ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたプライド元摂政がゼロメタル帝国を立ち上げ、その皇位継承者となったユウトがオメガレックスで帝国を襲撃したが、それも破り、ゼロメタル帝国の勢力を大きく落とした。だが、それは同時に新たな絶望の始まりだった。


第44話「アドリア王国」

 ネオゼネバスにある軍最高司令部の倉庫、そこで、以前の攻防戦で敗れ、鹵獲されたオメガレックスが保管されていた。

 保管されたオメガレックスも捕虜になったユウト同様、どうするべきか議会で検討され、中にはユウトと共に処分すべきという声があったが、未だゼロメタル帝国の脅威が去っていないということもあり、帝国ゾイドとして再利用するべきだという者がハワード宰相も含め、圧倒的多数の議員が占めていたため、オメガレックスは首都に置かれている軍最高司令部の倉庫に保管され、修復されていた。

 しかし、オメガレックスが荷電粒子砲を撃つための役割を担う重要な部分である荷電粒子吸入ファン及びペンダントの力を応用し、荷電粒子砲の連射を可能にするジェネレーターパーツがジェノスピノによって剥がされ、帝国の技術力でもその荷電粒子吸入ファンを一から開発することは不可能のため、オメガレックスは荷電粒子砲を使えない状態になっていた。

 だが、それでも、オメガレックスはジェノスピノに劣らない近接戦闘能力を持っているため、オメガレックスを帝国の戦力にするべく、帝国の多くの兵士がテストパイロットとして挑んだが、いずれも失敗に終わり、中には重傷を負ったり、廃人寸前にまで追い込まれた者もいた。

 やがて、帝国軍は帝国軍きってのエースパイロットにしてフィオナ皇帝直属の将校であるクリストファー・ギレル少佐をテストパイロットに指名し、挑んだが、制御に手こずり、オメガレックスをまともに乗れる人物が不在の状態になっていた。

 一方、共和国第二の首都ニューホープでは、帝国軍基地を襲撃した赤いライガーの正体を探るべく、ボーマン博士がゼオルたちと共に調査した禁制地区ことゼロメタル帝国領にある古代遺跡を調査し、その結果、ゼロメタル帝国が古代文明で邪神と呼ばれる謎の強大なゾイドを復活させようとしていることを知ったレオたちはオメガレックスをその邪神に対抗するための戦力として起動させるためにネオゼネバスの軍最高司令部に入った。

 

 「ギレル少佐に会いたいのだが……」

 

 「実は、少佐は……」

 

 「構わん、ディアス中佐、何の用だ?」

 

 その時、レオたちの前に現れたギレル少佐は左腕が骨折し、目が出血していて、フラフラ状態になっていた。

 

 「ギレル少佐! 一体どうしたのだ!?」

 

 「ああ、オメガレックスにかなり手を焼いててな……どうやら、思った以上の暴れ馬のようだ。」

 

 事情を聞くと、ギレル少佐はオメガレックスのテストパイロットとして何度も挑んで、その時に失敗して受けた傷とのことだった。

 

 「そうか……オメガレックスはこちらの予想以上に扱いの難しいゾイドなのか。」

 

 「いや、ところがそうでもない。」

 

 「どういうことだ?」

 

 「何度も挑戦して、改良が施された耐Bスーツの着用で、乗るときのリスクがかなり抑えられたが、どうも耐Bスーツやバイザーの制御でも、オメガレックスはこちらの言うことを聞いてくれない。」

 

 「つまり、それは……」

 

 「どうやら、オメガレックスはライダーを選んでいるようで、俺を拒んでいるようだ。」

 

 「つまり、少佐はオメガレックスに乗れないということか?」

 

 「残念だが、そういうことと考えるしかないだろうな。ところで、一体何しにここへ?」

 

 「ギレル少佐、オメガレックスを俺に乗せてください!」

 

 「レオ……君がオメガレックスに乗るというのか?」

 

 「実はジェノスピノのライダーであるセードと似た身体をしている彼なら、もしかしたらと思ってその可能性に賭けて来たのだ。」

 

 「お願いします! ギレル少佐、オメガレックスの搭乗をやらせてください。」

 

 「とはいえ、あのセードという男は帝国軍にいたときはバーサーカーと呼ばれる程の兵士だった。いくら、身体が金属化しているという同じ条件でもオメガレックスを扱えるかどうか……」

 

 「やらせてください! こうしている間にもゼロメタル帝国は世界を滅ぼす邪神を復活させようとしているんです。それに対抗するためにはオメガレックスの力が必要不可欠なんです!」

 

 しばらく考えたギレル少佐はディアス中佐の方を向き、

 

 「わかった、許可する。だが、もし何かあったら、直ぐにオメガレックスとの接続を切り離す。いいな?」

 

 「はいっ!」

 

 「レオ……」

 

 オメガレックスに乗り込もうとするレオを心配そうに見詰めるサリーに気付いたレオは、

 

 「大丈夫だよ、サリー。俺は問題ない。」

 

 「でも、もし、レオに何かあったら……」

 

 「大丈夫。これまでサリー皆、ライガーと一緒に乗り越えてきた俺なら、心配ない。」

 

 「レオ……」

 

 サリーを初め、皆が息を飲む中、レオがオメガレックスのコクピットに入り、操縦悍を握った。その時、レオの左腕がオレンジ色に発光し、コクピットを通じてレオの身体に閃光の雷が迸った。

 

 「ぐっ、グアァ~!!」

 

 「レオ!」

 

 苦しむレオを見て思わず助けようとサリーが前に出るが、ボーマン博士はサリーの肩に手をそっと置き、丸でレオを信じているような表情でサリーを見た。ボーマン博士を見たサリーは立ち止まり、ただ、じっとレオを見詰めるしかなかった。

 

 「ぐっ、グウゥ~!」

 

 「ダレダ……オマエハ?」

 

 その時、レオの脳内にテレパシーのような声が聞こえた。

 

 「この声は……」

 

 「オマエハダレダ?」

 

 「オメガレックスの声なのか? ならば……」

 

 レオは左腕を右腕で掴み、左腕を通じてオメガレックスに話し掛けようとした。

 

 「俺はレオだ。君はオメガレックスなのか?」

 

 「レオ? アノトキ、オレトユウトヲコロソウトシタヤツカ……コンドハオレをノットルツモリカ?」

 

 「違う! ゼロメタル帝国と戦うために君の力が必要なだけだ。 それに俺はあの時、ユウトと君を殺すつもりはなかった。メルビルさんのために、ただ、君とユウトを助けようとしただけだったんだ!」

 

 「タスケル……? ジャア、ユウトノカラダヲノットリ、オレヲボウソウサセタチカラトハカンケイナイノカ?」

 

 「どういうことなんだい?」

 

 「イママデズットジメンのナカニネムラサレ、ダレモオレヲウケイレナカッタトキ、ユウトダケハオレヲウケイレ、ナカマニシテクレタ。

 デモ、ユウトのカラダにはオレ二ニテ、オレトハチガウジャアクナゾイドノチカラガヤドッテイテ、ソレデ、ユウトオカシクナッタ。オレヲウケイレタユウトヲアンナメニアワセタヤツユルサナイ。」

 

 「ユウトに宿る邪悪な力? もしかして君とユウトが暴走したのって……」

 

 「ソウダ、オレハソイツヲタオスタメニタタカウ。」

 

 「なら、俺たちに力を貸してくれないか? ゼロメタル帝国を倒すために君の力が必要なんだ。」

 

 「ソイツラガ、ユウトヲオカシクシタナラ、オレハキョウリョクスル。デモ、オレ二ノルノハ、オレヲユイイツ、ウケイレタユウトダケダ。アトカラキタオマエナンカ二オレ二ノルノハユルサナイ。

 ユウトモイッショニタタカウナラ、キョウリョクスル。デモ、ソウジャナイナラ、キョウリョクシナイ。」

 

 「うっ……」

 

 雷が収まり、レオは正気に戻った。

 

 「レオ!」

 

 「身体に問題はないか?」

 

 「大丈夫です。 でも、これではっきりわかりました。オメガレックスはユウトにしか認めてなくて、どうやら、それ以外の人が乗ることはオメガレックスは許してくれないそうです。」

 

 「フォックスの時と同じだ。例え、バイザーの制御下に置かれても、自分の意思を強く残し、乗り手を自分で決める。 やはり、このゾイドは相当の精神力の持ち主だ。」

 

 「だが、しかし、厄介だな。ザナドゥリアスはゼロメタル帝国の重要人物だ。 ハワード宰相や帝国議員が迎えてくれることなんて不可能だ。」

 

 「実は左腕を通じてオメガレックスと会話した時に、もう一つわかったことがあります。」

 

 「何だ?」 

 

 「オメガレックスによると、ユウトの身体には邪悪なゾイドの力が宿っていて、その力が目覚めたために暴走したと言ってました。」

 

 「しかし、身体検査によると、奴の身体は通常の人間と大差はなく、特に変わった部分はなかったとあったぞ。」

 

 「ギレル少佐、」

 

 「何だね? ツガミ大尉。」

 

 「もしかしたら、敵はザナドゥリアスよりも、その力が目的なのかもしれません。」

 

 「どういうことだ?」

 

 「考えてみてください。プライドはあの男を皇位継承者と言いながら、ゼロメタル帝国の宣言と共に皇帝にせず、そしてジェノスピノによるオメガレックスの襲撃、もし、その力を回収し、手に入れることが目的なら、あの時、ジェノスピノがオメガレックスを襲ったのも説明がつくでしょう。」

 

 「ということは、その力をセードが持っていると?」

 

 「恐らくは……とにかく、ザナドゥリアスについてはもう少し調べる必要があります。もしかしたら、ゼロメタル帝国に関する重要な情報が手に入るかもしれません。」

 

 「わかった。許可が下りるかどうか、わからないが、ハワード宰相にこのことを伝える。後は皇帝陛下にも……」

 

 「ギレル少佐!」

 

 「どうした? バスキア大尉。」

 

 「大変です。実はフィオナ陛下とメルビル殿下がゼオルという者の素性を知りたいと、独立部隊と共に禁制地区に入り、そこで敵に襲われ、通信が途絶えたそうです。」

 

 「何!? くそっ、陛下。あれほど、勝手に帝国から出ぬよう伝えたのに!」

 

 「いかが致しますか?」

 

 「これは私の責任だ。直ぐに陛下を救出しにいく!」

 

 「待ってください。」

 

 「レオ?」

 

 「俺も行かせてください。」

 

 「駄目だ。これは帝国の問題だ。」

 

 「いえ、帝国だけの問題ではありません。世界全体の問題です。それに禁制地区はゼロメタル帝国の領土。ギレル少佐だけで、助けに行ける場所ではありません。俺たちの力も必要なはずです。」

 

 「レオ……」

 

 「ギレル少佐、心配ありません。あの男を調べるといったのは元々私からですし、このことは私が共和国上層部を通じてハワード宰相に御願いしてみます。」

 

 「わかった。」

 

 「では、私も向かう。ツガミ大尉、彼のことは任せたぞ。」

 

 「はい……あの……」

 

 「? 何だ?」

 

 「その……ロックバーグ中尉は?」

 

 「私がどうしたの?」

 

 「あの……まさか……あなたまでは……」

 

 「何変なこと言ってるのよ! 私はハント大佐の命令で、レオのお守りを任されているのよ。私も行くのは当然じゃない!」

 

 「いや……その……」

 

 「私がいなくても、ハント大佐がいるじゃない! 何か問題でも?」

 

 「いえ……何でもありません。」

 

 「よし、では、全員出撃準備を。」

 

 「はいっ!」

 

 

 

 

 その様子を監視カメラ付きのカメレオン型の小型ゾイドが見ていて、そのカメレオン型ゾイドの監視カメラの映像をゼロメタル帝国の本拠地にいるドクターマイルスが傍観していた。

 

 「奴等め、このままいけば、いずれ、ライガーのガキ共はアドリア王国と合流することになりそうだな。 ちょうどいい。奴等の力を試すチャンスにもなりそうだ。グリードを呼べ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライガーたちやそれぞれの相棒ゾイドに乗ったレオたちやディアス中佐やギレル少佐率いる帝国、共和国の合同軍がゼオルやフィオナたち独立部隊が辿っていたルートを元に禁制地区に入っていった。

 森の中を進んでいくと、そこに隕石でも落下したようなクレーターがあり、手掛かりはそこで途切れていた。

 

 「このクレーターは一体……」

 

 「ギレル少佐、ホントにここで間違いないのか?」

 

 「ゾイドのコクピットに搭載している通信では、ここで敵に襲われたとの情報が出た。」

 

 「確かに戦闘の後や残骸はありますが、ゾイドの姿は一切見られない。おそらく敵の捕虜にされた可能性は高いですね。」

 

 「くそっ、コリンズ中将とハワード宰相から皇帝陛下を御守りする役目を任じられたというのに、何と不甲斐ない!」

 

 ディアス中佐とギレル少佐たちが周囲を見回す中、レオのライガーとサリー、クリスタの乗るハンターウルフが地面の匂いを嗅ぎ、二体ともある方向を向いた。

 

 「どうした? ライガー。」

 

 「ハンターウルフ?」

 

 その時、その方向から爆弾が投げ込まれ、ライガーとハンターウルフは咄嗟の判断でそれを回避した。

 

 「何だ!?」

 

 その時、レオたちの前に現れたのは通常のゼロファントスと違い、背中に巨大なレーザー砲を装備したゼロファントスを筆頭に黒を基調としたカラーリングと赤のラインをしたゼロファントス軍団が現れ、筆頭のゼロファントスにはドクターマイルスと同じゼロメタル帝国の科学者ブレイブ・グリードが乗っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラーク盗賊団と青いティラノサウルス型ゾイドと背中に巨大なブースターを装備させたファングタイガーとナックルコングに助けられたゼオルとフィオナたちは、その後、かつてゾイドクライシス以前の地球人が使っていた戦艦を流用した艦に乗せられ、ある場所にまで招かれるようになった。

 その場所はゾイドクライシス以前の地球ではオーストラリアと呼ばれる大陸だった。その場所に降り、青いティラノサウルス型ゾイドやファングタイガー、ナックルコングに連れられ、森の中を進んでいくゼオルとフィオナたちが見たのは帝国、共和国の領土では見られない想像を絶する場所だった。

 森の中を駆け抜けるラプトールの群れ、上空では空を駆け抜けるカブターとクワーガ、更に湖を泳ぐガブリゲーターとガノンタス、他にもナックルコングやトリケラドゴス、スコーピア、グソック、ディメパルサー、ステゴゼーゲ、パキケドス、アンキロックスが自由奔放に暮らし、どれもコクピット及び帝国、共和国のエンブレムが付いていない完全な野生ゾイドだった。

 

 「こ、これは……」

 

 「驚くのも無理はない。何せ、野生ゾイドがいるのはこの大陸のみで、我々アドリア王国が理想とするゾイドの本来の姿なのだからな。」

 

 「お前たちは一体、何者だ?」

 

 「それは、我々の王国に入ってから説明させていただきます。」

 

 

 

 青いティラノサウルス型ゾイドのライダーのシーザーに連れられたゼオルとフィオナたちは森の中の隠し通路に入り、巨大なガラス状のエレベーターに乗せられていった。

 そこには外の世界とはまた違った驚くべき世界になっていた。地下の世界には未来的な街中になっていて、そこに多種多様のロボットが傷付いた野生ゾイドの修理を行い、更に帝国、共和国軍基地から脱走したゾイドからバイザーと武装の撤去する作業を行う者までいた。

 

 「な、何だ……ここは?」

 

 「ここが我々の王国、ゾイドを人間の愚かな欲から解放し、本来の姿に戻し、全ての生物との共存を目指すために我々は数千万年以上ずっと繁栄し、その世界の実現に貢献してきた。」

 

 「一体どういうことだ? それに数千万年とは……」

 

 その時、ジャミンガサイズの多種多様の生物型の小型ゾイドたちが低いうねり声を上げながら、ゼオルとフィオナたちを警戒していた。

 

 「そう、怖がるな。彼は我々に味方するアーサー・ランスロットの息子、ゼオル・ランスロットだ。」

 

 シーザーの言葉を聞いた小型ゾイドたちはそれを聞いて、警戒を解き、突然、液体金属状に変化し、全て人間の姿に変身していった。

 

 「彼が我々に味方するアーサーの息子か!」

 

 それを見て驚きを隠せないゼオルとフィオナたち、

 

 「お、おい! 貴様らは一体何者なんだ!? それにアーサーって……まさか!」

 

 「そう、今は亡き、あなたの父上にして、元ゼロメタル帝国のメンバー、そして我々にゼロメタル帝国がかつて我々が封印させた邪神を復活させるために動いたことを伝えた人です。」

 

 「俺の…父……だと……?」

 

 その時、シーザーは何かを感じ取り、青いティラノサウルス型ゾイドに乗り込んだ。

 

 「どうやら、あなたたちのお仲間が危機にあっているそうです。 話は彼らを助けてからお話しします。それまで待っていてください。」

 

 「お、おい!」

 

 シーザーは青いティラノサウルス型ゾイドに乗り込み、そのままある場所に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時期、ゼオルとフィオナたちを探すためにゼロメタル帝国領の禁制地区に入ったレオたち合同軍はブレイブ・グリードの乗る背中にレーザー砲を装備したゼロファントスとそのゼロファントス率いる黒いカラーリングと赤のラインを基調としたゼロファントス軍団と交戦していた。

 

 「ゼロファントス、原始 解放! ゼロブラストー!!」

 

 兵士の曇った声と共に黒いゼロファントスの身体が赤く発光し、黒いゼロファントスは鼻を伸ばし、背中の爆弾のディゾルボムをライガーたちに向かって次々と投擲していった。

 丸で投石機のように跳んでくるディゾルボムをライガーたちは何とか回避するが、その投擲の速度が以前戦った通常のゼロファントスとは比べ物にならず、避けられなかった合同軍のゾイドが次々と破壊され、その威力も通常より向上していて、更に黒いゼロファントスは咆哮を上げて、ライガー並みの速度で突進し、襲いかかってきた。

 

 「ぐっ、ライガー、大丈夫か?」

 

 グウゥ……

 

 「こいつら、性能を向上させた改良型なのか?」

 

 「にも見えますが、以前オメガレックスが率いていた通常個体は離れて攻撃するといった戦略的なゾイドだったが、否応なしに突進したり、爆弾を投げながら突っ込んでいくのを見ると、見境無しに攻撃しているようにも見えます。」

 

 ディアス中佐のギルラプターLCとツガミ大尉のステゴゼーゲ改は何の作戦も無しにただ、ひたすら目の前の敵を破壊していく戦闘スタイルを持つ黒いゼロファントス軍団に苦戦を強いられ、空中から援護射撃を行っているギレル少佐のスナイプテラとバスキア中尉のクワーガスカイステルスも黒いゼロファントスが投げたディゾルボムの爆風で姿が確認出来ず、膠着し、更に地上からもディゾルボムを投げてくるため、中々手が出せないでいた。

 

 「くそっ、何て奴等だ。」

 

 「それにしても、いつのまにこんな新型のゼロファントスを開発していたなんて!」

 

 背中に巨大なレーザー砲を装備しているゼロファントスに乗っているグリードはその様子を傍観し、

 

 「培養に成功したD因子を注入するだけで、こんなにも凶暴性を発揮するとは……ドクターマイルスも中々粋なことをする。」

 

 グリードは出撃前のことを思い出した。

 

 「(え、アドリア王国が動いた?)」

 

 「(ああ、しかもどうやら、例のライガーと帝国、共和国の合同軍が我が領内に侵入したとの情報も入った。

 私の予想が正しければ、連中が例のライガー共を味方にする可能性がある。偵察と同時に培養に成功したD因子を注入させたこのゼロファントスダークスの性能実験も兼ねて奴等を始末してくれないか?)」

 

 「(しかし、いくら培養に成功したとはいえ、D因子の注入はかなりリスクが伴うんじゃないのか?)」

 

 「(そのために、こいつを用意した。)」

 

 「(こいつは?)」

 

 「(ディゾルレーザー砲を装備した私オリジナルのゼロファントスを開発した。試作段階ではあるが、十分、実戦にに使える。どうだ? こいつをお前にやるから、任務を遂行してくれ。)」

 

 「(まあ、いい。お前が造ったものなら、相当な機体なんだろうな! なら、俺の好きなように使わさせて貰うぜ。)」

 

 「さて、そろそろ、こいつの力を試させてもらうか。まあ、実験台にするなら、あのライガーが一番だ。

 ゼロファントス、原始 解放! ゼロブラストー!!」

 

 コクピットにいるグリードは半裸の状態で、コクピット内部にある幾つものコードに直接肉体と接続していて、ゼロブラストを発動した瞬間、コードとグリードの目が紫色に光り、肉体もゼロファントスのような紫色のラインが現れ、同時にゼロファントスから紫色の閃光が放たれ、背中のディゾルレーザー砲の照準がライガーに向けられた。

 

 「喰らえ、ディゾルレーザーキャノン!」

 

 放たれたゼロファントスのレーザーキャノンに気付いたレオとライガーは瞬時にA-Zメガシールドで防いだが、少し後退し、その隙に背後から襲いかかってきたゼロファントスダークスの鼻に捕まってしまった。

 

 「しまった!」

 

 ライガーはゼロファントスダークスの鼻から逃れようとするが、ゼロファントスダークスが絶対に離そうとせず、そればかりか、そのままライガーを握り潰そうとした。

 

 「レオ!」

 

 ゼロファントスダークスに捕まったのを見たサリーとクリスタの乗るハンターウルフがレオとライガーを助けに行こうとするが、何体かのゼロファントスダークスが襲いかかってきて、ライガーの元に行けなかった。

 

 「レオ、ライガー!!」

 

 「ぐっ、グアァ~!!」

 

 ゼロファントスダークスに締め付けられ、苦しむレオとライガー、

 

 「いいぞ、これで狙いやすくなった。今度こそ、喰らえ! ディゾルレーザー……」

 

 その時、突然、森の中から現れた黒い影がゼロファントスダークスに突進し、ゼロファントスダークスはその反動でライガーを離した。

 気付いたレオやサリーたちが現れたゾイドを見て、見たこともないような表情をし、グリードもそのゾイドを見て、待ってましたと言わんばかりの表情をした。そのゾイドは青いティラノサウルス型ゾイドだった。

 

 「遂に来たか。アドリア王国の王、ゼノレックス!」

 

 青いティラノサウルス型ゾイドを見たボーマン博士は赤いライガーを見たのと同様に一度見たことあるような表情をした。

 

 「あれは……遺跡の伝承にある青いティラノサウルス!」

 

 ライガーを離したゼロファントスダークスは青いティラノサウルス型ゾイドに襲いかかるが、青いティラノサウルス型ゾイドはそれを避け、距離を開けた後、全身からオレンジ色の光が輝き、その光に包まれた。

 その光に包まれた青いティラノサウルス型ゾイドは身体のあちこちにパーツが新たに形成し、サイズが通常より大きくなっていった。それを見て驚きを隠せないレオたち、

 

 「な、なんだ? あれは……」

 

 ゼロファントスダークスは青いティラノサウルス型ゾイドに突進するが、青いティラノサウルス型ゾイドはそれを受け止め、そのまま持ち上げて、他のゼロファントスダークスにぶつけた。しかし、その隙にディゾルボムを放たれ、直撃し、その一斉砲撃を受けてしまう。

 

 「うっ、ぐっ……」

 

 「本来なら、ライガーを潰すのが命令だが、先に潰させてもらうぞ。ゼノレックス!」

 

 「やはり、これは少し本気を出さなきゃならないようだな。」

 

 その時、青いティラノサウルス型ゾイドの頭部のハッチが開き、そのコクピットからシーザーが現れた。

 

 「な、なんだ? あいつ、降伏する気か?」

 

 グウゥ……

 

 その時、ライガーが何かを感じ取るような仕草をした。

 

 「ライガー?」

 

 同時にコクピットから出たシーザーの身体が液体金属状に変わり、何と小型の恐竜型ゾイドに姿を変え、その後、オレンジ色の光になって青いティラノサウルス型ゾイドと融合するかのようにその身体に取り込まれた。

 その時、青いティラノサウルス型ゾイドの身体が再びオレンジ色の光に包まれ、また新たなパーツが形成され、更に巨大化していった。そして、オレンジ色の光が消え、現れたその姿は丸でかつて惑星Ziで猛威を振るっていたジェノブレイカーのような姿だった。

 その変わりように言葉すら出ないレオたち、 しかし、ゼロファントスダークスはそんなことはお構い無しに青いティラノサウルス型ゾイドにディゾルボムを投げ付けるが、青いティラノサウルス型ゾイドは全てのディゾルボムをフリーラウンドシールドで防ぎ、無傷に済み、更に2連衝撃砲を放ち、撃破していった。

 ゼロファントスダークスは今度は青いティラノサウルス型ゾイドに向かって突進し、鼻で捕らえようとするが、青いティラノサウルス型ゾイドはそれをシザースで逆に捕らえ、その鼻を破壊し、更にゼロ距離で2連衝撃砲を撃ち込み、同様に襲いかかってきたゼロファントスダークスにも一体一体確実に破壊していった。

 その隙にグリードはゼロファントスのディゾルレーザーキャノンを放とうとするが、それに気付いた青いティラノサウルス型ゾイドは2連衝撃砲で迎撃した。

 

 「ちぃっ、」

 

 その後、再び突進してきたゼロファントスダークスを見た青いティラノサウルス型ゾイドは2連衝撃砲を地面に撃ち込んで障害にし、その後、距離を取った後、青いティラノサウルス型ゾイドから現れた小型恐竜型ゾイドに変身したシーザーが再びオレンジの光になって青いティラノサウルス型ゾイドと融合し、オレンジ色の光に包まれた後、今度はロングレンジバスターキャノンのような巨大なバスターを2門装備したジェノザウラーのようなバスター形態になり、両足を固定して両方のバスターを突進するゼロファントスダークス軍団に照準を向け、発射し、その凄まじい威力の前にゼロファントスダークス軍団が壊滅していき、煙の中から青いティラノサウルス型ゾイドが目を赤く発光してグリードのゼロファントスを睨み付けた。それを見たグリードはため息をつき、

 

 「ふぅ~、流石にゼノレックスとまともに戦うのは分が悪いか……仕方ない、ここは撤退するとしよう。」

 

 グリードのゼロファントスが撤退し、残りのゼロファントスダークス軍団もそれに付いていった。レオとライガーたちを苦しめたゼロファントス軍団を蹴散らした青いティラノサウルス型ゾイドの力に圧倒され、唖然とするレオたち、ゼロファントス軍団の撤退後、青いティラノサウルス型ゾイドの身体から小型恐竜型ゾイドが青いティラノサウルス型ゾイドの頭部に立ち、再び液体金属状になってシーザーの姿に戻り、青いティラノサウルス型ゾイドも最初の姿に戻った。

 

 「我々の遺伝子を受け継ぐもう一体のライガーよ。怪我はないか?」

 

 「あ、あなたは……?」

 

 「私の名はアドリア王国の王、シーザー。君たちの同士にして我々の味方でもあるゼオルは現在、我々の元で保護している。」 

 

 それを聞いたギレル少佐は驚き、

 

 「ゼオル! ということは、皇帝陛下もいるのか!? 教えてくれ、一体何処にいるんだ!?」

 

 「それは我々と共に付いてくる意思があれば…ですが。」

 

 それを聞いて、ディアス中佐とギレル少佐たちはしばらく考え込んだが、レオは直ぐに決心し、

 

 「わかりました。俺たちをあなたたちのところに案内してください。」

 

 「お、おい、レオ。何言って……」

 

 「今の戦い見たでしょ? 彼の実力は本物です。それに今の彼には敵対心はありません。」

 

 それを聞いてしばらく黙り込んだディアス中佐とギレル少佐は、

  

 「わかった、そうしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちがいる場所から数キロ離れたゼロメタル帝国領の森で、ある巨大な者が動き、それが動くごとに森に火がつき、周りが一斉に火の海になった。

 その巨大な正体は全身から熱風を噴き出していて、全身が真っ赤に染まったジェノスピノだった。そして、そのコクピットにはセードがオメガレックスが暴走した時のユウトに酷似した姿になり、その目は正気を失っていた。

 

 「壊す……俺は全てを破壊する!」

 

 To be continued




 次回予告

 ゼノレックスに助けられたレオたちはシーザーによってアドリア王国に招かれるが、突然、全身が赤くなったジェノスピノがアドリア王国領を襲撃してきた。
 レオのライガーとゼオルのアーサーが立ち向かうも、全身が赤のジェノスピノはレオのライガーとゼオルのアーサーが束になっても敵わない程になり、苦戦を強いられ、シーザーと融合したゼノレックスが更に強力になったシーザーとバスターで挑んだ。果たしてその力とは!?

 次回「煉獄の暴走龍」走り抜け、ライガー!!

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