ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 しかし、それは真帝国を利用したプライドによる陰謀で、プライドはユウトを皇位継承者とするゼロメタル帝国の建国を宣言、ライジングライガーとよく似たアーサーとワイルドライガーガンナーを相棒とするゼオル、バルディー、マリアナを新たな仲間に据え、レオたちは帝国、共和国の合同軍と共にゼロメタル帝国と戦うことになった。


第40話「激突! 灼熱龍VS要塞龍」

 暴走したオメガレックスとレオたちの前に現れた巨大スナイプテラ、ビッグウィングとその頭部にメルビルの乗るギルラプター改が現れたことに驚きを隠せないレオたち、

 

 「メルビルさん……? それにあの大きいスナイプテラはあの時の……」

 

 「陛下、何故、またそのようなことを!」

 

 ジーンと共にビッグウィングフィオナは通信を開き、ユウトに話した。

 

 「聞こえますか? オメガレックスのライダー。我々はあなたとの交戦は望んでいません。直ちにオメガレックスから身を離してください。」

 

 「グ~、グオォ~!!」

 

 しかし、暴走状態のユウトは聞く耳を持たず、誘導ミサイルをビッグウィングに撃ち込んだ。

 

 「くっ、ジーン、状況は?」

 

 「片翼を撃ち抜かれましたが、まだ、大丈夫です。」

 

 オメガレックスの様子を見たメルビルはビッグウィングから降り、ギルラプター改はオメガレックスの目の前にまで来た。

 

 「ユウト、聞こえる? 私よ! メルビルよ。お願い、目を覚まして。」

 

 「ギャオォ~!!」

 

 目の前のギルラプター改に気付いたオメガレックスはギルラプター改を踏み潰そうとしたその時、アーサーがギルラプター改に体当たりして、オメガレックスの踏み潰しを阻止した。

 

 「全くサリーといい、無茶する女だ。」

 

 「あなたは……?」

 

 「俺はゼオル、只の記憶喪失の男だ。」

 

 アーサーは直ぐ様、体制を整え、ギルラプター改に向けて発射された誘導ミサイルをA-Z機関砲とランスで迎撃した。

 

 「あんたとサリーがあの野郎ににどんな思いあるか、知らないが、今のあいつは只の化け物だ。もうあんたの知っている奴じゃない。」

 

 ゼオルの現実を突き詰めるような言葉を聞いたメルビルは何も言えず、オメガレックスと戦うアーサーをただ見ていた。

 

 「グングニル!」

 

 アーサーは再びエヴォブラストでオメガレックスに攻撃するが、全てジェネレーターパーツによるシールドで防がれてしまう。

 

 「くそっ、アーサーのランスじゃ、あのシールドは破れんか。ガンナーがいれば、破れるかもしれんが、未だに敵の別動隊に手を焼いているらしいし。」

 

 しかし、気付くと、オメガレックスはアーサーに向け、再び荷電粒子砲を放とうとした。

 

 「げっ! しまった。」

 

 しかし、放たれた荷電粒子砲をライガーがフェイスシールドで防いだ。

 

 「お前……」

 

 「ここは俺がやります。あなたはサリーとメルビルさんをお願いします。」

 

 「しかし、奴はお前1人で敵う相手じゃないぞ。」

 

 「いえ、俺とライガーなら、大丈夫です。行くぞ! ライガー。」

 

 その時、ハンターウルフ改が現れ、サリーが制止した。

 

 「止めて、レオ。 これ以上、ユウトを攻撃しないで。」

 

 「でも、サリー、今のあいつは暴走している。だから、俺たちが止めなきゃいけないんだ。」

 

 「だったら、私も手伝う。」

 

 「いや、ここは俺とライガーが行く。あいつとの決着は俺がつけなきゃいけないんだ。行くぞ! ライガー。」

 

 「レオ……」

 

 「ライジングバーストブレイク!」

 

 ライガーはエヴォブラストをオメガレックスに当てるが、オメガレックスは何度も展開可能なシールドで防ぎ、更にその後に荷電粒子砲を放つため、容易に近づけなかった。

 

 「あのシールドを何とかしないと。でも、エヴォブラストでも破れなかった。一体、どうすれば……」

 

 ガウゥ~。

 

 「どうした? ライガー。」

 

 グルル……

 

 ライガーのうめき声を聞いたレオは何かを察し、

 

 「そうか、行くぞ! ライガー。」

 

 ライガーはオメガレックスに突進し、再びエヴォブラストを放つような行動にでて、オメガレックスは再びシールドを放つが、ライガーは直ぐ様、タテガミブレードを引っ込め、フェイスシールドを出し、オメガレックスのシールドをぶつけた。

 ライガーのフェイスシールドとオメガレックスのシールドのぶつかり合いで、火花が飛び散り、しばらくすると、オメガレックスのシールドに若干のひびが入った。それを見たゼオルは、

 

 「なるほど、そういうことか。シールド同士をぶつけ、ショートさせているのだな。」

 

 「いけ、いけ! ライガー。」

 

 ガオォ~!! 

 

 ライガーが全ての力を振り絞り、オメガレックスは徐々に押され、遂にシールドが破壊された。

 

 「今だ! ライジングバーストブレイ……」

 

 しかし、オメガレックスはこの時を待っていたかと言わんばかりに既に荷電粒子砲を撃つ体制に入り、それに気付いたレオとライガーはフェイスシールドで防ごうとするが、時既に遅く、荷電粒子砲を諸に受けてしまう。

 

 「う、うわぁっ!!」

 

 「レオ!」

 

 フェイスシールドの半分とアーマーの一部が溶解され、倒れ、そのまま立ち上がろうとするが、シールドを破った際に体力の殆どを使ったため、中々立ち上がれずにいた。オメガレックスは尚もマシンブラストを発動し、止めを刺すかのように荷電粒子砲をライガーに向けた。

 

 「くっ、俺とライガーでも、あいつを止められないのか!?」

 

 オメガレックスが荷電粒子砲を撃とうとしたその時、

 

 「止めて~!!」

 

 ハンターウルフ改とギルラプター改がライガーの前にたち、オメガレックスの前を遮った。

 

 「サリー、メルビルさん。早く逃げて!」

 

 「いいえ、逃げません。私は少しでもレオの手助けになるために、ユウトを救うためにここに来たの。 だから、私はこれ以上、逃げません!」

 

 サリーの力強い言葉も虚しく、オメガレックスは御構いなしに荷電粒子砲を発射した。全員が目を閉じたその時、

 

 「レオ、お待たせ!」

 

 何処からか、青年の声が聞こえたと同時に頭上から猛スピードで、ソニックバードが現れ、背中に装備していたロングアサルトキャノンをオメガレックスの吸入ファンに照準を合わせた。

 

 「デフレクター、発射!」

 

 ソニックバードのロングアサルトキャノンから放たれたミサイルがジェネレーターパーツに直撃すると、分離し、青いシールドが発生し、オメガレックスは荷電粒子砲が撃てない状態になった。

 

 「大丈夫かい? レオ。」

 

 「ジェイク、どうして?」 

 

 グロロォ~!!

 

 しかし、オメガレックスはそれがどうしたかと言わんばかりに強靭な顎でライガーを噛み砕こうとしたその時、ギルラプター改が前足でその顎を抑えた。

 

 「メルビルさん!」

 

 「ユウト、お願い、目を覚まして。」

 

 「グオォ~。」

 

 コクピットの中のユウトが正気に戻らないのを見たメルビルはコクピットから出て、ある写真を見せた。その写真には士官学校時代のユウトとメルビルが映っていた。

 

 「ユウト、これを見て! 私とあなたが御父様の養子となって、帝国軍に入隊し、士官学校を出た時の写真よ。これを見て、思い出して!」

 

 「フシュルルル…。」

 

 

 

 

 

 

 キルサイスの監視カメラでその様子を見ていたドクターマイルスはその姿を嘲笑い、

 

 「無駄だ。真の力を覚醒した殿下を止めることは誰にも出来ない。」

 

 

 

 

 

 

 「ユウト、思い出して……」

 

 オメガレックスはそのままギルラプター改を噛み砕こうとするが、コクピットのユウトがその写真を見た時、動きに変化が起き、ユウトにも変化が起きた。

 

 「グルル……し、士官……学校……? め……メルビル……」

 

 ユウトがメルビルの言葉を話し、オメガレックスの攻撃の手が徐々に緩んでいった。

 

 「ユウト……?」

 

 「め……メルビル……ぼ、僕は……」

 

 「そうよ! メルビル、ハンナ・メルビルよ。」

 

 「は……ハンナ……はっ!」

 

 その言葉を聞いたユウトの脳内に過去のビジョンが映し出された。

 

 「(ねぇ、あなたの名前は?)」

 

 「(僕の……名前? わからない。誰かもわからない。)」

 

 「(そう、じゃあ、あなたの名前はユウト、ユウトでいいかしら?)」 

 

 「(ユウト……?)」 

 

 「(そうよ、私はハンナ。)」

 

 「(ハンナ……)」

 

 「ハンナ!」

 

 その時、ユウトの目とオメガレックスのバイザーの色が元に戻り、暴走した時に変化していた禍々しい姿が徐々に元の姿に戻っていき、正気になっていた。

 

 「ハンナ……サリー……僕は?」

 

 「ユウト、目が覚めたの?」

 

 「僕は、一体……?」

 

 「良かった、ホントに良かった。」

 

 正気に戻ったユウトを見て、メルビルは嬉し涙を溢した。

 

 

 そんなレオたちの元にソニックバードが降り立ち、

 

 「ふぅ~、間に合わなかったら、どうしようかと思ったよ。」

 

 「ジェイク、一体どうして?」

 

 「いや、実はツガミ大尉から……」

 

 「どうやら、間に合ったようだな。」

 

 ソニックバードの降り立ちと共にディアス中佐とツガミ大尉率いる共和国軍が到着した。

 

 「ディアスさんにツガミさん。これは一体……?」

 

 「実はラモン二等兵には私の部下になり、万が一のためにオメガレックスに対抗するための切り札として、この日のために彼を用意していたのだ。

 何せ、彼は能力はあるのだが、少々怠け者で、まだ新兵だったため、暫く前線から外した代わりにみっちり戦闘訓練を施していたからな。」

 

 「でも、どうして、ジェイクを?」

 

 「オメガレックスに一番気をつけなければいけないのはあの荷電粒子砲だ。なら、それさえ防ぐことが出来れば、勝機は必ず出る。

 だが、弱点である荷電粒子吸入ファンを撃ち込むには並大抵のゾイドでは不可能。だが、ソニックバードなら、その荷電粒子吸入ファンをピンポイントで狙えることが判明した。そこで私は彼を一から鍛え直し、これまで前線に出さなかった代わりの訓練を受けさせ、ボーマン博士がオメガレックスの荷電粒子吸入ファンを封じるために開発したデフレクターで何度もシミュレーションを行ったというわけだ。」

 

 「そうだったんですか。」

 

 「おかげで、俺、筋肉痛にもなったよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キルサイスの監視カメラでその様子を見たドクターマイルスは苛立ち、

 

 「あり得ん、あり得ん、あり得ん! 殿下に内在するD因子が再び抑えられるなど、断じてあり得ないことだ!」

 

 「やはり、あれは失敗作だったか。 ま、あの小娘2人を始末出来なかったこともあるが……」

 

 「プライド、何を悠長なことを言っている! せっかく覚醒したD因子が抑えられたら、我らの計画の全てが水の泡になってしまう。」

 

 「心配ない。あれが失敗したなら、その遺伝子とD因子だけ手に入れれば、問題ない。」

 

 「だが……」

 

 「慌てるな、そのための保険として、奴を派遣させたのだからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところで、レオ。ジェノスピノは?」

 

 「え? ジェノスピノですか?」

 

 「ああ、実は我々と交戦している途中、突然、戦闘を放棄してその場を脱したから、てっきりここに来たのかと思ったが……」

 

 その時、突然、ネオゼネバスの崩れたビル群が突如崩れ、地盤にヒビが割れ、現れた巨大な穴に次々と吸い込まれていき、その穴から、ジェノスピノが現れた。

 

 「ジェノスピノ!」

 

 「この時を待っていた。D因子を持った貴様が完全に覚醒する時をな!」

 

 セードの言葉を聞いたツガミ大尉はその言葉に疑問を持った。

 

 「D因子? 一体どういうことだ?」

 

 「さあ、来い。化け物。俺と戦え。」

 

 右袖を破り捨てたセードは右腕を見せ付け、発光させ、その発光に呼応するかのようにオメガレックスのジェネレーターパーツのペンダントが再び紫色に発光し、ユウトの目が再び紫色になって暴走した。

 

 「セード、う…ぐっ…グワァ~!!」

 

 「ユウト、止めて!」

 

 メルビルの静止も虚しく、オメガレックスはジェノスピノの元に向かって一目散に走り、ジェノスピノは迫ってきたオメガレックスを前足で止めた。

 

 「ぐっ、グ~!!」

 

 「近接戦で、この俺とジェノスピノに挑むのか。 だが、近接戦なら、ジェノスピノの一番得意分野だ!」

 

 セードの自信たっぷりな台詞と共に、ジェノスピノは力を込め、オメガレックスを押していった。

 

 「そんな! あのオメガレックスが押されるだなんて!!」

 

 オメガレックスは誘導ミサイルを放とうとするが、ジェノスピノはすかさず、それをロングキャノンで迎撃し、両用速射砲もヘッドキャノンで防がれた。

 

 「どうした? 覚醒した貴様の力はそんなものか!?」

 

 「グッ、グギャオォ~!!」

 

 ユウトは叫び声を上げると同時にオメガレックスはジェノスピノに頭突きをし、直ぐ様、その場を離れ、十分に距離を置いた後に荷電粒子砲を撃つ体制に入った。

 

 「ほぅ、近接戦闘では不利と見て、荷電粒子砲で殲滅するつもりか……だが!」

 

 オメガレックスがジェノスピノに向けて荷電粒子砲を放ったその時、荷電粒子砲に直撃する直前にジェノスピノは突然、ジャンプし、そのままオメガレックスの方に向かって突っ込んでいき、レオたちやその一同は信じられないような表情をした。

 

 「何! ジャンプしただと!!」

 

 「まさか、あの巨体で!」

 

 オメガレックスに体当たりしたジェノスピノはオメガレックスの背中に乗り、荷電粒子吸入ファンを前足で剥がそうとしていた。

 

 「ぐっ、グ~!!」

 

 「止めろ~!!」

 

 それを見たレオがライガーと共にそれを止めようとジェノスピノに向かって突撃するが、ジェノスピノは即座にマシンブラストを発動し、ジェノソーザーでライガーのタテガミブレードを防いだ。

 

 「くっ、うぅ~!!」

 

 「ふっ、貴様もここにいたとはな。だが、今は貴様の相手をしている暇はない!」

 

 ジェノスピノはそのままジェノソーザーでライガーを吹っ飛ばし、ライガーはビルに激突した。

 

 「グワァッ!」

 

 「レオ!」

 

 「一体何なんだ? 何故、奴は我々ではなく、オメガレックスを攻撃するのだ!?」

 

 「ディアス中佐、そんなことを言っている場合ではありません。 今は奴を倒すことが先決です。」

 

 「仕方ない、我々の隊は直ちに前進し、ジェノスピノを一斉排除せよ!」

 

 ディアス中佐の乗るギルラプター改率いるトリケラドゴス、ガブリゲーターによる共和国部隊がジェノスピノに向かって走っていくが、

 

 「ふっ、」

 

 それを見たセードはジェノスピノのスモークディスチャージャーのスモーク弾を周囲に数発発射し、それらのものを火炎放射で焼き、ジェノスピノとオメガレックスの周囲が一気に炎に包まれた。

 

 「何!?」

 

 「中佐! これでは、前に進めません。」

 

 「ならば、炎に一斉射撃だ。」

 

 トリケラドゴス、ガブリゲーター隊が炎に向けて砲撃するも、炎の中から、ジェノスピノのヘッドキャノンが放たれ、一体一体確実にトリケラドゴス、ガブリゲーター隊が次々と撃破されていった。

 

 「奴め、あの炎の中で、我々の位置を把握して、正確に撃ってきてるというのか!」

 

 「ラモン二等兵、空中からもう一度あれを撃てるか?」

 

 「すみません、大尉。今やっているんですが……こう、炎に包まれたら、正確な場所が掴めませんし、オマケにジェノスピノがやたら、動いているため、中々手出し出来ません。」

 

 「ちぃっ、」

 

 オメガレックスの吸入ファンにリフレクター弾を撃ち込んだのと同様のことをしようとしたジェイクとソニックバードは身動きが取れず、ギレル少佐とバスキア大尉も同じだった。

 

 「少佐、どうします? このままでは……」

 

 「やはり、あれを使うしか……」

 

 その時、メルビルが乗っていた青いスナイプテラがギレル少佐とバスキア大尉のスナイプテラ、クワーガファイアボンバーを横切り、炎の中に突っ込んでいた。

 

 「今のスナイプテラはメルビル元少尉の、しかし、メルビル元少尉はギルラプターに乗っている。一体誰が? まさか……」

 

 メルビルが乗っていた青いスナイプテラはA-Zインパクトキャノン砲をジェノスピノに撃ち込んだ。青いスナイプテラに乗っていたのはコリンズ中将だった。

 

 「我が帝国の抑止力となるはずだったジェノスピノで、これ以上、我が帝国を汚すな!」

 

 「ああん? 帝国の抑止力? 綺麗事言っても所詮は自分たちのエゴを押し通すためのものだろ!」

 

 ジェノスピノはジェノソーザーで青いスナイプテラの片翼を切り裂き、青いスナイプテラはそのまま落下してしまった。

 

 「グオッ!」

 

 「コリンズ中将!」

 

 ギレル少佐とバスキア大尉のスナイプテラ、クワーガファイアボンバーが助けに行くが、ジェノスピノがソーザーバルカンを周囲に撃ちまくっているため、中々近付けなかった。

 

 「貴様ら帝国、共和国はいつもそうだ。抑止力だの、荒れ果てた地球の開拓するだの、丸で自分たちが救世主か、国家のあるべき姿とかほざいているが、結局は自己の利益を優先に動いているだけで、戦争をやり、挙げ句の果てにあの男まで生み出した。 そんな貴様らの提唱する戯れ言に正義があるわけがない!!」

 

 ジェノスピノが倒れた青いスナイプテラに向かってジェノソーザーを振り回そうとしたその時、突然、何物かの砲撃がジェノスピノを襲った。

 

 「ん? 熱源センサーに反応無し。 それにこの攻撃は……」

 

 砲撃したのはドライパンサーだった。

 

 「スピーゲル中佐!」

 

 「ここは私が引き付ける。ギレル少佐とバスキア大尉は今のうちにコリンズ中将を!」

 

 「ちぃっ、あの連中はゼロメタル帝国のキルサイス、ディロフォスが足止めしているんじゃなかったのか。」

 

 「我が帝国に反逆し、元々帝国軍のゾイドであるジェノスピノを使って、帝国を滅ぼそうとする行為、許すわけにはいかない!」

 

 「だが、貴様らも同じ穴のむじなだろ。 あの真帝国と!」

 

 「俺はハワード宰相閣下のスパイとして、真帝国に潜入した。だが、我々はシーガル共の唱える真帝国の汚れた思想とは違う!」

 

 「何とでも言え! 貴様らが存在続ける限り、戦争が終わるわけがない!!」

 

 ジェノスピノはヘッドキャノンでドライパンサーを迎え撃つが、ドライパンサーは周囲の炎に紛れながら、サイレントガンをジェノスピノに撃ち込んだ。

 

 「こう見えて、ステルス戦は俺の得意分野でな。」

 

 「ふん、ん?」

 

 その時、ドライパンサーとは別の砲撃がジェノスピノを襲い、炎の中からフォックスが現れた。

 

 「ステルス戦が何もお前だけの専売特許だと思うなよ。それにお前だけいい格好させてたまるかってんだ!」

 

 現れたフォックスは援護するかのようにロングガトリングでジェノスピノを砲撃し、足を撃ち抜かれたジェノスピノは態勢を崩してしまう。

 

 「ちぃっ、ちょこまかやってくれるじゃないか。 ん?」

 

 しかし、ジェノスピノが態勢を崩したことで、身動きが取れるようになったオメガレックスはジェノスピノの首に噛み付いた。

 

 「グワァ~!!」

 

 ギュオォ~!!

 

 ティラノサウルスの如く、強靭な歯で噛み付かれたジェノスピノは苦しみ、オメガレックスは噛み付いたまま、ジェノスピノを崩れたビルに何度も叩き付けた。ジェノスピノはもがきながら、オメガレックスの噛みつきを脱出しようとするが、オメガレックスは一向に離そうとしなかった。

 

 「ちぃっ、」

 

 身体の振りほどきで、脱出出来ないことを悟ったセードはジェノソーザーをオメガレックスの首に斬りつけた。

 

 グロロォ~!!

 

 ジェノソーザーがオメガレックスの首に深く入り込み、もがき苦しむオメガレックスは口を開き、その一瞬の隙をついてジェノスピノは回り込んで逆にオメガレックスの首に噛み付き、前足で頭を抑え込んだ。

 

 「やはり、所詮、荷電粒子砲が使えなければ、大した脅威ではない。」

 

 グロロォ~!!

 

 ジェノスピノがそのままオメガレックスの首をへし折ろうとしたその時、灼熱の炎の中からライガーが現れ、タテガミブレードをジェノスピノの顔に直撃し、その衝撃で、ジェノスピノの右目のバイザーが破損した。

 

 「また、貴様か!」

 

 「セード、俺が相手だ。」

 

 ジェノスピノは再びジェノソーザーを振り回し、ライガーに当てるが、ライガーはそれをタテガミブレードで防ぎ、それを弾いた。

 

 「ジェノソーザーを弾いただと!?」

 

 「サリーとメルビルさんにとって大事な人には手を出させはしない。」

 

 「…本当によく頑張るね。 何故、他人のことをそこまで身を挺してまで守ろうとする?」

 

 「決まっている! 俺はこの地球とゾイドと人々が好きなんだ。だから、地球を再生し、人々とゾイドを守らなければいけないんだ。」

 

 「はっ、何も知らないとは、ホントに恐ろしいものだ。

 そもそも、この地球を滅ぼし、ゾイドを戦争兵器として利用して暴れているのも人間そのものだというのに御人好しもここまで来ると、笑えるぜ。」

 

 「何!?」

 

 「そんな程度の考えで、俺を倒せると思うな~!!」

 

 怒り狂うセードに従い、ジェノスピノは再びジェノソーザーを振り回し、ライガーはタテガミブレードで防ぐが、その力に耐えられず、逆に弾かれ、タテガミブレードの刃がかけてしまった。

 

 「ライガーの刃が! ライガー、大丈夫か?」

 

 グルル……

 

 「あいつ、以前、スチールエリアでの戦いやライガーがブルーライガーになる前の時より遥かに強くなっている。

 それにさっき攻撃を受けた時に右腕を通じてあいつから感じ取った凄まじい怒りと憎しみ、あれがあいつの力の源だというなら、一体あいつに何があったんだ?」

 

 ギュオォ~!!

 

 ジェノスピノは再びジェノソーザーを振り回し、ライガーはそれを避けようとするが、反転して、刃をライガーに向けた。

 

 「しまっ……」

 

 「止めて~!!」

 

 ジェノソーザーがライガーに直撃しそうになったその時、炎の中から衝撃波が走り、それがジェノスピノに直撃して、ジェノソーザーが反れた。そこに現れたのはサリーの乗るハンターウルフ改とメルビルの乗るギルラプター改だった。

 

 「サリー、メルビルさん。」

 

 「レオ、大丈夫?」

 

 「大丈夫だよ。それより、君は逃げて。勝てる相手じゃないよ!」

 

 「いいえ、私は逃げない。私は今までレオに守られてばっかりで、いつも、レオに迷惑をかけていた。 だから、今度は私がレオの助けになりたいの。」

 

 「サリー……」

 

 「ジェノスピノのライダー、聞こえますか? 私たちはこれ以上の戦闘は望みません。それにユウトはもう、ゼロメタル帝国の人間ではありません。私たちとの交渉を願います。」

 

 「サリー…ランド……フフフフフ、ハハハハハ、ハーハッハッハッハッハ!!」

 

 「何がおかしい! サリーは間違ったことは言っていない。」

 

 「時間が止まっている奴は、思考も止まっているということか……同じランドの子でありながら、祖父の元でノホホンと暮らし、お花畑のような考えを持った奴に奴の元で育てられた俺の何がわかる! わかるわけないだろ!!」

 

 その様子をニューホープの基地の映像で見ていたボーマン博士はセードの言葉を聞いて、既視感を感じた。

 

 「同じランドの子……まさか、彼は!」

 

 「そんな…そんな貴様が偉そうな口を叩くなー!!」

 

 怒り狂うセードに従い、ジェノスピノがジェノソーザーでハンターウルフ改を斬り刻もうとしたその時、突然、強力な砲撃がジェノソーザーに直撃し、ジェノソーザーは一瞬の内に破壊された。

 

 「何!?」

 

 そこに現れたのはワイルドライガーガンナーだった。

 

 「バルディーさん、マリさん!」

 

 「わりぃ、電磁パルスのシールド張ってたディメパルサーとディロフォス倒すのにかなり手こずっちまったぜ。」

 

 「でも、今度はこっちの番よ。」

 

 「また、次から次へと新手か!」

 

 グロロォ~!!

 

 その時、背後からオメガレックスが襲いかかり、強靭な顎と前足でジェノスピノを押さえつけた。

 

 「くそっ、こいつ!」

 

 ジェノスピノがロングキャノンを撃ち込もうとした時、ワイルドライガーガンナーがミステルテイン砲でジェノスピノのロングキャノンを破壊した。

 

 「貴様!」

 

 「残念だったわね!」

 

 「サ……サリー……メ、メルビル……僕を…撃て。」

 

 「ユウト、ユウトなの!?」

 

 コクピットの中のユウトは再び暴走時の禍々しい姿になっているも、僅かながら意識は残っていた。

 

 「早く……僕を…撃て。」

 

 「何言ってるの! そんなこと出来ないわ。」

 

 「いくら…君とサリーのおかげで…戻っても、僕の身体にある何かの力が目覚めて、また僕を支配しようとする。そのためには僕ごと、こいつを撃つしか他はない。」

 

 「そんな……」

 

 「だから…お願いだ……」

 

 「そんなこと出来るか! マリ、ミステルテイン砲でジェノスピノだけ狙えるか?」

 

 「駄目、ジェノスピノが動き回ってて、中々狙えないわ。」

 

 それを聞いたハワード宰相はスピーゲル中佐と通信を開き、

 

 「スピーゲル中佐、」

 

 「なんです? 閣下。」

 

 「クワーガとスナイプテラの爆撃部隊がいるな?」

 

 「まさか……」

 

 「その部隊でジェノスピノを爆撃させる。」

 

 「しかし、それは!」

 

 「わかっている。だが、ジェノスピノを確実に倒すにはこれしかない。 それに私は帝国の宰相だ。責任は全て私が取る。」

 

 「わかりました。爆撃部隊出ろ。」

 

 スピーゲル中佐の命を受けたクワーガ、スナイプテラ隊による帝国の爆撃部隊がジェノスピノ、オメガレックスの頭上にまで飛行していき、レオたちがそれに気付いた時、スピーゲル中佐はレオたちのコクピット全てに通信を開き、

 

 「爆撃が開始する。皆、直ぐにその場から離れろ!」

 

 「え!」

 

 「サリー、危ない!」

 

 ライガーがハンターウルフ改を、アーサーがギルラプター改を庇って、その場から離れると、クワーガ、スナイプテラ隊が一斉に爆撃を開始し、ジェノスピノ、オメガレックスを呑み込み、周囲の街が破壊された。

 

 「う、う~ん。」

 

 「サリー、大丈夫かい?」

 

 「あ、ありがとう。レオ。」

 

 サリーの安心した表情を見て、レオは少し赤くなった。

 

 「え、いや…それほどでも。」

 

 同様にメルビルも目を覚ますと、目の前にアーサーが爆風から守っていた。

 

 「あ、あなたは……」

 

 「気にするな。人間として当然のことをしたまでだ。」

 

 「ありがとう。優しいのね。」

 

 それを聞いたゼオルは少し何処か、自分の感情に少し違和感を感じた。

 

 「え? ま…まあな。」

 

 爆風が収まり、煙が晴れると、そこにはボロボロに倒れこんだオメガレックスと剥き出しになったコクピットの中で頭や身体のあちこちが流血しているユウトの姿があり、その横には同様にボロボロになっているジェノスピノが吸入ファンごと抜き取ったジェネレーターパーツを食わえ、その頭部には紫色に発光している右腕を抑え、身体のあちこちが流血しているセードが立っていた。

 

 「まさか、この俺をここまで追い詰めるとはな。だが、目的は達成した。」

 

 セードは重傷ながらも、ジェノスピノのコクピットに乗り込み、ジェノスピノはジェネレーターパーツを食わえながら、走り、ネオゼネバスにある海に飛び込んで姿を消した。

 

 「ユウト、ユウト! しっかりして!」

 

 オメガレックスのコクピットのところに向かったメルビルはユウトを起こすが、ユウトは一向に起きる気配がなかった。

 

 「そんな……いや、いや~!!」

 

 To be continued




 次回予告

 ネオゼネバスでの攻防戦でボロボロになりながらも、ユウトからペンダントを奪取したセード。しかし、ペンダントを手にした彼はゼロメタル帝国に戻ろうとせず、そのまま放浪していった。
 そんなとき、光を放ったペンダントがかつてサリーと一緒にいた幼少期から帝国に入るまでの過去のビジョンをセードに見せ、彼はその一連のことを思い出した。
 名を捨て、実父のランドを殺し、全てを憎むようになった彼の過去とは?

 次回「世界を壊す男」走り抜け、ライガー!!

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