ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたプライド元摂政がゼロメタル帝国を立ち上げ、その皇位継承者となったユウトがオメガレックスで帝国を襲撃したが、それも破り、ゼロメタル帝国の勢力を大きく落とした。だが、それは同時に新たな絶望の始まりだった。


第48話「ゼロファントス捕獲作戦」

 ゼロメタル帝国の本拠地の研究所で、紫色に輝くリジェネレーションキューブの端末とそれをコードで接続されている復元中の巨大ゾイドの骨格を見詰めるプライドの元にゲイリン・ラスが駆け寄り、帝国、共和国の情報を伝えた。

 

 「ゼロファントスと赤いライガー捕獲作戦か…」

 

 「帝国にいる我がゼロメタル帝国に賛同する同士からの情報です。皇帝陛下の器になれなかった出来損ないの失敗作のユウトがセードに体内のD因子を奪われた影響で、記憶を失い、ただの人間に成り下がったため、ゼロファントスとバーニングライガーを捕獲し、それから我々の情報を入手する魂胆とのことです。」

 

 「ふ、あんな下等な人間ごときが我等の神の尖兵であるゼロファントスを捕獲したところで、扱えることなど出来るとは思えないが…」

 

 「しかし、万が一のことを考えて、一応潰した方がよろしいのでは?」

 

 「まあ、アドリア王国と手を組んだ例のライガーの小僧共の始末はラストに任せているから、大丈夫だと思うが、確かにそうだな。ラス!」

 

 「はっ、」

 

 「あの3人共を出撃させてやれ。」

 

 「あいつらをですか?」

 

 「いっつも帝国領の防衛ばかりに不満を持ってグダグダ言ってただろ? そのストレス解消にちょうどいいと思ってな。 それにあの3人共のキメラは130年前に強奪したゼノレックスとバーニングライガーのゾイド因子を培養して開発したものだ。下等な人間共を欺いてアドリア王国との同盟を阻むのに利用出来るだろう。」

 

 「なるほど、では、そう伝える。」

 

 

 

 その数十分後、3人の人影が研究所の倉庫に向かった。

 

 「今度は帝国と共和国の奴等を潰せって命令みたいだけど、めんどくさいな。」

 

 「けっ、プライドの奴、相変わらずいい顔しやがって。」

 

 「いいんじゃない? 腹ごしらえにはなるだろうし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちとは離れた場所にバルディーたちは流され、そこで目を覚ました。

 

 「う~ん、俺たち無事なのか?」

 

 「何とかな。」

 

 クリスタが後を見渡すと、ライガーとアーサー、ハンターウルフ、ギルラプターの姿だけが見当たらなかった。

 

 「サリーたちがいないわ!」

 

 「確かに、まさか、さっきの濁流で?」

 

 「このオカマ野郎、やっぱり俺たち騙しやがったな!」

 

 「そんなわけないでしょ! あたしは道案内しただけよ。それにまさか、あの自然のダムがあるのに濁流なんて起こるわけないじゃない!」

 

 「自然のダム? どういうことだ?」

 

 「あの先に自然で出来たダムがあるのよ。そのおかげで、あの道を進むことが出来たのよ。」

 

 「確かに、あの時、爆発音が聞こえたような……」

 

 その時、ギレル少佐の乗るスナイプテラを到着した。

 

 「ギレル少佐、無事だったか。」

 

 「ディアス中佐たちが流された後を追ってきたのでな。」

 

 「君のゾイドが唯一飛行タイプだったから、助かったのだな。」

 

 「そのことだが、実はさっきの濁流が起きる直前にあるものを目撃した。」

 

 「あるもの?」

 

 「水を塞き止めていた巨大なダムのようなものをゼロファントスを破壊していたのを目撃した。」

 

 「何!? ということは、」

 

 「ああ、おそらくゼロメタル帝国の仕業だろう。」

 

 「てことは、このオカマ野郎の仕業じゃねぇってことか。」

 

 「さっきから、そういってるでしょうが!」

 

 「ということは、レオたちが危ない! 早く見付けなければ!」

 

 「そうだな。よし、全員で手分けして探すぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バルディーたちがレオとゼオルたちを捜索していく中、レオとゼオルは黒いライジングライガーに変身したファングタイガー改に乗るラストと戦っていた。

 ライガーは再びタテガミブレードで黒いライジングライガーに攻撃するが、黒いライジングライガーはそれを瞬時に避け、回り込んで機関砲を撃ち込み、逆にタテガミブレードで返り討ちにした。

 

 「ぐっ!」

 

 「オメガレックスに対抗するために改造した割には、大したことないわね。もしかしてまぐれで勝ったの? それとも乗ってるあんたが大したことなくて、ライガーの力だけで勝ったのかしら?」

 

 「うっ…俺をバカにするな~!!」

 

 怒り狂ったレオはそのままライガーのタテガミブレードを直撃させる攻撃だけになり、それも全て黒いライジングライガーに悉く返された。

 黒いライジングライガーがライガーとやりあっている隙にアーサーがその背後に回って、不意討ちを仕掛けようとしたが、黒いライジングライガーは今度は尻尾だけをアンキロックスの尻尾に変身させ、アーサーを軽々と吹っ飛ばしてしまう。

 

 「くそっ、奴がライガーとやりあっている隙に潰そうとしても、考えが甘かったか。ましてや、あんなに血が登っているレオと連携は取れなさそうだし……

 それにしても、アーサーが親父の分身で、その親父と俺が古代ゾイド人の生き残りで、ゼロメタルの裏切り者なら、真っ先に俺とアーサーを始末してもおかしくないはずだが…さっきから、あの女、どちらかというと、レオの方を優先して攻撃している。丸で俺とアーサーがその次の始末対象にされているかのようだ……

 単なる私怨か、それとも、レオは俺以上に奴等との因縁を持っているとでも言うのか?」

 

 「レオ!」

 

 サリーの乗るハンターウルフとメルビルの乗るギルラプターがレオとライガーを助けようとするも、たちまち大量のレックスジャミンガに口で手足を捕られてしまう。

 

 「おっと、動くんじゃないよ。そいつらは他のジャミンガより非常に狂暴でね。あたしたちヒューマンオーガノイド以外のものを片っ端から食らう程で、今はあたしが封じてるけど、あたしが命令1つ出せば、その小娘は一瞬で噛み砕かれるわ。」

 

 「止めろ…サリーとメルビルさんには手を出すな。」

 

 「そうしたかったら、大人しくあたしにやられな。何せ、あんたを潰すのが最優先事項なのだから。」

 

 「俺とライガーはお前なんかに負けない。お前に勝ってサリーとメルビルさんを助ける。」

 

 「たく、ホントあの頭の固い父親と似て融通の利かないガキね。」

 

 「また、俺の父さんのことを……!」

 

 「聞きたい? あんたの親父がどうなったか知りたい? あ、言う必要はないか。どうせ、あんたも同じ目に遭うからね。」

 

 「くっ、許さない!」

 

 ラストの煽りに怒り狂ったレオはライガーのタテガミブレードを直撃させようとするが、黒いライジングライガーは全て受け止めてしまう。

 

 「たく、あのバカ、感情的になりすぎだ。」

 

 ゼオルとアーサーもすかさず助けに行くが、サリーのハンターウルフとメルビルのギルラプター同様、レックスジャミンガに捕まってしまう。

 

 「あんたも大人しくしなさい。先にこのガキを殺ってから後でゆっくり料理してあげるわ。」

 

 「やっぱり、あの女の狙いはレオか。しかし、何故彼処まで固執する?」

 

 「それにしても、ホント大したことないわね。オメガレックスに対抗するために改造した割にはその程度なの? 性能だったら、あたしのブラックライジングライガーより上のはずなのに、全然歯応えがないわね。

 それとも、あれ……もしかしてオメガレックスに勝てたのはそのライガーのスペックだけのおかげで、あんたの力は全くなかったってこと?」

 

 「うるさい!」

 

 「まあ、それなら、勝てる理由にはなるわね。それにあの時はお仲間もいたから、そいつらの力に頼ったから、勝てるのも無理はないわね。」

 

 「うるさい!」

 

 「なんなら、そのライガーの性能を引き出しやすいように代わりにあたしが乗ってあげようかしら? もちろん、ゆっくり調教してね…」

 

 「うるさい~!!」

 

 ラストの煽りに感情的になっていくレオ、ライガーは指示に従いながらも心配そうな表情をしながら、黒いライジングライガーに攻撃するが、黒いライジングライガーはタテガミブレードで跳ね返し、そのまま反転して後ろ足でライガーを吹っ飛ばした。

 

 「ぐわぁっ!」

 

 「レオ!」

 

 「はあ~、もういい加減に飽きたわね。あんまり長々やると、プライドがごちゃごちゃ言ってくるから、そろそろフィニッシュにしてあげるわ。」

 

 黒いライジングライガーの身体が液体金属状になり、再びファングタイガー改の姿に戻り、ツインドファングで止めを刺そうとしたその時、突然、イグニッションブースターを装備したナックルコングが現れ、ファングタイガー改のツインドファングを受け止め、更に同時に現れたイグニッションブースターを装備したファングタイガーが背後からファングタイガー改を攻撃し、ファングタイガー改を吹っ飛ばした。助けたのはシーザーの側近にして同じヒューマンオーガノイドであるクラウスの分身のファングタイガーのクロスタイガーとモーリスの分身のナックルコングであるアドリアコング(ナックルコング アドリア)だった。

 

 「くっ、」

 

 「大丈夫かい? レオ、ゼオル様。」

 

 「あ、あなたは……」

 

 「何故、貴様らが此処に?」

 

 「貴様とは以前ゾイドクライシスの頃から戦っていたのでな。」

 

 「貴様の戦いそうな場所等、大体検討がつく。もうじき、国王シーザーの一向もこちらにつく。大人しく降伏しろ。」

 

 「ふん、なら、その間にあんたたちを始末すればいい話よ。」

 

 「いいのか? 我ら2人を同時に相手して。」 

 

 「舐めるな! デスファング!!」

 

 ファングタイガー改がクロスタイガーとアドリアコングに突っ込んで攻撃したところにクロスタイガーとアドリアコングはイグニッションブースターの加速で瞬時に避け、アドリアコングがすかさず、ファングタイガー改にパンチをお見舞いし、更にクロスタイガーがショートレーザーガトリングを連射した。砲撃を受けながらもファングタイガー改はサンダーテイルを当てようとしたが、クロスタイガーはそれを難なく回避し、前足で装甲を引っ掻き、反転して後ろ足で吹っ飛ばした。

 

 「ぐっ! あんたら、あいつらを殺れ!!」

 

 ラストの指示を聞いたレックスジャミンガはサリーのハンターウルフ、メルビルのギルラプター、アーサーを捕らえた個体も含めた全てが一斉に丸で獲物に襲いかかる野獣のようにクロスタイガーとアドリアコングに襲いかかってきた。

 しかし、クロスタイガーとアドリアコングは怯むことなく、イグニッションブースターでレックスジャミンガの群れに向かって一気に加速しながら突き進み、アドリアコングはイグニッションブースターの加速による強力なパンチでレックスジャミンガの頭部を粉々に破壊し、更に何体かの個体も一瞬で吹き飛ばし、クロスタイガーもショートレーザーガトリングを連射しながら突き進み、一体一体確実に破壊し、前足でレックスジャミンガの口に突っ込み、その頭部を両断していった。

 クロスタイガーとアドリアコングの凄まじいパワーに圧倒されたレオたちはただ、それをじっと見守ることしか出来なかった。

 

 「す、凄い。」

 

 「があっ!」

 

 「どうだ? これでもまだ続けるか?」

 

 ファングタイガー改が尚も前に出ようとしたその時、突然、スパイデスの糸がファングタイガー改の前を阻み、ミラーのグソック、アイパーのスパイデス、ポーチのスコーピアも現れた。

 

 「レオ君には指一本触れさせないわ!」

 

 「ちぃっ、もう来たのか。ここは引き下がるしかないわね。」

 

 状況が不利と見たラストはそのまま残ったレックスジャミンガも連れてそのままこの場を去った。その後、シーザーやディアス中佐たちも辿り着いた。

 

 「レオ~、大丈夫だった!? 怪我はない?」

 

 「あ…ああ、俺なら大丈夫だよ。」

 

 「ゼオル様、大丈夫ですか?」

 

 「心配ない。それより、一刻も早くニューホープに着かねば…他の敵が来る前に。」

 

 「確かに急がねば。既に我々の行動は筒抜けですからね。」

 

 「そうと決まれば、急ぐぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツガミ大尉率いる帝国、共和国の合同軍によるゼロファントス及び赤いライガー捕獲部隊はかつて真帝国がオメガレックスを起動させた火山地帯に隣接する基地で待機していた。

 この基地は真帝国壊滅後、再び帝国軍の元に戻り、オメガレックスによって壊滅寸前に追い込まれたネオゼネバスシティの復興と共に新たに創り直され、ゼロメタル帝国への防波堤とした。

 ツガミ大尉によるゼロファントス及び赤いライガー捕獲作戦は以下のものである。まず、帝国、共和国両軍によるゾイド全てに帝国のエンブレムを付け、敢えて目立つように行軍し、火山地帯の基地に集結した際には、帝国エンブレムの国旗を掲げ、更に以前シーガルの真帝国成立の演説の映像を音声加工で、全世界に流し、あたかも真帝国の残党が残っていて再び真帝国を復活させたような演出をした。

 

 「ツガミ大尉、一体何故、そのような演出を?」

 

 「プライドはシーガルを利用し、真帝国を帝国が滅びゆく成れの果てとして、我が共和国共に壊滅させようとしていた。しかし、未だ真帝国の残党が残り、再びその反乱を起こしたと思わせれば……」

 

 「なるほど、以前のオメガレックスによるネオゼネバス襲撃のさ際にゼロメタルはこの世に2つの帝国は必要ないと宣言しているため、奴等にとって真っ先に潰すのは我が帝国、しかも真帝国の残党が未だ生き残っているとあったら、流石に黙っていないということか。」

 

 「そういうことだ。」

 

 「しかし、本当に来るのでしょうか?」

 

 「奴等を誘い出すにはこれしかない。それに今回判明した作戦はあくまでゼロファントスと未だ正体不明のあの赤いライオン種を鹵獲することが目的で、ゼロメタル帝国の部隊を叩くことではない。」

 

 「しかし、ゼロメタル帝国は我が帝国及び貴国にとって倒すべき存在だ。 やはり叩いておいた方が……」

 

 「ゼロメタル帝国の戦力はまだ未知数だ。それにゼロファントスの性能や我が両軍のゾイドとどう違うのかも判明されていないため、ゼロメタル帝国に対抗する手は今の我々にはない。

 そのためにも、敵のゾイドを鹵獲し、それから敵の情報を得、その突破口を見付けなければならない。」

 

 

 

 それから基地の出入口と壁の周囲でバズートル隊が見張りをしていく中、基地の周囲が霧に覆われていった。

 

 「来たか! 全軍、作戦配置につけ。」 

 

 ツガミ大尉の指示通り、共和国のギルラプターLCとリュック大尉率いる帝国軍部隊が配置につき、敵が現れるのを待った。

 そして暫くすると、見張りのバズートル隊の目の前の霧からゼロファントスらしき姿が複数現れた。

 

 「敵を捕捉、バズートル隊、マシンブラスト発動!」

 

 バズートル隊が一斉にマシンブラストを発動し、狙いを定めようとしたところに霧からディゾルボムが投げ込まれ、次々とバズートルが撃破されていった。

 

 「怯むな! 一体でもいいゼロファントスを撃破することだけを考えて砲撃しろ!」

 

 バズートル隊は引き続き、砲撃するが、霧の中から更にゼロファントスダークスも現れ、バズートル隊を次々と蹴散らされていった。

 

 「ツガミ大尉、ギルラプターLCも出撃させた方がいいのではな?」

 

 「しかし、ここで出すのは……」

 

 「今のままでは我が軍が不利だ。このままでは基地が制圧されてしまうぞ!」

 

 「(くそっ、ギルラプターLCは切り札として出すはずだったが、まさか、ここまで進軍が速いとは……) やむを得ん、ギルラプターLC隊出撃、ゼロファントスを迎え撃て。各個撃破だ!」

 

 ツガミ大尉の指揮に従い、ギルラプターLC隊が基地から出撃し、ゼロファントスダークスをレーザーガンで迎え撃ち、ゼロファントスダークスはそれに構わず、突っ込み、ギルラプターLCは持ち前の機動力でゼロファントスダークスを翻弄し、互角に渡り合った。やがて、両軍が拮抗していくと、霧から赤いライガーらしきシルエットが現れた。

 

 「あれは!」

 

 「現れたか。しかし、あの赤いライガーは確か、報告ではゼロファントスと一緒ではなかったはずでは……」

 

 霧の中から現れた赤いライガーらしきゾイドはゼロファントスダークスと交戦しているギルラプターLCに向かって突っ込んでいった。ギルラプターLCはレーザーガンで撃ち込むが、赤いライガーらしきゾイドはそれを頭部で防ぎ、更に頭部からガトリングガンのようなものを撃ち込んだ。目の前のギルラプターLCは撃破されてしまうが、その背後から2体はギルラプターLCが現れ、背中ガトリングを破壊しようとするが、近付くと背中にガトリングらしきものはなかった。

 

 「何!?」

 

 それに気付いた赤いライガーらしきゾイドは後ろ足のミサイルポッドを展開し、そこから発射されたミサイルで2体とも撃破されてしまった。

 

 「どうなっている? 情報ではあの赤いライガーは背中にガトリングやその他の武器を使い分けて戦うはずなのに!」

 

 「ツガミ大尉、あれを!」

 

 リュック大尉が指を指すと、そのゾイドは姿を現した。それは形状こそは赤いライガーそのものだが、カラーリングは赤ではなく、青紫になっていて、更に頭部にはデスレックスの頭部のようなアーマーとガトリングが装備され、後ろ足にはミサイルポッドも装備されていた。

 

 「バカな! 何だ、あれは!?」

 

 赤いライガーもどきのゾイドは赤いライガーに似た機動力と赤いライガーにはない装備で、ギルラプターLCを翻弄させ、撃破していった。

 他のギルラプターLCも迎え撃とうとしたその時、突然電磁パルスが放たれ、ギルラプターLCの動きが抑えられ、霧の中からガブリゲーターの頭部現れ、身動きの取れなくなったギルラプターLCに噛みつき、バリバリと噛み砕いた。やがて、霧の中からその全貌が明かされると、それは頭部こそはガブリゲーターだったが、それ以外の身体はディメパルサーのものだった。リュック大尉率いるキャノンブルも出撃するも、別の方向からゼノレックスの頭部をしたステゴゼーゲまで現れ、キャノンブルを斬り刻んでいった。

 

 「何なんだ、こいつらは!」

 

 「こいつらがプライドが潰せとけといった連中か?」

 

 「何か、前より食い応えはありそうだね。」

 

 「どうでもいいよ、さっさと終わらせようよ。」

 

 

 ゼロファントス軍団と共に霧から現れ、合同軍による捕獲部隊を蹂躙した3体のゾイドはいずれも2体以上のゾイドを合成したかのようなキメラゾイドだった。

 予想外の敵にツガミ大尉やリュック大尉、部隊の兵士たちはどう対処すればわからず、戸惑い、為す術もなく破壊されていった。

 

 「スティレイザー隊、4機撃破、」

 

 「バズートル隊、キャノンブル隊も12機撃破、」

 

 「くそっ、まさか、ゼロメタル帝国に新たな戦力がいたとは! 私の計算ミスだ。」

 

 「な~んか、食べたりないね。これじゃ、朝食にもなりゃしない。」

 

 「おい、グラトニー、俺の獲物まで食うんじゃないぞ。 俺は最高にイライラしてんだ!」

 

 「どうでもいいよ。さっさと終わらせて帰ろうぜ。」

 

 ギルラプターLC隊は赤いライガーもどきのゾイドに攻撃するが、そのライガーは顔に装備しているデスレックスのアーマーでギルラプターLCのレーザーガンを全て防ぎ、頭部のマシンガンとミサイルポッドで撃破し、更にガブリゲーターの頭部をしたディメパルサーがマッドオクテットで動きを封じたギルラプターLCとキャノンブル、バズートルを手当たり次第にを噛み砕き、同時にゼノレックスの頭部をしたステゴゼーゲも続けて破壊していった。

 

 「おいおい、こんなものかよ! 今の俺はプライドに命令されてイライラしてんだ。もっと俺を楽しませろよ!!」

 

 赤いライガーもどきのゾイドがツガミ大尉の乗るステゴゼーゲ改に襲いかかろうとしたその時、一体のギルラプターLCが現れ、更にレーザーガンでガブリゲーターの頭部をしたディメパルサーとゼノレックスの頭部をしたステゴゼーゲまで攻撃を加えた。

 

 「このおぉ~、何だてめぇは!」

 

 赤いライガーもどきのゾイドがガトリングガンを撃ち込むが、そのギルラプターLCはそれを軽々と避け、レーザーガンで迎撃した。

 

 「何だ? あのギルラプターLCだけ、やけに骨があるな。一体、誰が?」

 

 ツガミ大尉がギルラプターLCのコクピットのリストを見ると、あのギルラプターLCだけはリストに載ってない者が乗っていて、そのコクピットを調べると、そのギルラプターLCにはユウトが乗っていた。

 

 「何!? 何故、あいつが!」

 

 ユウトの乗るギルラプターLCは赤いライガーもどきのゾイドと互角に渡り合うが、ガブリゲーターの頭部をしたディメパルサーとゼノレックスの頭部をしたステゴゼーゲの連携により、苦戦を強いられてしまう。

 

 「うわぁっ!」

 

 ツガミ大尉たちが出撃する前、ユウトは自分が誰なのか、何故、ここにいるのか知るために密かにツガミ大尉とハント大佐の話を立ち聞きし、ゼロファントス捕獲作戦を知り、ゼロメタル帝国が自分の記憶を知っていると思い、それに加わってゼロファントスと接触して記憶を取り戻そうと考え、密かに基地の医務室から抜け、1人のギルラプターLCのライダーを気絶させ、その耐Bスーツを奪ってギルラプターLCに乗り込み、ゼロファントス捕獲部隊に紛れ込んでいたのだった。

 ユウトは先のネオゼネバス戦の際にペンダントと自身の身体に宿るD因子と呼ばれる力を奪われ、かつてのような力を失い、通常の人間同様に耐Bスーツ無しではゾイドに乗れない状態になっていたが、それでも、ユウトは以前ハンターウルフ改に乗った時と同等の技量で3体のキメラゾイドと渡り合ったが、それでも以前より弱体化していることに変わりはなく、ガブリゲーターの頭部をしたディメパルサーのマッドオクテットを食らって遂に動けなくなってしまった。

 

 「何だか、知らねぇが、てめえも潰してやるよ! グラトニー、スロウス、てめえらは手を出すな!」

 

 「じゃあ、後は食ってもいいよね?」

 

 「はいはい、さっさとやってよ。」

 

 「ウオォ~!!」

 

 赤いライガーもどきのゾイドがマッドオクテットで身動きが取れなくなったユウトの乗るギルラプターLCに止めを刺そうとしたその時、突然、別の方向からガトリングが放たれ、赤いライガーもどきのゾイドの攻撃を阻んだ。

 

 「なっ!」

 

 「あれは……!」

 

 その時、現れたのは背中にインパクトガトリングを装備した正真正銘、本物の4体の赤いライガーだった。

 

 To be contcontinued




 次回予告

 プライドが送った新たなゼロメタル帝国のメンバーが操るキメラゾイド3体に敗れ、ゼロファントス及び赤いライガーの捕獲が失敗し、更に戦闘に乱入したユウトが4体の赤いライガーの捕虜にされてしまう失態を犯してしまう。
 赤いライガーの捕虜にされたユウトは、4体の赤いライガーのライダーから、自分の正体を聞かされる。果たしてユウトの正体は……

 次回「赤き獅子王、バーニングライガー」走り抜け、ライガー!!

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