ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破ったが、帝国の反乱組織真帝国がユウトの操るオメガレックスを生み出し、レオたちに襲いかかるが、レオのライジングライガーによく似た謎のライガーの助けにより、それを打ち破り、遂に真帝国を壊滅させる。
 しかし、それは真帝国を利用したプライドによる陰謀で、プライドはユウトを皇位継承者とするゼロメタル帝国の建国を宣言、ライジングライガーとよく似たアーサーとワイルドライガーガンナーを相棒とするゼオル、バルディー、マリアナを新たな仲間に据え、レオたちは帝国、共和国の合同軍と共にゼロメタル帝国と戦うことになった。


第41話「世界を壊す男」

 ゼロメタル帝国の本拠地、旧ワシントンの研究所、そこでは、スパイデスの頭部に似た仮面のようなものをしている科学者がゼロファントスに赤い液体を注入する実験を行っていて、その様子を見ているプライドの元にドクターマイルスが現れた。

 

 「ドクターか。どうだ? 例のことは……」

 

 「キルサイスが調べた情報によると、セードが撤退した後の殿下の身体にD因子及びその他の遺伝子情報が確認されなかったと出た。また、ペンダントを取り付けたジェネレーターパーツのあるオメガレックスの吸入ファンも引きちぎられた後があり、おそらく奴が全て奪取したかと……」

 

 「ふっ、やはり、奴を派遣しておいて正解だったようだな。」

 

 「しかし、殿下があの小娘ごときの言葉に惑わされ、覚醒したD因子の力を抑えるようになるとは……私の作った傑作だというのに…。」

 

 「人間の作ったものは、必ずしも傑作にはならないのだよ、ドクター。それにあれはあくまで、我々の計画の第一段階にしか過ぎない。 完璧なのは最も神に近いD因子とその遺伝子だけでいい。」

 

 「しかし、殿下の身体と人格を器にして、我らの神を復活させることが我々の計画だったはずでは……」

 

 「だが、あれは所詮、器だ。我らの神が人間の姿を形作るために作ったただの抜け殻だ。人格もそれを埋めるための補足でしかない。

 それにあれはよく成長してくれた。オメガレックスのライダーとして、戦功を上げたことで、十分なエネルギーを得ることが出来た。それだけ達成すればそれでいい。」

 

 「だが、もしあれがあの小娘2人の影響で、我々に反抗したら……」

 

 「その心配はない。D因子を失ったあれは取るにたりないただの人間、最早、大した脅威ですらない。 ところで、セードはどうした?」

 

 「帝国軍の爆撃を受けた後、海中に潜航し、その場から撤退したそうです。 最も向かった場所は特定されていませんが……」

  

 「それなら、問題ない。奴はあれほど甘くはない。それにお前がジェノスピノ修復と同時に強化したなら、そう簡単にくたばるタマではない。」

 

 「しかし、驚いたな。いくら、お前が育てたとはいえ、あの小物の科学者の息子があそこまで強くなるとは……どうやって育てた。」

 

 「いや、特に、何もしてない。 奴には我々には凄まじい憎悪がある。それにつけこめば、あそこまで強くさせることは容易いことだ。」

 

 「奴の憎しみは一体、何処からなのだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国、共和国及びゼロメタル帝国領内である禁制地区のどちらにも属さない領域で、ゾイドクライシスが起きる前の21世紀の地球ではキューバと呼ばれた国の海岸にジェノソーザーを破壊され、ネオゼネバスでの戦闘を物語るかのように全身ボロボロになったジェノスピノが上陸し、喰わえた荷電粒子吸入ファンをその場に落とした後、倒れた。

そして、そのコクピットには紫色に光る金属の右腕を抑え、全身が流血しているセードの姿があった。

 

 「ハァッ、ハァッ、ハァッ。 まさか、帝国にあんなワイルドライガーまで連れていたとは……予想外だったが、目的は果たした。」

 

 息が上がるセードは帝国軍のクワーガ、スナイプテラによる爆撃隊が爆撃する直前のことを思い出していた。爆撃を受ける直前にセードは直ぐ様、ジェノスピノのコクピットから出て、オメガレックスのコクピットに跳び移り、持ち前の身体能力でオメガレックスのコクピットを無理やり剥がし、金属化している右腕で、異形となっているユウトの左半身を貫通させ、その右腕で異形の姿となっているユウトの身体から紫色のエネルギー状のものを自身の右腕に吸収し、その間にジェノスピノもオメガレックスの荷電粒子吸入ファンをペンダントが搭載されているジェネレーターパーツごと噛み剥がし、爆撃を受けるときにセードはジェノスピノに跳び移っていたのだった。

 思いの外、ダメージを受け、倒れるジェノスピノを見たセードは、

 

 「心配するな。俺たちは最強の力を手に入れた。そんな傷も直ぐに再生する。」

 

 ジェノスピノのコクピットから降りたセードは、荷電粒子吸入ファンに搭載されているジェネレーターパーツからペンダントを取り出し、ペンダントの中身を開けた。そこには紫色に光っている超小型のゾイドコアが埋め込まれていた。

 

 「リジェネレーションキューブの端末を起動させるキーの役割を持つペンダントの力の源はこいつだったのか。まさか、人工的にコンパクトにしたゾイドコアを作り出すなんて、人とゾイドの共存等とほざいているが、元はと言えば、あいつがまるで生命を操る神であるかのような技術力を手にしたから、この俺を生み出したのだ!」

 

 セードが力強くペンダントを強く握り締めたその時、ペンダントの中の小型ゾイドコアが更に光り出し、その光を見たセードに何かのビジョンが映し出された。それは彼の過去のようだった。

 

 「何だ……? 何故、こんなものが……そうか、俺がD因子を持つに相応しいか、俺の過去を探ろうというのか。随分悪趣味な神様だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペンダントの小型ゾイドコアが映し出したセードの過去、それは今から140年前、第一、第二世代が地球に移住する直前の惑星Ziに遡っていた。その時の惑星Ziは100年前に3つあった月の内2つが惑星に衝突し、その時に起きた天変地異によってほとんどの人類とゾイドが死滅し、全ての大陸が1つの大陸として繋がる等、環境が大きく変わっていったが、次第にガイロス帝国とヘリック共和国が復興し、かつてのデスザウラー戦以前の姿に戻っていった。

 しかし、神々の怒りと呼ばれたその天変地異の影響で、惑星の寿命が極端に短くなり、もって後、半年だということが判明した。ガイロス帝国、ヘリック共和国の両国はこれ以上惑星Ziに住むことは不可能と考え、別の外宇宙の惑星への移住を検討したが、惑星Ziの周辺に生物が住める星は確認出来ず、かといってコロニー開発では惑星の寿命が尽きるまで、とても間に合わない状況だった。

 重い腰を上げた帝国、共和国の上層部は当時でも、最高峰のゾイド学者にして、科学者であったウォルター・ボーマン博士を起用し、この非常事態をどうするべきかの会議を開いた。

 そのときにボーマン博士が発したのはかつて、ゾイド人が惑星Ziに移住する前の最初の故郷である地球に戻り、再び移住することを検討した。しかし、その意見に両国の上層部は簡単に賛同出来なかった。

 何故なら、惑星Ziに住む現ゾイド人がそもそもこの惑星に住むようになったのは、地球が環境汚染に蝕まれ、とても人間の住める星ではなくなったためであり、その地球に再び移住することが出来る訳でもなく、しかも地球は惑星Ziとは6万光年も離れている銀河の反対側に位置していることもあって、その地球に移動出来る程の宇宙船を作る等、至難の業だったのだ。

 しかし、当時のボーマン博士はこの惑星やゾイドの起源について調査をしており、かつてデスザウラー戦で封印されたはずのゾイドイヴの正体やその起源にまで突き止めていて、その力を応用すれば、時空を越えて環境汚染を受ける前の地球に行くことが出来ると提唱した。

 これには上層部も信じられないような表情をしたが、今や、頼みの綱はボーマン博士しかいなかったため、両国の上層部はボーマン博士に全てを託した。

 そして、その任を任されたボーマン博士は発掘されたゾイドイヴの一部を研究し、ワームホールによる転送が可能な移民船と科学船の開発に携わった。ボーマン博士の研究によると、その起源は未だ不明だが、ゾイドイヴは元々惑星Ziで発生したものではなく、別の惑星からこの惑星Ziにきた存在だということが判明した。ボーマン博士はどの惑星から来たか、その起源も探ろうとしたが、惑星の脱出まで猶予がないため、そのデータは予め保存し、ワームホール発生装置の開発に全力を注いでいた。

 ボーマン博士には助手にして、24歳の娘のクリスタがおり、クリスタは博士の同僚で、同じゾイド学者であるフランク・ランドと出会い、結婚して2人の子供をもうけた。

 その時のランドはボーマン博士の元で学んでいたため、純粋にゾイドのことに対する情熱があり、クリスタと上手くいっていた。

 やがて、クリスタはボーマン博士と共に2人の子供にもゾイドに対する知識や人とゾイドはどうあるべきかのことを教えていた。ランドとクリスタの子供は双子の姉弟で、当時5歳で、その姉はサリー・ランドで、弟は現在のセードにして、本名のピーター・ランドだった。

 2人はとても仲良しで、いつも一緒に遊んでいた。幼少期のピーターは髪の色が緑だということ以外はサリーとよく似ていた美少年だった。そして同時にサリー同様の心優しい少年だった。ピーターが森の中を遊んでいて、転んだところにサリーが立ち寄り、

 

 「い、いった~い!」

 

 「大丈夫? ピーター。」

 

 「ありがとう、お姉ちゃん。」

 

 「もう、こんなところで、1人で遊んで駄目じゃない。」

 

 「ごめんね、お姉ちゃん。でも、これを探していたんだ。」

 

 「クローバー?」

 

 「僕とお姉ちゃん、おじいちゃんやお父さん、お母さんがいつまでも幸せになることを願って探したんだ。」

 

 「そうだったの。」

 

 「でも、これ、お姉ちゃんにあげる。」

 

 「どうして? 見付けたピーターが持っていればいいのに。」

 

 「僕より、お姉ちゃんが持っている方がいいと思って。」

 

 「うん、わかった。大切にするね。」

 

 

 

 

 

 しかし、そんな幸せは長くは続かず、ランドはゾイドの研究をしていく内に次第にゾイドはただ強いものだけいればいい、自分1人だけがゾイドを扱えるだけの世界になればいいと狂った思想を持ち、やがてボーマン博士と対立していった。

 そして、自分だけが扱える最強のゾイドを作るために密かに手に入れたリジェネレーションキューブの端末の情報から地球に自然発生するゾイドの中で強力なスピノサウルス種のゾイドの復元をしていった。しかし、地球産ゾイドを惑星Ziで発生させるのは至難の業であり、研究施設にも限度が来、運悪く、そのことを知らない幼いピーターはランドを探し回って研究室にまで立ち寄った。

 

 「お父さん、何処にいるの? ここ?」

 

 ピーターが研究室のドアを開こうとしたその時、突然、研究室が爆破し、ピーターはその爆発に巻き込まれてしまった。爆発で、研究所は跡形もなく破壊され、ピーターは目を覚ますが、どういうわけか、自分には大した怪我はなく、かすり傷があるだけだった。

 

 「ん? 僕は……そうだ! お父さん、お父さんは!?」

 

 ピーターが辺りを見渡すと、そこには瓦礫の下敷きになっているランドの姿があった。ピーターは右腕をかざしたその時、突然、瓦礫が崩れ、ランドはそこから出ることができた。

 しかし、時既に遅く、ランドの右腕は無惨にズタズタにされていた。だが、驚くべきはそれだけではなかった。先程、瓦礫を一瞬で崩したセードの右腕はいつの間にか、金属の腕と化していたのだった。

 

 「な、何……これ……?」

 

 自身の右腕を見て、恐怖するピーターとは対照的にランドはピーターの右腕を見て、自身の右腕を失った痛みを忘れて、不気味な笑みを浮かべた。

 

 「その、腕は……まさか、実験の失敗で代償は負ったが、思わぬ収穫が出たぞ! ケケケケケ。」

 

 その後、ランドはピーターの右腕を調べると、その腕には復元に失敗したスピノサウルス種ゾイドのゾイド因子があり、そのゾイドの力が宿っているため、ほとんどの過酷な環境に耐えられるだけでなく、通常の人間を遥かに凌ぐ身体能力と耐久力まで備えていることが判明した。

 それを知ったランドはその力を得るためにピーターに自身の傷を治す手伝いと偽り、ピーターの右腕を模した疑似的な義手を開発し、それを取り付け、その義手で、他のゾイドを自在に操る実験を繰り返したが、疑似的に再現したとはいえ、オリジナルではないため、拒絶反応が出て、いずれも失敗に終わり、その度に拒絶反応によって発生した電磁波で傷付き、右腕の義手も何度か破壊され、修復するということを繰り返した。

 しかし、オリジナルのゾイド因子が無ければ、ほとんどのゾイドは自分に従わず、拒絶してしまうため、ボーマン博士とクリスタの目を盗み、別の研究所にピーターを連れ、彼を巻き込んだ実験まで行った。

 父の手伝いをするということしか聞かれていないピーターは突然、エレファンダーと繋がっている幾つかのコードを自身の右腕に接続され、ピーターはそのランドの行動に疑問を感じ、少し怖がった。

 

 「ね、ねぇ……お父さん、これは一体……何……?」

 

 「心配ない。私の研究にお前の力が必要なだけだ。お前の力をな!」

 

 不気味な笑みを浮かべたランドがスイッチを入れた瞬間、電撃がほとばしり、ピーターはこれ以上にない苦痛を受け、思いっきり悲鳴を上げた。

 

 「ぐっ、グワァ~!! グギャ~!!」

 

 「ハハハ、いいぞ! オリジナルの力があれば、私は最強のゾイドを扱える存在に出来る。」

 

 「お、お父さん……助け……て……」

 

 悲鳴を上げるピーターの声に一切耳を傾けず、ランドはそのまま実験を続け、やがてピーターの身体の至るところから、流血した。

 しかし、ランドの不振な行動に気付いたクリスタはボーマン博士を連れ、ランドの研究所に入り、遂にその場を目撃してしまう。

 

 「あ……あなた……? 一体、何を?」

 

 それを見て信じられないような表情をするクリスタにランドも驚愕した。

 

 「く、クリスタ……何故、お前が!」

 

 「ランド、これは一体どういうことだ!?」

 

 その時、クリスタは電撃で苦しみ、目や鼻、あちこちにも血を流しているピーターに気付き、すかさず、装置のスイッチを切った。ピーターは何とか助かったものの、苦痛で気絶し、かなり重傷になっていた。クリスタはピーターを抱き抱えた。

 

 「ランド、貴様! 自分が何をやっているのか、わかっているのか!?」

 

 「何を言っている? ボーマン博士。ピーターはその身にゾイド因子を持った子なのだぞ。 これはゾイドの研究にうってつけの逸材ではないか!」

 

 「貴様、自分の息子を……」

 

 「だからだよ! 私の子だから、私の自由にやっていいのさ! それにピーターの力を使えば、今度こそ、最強のゾイドが完成し、私だけが扱える唯一無二のゾイドが出来る。こんな素晴らしいことはない。ハハハハハ!

 さあ、クリスタ、ピーターを渡せ。私の妻なら、私の手伝いをしろ。」

 

 ランドの狂気的な目付きを見て、怖がるクリスタはピーターをそのまま抱き抱え、下がっていった。

 

 「クリスタ、最早、こいつはどうしようもない。直ぐにサリーを連れて逃げろ。」

 

 「で、でも……」

 

 「お前の大事な子供をこれ以上、奴の好き勝手にさせるわけにはいかない。ましてや、サリーにまでこんな光景は見せたくはない。だから、サリーにはこのことは話すな。」

 

 「わかりました!」

 

 「させるか!」

 

 その時、ランドはスイッチを押し、研究所中に煙幕がはられ、2人は目をくらわませるが、クリスタが気づくと、既にピーターの姿はなく、ランドの姿も消していた。

 

 「遅かったか!」

 

 

 ランドはピーターを抱き抱え、車に乗り込み、そのまま研究所から脱出した。

 

 「私の研究は誰にも邪魔させない。私だけがゾイドを扱えるゾイドの世界を作るために、こいつの力が何としても必要なのだ。」

 

 

 

 

 

 その後、逃亡生活を続けたランドはボーマン博士の手の届かないところに住み、そこで再びピーターを実験台にした研究を再開したが、その時にした実験では、どういうわけか、スイッチを入れた瞬間、突然、ピーターの目が赤くなり、丸で野生生物のように暴走し、周囲にあったものを手当たり次第に破壊していった。

 

 「グギャオ~!!」

 

 「何だ、これは一体、どういうことだ?」

 

 「ギャオォ~!!」

 

 「ちっ、所詮は只の道具が!」

 

 ランドはその場にあった電磁警棒を手にし、ピーターに当てた。

 

 「ギャアァ~!!」

 

 「くそっ、この出来損ないが、私の言うことを聞け!」

 

 ランドはその後も電磁警棒で暴走するピーターを虐待するが、隙をついたピーターは直ぐ様、電磁警棒を奪い、それを捨て、右腕でランドの頭を掴み、そのまま握りつぶそうとした。

 

 「ぐっ、貴様~!」

 

 「グウゥ~!!」

 

 その時、ランドは直ぐ隣にコードがあることに気付き、直ぐ様コードを抜き取り、ピーターは気絶してそのまま倒れた。

 

 「ハァッ、ハァッ、ハァッ、今回も失敗か……」

 

 その後もランドは何度も実験を繰り返し、その度にピーターを虐待するが、最早、ピーターの力を制御することが出来ないことを知ったランドは、惑星Ziの寿命が尽きる日に密かに共和国の移民船に乗り込んで、あることを計画した。それはピーターに脱出ポッドに乗せ、宇宙空間に棄てるということだった。

 移民船に乗り込んだ際に予め、ランドは脱出ポッドに自爆装置を取り付け、移民船が地球に到着する直前に、ピーターをその脱出ポッドに乗せた。

 

 「ね、ねぇ……お父さん。これは何? 僕はどうなるの?」

 

 「お前の力は私の研究に十分役に立てると思った。だが、お前の力は必要なくなった。お前はもう私の子ではなくなった。」

 

 「え! お父さん、それ、どういうこと!?」

 

 ランドはポッドのスイッチを押し、脱出ポッドは移民船から発射され、宇宙空間に放り出された。

 

 「そんな……どうして、僕が……どうして……? う、ウワァ~!!」

 

 絶望したピーターが叫び声を上げたその時、突然、右腕が光だし、脱出ポッドが突然現れたワームホールに飲み込まれた。

 気付くとそこには、廃墟となっている街にたどり着き、どういうわけか、自爆装置が作動せず、ピーターは無事だった。ポッドから出たピーターは助かってよかったのか、あのまま死んでよかったのか、わからず、ただ、街を歩いていった。

 しかし、ポッドから出たピーターを影でじっと待ち構えている存在がいた。ジャミンガだった。

 ジャミンガは丸で待ち構えている虎のように一斉に襲いかかった。

 ピーターは襲いかかるジャミンガの群れに気付くも、絶望していたため、その場から動くことが出来なかった。しかし、その絶望は怒りに変わり、彼は怒りを糧に生身でジャミンガに立ち向かい、右腕でジャミンガの頭を殴って粉砕し、更にジャミンガの腕や頭を握り潰して、一体一体確実に倒していった。

 ピーターが残りのジャミンガを破壊しようと、右腕を掲げたその時、右腕を見たジャミンガは突然、敵対心を無くし、どういうわけか、ピーターに忠誠心を抱くようにひれ伏した。怒りの感情のみになった彼はそのことに疑問を持たず、再び街を歩き、ジャミンガたちはその護衛になるようにピーターについていき、一夜を過ごした時も彼を守るように囲っていた。

 

 やがて、日が開け、ひたすら歩き続けると、今度は親のいない少年が盗賊団に絡まれているのを見付けた。

 

 「おい、ガキ! 金渡せよ。俺たち、金無いんだからよ。」

 

 「で、出来ないよ! これは僕が一生懸命貯めた金なんだから。」

 

 「何だと! 何の力も持たないガキが偉そうなこと言っているんじゃねぇ! ここにはお前のような奴が生きていける場所じゃねぇんだからよ!」

 

 盗賊団に集団暴行を受ける少年を見たピーターはランドに実験台にされた時に受けた虐待のビジョンが脳内に映り、再び彼の感情が怒りで溢れ、その感情に反応したのか、突然、ジャミンガがその盗賊団に襲いかかり、1人残らず食い殺した。

 ジャミンガが少年にも襲いかかろうとしたその時、ピーターは手をかざし、ジャミンガはそれに従うように動きを止め、ピーターはその場を去って、ジャミンガたちもその後についていった。

 怒りの感情だけを持って、ただ、ひたすら自分が従えているジャミンガと共に強盗団や他のジャミンガを殺し、その食料を奪いながら生きてきたピーターは従えた全てのジャミンガを失い、砂漠のど真ん中を歩いていった。しかし、その砂漠は帝国軍と共和国軍の戦場になっていた。そのことを知らないセードはひたすら歩いていた。

 戦場となっていた砂漠では、青いスティレイザーに乗るコリンズ大佐ととその上司にして赤いスティレイザーに乗る戦友率いる帝国軍と緑のトリケラドゴスに乗るギャレット少将率いる共和国軍との戦闘になっていた。当初は共和国軍が優勢だったが、コリンズ大佐の上司の指揮で次第に帝国軍が優勢になり、共和国軍は後退せざるを得なくなった。

 やがて、自身の愛機を破壊された1人の共和国軍兵士がライダーだけ撃ち抜かれたキャノンブルに乗り込み、そのまま戦場から離脱しようとした。しかし、その先にはピーターがいて、共和国軍兵士はそれに気付かず、前に進み、キャノンブルはセードを踏み潰そうとした。ピーターはそれに気づくも、丸で何かを察したかのような表情をし、その場から逃げようとしなかった。

 その時、突然、何処からか砲撃の音がし、その砲撃がキャノンブルに直撃し、キャノンブルは一瞬で破壊された。砲撃したのは赤いスティレイザーで、そのスティレイザーはピーターに近づき、そのコクピットからある人物が現れた。 その人物は若かったが、紛れもなくプライドだった。

 

 「小僧、何ゆえ、この戦場に1人歩いている。ここが戦場と知らず、歩いていたのか? それと死にたくて、ここにいるのか?」

 

 「……」

 

 その問いにピーターは黙っていた。

 

 「他人に話すつもりはない……そういうことか?」

 

 「……」

 

 「ふ、まあ、いい。」

 

 

 「プライド准将、その子は?」

 

 「今さっき拾った子だ。こいつを帝国に連れていく。」

 

 「小僧、何も言わず、私についてこい。貴様のその憎しみを晴らす場所を与えてやろう。」

 

 

 

 

 

 プライド准将に連れられたピーターは帝国に入り、軍には所属せず、独立したプライド准将の私兵として、2年間、

特別な訓練を受けた。射撃、体術、ランニング、ゾイド乗りとしての操縦技術、どれを取っても10歳前後とは思えない進歩ぶりで、新米兵士どころか、ベテランの将校すら遥かに上回っていた。

 

 「素晴らしい、お前は正に才能の逸材だ。私が見込んだだけのことはあるな。」

 

 「そんなことは、俺にとってどうでもいい。 俺はただ、殺せるだけ、殺せば、それでいい。」

 

 「なるほど、戦場こそがお前の心の癒し場ということか……。安心しろ、今は帝国と共和国が領土拡張で躍起になっている、お前には腐るほどの戦場を提供してやる。」

 

 「なら、それでいい。」

 

 「そういえば、初めてお前と会った時に、お前の名前を聞かなかったな。」

 

 「俺には名前なんてない、捨てた。」

 

 「そうか、なら、代わりに私がつけてやろう。お前の名はそうだな……セードはどうだ?」

 

 「好きにしろ……」

 

 「私が摂政になり、大将に昇格して、帝国が軍備拡張を計ったが、未だにこの帝国は整備が不十分で、優秀な科学者が少ないため、戦力が乏しく、お前に与えるに相応しいゾイドがいないのが、残念だ。

 だが、安心しろ。実は5年前に共和国を裏切ったゾイド技術者が新型の強力なゾイドを開発していると言った、それが完成すれば、お前に相応しいゾイドになるだろう。」

 

 「共和国を裏切ったゾイド技術者?」

 

 「私の直属にして、お前と同じエリートであるザナドゥリアス少尉の父だ。」

 

 「あいつの……」

 

 

 

 

 

 

 そのゾイド技術者は5年前、共和国の元でゾイド復元を行い、ワイルドブラストをしたゾイドの力に耐えるための耐Bスーツの開発等を行い、帝国が益々共和国に遅れを取るようになった要因の人物でもあった。

 しかし、強力なゾイドを作ることに余りに固辞過ぎて、共和国軍上層部と対立し、共和国から離脱し、帝国への入国を求めた。

 帝国議会は敵国である共和国のゾイド技術者を受け入れることに賛否両論が出たが、これ以上、共和国に遅れを取らないために帝国の軍事力拡大のために利用し、その管理は自分が行うというプライド摂政の意見にほとんどの議員は反対を出さず、そのゾイド技術者の入国を認め、プライド摂政直属の技術者として迎え入れることが決定された。

 やがて、プライド摂政の別荘で、セードはプライド摂政と共にそのゾイド技術者と対面することになったが、目の前に現れたのは老けてはいるが、それは紛れもないフランク・ランドだった。セードは拳を握り締め、前に出ようとするが、プライド摂政はそれを静止し、ランドに話し掛けた。

 

 「ようこそ、ランド博士、私は帝国摂政コークス・プライド大将だ。」

 

 「摂政殿、この度の入国感謝します。」

 

 「帝国の軍備拡張のために、是非、君の力を借りたい。」

 

 「お任せを……」

 

 プライド摂政と対面しているランドはセードのことは一切気付かず、そればかりか、眼中にすらない状態だった。何故なら、ランドは自爆装置付きの脱出ポッドに乗せたこともあって、ピーターは死んだと思っているため、セードがピーターだと気付くことはなかったのだった。自分に気付かないランドに更に怒りを倍増していく中、セードはランドの両横にいる人物にも気付いた。それはセードと同い年で14歳のユウトと18歳のメルビルだった。

 

 「ああ、そうそう、こいつは私の私兵のセードだ。ユウト、君と同い年でほぼ同じ実力を持つエリートだ。仲良くしてやってくれ。」

 

 「はい、よろしく…」

 

  ユウトが握手を交わろうとすると、セードはその手を払った。

 

 「この俺に気安く触るな! 貴様、随分他の連中に歓迎されているようだが、間違えるなよ。

 

 この帝国で最強なのはこの俺だからな。所詮貴様はどう足掻いてもNO2でしかならないのだからな!」

 

 「そうか……でも、いつまでもお前が上だと思うなよ。いずれその上に僕が立つんだから。」

 

 「ふん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランドとの面会を終えた後、セードは倉庫の中で佇まい、そこにプライド摂政が訪れた。

 

 「どうした?」

 

 「別に……」

 

 「奴と何か因縁があったようだが、どんな因縁だ?」

 

 「お前には関係ないだろ。」

 

 「なるほど、復讐か。 だが、今はその時ではない。それより、お前に相応しいゾイドが完成した。付いてこい。」

 

 プライド摂政に連れられて、セードはあるところまで行った。そこにあったのは特別な改造を施されたファングタイガーだった。

 

 「こいつは……」

 

 「ファングタイガー改。」

 

 「ファングタイガー改?」

 

 「ランドが特に強力な個体であるファングタイガーを改造させた我が帝国最強のゾイドだ。これをお前にやろうと思う。」

 

 「こいつを?」

 

 「もう一体はいるが、あれはザナドゥリアス少尉に与えるつもりだ。お前には餓えた虎が相応しいからな。 こいつでお前の鬱憤を晴らしてやれ。」

 

 「……」

 

 「今は復讐するときではない。確かにあれは人間としては愚かな存在だが、まだ利用価値はある。その時を待つのだ。」

 

 プライド摂政にそう言われたセードはファングタイガー改に乗り、共和国軍制圧に行った。

 

 「俺の復讐は誰に向ければいい? 俺をこんな目に遭わせた奴だけ向ければいいのか? いや、俺が憎むもの……それは……」

 

 その後、セードはファングタイガー改を自身のゾイドとして乗り、単機で独断で共和国軍や軍基地を破壊していく様子から、帝国軍将校は彼をバーサーカーと呼び、軍将校から遠ざけられ、逆に従順なユウトがハンターウルフ改で功績を残していくと、帝国軍将校からエリートとして評価され、いつしか、彼の怒りの矛先はランドだけでなく、ユウトや帝国軍将校にも向いていった。

 そして、2年が経ち、エリートであるユウトと張り合ったビーストライガーを駆るレオの噂を知り、彼と戦うようになった後、かつてランドが復元に失敗し、彼の人生を転換させるきっかけとなったジェノスピノの化石が発見され、そのライダーに指名され、共和国殲滅に向かった。

 だが、モザイク戦で瀕死になっていたはずのビーストライガーがライジングライガーに進化し、更に共和国最強のパキケドスBRを相手にしたスチールエリア戦で敗北し、彼とジェノスピノが流れ着いた場所は禁制地区の旧ニューヨークだった。

 そして霧からジャミンガに騎乗したラプトール、ラプトリア、ガブリゲーター、ドライパンサーの頭部を模した謎の兵士が領域に入らせまいと、ジェノスピノの周囲を取り囲んだ。

 

 「何のつもりだ? まさか、この俺を侵入者扱いか? 残念だが、俺にはそんなもん関係ない! ましてや、そのザコのジャミンガで俺を止められるとでも思ったのか!?」

 

 ジェノスピノがロングキャノンを放とうとしたその時、謎の兵士たちが道を開け、霧の中からある人物が現れた。その人物はドクターマイルスだった。

 

 「ん? 何だ。貴様は!」

 

 「セード・ランドだな。 我々は貴様を待っていた。」

 

 「何!? 貴様、誰だ?」

 

 「私はゼロメタル帝国の科学顧問、ドクターマイルス。」

 

 「ドクターマイルス?」

 

 「話はプライドから聞いているよ。セード・ランド。」

 

 「その名前は止めろ! 今の俺にランドなどという名前はない!」

 

 「そうだったな。これは失礼した。 実は君を我々ゼロメタル帝国に招待せよと、我が盟友プライドの命令でな。」

 

 「どういうことだ?」

 

 ドクターマイルスの言葉に疑問を感じ、その真相を探るためにセードは敢えてその誘いに乗り、更に霧からゼロファントスも現れ、傷付いたジェノスピノを運搬してある場所まで向かっていった。 

 そこには帝国にはない、より未来的で、全て機械で構成されている都市だった。そこには市民と呼べる人間は1人もいず、全て兵士しかいなかった。

 しかし、セードはその都市に何の疑問を持たず、ドクターマイルスの言葉の真相を探ることだけ考え、彼に付いていった。着いた場所は旧ワシントンにある研究所で、そこで、スパイデスの仮面をした科学者がゼロファントスの復元や改造等の作業を行っていた。

 

 「君のジェノスピノはここで修復する。ここの整備なら、ものの数週間で修復が完了するだろう。」

 

 「それより、聞かせろ。貴様は一体何者だ? プライドとはどういう関係だ?」

 

 「私と彼は同士だ。そして我々ゼロメタル帝国は偉大なる神に仕え、真のゼネバスの系統を継ぐ神聖な古代ゾイド人の帝国だ。」

 

 「古代ゾイド人?」

 

 「プライドから聞いてなかったのか? 我々は惑星Ziで最も進化した人類である古代ゾイド人の生き残りの末裔だ。ゼネバス帝国は本来、我々が気付いた最初の国家だった。

 だが、我々の文明が滅びた後、惑星Ziに移住し、ゾイド人と名乗った下等な人間共が我々の星を脅かした。その後は我々の同士が我々の文明を滅ぼした神を復活させ、下等な人間の殲滅を謀ったが、失敗に終わった。

 しかし、我々は世代を越え、再び惑星Ziを我々の支配に取り戻し、崇高なる神の使徒として星を導こうとした。

 だが、下等な人間共のおかげで、惑星Ziは滅びの道を辿り、代わりに地球を第二の惑星Ziとして支配しようとしたが、その星も下等な人間共によって滅びの道に向かい、我々を差し置いて、首都にネオゼネバスなどと名付け、いかにもゼネバスの後継とする不届きな帝国まで現れた。

 そんな奴等に神罰を与えるために、我々は、我らの崇高なる神を復活させ、この地球を一度リセットし、我らの理想とする新世界を作ろうとしているのだ。」

 

 「ふ、神など、そんな曖昧なものを信じるとは随分熱心なオカルト信者だな。」

 

 「いや、神は実在する。何故なら、その神は我々の先祖が造り出し、我々の文明を滅ぼし、腐敗した人類に新たな創造へと導いた存在だからな。

 そして、その神の力そのものであるD因子をゼロメタル帝国の皇位継承者であるザナドゥリアス殿下が持っている。」

 

 「奴が!」

 

 「そのためには、お前の力も必要なのだ。お前もこんな汚れた世界に住みたいとは思わないだろう?」

 

 その言葉にまだ疑問はあったものの、ドクターマイルスらゼロメタル帝国の地球リセット計画に興味を持ち、それに協力すれば、ランドへの復讐と自分を除け者にした帝国を殲滅させることができると考えたからだった。

 ドクターマイルスとゼロメタル帝国の技術者によって修復されたジェノスピノと共にセードは帝国、共和国の合同軍が真帝国を攻撃している隙にネオゼネバスを襲撃し、プライドと共に真帝国に従うふりをしながら、復讐の機会をうかがっていた。

 やがて、オメガレックスの共和国侵攻を機にセードはプライドと共に真帝国に反逆し、ネオゼネバスを壊滅、遂にランドへの復讐を果たし、ゼロメタル帝国の名を世界中に知れ渡らせた。

 そして、ゼロメタル帝国の傭兵として、地球リセット計画を押し進めようとするが、ランドへの復讐を果たした彼にはまだ煮え切らない思いがあった。それは何故、ユウトがゼロメタル帝国の崇拝する神の力を持っているかと言うことだった。彼はユウトが自分より強い力を持っていることに納得しなかった。

 帝国にいたとき、ユウトは自分を除け者にするようになった人物でもあったからだ。 ゼロメタル帝国による帝国、共和国の侵攻が始まった時に彼はドクターマイルスに更なる強化を求め、それに応じたドクターマイルスは彼の右腕を手術し、ジェノスピノとセードの右腕をコードで接続し、ジェノスピノのゾイド因子をセードの右腕に、セードの右腕のゾイド因子をジェノスピノに注入させることで、ゾイドとの完全な一体化を果たしたことで、彼とジェノスピノはユウトとオメガレックス以上の力を得るようになった。

 その後、オメガレックスの帝国侵攻前に両国の基地を襲撃するよう、プライドに命じられるが、彼は覚醒したD因子をユウトから奪取する機会をうかがっていたのだ。そしてその機会はネオゼネバス襲撃の時に訪れ、代償は大きいものの、遂にその力まで手中に収めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペンダントの超小型ゾイドコアが見せたビジョンを全て見たセードは、

 

 「俺は奴を殺し、遂に復讐を果たした。だが、俺の憎しみはそれだけでは晴れない。 人とゾイドの共存する世界を実現するといいながら、自分が神にでもなったかのようにリジェネレーションキューブを生み出し、奴という人間を生み出した張本人であるボーマン、そして、俺を認めなかった人類全てを滅ぼさねば、この憎しみは晴れない。

 新たな世界の創造など、俺にとってはどうだっていい。全ての力を滅ぼす最強の力を手にいれなければ意味がない。」

 

 セードはペンダントから取り出した超小型のゾイドコアを取り出した時、ペンダントの中からクローバーが落ちた。

 

 「ん? これは……ふん、こんなところにしまっていたのか。だが、こんなものがあったって、今の俺には何の役にも立たない。」

 

 クローバーを捨てたセードはそのままクローバーを踏み潰し、ペンダントから取り出した超小型ゾイドコアを飲み込んだその時、右腕が以前より更に紫色の光を反射させ、セードは突然苦しみだした。

 

 「ウオォ~!!」

 

 飲み込んだペンダントの中の小さなゾイドコアとユウトの遺伝子を同時に取り込んだことで、セードの肉体が以前暴走したユウトのように変貌し、同時にその脳内に膨大な数の記憶も流れ込み、セードは今までにない苦痛を受け、叫び声を上げた。

 

 「グッ、グワァ~!! この……力は……だが、俺は、この力を使ってみせる。俺の復讐と……この俺の存在意義を知るために! グギャアァ~!!」

 

 セードが取り込んだD因子の光が衝撃波のように走り、その光が南極の深い洞窟にまで届き、そこには巨大な怪獣のようなものが眠り、そのコアには人の形をしていたが、人間でないものの存在が胸部のコアと一体化し、その目が目覚めるかのように紫色に光った。

 

 第二部オメガレックス編終了/第三部ゼログライジス編に続く。




 次回予告

 ネオゼネバスの攻防戦で、ユウトとオメガレックスが合同軍の手に落ちたことになり、暫く、ゼロメタル帝国の侵攻は起きなかったが、それでも勢力が衰えているわけではなかった。
 それから数週間が経ち、帝国では捕虜になったユウトの処分が検討される中、両国の基地に巨大なジャミンガと謎のスパイデスに襲撃され、ゾイドと人々が喰われる事件が起こった。レオたちはその事件の真相を追うが、中にはそれとは別の不可解な事件も起き、そこで、レオたちが見たのは初めて見る赤いライオン種のゾイドだった。

 次回「新たな予兆」走り抜け、ライガー!!

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