子です。オメガレックスごと破壊することも辞さないでしょう……」

 

 「そんな……お願い、ハワード宰相閣下に連絡を! ユウトを説得させるよう、伝えて。」 

 

 「私はあくまで、陛下とジーン、そしてあなたを御守りすることを宰相閣下から命じられている身。そんなことは私の任務ではありません。

 それにあなたがいくら、あの男を弁護しようとも、奴は我が帝国にとって危険人物なのです。それにこれは決定事項です! 元軍人なら、現実を受け止めなさい!」

 

 「そ、そんな……」

 

 その時、突然、シェルターのドアを激しく叩く音がし、一同は騒然とした。

 

 「? な、何だ?」 

 

 「まさか、ゼロメタル帝国の別動隊か? 遂にここまで来るとは……」

 

 「陛下たちは下がってください。」

 

 バスキア中尉がクワーガスカイステルスに乗り込み、ラプトール隊と共にドアの前に待機し、攻撃の体制を取ったが、その時、メルビルがドアの向こうから、何かを感じ取った。

 

 「イレテ……ココニイレテ……」

 

 「この声は……」

 

 「全部隊! 攻撃体制に入れ。ドアをけち破ったら、直ちに発砲しろ!」

 

 「待ってください。」

 

 「? ハンナ・メルビル。」 

 

 「ドアを開けてください。」

 

 「何を言っているのです? 今、開けたら、敵の侵入を許してしまいますよ。」

 

 「いえ、外にいるのは敵ではありません。信じてください。」

 

 「しかし!」

 

 「バスキア中尉。 私からもお願いします、直ちに扉を開けなさい。」

 

 「陛下まで……わかりました。もし、敵が現れたら、直ちに発砲しろ!」

 

 フィオナの言葉を聞いて渋々従ったバスキア中尉は、シェルターの入口のドアを開き、クワーガスカイステルス、ラプトール隊は攻撃体制を取りながら警戒していた。そして開いたドアから現れたのはゼロメタル帝国軍のキルサイス、ディロフォスではなく、ギルラプター開発だった。

 

 「ギルラプターだと? 何故、ここに……」

 

 「ギルラプター! どうしてあなたが……」

 

 ギルラプター改はメルビルにそっと寄り添い、メルビルをじっと見詰めた。メルビルはギルラプター改の行動に疑問を感じ、ギルラプター改に手を触れたその時、

 

 「サリーガ、サリーガ、オメガレックスをタスケニイッテイル。」

 

 「え? サリーが!」

 

 「ダカラ、カノジョヲタスケテホシイ。」

 

 「まさか、あなたはそれを伝えに私のところへ……」

 

 「何か、わかったのですか?」

 

 「サリーがユウトの元に向かいました。私も行かなければいけません。」

 

 「バカな! 何を言っているのです? 今、ネオゼネバスは戦場になっています。それにいくらなんでも、オメガレックスまでいるこの状況に出向くのは危険が有りすぎます。」

 

 「サリーが命懸けで、ここまで来て、ユウトを助けにいったのです。そんな時に私がここにいるわけにはいきません。」

 

 「しかし!」

 

 「お姉様……わかりました。あなただけ行かせるわけにはいきません。 私も行きます。」

 

 「陛下!」

 

 「バスキア中尉、あなたに頼みがあります。」

 

 「一体何です?」

 

 「移民船の代替となるあれは、まだ動けるのですよね?」

 

 「それがどうするのです?」

 

 「その手伝いをお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 ネオゼネバスシティ全体は帝国軍とゼロメタル帝国軍のキルサイス、ディロフォス隊の攻防戦となり、街全体が火の海に包まれようとした。ギレル少佐のスナイプテラとバスキア大尉のクワーガファイアボンバーもキルサイス隊にかなり苦戦していた。

 

 「くそっ、これじゃ、キリがない。」

 

 「数が多すぎて、弾の数がどれぐらいまで持つかわかりません。」

 

 「こんなときにディアス中佐らは何をしているのだ? まだ、着かないのか。」

 

 ギレル少佐とバスキア大尉は目を離した隙にキルサイス隊がスナイプテラとクワーガファイアボンバーに襲いかかろうとした。

 

 「う、しまった!」

 

 しかし、その時、咄嗟に現れたドライパンサーがサイレントガンでキルサイス隊を撃墜させた。

 

 「スピーゲル中佐、まさか、あなたに助けられるとは……」 

 

 「ハワード宰相閣下の御命令だ。 今、閣下はゼオルと共にオメガレックスと交戦している。」

 

 「閣下が?」

 

 「我々も早く敵を排除し、閣下の元に行かねば……ギレル少佐、お前の盟友が寄越した共和国の援軍は?」

 

 「未だ、連絡がない。」

 

 「そうか……だが、市民の避難は全て完了しているな?」

 

 「そうだが、それがどうしたのです?」

 

 「部隊を後退させて、スナイプテラとクワーガ隊で、都市を空中爆撃させる。」

 

 「何を言っている!? そんなことしたら!」 

 

 「わかっている! だが、このままでは、我々が敗北してしまい、帝国が滅びてしまう。そうなる前に都市ごと敵を殲滅させる。」

 

 「だが!」

 

 「既に陛下と市民が避難しているなら、問題ない。都市など、いつでも復興できる。今はこの戦闘を終わらせることが重要だ。」

 

 「……わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 ギレル少佐とバスキア大尉がスピーゲル中佐の指示に従い、爆撃の準備をしている中、アーサーとハワード宰相専用ナックルコングはオメガレックスと交戦し、ナックルコングは再び火器をオメガレックスに向けて発射するが、オメガレックスは背中のジェネレーターパーツを作動し、紫色のシールドを発生し、それを封じた。

 

 「何!?」

 

 「ふん!」

 

 しかし、その隙をついて、アーサーが横から現れた。

 

 「だが、情報によれば、そのシールドは前にしか発生しない!」

 

 「それはどうかな?」

 

 「グングニル!」

 

 ところがなんと、シールドはオメガレックス全身に広がり、アーサーのランスを防ぎ、シールドによる反射で、アーサーはナックルコングの元にまで吹っ飛ばされた。

 

 「ちぃっ、その弱点を克服したということか。」

 

 「どうしたの? もっと攻めてきてよ!」

 

 「ならば、宰相殿、先に仕掛けてください。」

 

 「どうするつもりだ?」

 

 「肉弾戦ですよ。」

 

 「そういうことか! 行くぞ、ナックルコング。」

 

 ブオォ~!!

 

 ナックルコングはおもいっきりドラミングをしながら、オメガレックスに突進していった。オメガレックスは誘導ミサイルを放つが、ナックルコングは怯まず、突っ込んでいった。

 そして、ナックルコングはオメガレックスにパンチを御見舞いしようとし、オメガレックスは前足でそれを受け止め、更にもう一発のパンチまで受け止められた。

 

 「かかったな。 ナックルコングは元々肉弾戦に強いゾイド。力押しなら、どのゾイドにも負けはしない。オマケに!」

 

 両腕を前足で防がれたナックルコングはそのまま力を上げながら、全ての火器をオメガレックスに向けた。

 

 「この距離ならシールドは張れない! 故にこの距離なら、ダメージは免れない。だが、この私のナックルコングは更に耐久力も上げている。例え、この至近距離で放っても、ダメージを食らうのは貴様だけだ。喰らえ~!!」

 

 ナックルコングの全ての火器が再びオメガレックスに直撃した。オメガレックスの全身が一気に煙に包まれた。

 

 「やったか?」

 

 しかし、煙が晴れたその時、収束シールドが展開し、既にオメガレックスは荷電粒子砲を撃つ体制に入っていた。

 

 「何!? まさか、この距離で荷電粒子砲を!」

 

 「少しは楽しめたけど、これでゲームセットだね。オメガレックス、ファイ……」

 

 「ソニックシックル!」

 

 その時、突然、 何かの衝撃波がオメガレックスを直撃し、荷電粒子砲発射を阻止した。

 

 「何だ?」

 

 そして、サリーの乗るハンターウルフ改がオメガレックスの前に現れた。

 

 「あれは……ハンターウルフ?」

 

 「あのバカ! この戦闘中に一体何を?」

 

 「また、君か。 本当に殺されに来たのか?」

 

 「ユウト、どうして、こんなことをするの?」

 

 「決まっているだろ! ボクはゼロメタル帝国の皇帝となる人間、ボクに逆らう奴は皆殺すのは当たり前だろ?」

 

 「違う!」

 

 「ん?」

 

 「あなたはそんな人じゃない。御爺さんと別れて一人ぼっちでいて、ジャミンガに襲われた時、私はあなたに助けられて、こんな私を迎え入れたあの時のあなたはホントに優しかった。

 帝国にいたとき、私は何度も戦争で傷ついた人やゾイドもいて、ランド博士がゾイドを実験台にした光景を見た。でも、戦争で傷ついたゾイドを破棄しようとしたランド博士をあなたは止めて、メルビルさんと一緒にそのゾイドを治してくれた。あんなにゾイドが好きで、メルビルさんと仲良かったあなたがこんなことするはずがない。

 お願い、目を覚まして! あなたはメルビルさんと一緒にいる方が幸せじゃなかったの?」

 

 「ごちゃごちゃ、うるさいんだよ~!!」

 

 ユウトの怒りが頂点に達したその時、オメガレックスの吸入ファンに搭載されているジェネレーターパーツの中のペンダントが紫色に発光し、その光がオメガレックス全身に行き渡った。

 

 「な、何だ? これは……」

 

 その光はコクピット内にも入り、更にユウトの身体をも包み込んだ。 

 やがて、ユウトの全身に血管が浮かび、ユウトは急に苦しみだした。

 

 「うっ、ぐっ、くっ……何だ、これは!」

 

 その様子をキルサイスのカメラで見ていたプライドとドクターマイルスは、

 

 「ペンダントに宿るD因子が更に活性化した!」

 

 「いよいよ、遂に完全なる覚醒の時が来たのだ。」

 

 「ぐっ、ぐぐぐっ……」

 

 ペンダントによって発生された光はユウトの身体を包み込み、同時にユウトの身体も変化していった。 左腕と右足が黒い金属に変わり、手と足の指が肉食獣のような営利な爪に変化し、更に腕と足から突起のようなものが生え、左半身や顔の左側にも黒い金属へと変わり、徐々に禍々しい機械のような姿へとなっていき、それを見たサリーは震えるような表情で見ていた。

 

 「な、何? あれ……」

 

 「ううっ、うっ、グッ……グオォ~!!」

 

 ユウトの目が紫色になり、同時にオメガレックスのバイザーも紫色に染まり、ハワード宰相のナックルコングやアーサーに襲いかかってきた。

 アーサーは間一髪で避けるが、オメガレックスは態勢を変え、尻尾でナックルコングを凪ぎ払った。しかし、ナックルコングも直ぐ様、態勢を変え、全火力をオメガレックスに向けて一斉砲撃した。

 ナックルコングの凄まじい砲撃に包まれるオメガレックス、しかし、オメガレックスはその砲撃を喰らっていながら、無傷で立っていた。

 

 「何なんだ、あいつは!」

 

 オメガレックスの様子をみていたゼオルは、

 

 「あれは、確か、バルディーとマリがネオヘリックで一度倒したオメガレックスの暴走状態に似ている。 だが、何だ? この禍々しい感じは……丸で人間でないような雰囲気を感じる。」

 

 「グオォ~!!」

 

 オメガレックスはそのまま、ハワード宰相のナックルコングに突進し、ナックルコングは両腕で、オメガレックスの前足を抑え、動きを止めるが、オメガレックスは更に力を更に上げ、徐々にナックルコングを後退させていった。

 

 「くっ! こいつ、一体何なんだ?」

 

 コクピットの中のユウトは完全に正気を失い、オメガレックスと共に本能的に暴走する怪物と化していた。 

 後退させられて、ビルに接触し、ハワード宰相はこの状況から脱するために再び対空速射砲やその他の火力を再びオメガレックスにぶつけ、ナックルコングはその隙に脱出した。だが、ユウトとオメガレックスは何事もなかったかのような状態だった。

 

 「くっ、化け物め!」

 

 オメガレックスがナックルコングに向かって突進しようとしたその時、

 

 「グングニル!」

 

 横浜からアーサーが現れ、オメガレックスに一撃を喰らわした。

 

 「ゼオル! 大丈夫ですか? 宰相殿。」

 

 「問題はない。しかし、あれは何だ?」

 

 「以前、共和国を襲撃していた時に暴走していた時に似ていますが、それより、何か邪悪な気を感じる。 とにかく、あれは私とあなたで何とかしましょう。」

 

 「わかった。」

 

 アーサーとナックルコングがオメガレックスに攻撃を仕掛けようとしたその時、サリーの乗るハンターウルフ改が2体の前に立ち塞がった。

 

 「止めて! ユウトを攻撃しないで!」

 

 「ボーマン博士の孫娘か。 どういう理由があるか知らないが、あいつは倒さなきゃなんねぇ奴だぞ!」

 

 「そうかもしれない……でも、ユウトはそんな悪い人じゃない。 あの人は私が帝国にいたときにとてもよく接してくれた。だから!」

 

 「だからといって、放っておくわけにはいかないだろう。」

 

 「グオォ~!!」

 

 オメガレックスが背後からハンターウルフ改に襲いかかろうとし、それを見たゼオルとアーサーはハンターウルフ改を飛び越え、オメガレックスに攻撃した。

 

 「危ない、 グングニル!」

 

 グルルル……

 

 「あんたがそう言っても、向こうは改心するどころか、話すつもりもなさそうだ。」

 

 その時、オメガレックスは全身から紫色の衝撃波を放ち、アーサーとナックルコングもろとも吹っ飛ばしてしまった。

 

 「ぐわぁっ!」

 

 「ゼオルさん!」

 

 サリーが気付いたその時、オメガレックスの誘導ミサイルが放たれ、それがハンターウルフ改に襲いかかってきた

。 ハンターウルフ改に直撃しそうになったその時、突然、ビルから何者かの影が現れ、ミサイルを全て受けた。

 

 「グッ……?」

 

 「う、う~ん?」

 

 「大丈夫? サリー。」

 

 「レオ!」

 

 「グルルル!」

 

 「待たせたね。 ここは俺に任せて。」

 

 オメガレックスの誘導ミサイルからサリーとハンターウルフ改を救い、現れたライガーはオメガレックスに向かって勢いよく、咆哮を上げた。

 

 ガオォ~!!

 

 オメガレックスは荷電粒子砲を撃つ体制に入り、ライガーに向けて荷電粒子砲を発射し、ライガーは瞬時にフェイスシールドで防いだ。

 

 「レオ!」

 

 「ぐっ! くっ、」

 

 荷電粒子砲の凄まじい威力にライガーは徐々に後退していき、フェイスシールドも徐々に溶解していった。

 

 「オメガレックスを止めるためにボーマン博士が改造してくれた力を無駄にするわけにはいかない。そうだろ?ライガー!!」

 

 ガオォ~!!

 

 ライガーが咆哮を上げた時、爆発が起こり、ライガーはその爆風に包み込まれた。

 

 「レオ、ライガー!」

 

 しかし、煙が晴れると、ライガーは身体が破壊されることなく、無傷で済んだ。

 

 「レオ、ライガー……良かった。」

 

 「グオォ~!!」

 

 尚も荷電粒子砲を放とうとするオメガレックス、

 

 「まだ、撃つのか。ライガー、耐えれるか?」

 

 グルル……

 

 ライガーは再び荷電粒子砲を防ぐ体制になり、オメガレックスが荷電粒子砲を放とうとしたその時、突然、移民船のある場所が崩れ、地面が割れ、その下から巨大なものが現れていった。

 

 「あ、あれは……」

 

 「グウゥ~。」

 

 そこに現れたのは巨大なスナイプテラであるビッグウィングで、そのコクピットにフィオナとジーンが乗り、ビッグウィングの頭部にはギルラプター改が乗っていた。ビッグウィングの頭部に乗っかったギルラプター改を見て、サリーは驚いた。

 

 「メルビルさん……?」

 

 ビッグウィングの頭部に乗っていたギルラプター改のコクピットにはメルビルが乗っていた。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオとライガーが暴走したオメガレックスの元に着いた中、バーンやロックバーグ中尉たち共和国軍はセードのジェノスピノと交戦し、エヴォブラストしたパキケドスがジェノスピノに向かって突進していった。

 

 「弾丸鈍破!」

 

 しかし、ジェノスピノはパキケドスのパンプヘッドを片手で抑えた。

 

 「ぐっ、くっ……」

 

 「同じ手が2度通用すると思ったか?」

 

 「あら、それは百の承知よ。バーン!」

 

 「おし、やっと俺たちの出番か! フォックス、あれをぶっぱなすぞ。 ブルーシャドーフォックス、進化 解放! エヴォブラストー!! ロイヤルガトリング!」

 

 「ちぃっ、マシンブラスト……」

 

 パキケドスは直ぐ様、その場を脱出し、エヴォブラストしたフォックスの全ての砲撃がジェノスピノに直撃した。

 

 「ふぅ~、これでようやく、あの野郎に1発噛ますことができたぜ。」

 

 「今の一撃で少しでも、ダメージを喰らってくれるとありがたいが……」

 

 煙が晴れると、そこには驚くべき光景が広がっていた。マシンブラストを発動したジェノスピノがジェノソーザーでフォックスの全ての砲撃を受け止めていたのだ。

 

 「おいおいおい、嘘だろ……ボーマン博士とリュック大尉たちの力でここまでパワーアップした俺のフォックスの攻撃を受け止めるなんて……」

 

 「それにしても、どういうことなの? あれだけ強化されたライガーやフォックスをここまで苦戦させるといい、こいつ、以前より更にパワーが上がっている。

 丸で戦うごとに戦闘能力が向上しているみたいに……」

 

 「ん?」

 

 その時、セードの右腕が強く発光し、更に鼓動まで始めた。

 

 ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ!

 

 「俺の右腕が強大な力を感じ取っている……そうか、遂に奴が覚醒したのか。なら、こいつらの相手をしている暇はない。 ジェノスピノ!」

 

 ギュオォ~!!

 

 セードの掛け声と共にジェノスピノが咆哮を上げ、ジェノソーザーで、地面を斬り刻み、そのまま地中を掘り進んでいった。

 

 「ん? 何だ、あいつ。 いきなり、戦闘を放棄しやがった。」

 

 「特に不利な状況でもないのに、戦線を離脱するなんておかしい……まさか!」

 

 「遂に、遂に、この時が来た。この俺が最強の力を手にする時が! あの力さえ、手に入れば、俺は全てから解放される。」

 

 地中を潜行しているジェノスピノはネオゼネバスに向かって突き進んでいった。

 

 To be continued




 次回予告

 ペンダントが放った紫の光によってユウトが禍々しい姿に変わり、再び暴走するオメガレックス! レオとゼオルが苦戦を強いられる中、サリーとメルビルがユウトに説得を試みるが…
 激戦の最中、突如、ジェノスピノを従えるセードがレオ達の前にたちはだかる。はたしてそのねらいとは?

 次回「激突! 灼熱龍VS要塞龍」走り抜け、ライガー!!

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