ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたプライド元摂政がゼロメタル帝国を立ち上げ、その皇位継承者となったユウトがオメガレックスで帝国を襲撃したが、それも破り、ゼロメタル帝国の勢力を大きく落とした。だが、それは同時に新たな絶望の始まりだった。


第42話「新たな予兆」

 セードとジェノスピノが立ち寄ったとされるキューバにキルサイスによるゼロメタル帝国の監視部隊が調査に向かい、その指揮をしているグリードが見付けたジェノスピノの足跡から中身が空のペンダントと荷電粒子吸入ファンをあった。

 

 「ちっ、やられたか。」

 

 

 

 

 

 ゼロメタル帝国の本拠地である旧ワシントンではリンカーン記念館を改造した宮殿が完成し、その玉座を見ていたプライドの元にドクターマイルスが立ち寄り、

 

 「宮殿は完成したが、我がゼロメタル帝国の帝都の名前はまだ決まっていないのか?」

 

 「それは皇帝陛下を迎えてからだ。」

 

 「だが、しかし、今は皇帝不在の状態となっている今では、お前がゼロメタル帝国のトップだ。なら、しばらくは貴様がその玉座に座ればいいのでは?」

 

 「私はあくまで、皇帝陛下のためにつき、皇帝陛下の元で、この世界を支配するのが私の目的だ。だから、私は常にNo2でなければならない。」

 

 「意外とそこだけは真面目だな。」

 

 「それより、ペンダントが見付かったそうだが……」

 

 「残念だが、見付かったのは、空のペンダントと荷電粒子吸入ファンのみで、ジェノスピノの姿は見付からなかった。おそらく……」

 

 「裏切ったのか。」

 

 「だとすれば、益々、我々の計画に遅れが出ることになるぞ。」

 

 「それぐらいは想定内だ。ましてや、奴が最後まで我々につくとは最初から思っていない。」

 

 「だが、奴を敵に回すのはかなり厄介では?」

 

 「ふ、奴の矛先はしばらくは、我々には向かんよ。どちらに向くかは大体は検討はつく。このまま泳がせて、せいぜい我等の神復活のために利用させてもらえばいいのだからな。」

 

 「しかし、そう悠長している暇はないぞ。」

 

 「わかっている、作戦を次の段階に移行する。ラスとあの3人に命じろ。」

 

 「了解。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロメタル帝国皇位継承者ユウト・ザナドゥリアスとオメガレックスが帝国を襲撃したネオゼネバスの攻防戦から数週間が経った。

 ゼロメタル帝国皇位継承者ユウト・ザナドゥリアスとゼロメタル帝国の最強戦力であるオメガレックスが敗れ、合同軍の手に落ちたことにより、ゼロメタル帝国に打撃を与えたのか、否かは不明だが、暫くゼロメタル帝国の侵攻が起きなかったため、両国の上層部と国民は安心し、ゼロメタル帝国との戦争で荒れ果てたそれぞれの首都の復興に全力を注いでいた。

 しかし、一段落ついたとはいえ、帝国には捕虜になっていれユウトの処分をどうするべきかの課題があった。真帝国の戦力となり、更にはプライドによるゼロメタル帝国の皇位継承者として、両国を壊滅に陥れたこともあって、ハワード宰相を初めとする帝国議員は死刑を求めたが、皇帝フィオナと皇族と認められたメルビルの反対により、その処分は未だ決定されなかった。

 そして、もう一方、共和国の第二の首都ニューホープでは、セードの言葉が気になったボーマン博士とクリスタはギレル少佐からセードの情報を聞き、その写真も手渡された。

 

 「やはり……クリスタ、お前もそう思うだろう?」

 

 「ええ、間違いないわ。容姿は変わっているけど、間違いない……この子は私の子、ピーターだわ!」

 

 「まさか、ジェノスピノのライダーであるあの戦闘狂が博士のお孫さんだとは……」

 

 「ギレル少佐、セードはいつから帝国に?」

 

 「コリンズ中将の話によると、9年前にあった共和国軍との戦闘でまだ准将だったプライドに拾われたと聞きました。」

 

 「となると、今は16歳ということか……まだ14歳のサリーより年上ということは私たちより先に地球に着いたということだな。」

 

 「そして、その後、プライドに拾われて、帝国の元で育ったのですね……」

 

 「全く、ランドめ! 何てことをしてくれた。」

 

 「御父様、サリーにはどう説明します?」

 

 「今、このことをサリーに伝えたら、相当なショックを受けるだろう。いずれ、バレるのは時間の問題だが……今はそうっとしておこう。」

 

 「では、サリー本人には、このことは内密にすると……?」

 

 「そのつもりだ。それに再びジェノスピノがゼロメタル帝国の元に戻って更に強化される危険性がある。何としても、それを食い止めるために、私たちは引き続き合同軍に全面協力をする。」

 

 「わかりました。」

 

 「ところで、ギレル少佐。」

 

 「何だね? ツガミ大尉。」

 

 「捕虜になっているザナドゥリアスと鹵獲されているオメガレックスはどうなっているのですか?」

 

 「あの男は真帝国に加わっただけでなく、我が帝国の転覆を謀った元摂政プライドのゼロメタル帝国の皇位継承者でもあったことから、軍事裁判で有罪が決まり、ハワード宰相を初めとする帝国議員は死刑を求めているが、フィオナ皇帝陛下と皇族となったメルビル殿下の反対があって、未だ処遇は決まっていない状態で、昏睡状態もあって、現在は帝国の牢獄で療養されている。」

 

 「確か、あの男はセード同様に耐Bスーツ無しでも、ゾイドの搭乗が可能な人物ですよね?」

 

 「そうだが、何が言いたい?」

 

 「耐Bスーツ無しで、ゾイドの搭乗が可能な上にあのオメガレックスを何のリスクも無しに操ることができ、更にあの謎の暴走ですよ。 どう考えても、ただの人間とは思えません。

 だとするなら、あの男にはレオやセードと似た特徴があるか、またはそれとは別物か……」

 

 「しかし、医者によると、身体のどこにも金属化されているような箇所はなく、体質や身体の構造も通常の人間と大差ないと報告があった。」

 

 「では、オメガレックスを扱える腕とあの暴走は、どう説明するのですか?」

 

 「それは……」

 

 「とにかく、処分がまだ決まっていないのなら、その間にあの男について、念入りに調査すべきだと思っています。」

 

 「ツガミ大尉、何故、そこまで、彼のことを?」

 

 「考えてみてください。あの真帝国ですら、傀儡とはいえ、メルビル殿下を直ぐ様、皇帝にしましたが、一連の行動を起こしたプライドはザナドゥリアスをゼロメタルの皇位継承者であると言いながら、何故、直ぐ、皇帝にしなかったのか?」

 

 「確かに……」

 

 「これは、私の勘ですが、あの男は皇位継承者であって、皇帝の器ではなく、真の皇帝をたてるための影武者ではないかと考えます。」

 

 「まさか、そんなことが!」

 

 「あくまで、推測ですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボーマン博士たちのいる研究所から離れたニューホープにある軍の倉庫で、サリーはハンターウルフ改の前に立っていた。 

 

 「ありがとう、あなたのおかげよ。」

 

 「サリー……」

 

 「レオ! どうしてここに?」

 

 「いや……ちょっと心配だから、見に来たんだ。 だって、サリー。あの時、耐Bスーツも着ずにそのままハンターウルフに乗ったんでしょ? 大丈夫だったの……?」

 

 「ううん、そんなことはなかった。何故か、わからないけど、私の思いがハンターウルフに届いていて、私の意思とハンターウルフの意思が一緒になってたから、平気だったわ。」

 

 「そ……そう、良かった……」

 

 「どうしたの? どうして、レオがそんなに慌てるの?」

 

 「あ……いや、ほら、ゾイドに乗るときは耐Bスーツがないと、その衝撃に耐えられなくなるでしょ? 俺は腕が金属になっているから、平気だけど、サリーにはそれがないから、その……」

 

 「もしかして、心配してくれたの?」

 

 「う……うん。」

 

 「ありがとう、レオ。」

 

 「あ……ああ。」

 

 

 

 レオとサリーがやり取りしているのをバズとアイセルが影で見詰め、

 

 「全く、レオの奴、せっかちだな。 もっとはっきり言えよ。」

 

 「影で見ているあなたの言う台詞?」

 

 「そういう、アイセルだって見てるじゃないか?」

 

 「わ、私は……別に……2人が元気か見に来ただけよ!」

 

 「へぇ~?」

 

 「よう! 何やってんだ?」

 

 「ば、バルディーの旦那! それに元帝国の姉さんも!」

 

 「マリアナよ。覚えなさい。」

 

 「何やってんの? 混ざりたいなら、混ざればいいじゃないか?」

 

 「い、いや、2人は、その……」

 

 「バルディー、あんまりからかわないの。」

 

 「そういえば、あのもう一体のライジングライガーの旦那は何処へ?」

 

 「フィオナ皇帝陛下に迎え入れて、今、ネオゼネバスにいるわ。 何でも、フィオナ陛下が帝国を助けた御礼を言いたいとか、何とか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオヘリック同様に、ゼロメタル帝国の侵攻が修まっている間、帝国も首都のネオゼネバスの復興が進められ、ある程度、修復された宮殿の庭で、フィオナはジーンとメルビルと共にゼオルをもてなしていた。

 

 「まあ、紅茶の嗜みお上手ですね。今度、教えて貰えませんか?」

 

 「いえ、結構。」

 

 「そう……残念です。」

 

 「全く、一国を担う皇帝が随分と呑気だな。それとも、ただの演技なのか?」

 

 「貴様! 皇帝陛下に向かってなんたる無礼を!」

 

 「いいのです、バスキア中尉。」

 

 「陛下……」

 

 「お礼が言いたいなら、お礼を言うだけで十分のはずだ。なのにわざわざ、もてなすとは……そろそろ、本題に入ってもらおうか?」

 

 「失礼しました。実はあなたを迎え入れたのは、私の御姉様があなたに用があると。」

 

 「ハンナ・メルビルです。」

 

 「あんた…確か、オメガレックスのライダーを助けろっと言ってた……」

 

 「あなた、記憶喪失なんでしょ? よろしければ、そのことを話してくれませんか?」

 

 「何故、俺に?」

 

 「実は、私の大事な人であるユウトも同じなんです。あの子も私と同じ孤児院に入れられるまでの記憶を失っていて、親が誰なのかもわからないのです。

 もしかしたら、同じ境遇のあなたの記憶にユウトの記憶も入っているのではないかと思って!」

 

 「俺の記憶にあいつがいるとは思えないが……」

 

 「関係なくても、あなたの記憶を取り戻せば、ユウトの記憶を取り戻す方法が見つかるかもしれません。お願い! ユウトを助けるために協力してください。」 

 

 「俺にとっちゃ、あいつがどうなろうが、知ったことではないが、俺の記憶を取り戻す手助けをしてくれるというなら、無視出来ないな。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 「といっても、俺の記憶はかなり曖昧だから、かなり手間はかかるかもしれないぞ。」

 

 「あなたはいつから、記憶を無くしてたんですか?」

 

 「14年前、まだ5歳だった俺が禁制地区の森に1人取り残されていた時からだった。あの時、お前らがジャミンガっていう、ゾンビみたいな変なゾイドに追われて、アーサーに助けられ、その後、バルディーやマリと一緒に行動してそれっきりだ。

 最初はただの捨て子かと思ったが、それなら、赤ん坊の時に捨てるはずだし、その時に記憶を失うなんて、不自然だからな。」

 

 「その時、近くに何か無かったのですか?」

 

 「さあな、あの時は襲われてパニックになってたから、特に覚えて……

 いや、待てよ……確か、あの時、機械のようなものがあった気が………そうだ! 思い出した。確か、俺が気絶していて、その場に倒れていたものがあった。あれは……脱出ポッドだった!」

 

 「脱出ポッド!?」

 

 「もしかすると、あれに関係しているかもしれない。」

 

 「なら、そこに行きましょう。」

 

 「でも、御姉様。その場所は?」

 

 「心配ない、あの時、アーサーもそこにいた。アーサーなら、道案内はできるはずだ。」

 

 「では、すぐにその場に向かいましょう。」

 

 「行くのはいいが、彼処は禁制地区、即ち、ゼロメタル帝国の領内だ。敵陣に入ることになるが、構わないか?」

 

 「そのことなら、心配ありません。バスキア中尉がいますし、スピーゲル中佐もいますから。」

 

 「ふ、その用意周到ぶりは、流石は皇帝陛下と誉めるべきだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 その数時間後、エリア53の帝国軍基地にて、

 

 「オメガレックスによる首都襲撃から数週間が経ち、暫くの間、ゼロメタル帝国による侵攻が起きなくなって、ここも静かになったな。」

 

 「そりゃ、トップとオメガレックスが我が帝国軍の手に落ちたから、ゼロメタルの連中も我が帝国軍に腰を抜かしたんだよ!」

 

 「それも、そうだな。」

 

 「下らんお喋りはするな。まだ、ゼロメタルが滅んだわけではない。 くれぐれも、油断するな!」

 

 「すみません、隊長。」

 

 「でも、隊長心配いりませんよ。オメガレックスは既にこちらのもの、それを失ったゼロメタルなど、恐るるに足りません。」

 

 

 

 その時、基地全体が霧に覆われ、それを見た隊長は直ぐ様出撃命令を下し、基地の帝国ゾイドが一斉に迎え撃つ体制に入った。

 その時、突然、霧の中からクモの糸が放たれ、キャノンブル、バズートルの足を次々と封じ込めた。

 

 「な、何だ? これは!」

 

 「クモの糸、ということはスパイデスか。全軍、マシンブラストを発動し、霧に向かって砲撃せよ!」

 

 しかし、マシンブラスト発動を待たずして、クモの糸はキャノンブルの9連キャノン砲やバズートルの背中までクモの糸で覆い、帝国ゾイドは一斉に身動きを封じられた。

 その時、ズシンズシンと巨大な足音がし、霧の中が一斉に赤い目で覆い尽くされた。

 そして、その霧から現れたのはゼロファントスではなく、全長12mある通常より巨大なジャミンガだった。

 

 「な、何だ? あれは!」

 

 霧から現れた巨大ジャミンガは丸でハイエナの如く一斉に襲いかかり、キャノンブルやバズートルを次々とコクピットごと食い破り、そのまま補食していき、司令室の通信には巨大ジャミンガに襲われる兵士の断末魔が一斉に流れ、その叫びが司令室全体に響き渡った。

 

 「一体、何が起こったんですか? た、隊長……」

 

 「とにかく、基地にいる全ゾイドを出せ! 敵を殲滅しろ。」

 

 「隊長!」

 

 その時、司令室の前にスパイデスのようなものが張り付き、それに乗っていた兵士が左腕に装備されているガトリングを向けた。

 

 「う、ウワァ~!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、その襲撃は帝国、共和国問わず、どの基地にも広がり、その報告はネオゼネバス、ネオヘリック、ニューホープにいるレオたちにも届いた。

 

 「そうか……」

 

 「おそらく、ゼロメタル帝国による襲撃で間違いないと推測されます。」

 

 「ところで、襲撃された基地にゼロファントスは確認されたか?」

 

 「いえ、襲撃された基地の映像によると、通常より巨大なジャミンガのみが確認され、襲撃を受けた基地には何者かに食い荒らされた兵士の遺体やゾイドの残骸があちこちに散らばり、更に基地内部には無数の巨大なクモの巣が張られ、ガトリングで射殺された兵士の遺体が確認されました。」

 

 「巨大なジャミンガだと!?」

 

 「はい、」

 

 「どう思う? ツガミ大尉。」

 

 「以前のネオゼネバス戦のディメパルサー、ディロフォスが例にあるように、おそらく、ゼロメタルの新戦力の可能性が高いと思われます。

 そして、両軍問わず、このように無差別に兵士とゾイドを虐殺するということは、皇位継承者であるザナドゥリアスとオメガレックスを鹵獲したことによる報復か、または警戒かと……」

 

 「となると、連中がザナドゥリアスを取り返しに現れるということも?」

 

 「可能性は十分にあるでしょう。プライドはいるが、皇帝と呼べるトップがいない今のゼロメタル帝国は頭のない蛇同然です。もしかしたら、人質をとるということも……」

 

 「いずれにしても、警戒は必要だな。」

 

 「ただ、もう一つ、不可解な事件がありまして……」

 

 「不可解な事件?」

 

 「ええ、実は先程巨大なジャミンガに襲撃された基地の報告があった後に、エリア88の帝国軍基地が襲われ、どうも、巨大なジャミンガに襲撃されたものとはかなり違うものなのです。」

 

 「一体、それは?」

 

 「これを御覧ください。襲われた基地にはガトリングで射殺された兵士の遺体が大量にあったが、その基地にいたゾイドが全く姿を消し、その残骸が一つもなかったそうです。」

 

 「ゾイドが一体残らず姿を消した?」

 

 「一応、残骸らしきものは確認されましたが、どれも剥がされた武装やバイザーだらけで、ゾイドが破壊された跡はありませんでした。」

 

 「ジャミンガに襲撃された基地は兵士、ゾイド問わず、無差別に虐殺していたのに、この基地は兵士だけ殺されたというのか!」

 

 「最初はゼロメタルの連中が趣向を変えたのかと思いましたが、映像にはディメパルサー、ディロフォスらしき姿はなく、これが映っていました。」

 

 ツガミ大尉が見せた映像には見たこともない赤いライオン型ゾイドが映り、それを見たディアス中佐は驚愕した。

 

 「こ、これは……」

 

 「レオのビーストライガー及びライジングライガー、ライガー・ジ・アーサー、ワイルドライガー共に合致しない未確認のライオン種ゾイドです。

 ゼロメタル帝国の新戦力の可能性もありますが、そもそも連中がこんなやり方をやるとは思えません。私の勘によると、このゾイドはおそらく……」

 

 「ゼロメタル帝国でもない第4勢力のものと?」

 

 「可能性は十分にあります。 もし、それが本当なら、このライガーを鹵獲し、ゼロメタル帝国に対抗するための戦力にすることが出来ます。」

 

 「だが、そのライガーの戦力は未知数、しかも、何処に現れるか……」

 

 「心配ありません。 調査によると、そのライガーが襲撃した基地は大半が帝国軍のもので、先程襲撃されたのがエリア88ですから、次に狙うとしたら……」

 

 「エリア89か。」

 

 「それと、相手がライガーですから、彼らの協力も必要です。」

 

 「そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディアス中佐とツガミ大尉はレオたちの元に向かい、その赤いライガーのことを伝え、協力を要請した。

 

 「赤いライオン種……」

 

 「この正体不明のライガーに対抗出来るのはレオ、そしてあのオメガレックスとジェノスピノを倒したワイルドライガーガンナーを駆るバルディーとエバンズ元帝国軍中尉しかいない。」

 

 「元帝国軍は止めてください。今の私は軍人ではありません。」

 

 「だが、まだ見ぬ新たなライガーに会えるなら、俄然やる気出たぞ!」

 

 「バルディー、遊びじゃないのよ。」

 

 ディアス中佐が見せた映像を見たボーマン博士は赤いライガーに既視感を感じた。

 

 「このライガー、何処かで……ディアス中佐、私も連れていってよろしいでしょうか?」

 

 「しかし、今回の作戦は戦闘は避けて通れませんが……」

 

 「構いません。そのライガーの正体を掴む調査の手伝いとして。」

 

 「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 レオたちはディアス中佐とツガミ大尉と共に帝国軍のエリア89の基地に向かい、ボーマン博士はクリスタやサリーと共に司令室で待機し、レオたちやディアス中佐、ツガミ大尉らはそれぞれ自分のゾイドに乗って、基地の入口に待機して、赤いライオン型ゾイドが現れるのを待った。

 

 「いや~、それにしても、今まで戦闘続きだった中で、新しいゾイドに会えるなんて思わなかったぜ。」

 

 「もう、ゾイドのこととなると、直ぐ調子に乗るんだから。」

 

 見たこともないゾイドの出現にソワソワしているのはバルディーだけではなかった。自分のライガーが紅蓮ワイルドライガーからビーストライガー、ライジングライガーと3段階の進化を遂げ、更にライジングライガーとよく似てはいるが、それとは全く違ったゼオルのアーサーが現れ、更にまた別のライガーがいることにレオも未知なる存在に対する恐怖とそれに会いたい好奇心が一緒になっていた。

 もちろん、恐怖心はゼロメタル帝国による侵攻とユウトとオメガレックスの謎の暴走、そしてジェノスピノの急激なパワーアップのこともあって、そのライガーも敵として現れる可能性もあったからだ。

 しかし、レオは考古学者である父のジョシュアのに教えられたこともあって、ゾイドに対する思いと好奇心は強く、ライガーが相棒になるまではライオン種ゾイドはワイルドライガーのみと思っていたが、それが新たに進化した突然変異種が次々と現れた経験もあり、その新たなゾイドに会いたいという気持ちもあった。

 

 「見たこともない赤いライガー……一体、どんな奴なんだ?」

 

 グウゥ~。

 

 「心配しないで、ライガー。別にそいつに乗り換えようなんて考えてないよ。ただ、どんな奴か、会いたいだけなんだ。

 まだ 戦いが終わってなく、地球の再生という重要なこともある中でこんなことを言うのは少し変だけど……お前と会ってから、今まで色んなゾイドに会えて、こんなに多くの仲間を得た。

 ゾイドがいたから、俺は今こうしている。お前を相棒に出来たのも、だから、俺はゾイドが好きなんだ。」

 

 グルル……

 

 その時、基地の周辺の森の中にいる謎の影が背中に装備しているガトリングをボーマン博士たちのいる基地の司令塔に向けた。

 それを右腕で感じ取ったレオとライガーは咄嗟に前に出て、謎の影のガトリングを全て受けた。狙いが外れた謎の影は直ぐ様、場所を変えようとした。

 

 「そこね! 逃がさないわよ。」

 

 それを逃すまいと、マリがワイルドライガーガンナーの対空速射砲で迎え撃つが、謎の影はそれすら、避け、森の中に入っていった。

 

 「何て、すばしっこい奴なの!」

 

 「俺に任せろ、俺のフォックスには更にパワーアップしたサーモグラヒィー装置がある。こいつはゾイドの耐熱に少しでも反応するようになっている。 こいつで見付けられないものはない。そこだ!」

 

 サーモグラヒィーで位置を把握したフォックスはガトリングを撃ち込むが、謎の影はそれをガトリングで迎撃した。

 

 「何!? フォックスのガトリングを迎撃しただと!」

 

 その後、謎の影の背中が突然オレンジ色に輝き、ジェットブースターが展開して一気にライガーたちの真上を跳び、基地の壁を登って、そのまま基地の中に入っていった。

 

 「不味い! 侵入した。 直ぐにゲートを開けろ!」

 

 司令塔の兵士が基地のゲートのロックを解除している間に基地に入った謎のライガーは基地内にいるキャノンブル、バズートル隊と相対した。キャノンブル、バズートル隊は謎のゾイドを包囲して一斉に砲撃するが、謎のゾイドはジェットブースターで加速して、その砲撃を回避し、前足の爪でキャノンブル、バズートルのバイザーを丁寧に破壊し、更にキャノンブルの背中の9連キャノン砲まで剥がしていき、剥がした9連キャノン砲を踏む潰していった。

 バイザーが破壊され、自我を取り戻したキャノンブルとバズートルはそれまでバイザーの制御に置かれたこともあって、ライダーの指令に従わずに基地から出ようとした個体、またはライダーの命令に従うか、否か迷っている個体が現れたりと、部隊が混乱していた。

 

 「おい、どうした! パイロットの指示通りに動け!」

 

 自我を取り戻したバズートルを尚もコクピットの制御下に置こうとする兵士、しかし、気付くと、目の前には謎のライガーが現れ、目を強く発光させ、殺気を持って前足で襲いかかれうとしていた。

 

 「う……ウワァ~!!」

 

 謎のゾイドが前足の爪でコクピットの中のライダーを殺そうとしたその時、

 

 「止めろ~!!」

 

 基地に入ったライガーが機関砲で謎のゾイドに撃ち込み、それを察知した謎のライガーはそれを瞬時に回避し、レオとライガーの前に立ちはだかった。目の前に現れた謎のライガーの全貌は全身が赤いカラーリングで、背中には巨大なジェットブースターが装備され、目は帝国ゾイドによく似た緑色のバイザーになっていた。

 

 「あれが……赤いライガー……」

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちが謎のライガーと遭遇しているのと同時にゼオルとフィオナたちはスピーゲル中佐率いる帝国独立部隊に護衛されながら、アーサーの道案内を頼りに禁制地区の森の中を進んでいった。

 道なりに進んでいく中、突然、アーサーが動きを止め、目の前に丸で隕石でも衝突したようなクレーターが2つあり、1つ目には脱出ポッドのようなものがあった。アーサーから降りたゼオルはその脱出ポッドの中を調べると、中には何もなかったようだが、ゼオルがふと気付くと、奥に古びた日記が置かれ、それを見ると、その日記にアーサー・ランスロットの名が記されていた。

 

 「アーサー……それに俺と同じ姓だと……」

 

 「何が見付かったんですか?」

 

 「見付けたも何も、どうやら、俺の記憶にかなり関わる重大なものを見付けちまったようだぜ。」

 

 その時、突然、周囲に霧が現れ、ゼオルやフィオナたち、帝国独立部隊を一瞬で囲んだ。

 

 「こ、これは!」

 

 「ちぃっ、敵が来たということは、やはり、こいつは重要な産物らしい。」

 

 スピーゲル中佐のドライパンサーら独立部隊のゾイドが攻撃の姿勢を取る中、霧から現れたのはゼロファントスではなく、デスレックス型とスパイデス型のジャミンガとその横にスパイデスの仮面を被り、科学者のような服装と左腕にガトリングを装備した兵士が現れた。

 

 「な、何だ、こいつらは?」

 

 To be continued




 次回予告

 帝国軍基地を襲撃した赤いライオン型ゾイドと戦うレオとライガーだが、その赤いライガーは突如、丸で戦いを望まないかのように戦闘を放棄して去ってしまう。
 そのライガーに既視感を覚えたボーマン博士は禁制地区にあった遺跡からその正体を割り出した。
 一方、ゼオルとメルビルたちは記憶を失った禁制地区の森で、謎のジャミンガに襲われるが、その時、何故かゼオルたちと対立していたはずのキラーク盗賊団に助けられる。果たしてその狙いとは?


 次回「古代遺跡の謎」走り抜け、ライガー!!

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