ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたプライド元摂政がゼロメタル帝国を立ち上げ、その皇位継承者となったユウトがオメガレックスで帝国を襲撃したが、それも破り、ゼロメタル帝国の勢力を大きく落とした。だが、それは同時に新たな絶望の始まりだった。


第50話「ライジングライガーVSバーニングライガー」

 ツガミ大尉はニューホープに撤退し、ことの次第をギャレット大将とハント大佐に報告した。

 

 「正体不明のキメラゾイドが3体現れたことにより、部隊は苦戦し、更に帝国の大事な捕虜であるザナドゥリアスが部隊に紛れ込み、乱入した赤いライガーに捕らわれてしまうようになるとは……」

 

 「申し訳ありません。全ての責任は私1人にあります。必ずや、ザナドゥリアスの奪還に努めます。」

 

 「うん、これ以上、ゼロメタルの脅威に晒されれば、我々は奴等の属国になってしまう。頼んだぞ!」

 

 「わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャレット大将への報告を終えたツガミ大尉はハント大佐と共に司令部に向かっていった。

 

 「任務には失敗したとはいえ、敵には更なる戦力の存在がいて、どういう理由でザナドゥリアスを拉致したのか不明だが、その赤いライオン種がゼロメタル帝国と交戦していたのなら、上手く交渉に持ち込めば、我々の味方になってくれる可能性も有り得るということになる。」

 

 「甘いですよ、大佐。いくらゼロメタル帝国と対立していることがわかっても、あの赤いライオン種は我々も敵としてマークしているかもしれません。

 現に今まで我が共和国及び帝国の基地はあの赤いライオン種に破壊され、更にゾイドまで奪われてもいるのですよ。交渉に持ち込める相手とは思えません。やはり、直接鹵獲するしか……」

 

 「そうかしら……」

 

 「何が言いたいのですか?」

 

 「実は先程、行方不明だったディアス中佐から通信が入り、こちらに戻ると出たわ。」

 

 「中佐が…ですか? しかし、それが何か?」

 

 「朗報が入ったのよ。その例の赤いライオン種と同じ未確認ゾイドとそのライダーをこちらに連れてきたって話よ。」

 

 「何!?」

 

 

 

 

 

 

 無事にニューホープに戻ったレオたちは基地に入ってツガミ大尉とハント大佐に会い、シーザーとゼノレックス、そしてアドリア王国のこと等、ディアス中佐が事の次第を話した。

 

 「まさか、絶滅したはずのオーガノイドが生き残っていて、しかも更に進化したヒューマンオーガノイドになって独自の進化を遂げているとは……」

 

 「信じられないかもしれないが、事実だ。それに彼らはゼロメタル帝国に対抗するために我々に味方してくれるといった。」

 

 「それはありがたい。先程、ゼロファントスと赤いライガーの鹵獲に失敗して、ザナドゥリアスまで奪われた失態を取り戻すことが出来る。」

 

 「ん? どういうことだ。ザナドゥリアスを奪われたって…」

 

 「あ、いや、それは……」

 

 それを聞いたメルビルはツガミ大尉に立ち寄り、

 

 「どういうことですか? ユウトはどうしたんですか? あの子は何処にいるんですか?」

 

 「実は……」

 

 

 ツガミ大尉はレオたちがアドリア王国にいるときのゼロファントス捕獲作戦の一連のことを話した。

 

 「そうか、そんなことが……」

 

 「しかし、何故、コバたちがその者を?」

 

 「ん? シーザー、知っているのか?」

 

 「知っているも何も、その赤いライガーはコバ、ウルサス、オルド、ドッジがゼネバス帝国に捕らえられた時に彼らを媒体として生み出された分身、バーニングライガーなのだ。」

 

 「そういえば、親父の造ったオーガノイドにはお前ら以外にも後4体いたな。あの赤いライガーがそれか。」

 

 「まさかとは思うが、よもや彼らだったとは…」

 

 「でも、お前たちの仲間なら、話せばわかるんじゃないのか?」

 

 「それがそう簡単にはいかないのです。」

 

 「?」

 

 「だが、しかし、帝国の大事な捕虜であるザナドゥリアスをこのままにしておくわけにはいかない。直ぐにでも向かおう。」

 

 「ユウト…ザナドゥリアス……?」

 

 「どうした? 親父。」

 

 「うわっ、白いライガーが喋った。」

 

 「ツガミ大尉、これも話せば長くなるから、後で教えてやる。」

 

 「ゼオル、その者は助けない方が……」

 

 「親父、さっきからおかしいぞ。まさか、怖いのか?」

 

 「いや、決して……」

 

 「とにかく時間がない。ザナドゥリアス救出は我々で行こう。」

 

 「あの、ディアス中佐…」

 

 「何だね?」

 

 「この失敗は私の責任です。私も連れていってください。」

 

 「いや、ここは私たちでいく。君はここで作戦の立て直しを。」

 

 「しかし、ロックバーグ中尉にまで手を汚すわけには!」

 

 「あら、あたしじゃ、頼りないってわけ?」

 

 「え、いや……」

 

 「あんたの失態は私がつけるから。あんたは引き続き、その作戦を失敗のないようにしなさい。ハント大佐、よろしいですね?」

 

 「わかった、許可する。」

 

 「ディアス殿、コバたちの拠点は我々が知っている。案内は我々が。」

 

 「それは心強い。よし、では出発する。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コバたちが本拠地を構えている場所から数キロ離れた場所の廃墟にジェノスピノ暴走形態が次々と現れる紫色の目をしたジャミンガを蹴散らしていき、コクピットのセードは右腕を押さえ、力を制御しようとしていた。

 

 「さっきは抑えることすらままならなかったが、だが、これで少しは制御出来た。」

 

 その時、異形の形になった右腕を押さえているセードの脳裏に複数のゼロファントスを従える超巨大なゾイドが背中の棘々から全包囲にビームを放ち、周囲にいた恐竜を全て死滅させ、地球が一瞬で火の海になったビジョンが映った。

 

 「うっ、そうか。今のが俺の右腕を蝕む奴の正体か。ならば、その本体ごと俺が取り込んでやる。ん? ここから数キロ先にゾイドの反応……

 しかも、ライガーと似た反応だと? ふ、ちょうどいい。ようやく制御に成功したこの力を試してやる。いくぞ、ジェノスピノ。」

 

 セードの言葉に従ったジェノスピノ暴走形態はそのまま突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 ユウトを取り戻すべくレオたちはシーザーの案内によってコバたちが本拠地を構えている場所へ向かった。ニューホープから5キロ進んでいくと、近くにゾイドクライシスで荒廃した街が見え、シーザーによると、そこにコバたちが本拠地を構えている場所ということだった。

 

 「あれがコバ、バーニングライガーの拠点です。」

 

 「彼処にユウトが……」

 

 「それにしても、この道は1年前に帝国軍を迎え撃つために共和国軍が通った際に何者かに襲撃され、通信が途絶え、ゼロメタル帝国領同様に禁制地区に指定された場所だ。まさか、ここにいるとはな。」

 

 「恐らく、バーニングライガーが近くを通った貴国の軍を隙を見て襲撃し、ゾイドを奪取していただろう。彼等は戦争に使われたゾイドの苦しみを我々よりよく知っているからな。」

 

 「ゾイドの苦しみ……」

 

 それを聞いたレオは深刻そうな表情をした。

 

 「とにかく行こう。私が先にでて君たちはその後についていってくれ。彼等は私たちの仲間だ。私が交渉相手になる。」

 

 「了解した。」

 

 

 

 

 シーザーのゼノレックスがゆっくり廃墟の街に近付く中、廃墟の地下施設では、コバたちバーニングライガーのヒューマンオーガノイドが会議をしていた。

 

 「コバ、控えめに言っても、やはりあの小僧がドクターマイルスが造ったDの器の人造人間の可能性が高い。」

 

 「しかも、身体の状況を調べると、抽出された後のような傷があった。もしかすると、ゼロメタル帝国の奴等が、または別の何者かにD因子を奪われた可能性もある。」

 

 「どちらにせよ、始末する必要がある。ゼロメタルの奴等も、人間も全て我々の敵なのだ。」

 

 「わかっている。だが、ゼロメタルの奴等がどこまでZGの復活にどこまで尽力しているかはわからない。6500万年前に我々が封印した時はまだ不完全で力が十分ではなかったため、封印に成功したが、奴等が完全体として復活させたら、もはや手がつけられなくなる。

 奴がその器の人造人間なら、奴等の計画を知る貴重なサンプルになる。処分はその後でいい。ん?」

 

 「どうした?」

 

 「俺の分身のバーニングライガーが何かに反応して、俺に伝達している。」

 

 「ゼロメタルの奴等がここを嗅ぎ付けて来たのか…または、帝国、共和国の奴等が解放したゾイドを奪いに来たのか…」

 

 「俺が出る。お前たちは俺の指示が出るまで、入口で待機していろ。」

 

 

 

 

 ライガーたちがゼノレックスについて、廃墟の街に入り、周りに警戒しながら、進んでいくと、目の前にコバのバーニングライガーが待ち構えていた。

 

 「あれが…バーニングライガー……。」

 

 「君たちはそこで待っていてくれ。私が彼と話をする。」

 

 「俺は出なくていいのか?」

 

 「いや、これは我々アドリア王国の問題だ。ゼオル様たちの問題ではありません。」

 

 「シーザー、まさか、貴様が愚かな人間の奴隷になるとはな。そんなものがアドリア王国の王などと、万死に値するぞ!」

 

 「それは違う! 私は人とゾイドの共存する世界を築くためにアドリア王国の王となった。ゾイドは人の協力なしでは生きられない。

 我々の創造主たるアーサー様が望んでいた世界を実現するために!」

 

 「だが、その理想はかつてのムー、アトランティス戦争で費え、更に地上で発展した人類による部族間、宗教関係、そして人種関係による戦争が一万年以上も続き、そしてゾイドクライシスが起これば、地球にそっぽを向け、核を撃ち込んで脱出し、更にその後に移住した帝国、共和国も荒れた地球で好き放題戦争をやり、惑星Zi同様にゾイドを戦争の奴隷にした。 そんな奴等を信用出来るわけがない!」

 

 「全ての人間がそうとは限らない。その証拠に彼等の中に

アーサー様とゼオル様がおられる。」

 

 シーザーが名指しし、アーサーを見たコバは驚愕した。

 

 「!? まさか…生きておられたのか……」

 

 「アーサー様とゼオル様はかつて一緒に科学船に乗っていたボーマン博士とその仲間によって保護されている。彼等は我々の味方だ。」

 

 「だったら、アーサー様とゼオル様だけ迎えいればいいだろ!」

 

 コバの操るバーニングライガーが襲いかかった時、ゼノレックスは口でバーニングライガーの前足を止めた。

 

 「あくまで、人間を迎え入れないということか…」

 

 「そうだ。ゾイドは今まで人間の勝手な私利私欲によって、凶悪な戦争兵器に変えられ、酷使されてきた。 

 人間は何も学ばない、自分以外の種族を受け入れない傲慢な生物、そんなものを受け入れれば、我々ゾイドは呪縛から解けない。ならば、我々のするべきことは、人類を1人残らず駆逐し、全てのゾイドを人類から解放し、この地球にゾイドもための自由な世界を築くのだ!」

 

 「ふん、」

 

 その時、ゼノレックスの身体がオレンジ色に輝き、ゼノレックスの背中にバーニングライガーと同じインパクトガトリングが装備され、それをバーニングライガーに撃ち込んだ。

 

 「インパクトガトリング……そうか、貴様も俺と同じコアドライブウェポンを!」

 

 「確かに人間は余りに身勝手で、どうしようもない生き物、私もかつてヘリック共和国によって、このゼノレックスを開発するための実験台にされ、そしてムー、アトランティス戦争で、私は人類を見放し、一時は殲滅も考えようとした。

 だが、アーサー様の言葉を思い出し、敢えて私は人間を信じ、ずっとその時を待って眠っていた。

 そして、そのアーサー様は自らライガーとなって生き延び、そしてそのご子息ゼオル様もこうして生きている。つまり希望はあるということだ。」

 

 「希望は我々ゾイドの自由のみだ!!」

 

 「ちぃっ、やはり、お前と戦うしかないのか。」

 

 バーニングライガーとゼノレックスが再びぶつかり合うその時、サリーの乗るハンターウルフがそれを制止した。

 

 「サリー!」

 

 「止めて。私たちはあなたたちと戦いに来たんじゃありません。」

 

 「じゃあ、何が目的だ。」

 

 「私たちはメルビルさんの大事な人、ユウトを助けにここに来たのです。」

 

 そこへ、ゼノレックスとバーニングライガーのぶつかり合いによる音で外の様子が気になって崩れたビルの下から、ユウトがその様子を見に行った。

 

 「サリー、下がってて。」

 

 「ユウトだと!? 貴様ら、あの小僧を知っているのか?」

 

 「ああ、俺たちはユウト、ユウト・ザナドゥリアスを助けに来るために来たんだ。あんたたちと戦うためにここに来たんじゃない。」

 

 「ユウト・ザナドゥリアス……そうか、やはり貴様らゼロメタル帝国に寝返ったということか!!」

 

 ユウトの名を聞いたバーニングライガーは突然、サリーのハンターウルフに襲いかかり、すかさず、レオのライガーがそれを防いだ。

 

 「何をするんだ? サリーに手を出すな。」

 

 「は、偽善者のつもりでいるようだが、まさか、あのDの器となる人造人間を狙っているということは、あれをゼロメタル帝国に献上して降伏するというのだな。」

 

 「さっきから、何を言っているんだ? それにDって……」

 

 「とぼけるな! ユウト・ザナドゥリアス。あれはゼロメタル帝国の現トップ、プライドがかつてブレードライガーによって倒された最強最悪のゾイド、デスザウラーをこの世に復活させるために、ドクターマイルスがその器としてバイオテクノロジーで造った人造人間なのだぞ。」

 

 「な…何だって!?」

 

 それを聞いた全ての一同は驚愕し、メルビルは青ざめた表情をした。

 

 「そ…そんな……」

 

 「ユウトがデスザウラーだって? そんなはずあるか!」

 

 「嘘ではない。アーサー様はもちろん、それをご存知で、あれを始末するつもりでしたよね?」 

 

 それを聞いたアーサーは静まり返るように顔を下げた。

 

 「親父、まさか、あの時、ユウトの名前を聞いた時、何か、やたらと救出を避けようとしていたが、ホントなのか?」

 

 「ああ、事実だ。」

 

 「かつて300年前の大戦によって、デスザウラーは本体を失い、ゾイド因子だけの存在となり、プライドはゾイド因子だけとなったデスザウラーに新たなボディを与えるために仮の肉体として、人工的に造った人間の肉体に移植し、それを我々アドリア王国封印したZG

と融合し、完全なるデスザウラーとして復活させるためのがゼロメタル帝国の計画なのだ。」

 

 デスザウラーの名を聞いたユウトは失った記憶の全てを失い、地球に向かう科学船の研究室でまだ赤ん坊のユウトが入っているカプセルを見るプライドとドクターマイルスのビジョンが浮かび上がった。

 

 「(ホントにこいつで、デスザウラー様の仮のお姿になられるのか?)」

 

 「(かつて300年前にデスザウラー様が取り込んだヒルツを初め、他の古代ゾイド人の遺伝子を全て合成させたものだ。私の傑作といってもいいだろう。)」 

 

 「(ふん、まあ、いい。後は全ての端末を手に入れれば。地球にデスザウラー様を復活させることが出来る。)」

 

 造られたユウトが本当にデスザウラーと融合出来るのか、予め造られたユウトのクローンにD因子を注入させた実験を行うも、クローン体がまだ赤ん坊だったこともあり、D因子を注入したユウトのクローン体は醜悪な怪物に変貌してしまった。

 しかし、その時、科学船が地球に到着する寸前に入り、ボーマン博士が端末を起動させようとしたため、業を煮やしたデスザウラー不完全体はプライドたちと共に船でクーデターを起こし、自身で端末を起動させるが、不完全だったこともあり、端末は誤作動を起こし、科学船はワームホールに飲み込まれ、不完全体デスザウラーは端末の光で姿を消し、同時にユウトの入れたカプセルも光に飲まれて何処かへ転送されてしまった。

 ワームホールの中、カプセルのユウトは徐々に丸で時が進んでいくように身体が成長し、同時に身体から紫色光を帯びていた。実はD因子の注入の実験の際にドクターマイルスは万が一のことを想定してユウトにD因子の一部を注入させていたため、ユウトの身体が成長することによって同時に彼の身体に注入されていたD因子の一部も成長し、その力を高めていたのだ。

 ワームホールを抜け、カプセルは地球に到着し、その反動によって目覚めたユウトはカプセルから抜け、さ迷っていた。

 自身の親を持たず、生みの親が自分たちの計画のために造られた道具同然の存在だったユウトは何も知らずに生きていき、その行く手に襲いかかるジャミンガに恐怖しながら、生きていき、やがてメルビルのいる孤児院に拾われ、そして帝国に潜入し、ユウトの情報を得たプライドはランドに命じ、メルビルと共にその養子となって帝国軍に入隊した。

 彼が孤児院で襲いかかったジャミンガを平伏し、更に耐Bスーツ無しで何のリスクもなく、あらゆるゾイドを乗り越し、操れたのは彼の内在するD因子による力で、そして端末に触れた後の人格豹変と暴走は端末によって覚醒したD因子がユウトの人格を乗っ取ったものだったのだ。

 

 「そうだ……僕は計画のために造られたただの人形、最初から、両親なんて…いなかったんだ。」

 

 ギルラプターに乗っているメルビルはガクッと膝を落とし、孤児院にいたときに襲撃したジャミンガがユウトに恐怖してすごすごと引き下がり、その光景を見て、化け物扱いされて、怯える孤児たちのビジョンを思い出していた。

 

 「(化け物だ! 化け物!)」

 

 「(あいつは人間じゃない。)」

 

 「(ジャミンガを怖がらせる悪魔だ!)」

 

 「そんな……ホントに…ホントに…ユウトが化け物だったの……」

 

 「め、メルビルさん……」

 

 その様子を見たサリーは凄く悲しそうな表情をした。

 

 「ユウトが…人造人間……はっ!」

 

 その時、レオは以前、帝国軍に鹵獲されたビーストライガーを救うために帝国軍基地に侵入し、そこで対決したユウトの右腕を掴んだ時に何人かの研究者がいる研究室に1人の子供が入れられているカプセルのビジョンを見た時のことを思い出した。

 

 「そうだ、あの時、ライガーを助けるためにユウトと戦った時にあいつの右腕を掴んだ時に見たビジョン……あれはユウトの過去だったんだ。そしてあのカプセルに入っているのがユウト。」

 

 「そいつを人質交換するなら、その要求は断じて拒否する! 貴様らもゼロメタル帝国の同類として始末する。 ウルサス、オルド、ドッジ、やれ!!」

 

 コバの命令に従ったウルサス、オルド、ドッジの操る3体のバーニングライガーが現れ、それぞれゼノレックス、ワイルドライガーガンナー、フォックス、パキケドスBR、に襲いかかった。

 

 「くそっ、やっぱり行くしかないか。親父いくぞ!」

 

 ゼオルとアーサーもそれに加勢しようとした時、シーザーが制止した。

 

 「お待ちください。ゼオル様、あなたまで出る必要はありません。」

 

 「だが、あいつらもお前同様、親父の造ったオーガノイドなんだろう。なら、俺が出れば、済む話じゃないか。」 

 

 「確かにコバたちはゼオル様には危害は加えません。しかし、いくらあなたの説得あっても、コバたちはあなた以外の人間を全て排除するでしょう。 それにこれは私たちの問題です。ケジメは私がつけます。」

 

 「おいおい、俺とマリ、ガンナーだっているんだぜ! ゼオルの問題は俺たちの問題、俺たちがきっちりつけてやるぜ。」

 

 「俺とフォックスもいることを忘れるな。」

 

 「ツガミ大尉の失態をこのままにしておくわけにはいかないからね。」 

 

 「たくっ、まさか、この俺が仲間に頼られることになるとは……」

 

 

 

 

 

 「インパクトガトリング!」

 

 「ライガー!」

 

 コバの操るバーニングライガーがライガーにインパクトガトリングを撃ち込み、ライガーはそれをすかさず、メガシールドで防いだ。

 

 「いつかのライガー、帝国軍基地襲撃の時以来だな。そしてそのメガシールド、ゾイドクライシスの時に放棄した私のコアドライブウェポンを再利用したものか。

 同じライオン種だから、私の考えを理解してくれるものだと思ったが、所詮貴様もあのゼロメタル帝国の紛い物と同類だ!」

 

 「違う!」

  

 「何が違う!? あの小僧を庇うのが何よりの証拠だ。」

 

 「違う! あいつの正体が誰であれ、あいつはそんな悪い奴じゃない。初めてあいつと戦った時、ライガーの攻撃がハンターウルフに当たった時、傷付いたハンターウルフのために怒ってくれた。

 それにサリーを助けようとしたあの時、オメガレックスの荷電粒子砲が放たれる寸前に僅かだけど、俺の左腕から、あいつの思いを感じた。あいつはホントは戦いたくないって…だから、俺はあいつを救うために来たんだ!」

 

 「戯言を!」

 

 「お前がゾイドのことを思っているように、俺もゾイドのことを、ライガーのことを大切に思っている。俺の父さんはゾイドと人は共存出来るって教えてくれたんだ。だから、俺は…」

 

 「黙れ! 人間は全て偽善者だ!!」

 

 「くっ、話を聞いてよ!」

 

 グルル……

 

 その時、左腕を通じてライガーがレオに伝えた。

 

 「ライガー…わかった。話が通用しないなら、戦いで説得する。いくぞ、ライガー! 進化 解放! エヴォブラストー!! ライジングバーストブレイク!」

 

 ライガーの渾身の一撃がバーニングライガーに直撃しそうになったその時、バーニングライガーは持ち前は機動力でそれを回避した。

 

 「何て速さだ。」

 

 「貴様は肉弾戦が得意なのか…ならば、その敬意を評してこちらも同じスタイルで戦おう。」

 

 その時、バーニングライガーの頭部コクピットのハッチが開き、コクピットから出たコバがオーガノイドの姿に変身し、バーニングライガーと融合し、オレンジ色の光に包まれ、それぞれの両脇にレーザードリルとメガシールド、口にナイトソードを食わえた装備に変わった。

 

 「バーニングライガーの装備が変わった。」

 

 「ここからが本番だ。」

 

 「ナイトソード!」

 

 「ライジングバーストブレイク!」

 

 ライガーのタテガミブレードとバーニングライガーのナイトソードがぶつかり、両者一歩も譲らない状態だったが、バーニングライガーはレーザードリルでライガーの脇を狙い、砕いていき、ライガーは悶え苦しんだ。

 

 グオォ~!!

 

 「ライガー!」

 

 「通常のライガーはメイン武器のブレードは背中にしか装備出来ないが、俺は分身であるこのバーニングライガーはコアドライブウェポンによって、多数の武器を装備できるのだ。」

 

 「くっ、」

 

 ライガーは機関砲をバーニングライガーに放ち、何とかそれから脱出するが、バーニングライガーは休める暇を与えずに続けて攻撃し、ライガーはメガシールドで防ぐも脇のダメージが酷く、抑えるので背一杯で、バーニングライガーは更にレーザードリルをライガーのアーマーに直撃させ、ライガーのアーマーを削り取ってしまった。

 

 「ライガー、いい加減、目を覚ませ。人間等と手を組まず、我々と来い。ゾイドが自由に暮らせる楽園を築くために。」

 

 「嫌だ、ライガーは渡さない。ライガーは俺の相棒なんだ。ライガーだってそれを望んでいる。」

 

 「ふん、ゾイドの気持ちがわからん人間ごときに、そのライガーの気持ちが…」

 

 「わかる! この左腕はライガーが俺の相棒になった時についたもの、これのおかげで、ライガーの気持ちがわかる。ライガーは俺と一緒にいたいって。」

 

 「そんなもの、所詮は貴様がライガーを洗脳しているだけに過ぎない!」

 

 「ライガー、大丈夫か?」

 

 グウゥ~。

 

 「よし、いくぞ、ライガー。 ライジングバーストブレイク!」

 

 「同じ手を何度も。ならば、レーザードリルでコクピットごと串刺しにしてやる。」

 

 バーニングライガーのレーザードリルがレオのいるライガーのコクピットを捉えたその瞬間、ライガーは前足でバーニングライガーの両脇のレーザードリルを持ってそのまま一回転した。

 

 「何!?」

 

 「今だ!」

 

 その後、ライガーはくるりと向きを変え、バーニングライガーの背後を攻撃するが、バーニングライガーはすかさず、メガシールドで防いだ。

 

 「くっ、」

 

 「残念だな。メガシールドはこっちもあるんだよ。」

 

 

 

 同時にガンナー、フォックス、パキケドスもウルサス、オルド、ドッジのバーニングライガーと交戦しているが、コバのバーニングライガー同様の凄まじい機動力とコアドライブウェポンに苦戦してしまう。

 

 「これはちょっと厄介だな。」

 

 「ああ、俺のフォックスでもかなり手を焼く相手だ。」

 

 「バーニングライガーの性能がここまでとは…ところで、レオは?」

 

 

 

 ロックバーグ中尉が向こうを見ると、ライガーはメガシールドでバーニングライガーのレーザードリルを防いでいた。

 

 「デスザウラーの器となるあの小僧がゾイドの味方なら、奴の身体に何故、D因子が存在しない! それも知っているのか!」 

 

 「それは……」

 

 その時、何処からの砲撃がライガーとバーニングライガーを襲い、ライガーとバーニングライガーはそれを回避した。

 

 「何だ、 一体何処から?」

 

 「今の砲撃…まさか!」

 

 レオが振り向くと、その向こうには周囲を炎に変えながら現れたジェノスピノ暴走形態だった。

 

 「ジェノスピノ!」

 

 「ふ、まさか、ここで再び会うとはな。これもまた運命という奴か。」

 

 To be continued




 次回予告

 突然、乱入したジェノスピノ暴走形態によって三つ巴の戦いに発展し、激しさを増した。
 しかし、その戦闘の最中にサリーはセードに何処か見覚えを感じ、彼を問う。そして彼女はセードの正体とランド殺害の真相を遂に知ってしまう。

 次回「姉と弟」走り抜け、ライガー!!

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