ゾイドワイルドクロス アナザーZERO 作:オーガスト・ギャラガー
ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたプライド元摂政がゼロメタル帝国を立ち上げ、その皇位継承者となったユウトがオメガレックスで帝国を襲撃したが、それも破り、ゼロメタル帝国の勢力を大きく落とした。だが、それは同時に新たな絶望の始まりだった。
レオの左腕を通じて、アーサーが伝えた言葉に驚きを隠せないゼオルたち、
「俺の相棒のアーサーが俺の親父だって!?」
「うん、アーサーがそう言ってる。」
「でも、それは一体どういうことだ?」
「それは……」
その時、アーサーが何か言いたげのような仕草を取り、レオは再び左手をアーサーの頭に当てた。
「どうなんだ? 何て言っている?」
「今、アーサーの言っていることを全て伝えます。」
左腕を通じてレオが読み取ったアーサーの言葉には自身の誕生についてのことだった。それは再びゼオルの父アーサーが科学船にいたときのことに遡る。
プライドの計画を知ったアーサーは自身の息子ゼオルと自身が生み出したシーザーたち七体のオーガノイドをプライドの計画に利用されないために自身が作ったアナザーゲートというワームホール発生装置で、ゼオルとシーザーたちを地球ではない別の惑星に逃し、残った自分がプライドの計画を阻止しようとしていたのだ。
しかし、プライドにはラストやドクターマイルス、その他5名の味方がいて、更にドクターマイルス率いる兵士もいたため、自分1人で連中の行動を阻止するのは余りに無謀なことだった。
そこで彼は自身が死んだ場合のことを想定し、自身の分身を作ることを考え、シーザーたち人造オーガノイドの製造以外にも、端末の力によって生まれた地球産のゾイドがホントに地球に自然発生するのか確かめるために、予め自力で復元したワイルドライガーの入ったカプセルにコピーした自身の記憶と体内にある金属細胞をそのワイルドライガーに移植させ、プライドやドクターマイルスたちの手に届かない隠し部屋に隠していた。
そして、プライドたちが端末を掌握するために起こした反乱の時にアーサーはゼオルとシーザーたちオーガノイドをアナザーゲートで転送させ、そこに来たドクターマイルス率いる兵士によって射殺されたが、幸いにもプライドたちは反乱の影響で軌道がずれた科学船と掌握した端末の調整に手一杯だったため、アーサーの記憶と金属細胞を移植されたワイルドライガーの眠る隠し部屋には手が回らなかった。
そのおかげで、ワイルドライガーは移植されたアーサーの記憶と金属細胞を身体に取り組むことができ、更にその場にあった武器と融合し、新たな姿に進化していった。そしてそのワイルドライガーは機関砲を装備し、騎士風の姿をしたライガーに変わった。それが現ゼオルの相棒であるライガー・ジ・アーサーだった。
目覚めたアーサーはプライドたちの行動を阻止しようとするが、その時は既に科学船がワームホールを抜け、西暦2025年の地球に辿り着いていた。部屋の窓を除くと、そこには無数のゾイドコアが隕石のように地球に降り注ぎ、地上では現れたゾイドが暴れまわり、更に地殻変動も起きていた。その影響もあってか、船は余りに不安定な状態になっていて、いつ墜落してもおかしい状態になっていた。
このまま墜落すれば、科学船は只では済まないし、いくら記憶を移植したワイルドライガーの身体に転生したとはいえ、その墜落に耐えられるとは思えない。そう考えたアーサーは先に地上に降り立つことが先決と思い、墜落していく科学船の近くにあった山々の木に飛び移りながら降りていった。
地上に降り立つと、そこには暴れ狂うゾイドたちと火山活動や台風、ハリケーン等、次々と起こる天変地異と混沌の世界で満ち溢れていた。それらを避けて、アーサーは墜落した科学船の元に向かうが、そこにあったのは無残に破壊された科学船で、しかも既に中には端末もないもぬけの殻だった。
アーサーはプライドたちが何処に行ったのか、その形跡を探って周囲を回ると、行く先々に白い謎のゾウ型ゾイドが複数現れた。ゼロファントスだった。ゼロファントス軍団はディゾルボムで各地で暴れ狂うゾイドたちを次々と撃破していった。
その時のアーサーはゼロファントスの正体がわからなかったが、自身のゾイド因子を通じて、ゼロファントスがD因子に酷似したゾイド因子を持ったゾイドだということがわかった。
そして、そのゾイドが各地のゾイドを制圧していくのを見ると、プライドらが地殻変動と暴れ狂うゾイドたちの暴走に逃げ惑う人々に対して、何かしらの技術提供をし、導いていた。そうしてプライドたちの動向を調べていく内にある名前を知った。
「ZG?」
「うん、そう言ってる。」
「ZG……ん? そういや、お前たちもその名を言ってたが、知ってるのか?」
「ええ、我々もゼロメタル帝国のことを調べているときにその名を聞きました。恐らく、それこそがかつて我々が6500万年前に封印させた超巨大ゾイドの正体かと……」
「名前からして、コードネームのようだが、正式名称は不明か……だが、わからない。 そのZGって奴がプライドたちの復活させようとしているゾイドなら、何故、6500万年前の地球に来たのだ?
それに、今のアーサーの言葉通り、プライドたちがゾイドクライシスが起こった地球に来たっていうことは、奴等は130年以上もずっとこの地球に生きていたということになる。 だとすると、今のプライドたちは一体何者なのだ?」
「そういえば、確かに…」
「考えるとするなら、奴等はその時のプライドの子孫か…または人間ではないか……」
「ん? また、アーサーが何かを伝えようとしている。」
「しっかし、レオに通訳をやらせるのは少し不便だな。」
「それなら、私にお任せください。」
シーザーがアーサーの前に立ち、左手をかざすと、その手からオレンジ色を光が放たれ、その光がアーサーを包み込んだ。
「こ、これは…」
その時、アーサーが言葉を発した。
「私のゾイド因子を分けました。我々ヒューマンオーガノイドは人間の遺伝子を取り込み、人間の姿に変身することによって、あなた方と意志疎通することが出来ます。
ただし、本来の姿であるオーガノイドの姿では声を発することは出来ませんが、元々人間であった者の記憶と遺伝子情報が入っているライガー・ジ・アーサーなら、例え、ゾイドでも、私のゾイド因子を取り込めば、声を出せます。」
「そうか、お前たちもここまで成長したのだな。」
「アーサー、いや、改めて親父。 俺たちに奴等ゼロメタル帝国のことを教えてくれないか。」
「それは……」
その時、アーサーが何かに気付いて前足でゼオルの横にいる小さな何かを踏み潰した。
「おい、一体何のつもりだ?」
「これを見ろ。」
「ん?」
レオたちはアーサーが踏み潰したものを見ると、それはカメレオンのような生物ではあるが、露出された部分から幾つものコードが現れ、それは紛れもなくゾイドだった。
「こ、これは……」
「数千年以上前に生息していた小型の偵察ゾイドだ。既に絶滅したはずだが……」
「ということは、ゼロメタル帝国の差し金か。まさか、いつの間にこんなものを俺たちのところにつけていたとは…」
「とすると、俺たちがここにいることは奴等に知られている。さっきのジェノスピノみたいに襲ってくる可能性があるだろう。」
「直ぐにこのことを本国に連絡しないと…」
「待て、ディアス中佐、ここは未知の領域、通信は使えない。 それより、我々はこのことを知らせるためにも彼等と一緒に本国に戻らねば…」
「そうだな。では、我々は直ちに共和国第二の首都ニューホープに戻る。」
「ちょっと、ちょっと! あたしたちを無視しないでくれる!」
「お前ら、誰だったっけ?」
「くっ、あたしよ! あたし。キラーク盗賊団のリーダー、ミラーよ!」
「あ、そういや、いたのか。すっかり忘れてたぜ。」
「キー! あんた、わざと言ってるんでしょ!!」
「ところで、私たちに何か?」
「敵に狙われているんでしょ? だったら、敵に気付かれない安全なルートを道案内する者が必要でしょ。」
「知ってるのか?」
「こう見えて、あたしは一流の盗賊よ。逃げ道や抜け道くらいは手に取るようにわかるから。」
「その隙に俺のアーサーやバルディーとマリのガンナーを奪うつもりじゃねぇだろうな?」
「そんなことするわけないでしょ! あたしたちは偉大なるマスター、シーザー様にお仕えする優秀な盗賊団よ。もうチマチマ盗むようなことから足を洗ったのよ。」
「どうだかね。」
「それに…あなた、中々可愛い子ね! 名前、何て言うの?」
「れ、レオです。」
「あ~ら、何て素敵な名前! あの美しいライガーちゃんに凄くお似合いだわ。ねぇ、ねぇ、あのライガーちゃんの名前何て言うの?」
「え…えっと、ライジングライガーです。」
「まあ、素敵な名前! 惚れ惚れしちゃうわ。ところで、あんた、好きな女の子いるの? いなかったら、あたしが相手になって上げるわ。もちろんライガーちゃんと一緒で!」
「え…いや、それは……」
「ターゲットが見え見えだっつうの。」
「いえ、ゼオル様、彼等は悪い人ではありません。彼等はアーサー様ととゾイドを大切にする志を持っている者ですから。」
「ま、お前が言うなら、仕方ない。」
「よし、では、出発するか。」
ゼロメタル帝国がアドリア王国を襲撃する前にニューホープに出発した一向には、道案内をするキラーク盗賊団のミラーとアイパー、ポーチの乗るグソック、スパイデス、スコーピアを筆頭にそれに付いていくレオの乗るライガーとサリーの乗るハンターウルフ、メルビルの乗るギルラプター、ゼオルの乗るアーサー、バルディーとマリの乗るガンナー、バーンの乗るフォックス、アイセルの乗るラプトリア、バズとボーマン博士、クリスタの乗るキャタルガ、ディアス中佐のギルラプターLC、ギレル少佐のスナイプテラが狭い森の中を歩いていった。
「たく、ホントに狭い道だな。」
「なあ、ホントに安全なんだろうな。」
「当然よ! ここなら、敵には見つかりにくいし、攻撃もしにくい場所よ。あたしの進むルートに間違いはないわ。」
「はいはい、」
「ところで、レオ。」
「はい。」
「本国に着いたら、よろしくね。チュッ、」
「あ…ハハ…はい。」
ミラーの猛烈なアピールに思わずドン引きするレオ、そして森を通過した一向は川が流れている崖の下を通り、敵に見付からないように崖沿いに沿って歩いた。だが、その先の自然のダムのところにラストの乗るファングタイガー改率いるゼロファントス軍団が待ち構えていた。
「予想通り、この道を通ってきたようね。さて、始めるわよ。やれ!」
ゼロファントス軍団が背中のディゾルボムを投げつけ、自然のダムを破壊していった。やがてダムにヒビが入り、破壊され、一気に大量の水が津波のように流れ込んでいった。
「ん?」
「どうしたの? バルディー、」
「何か、音が聞こえる気がするんだけど……」
「音?」
レオたちが前を見ると、目の前に大量の水が流れ込んでいった。
「ウギャアァ~!!」
ライガーたちは逃れようとするが、間に合わず、一気にその波に飲み込まれてしまった。
「ふふ、作戦は成功ね。あたしと1部隊はあのライガーをやるわ。残りのあんたたちは残りの取り巻きを。」
「了解。」
ラスト率いるゼロファントス軍団による罠で、濁流に飲み込まれた一向は散り散りになり、ライガーとアーサー、ハンターウルフ、ギルラプターに乗っているレオとゼオル、サリー、メルビルはある場所に流れ着き、目を覚ました。
「う…う~ん、サリー、皆大丈夫?」
「大丈夫よ。」
「くそ、既にこちらの動きが読まれていたか。それにしても、あのオカマ野郎、何処が安全なルートだ。やっぱり信用するんじゃなかった。」
「よく来てくれわね。ちょうどあたしの望み通りの獲物が来て嬉しいわ。」
レオたちの目の前に現れたのはバイザーを外したファングタイガー改で、そしてそのコクピットに乗っていたのはラストだった。
「お前は、ラスト!」
「知ってるのか? レオ。」
「うん、プライドと一緒に帝国にいた元軍人だ。」
「しかし、それはあくまで仮の姿、ホントのあたしは偉大なる皇帝陛下に仕えるゼロメタル帝国二大神官の1人、リゼル・ラスト。」
「ふ、帝国では摂政だったプライドらがゼロメタル帝国では神官か……随分デカくなったな。ま、そんなことはどうでもいい。会って早々だが、貴様らは一体何者だ? ゾイドクライシスが起こった130年前の地球に着いてからずっと生きているということはどういうことだ? やはり人間ではないのか?」
「当たり前でしょ! 古代ゾイド人の生き残りの末裔である私たちがあんな下等な人間共と一緒にしないでくれる。ましてや、同じ古代ゾイド人であるあんたもそれに気付かないとは…」
「何!? 親父、まさか、さっき言おうとしていたのは……」
「ああ、我々はかつて惑星Ziを治めていた最初の人類、古代ゾイド人の生き残りの末裔だ。」
「古代ゾイド人、確か、俺もそのことを父さんから聞いたことがある。でも、数千年前の大戦では確か、その生き残りは3人しかいなかったはず……」
「ところがどっこい、実はまだいたのさ。数千年前にかつてガイロス帝国の元摂政がDを復活させようとした2名の古代ゾイド人の他に実はまだ、10名の生き残りがいたのさ! それがあたしたちゼロメタル帝国の先祖さ。」
「何だって!?」
ラストの話によると、数千年前でのガイロス帝国、へリック共和国の戦争の最中、ガイロス帝国を牛耳っていた摂政が古代ゾイド人の文明を滅ぼした禁断のゾイドの伝説を知り、支配欲にかられた彼は共和国制圧のためにDと呼ばれる禁断のゾイドをクローン化して復活させた。
だが、復活させたDは本体ではなく、しかもまだ未完成だったため、摂政の陰謀を知った帝国上層部はへリック共和国と手を組み、結成された合同軍によって、そのクローンゾイドは本来の力を発揮出来ずに破壊され、摂政の野望は潰えた。
しかし、摂政は運良く生き残ったDのゾイドコアと融合して生き延び、2名の古代ゾイド人と共謀して、再びDを復活させた。その力は凄まじいものではあったが、それもあるライガーの力によって敗れ、Dは完全に滅んだ。
かにおもえたが、実は摂政と手を組んだ古代ゾイド人は他にも10名の存在がいて、その敗北を認めなかったメンバーは子々孫々に渡って、Dの復活を画策し、その力で惑星Ziを古代ゾイド人のものにしようとした。
その数百年後に、惑星Ziの衛星の1つの月が衝突し、神々の怒りと呼ばれる天変地異で惑星の環境は大きく変わり、文明は衰退した。
しかし、その一部は空中要塞に逃れ、そこで独自で高度な文明を築いていた。その中に10名の古代ゾイド人の生き残りがいて、空中要塞の議員たちをたぶらかし、メンバーの1人をスパイとして地上の公国の軍に入隊させ、その公国を傀儡にして地上を再び自分たちの支配下に置く計画をした。
だが、それは彼らが送ったメンバーの1人をその公国を掌握させ、惑星を制圧し、先の大戦で密かに入手したD因子の一部によって生み出された新たなゾイド、バイオゾイドを生み出し、そのゾイドを使ってDの復活を試みた。
しかし、それも先の大戦とは別のライガーの活躍によって阻止され、Dに近い強大なゾイドを操った1人は敗れ、その計画は頓挫されることになった。
その後、荒れ果てた惑星の大陸の開拓として再びガイロス帝国とへリック共和国の系統を受け継ぐ帝国と共和国が復興され、文明が復活するが、神々の怒りと呼ばれた天変地異の影響で惑星の寿命が極端に短くなってしまっため、惑星からの脱出を余儀なくされた。
「そして、あたしたちは滅び行く惑星Ziの代わりに帝国、共和国の連中が新たに移住する地球をターゲットにし、その星を支配する計画を立てた。
だけど、そのためには、邪魔な帝国、共和国の連中を始末するか、または先に地球に到着して一足先に地球を掌握しなければいけなかった。
だから、あたしたちは地球をD因子の力を増幅させ、地球を一瞬で制圧出来る力が必要だった。そしてちょうどゾイド因子の力で地球の環境を意のままにする装置の開発をしていたうってつけの獲物が見つかった。」
「もしかして、お爺さんのこと?」
「その通り、ボーマンがZiホーミングとかいうやつを計画してくれたおかげで、奴を利用し、その装置の開発を手助けしてやった。けど、奴にあたしたちの計画を知られると不味いのでね。だから、あの老いぼれにはあたしたちの正体は全て伏せておいたのさ。」
「ボーマン博士はお前たちが科学船に乗っていたことを知らなかったのはそういうことだったのか。」
「そう、そして船で反乱を起こし、あたしたちは端末を掌握した。そしてその同時にあたしたちは神からある力を授けられ、進化した。」
「? 何!?」
その時、コクピットから出たラストの身体が液体金属状になり、形状は違うが、シーザーのようにタイガー型の小型のゾイドに変身した。
「あの後、あたしたちは神の力によって、ヒューマンオーガノイドに進化したのよ! 最もアドリア王国と違って古代ゾイド人の進化形としてね! そしてその能力も。」
タイガー型のオーガノイドの姿に変身したラストは紫色の光になってファングタイガー改と融合し、全身から紫色の電撃が迸り、ファングタイガー改は突然苦しみだし、マシンブラストを発動した。
「あたしたちゼロメタル帝国のヒューマンオーガノイドと融合したゾイドは帝国、共和国の連中のエヴォブラストやマシンブラストと違い、ゾイドの本能を強制的に解放し、その性能を最大限に引き出すことが出来るのよ!」
「そんな…ファングタイガーが……酷い。」
「けっ、まさか、貴様らもヒューマンオーガノイドって奴だから、何年も生きられるのかよ!?」
「ボーマン博士やゾイドたちを利用して、許せない。」
「レオ、俺が奴は動きを止める。その間に攻撃を。」
「わかった。」
「行くぞ! アーサー、進化 解放! エヴォブラストー!! グングニル!」
その時、突然、ファングタイガー改の身体がオーガノイドの姿に変身したラストのように液体金属状になり、黒いスティレイザーに変身した。
「何!?」
「プラズマウォール!」
「ゼオル! ライガー、進化 解放! エヴォブラストー!! ライジングバーストブレイク!」
だが、その時、黒いスティレイザーが再び液体金属状になってファングタイガー改の姿に戻り、デスファングでライガーを吹っ飛ばした。
「レオ!」
「大丈夫だよ、サリー。」
「目の錯覚か知らんが、一瞬奴の姿も変わったように見えたが……」
「変わったように見えたんじゃない。ホントに変わったんだ!」
「その通り!」
その時、ファングタイガー改の頭上からラストの人間体が液体金属状になって現れた。
「融合したゾイドの本能を強制的に解放させるのはあくまで、あたしたちゼロメタル帝国のヒューマンオーガノイド共通の能力で、あたしたちにはそれぞれ別の固有能力があるのよ。
そして、あたしの能力は融合したゾイドの姿と能力を別のゾイドの姿と能力に変えることが出来るのよ! もちろんあたし自身も。」
再びラストの姿が液体金属状になり、サリーやメルビルの姿に変わっていった。
「そ…その姿は……」
「そう、この姿になって、あのバカなランドやシーガルを騙してやったのよ。 ホントあの時は愉快だったわよね。
本物は幽閉しておいて、あたしが変身した偽物だってことに気付かずにまんまと利用され、その時に気付いた時の顔は面白かったわ。ま、所詮おつむもあたしたちより下ってことね。そしてあたしがこの姿に化けてペンダントを持ったその小娘を拐うためにまんまと騙されたあんたもね。」
その台詞を言った瞬間、ラストの姿がリュック大尉の姿になった。
「まさか、あの時、サリーを拐ったのは……」
「そう、あたしよ。アルドリッジとスピーゲルを餌にしてあんたを戦わせ、その後、あたしだとばれないようにこの男の姿になってそいつを研究所に送ってやったのよ。
まさか、ああも簡単に上手くいくとは思わなかったわ。そんな甘ちゃんで、その小娘を守るなんて笑わせてくれるわ。」
「お前だったのか。サリーを拐ったのは!」
「何言ってんの? 騙されるのが悪いんでしょ。」
「許さない、 お前は許さない!」
「止せ、レオ。」
「レオ!」
怒り狂ったレオはライガーと共にファングタイガー改に突進するが、ファングタイガーはデスファングで受け止めた。
「ふ、そうやって感情的になるところが父親そっくりね。」
「父親? 父さんのことを知っているのか!?」
「まあ、そのことはプライドの方がよく知っているけど、あんたに似てどうしようもない愚か者だったわ。」
「俺に父さんを侮辱するな!」
「ふ、」
その時、ファングタイガー改の姿が再び変わり、今度は黒いライジングライガーの姿になり、機関砲を撃ち込んだ。
「ぐっ、今度はライガーの姿に化けるなんて!」
「あんたと戦うにはこの姿がちょうどいいと思ってね。」
「戦う相手が一体だけだと思うなよ!」
その隙にアーサーが背後から黒いライジングライガーに襲いかかるが、黒いライジングライガーは尻尾だけファングタイガー改のサンダーテイルに変え、アーサーに電撃を流した。
「ぐっ、ぐわぁっ!」
「ゼオル!」
「よそ見してるんじゃないよ! ダークバーストブレイク!」
黒いライジングライガーのブレードをライガーは瞬時にメガシールドで防いだ。
「そんな甘ちゃんな考えで、あたしたちと戦っていたの? バッカじゃないの! そんなんで、あたしたちに勝つことも、そのライガーの性能を引き出すことなんて出来やしないわ!」
「ぐっ、」
「レオ!」
「おっと、」
サリーの乗るハンターウルフが助けに行こうとしたその時、周りからデスレックス型の巨大ジャミンガが現れ、牙からヨダレを垂らしながら、ハンターウルフとギルラプターを囲いだ。
「あんたたちは、レックスジャミンガの餌になりなさい。所詮傀儡ぐらいにしか役に立たないあんたたちはあたしたちの偉大なる神の生け贄となるレックスジャミンガの餌としてね!」
「レオ!」
「くっ、サリー……」
共和国第二の首都ニューホープで、ツガミ大尉の乗るステゴゼーゲ改率いる量産化ギルラプターLCと帝国軍のゾイドによる部隊が揃っていた。
「リュック大尉、ノックス大尉、シェル軍曹、あなたたちにまで、この作戦に加わってくれるとはありがたい。」
「気にするな。ゼロメタル帝国は我が帝国を裏切ったあのプライドが作った帝国だ。そのケジメは我々帝国軍がつけねばならない。」
「そうだ、摂政でありながら、ランドとシーガルの反乱を誘発し、我が帝国を利用したあの男を何としても倒さねば、我が帝国軍の面子が丸潰れだ。」
「我々帝国軍はゼロメタル帝国打倒のために、あなたの指揮に従います。」
「協力感謝致します。これにより、我が共和国、帝国による合同軍部隊はゼロファントス、謎の赤いライガー捕獲作戦に入る!」
To be continued
次回予告
レオとゼオルたちが苦戦を強いられている中、ツガミ大尉はリュック大尉たちと共にゼロファントスと赤いライガー捕獲作戦を実行。
作戦通り、ゼロファントス軍団が現れ、同時に4体の赤いライガーたちも現れ、交戦になる。その時、記憶を失ったユウトが基地から脱走し、その戦いに巻き込まれてしまう。
次回「ゼロファントス捕獲作戦」走り抜け、ライガー!!