ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

52 / 86
 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたプライド元摂政がゼロメタル帝国を立ち上げ、その皇位継承者となったユウトがオメガレックスで帝国を襲撃したが、それも破り、ゼロメタル帝国の勢力を大きく落とした。だが、それは同時に新たな絶望の始まりだった。


第52話「復活、ZG」

 ゼロメタル帝国領である禁制地区近くの帝国領にハワード宰相直属の独立部隊が見回りをしていた。真帝国が崩壊し、ゼロメタル帝国が台頭していくと、ハワード宰相と軍上層部はゼロメタル帝国への警戒を一層強めるために独立部隊を更に強大にするために再編成し、真帝国のスパイとして活躍し、以前から独立部隊にいたスピーゲル中佐の他に皇帝フィオナの事実上の親衛隊にしてバスキア大尉の妹のハヅキ・バスキア中尉が所属し、更には真帝国に付いていた帝国軍及びその残党狩りに活躍していた2人も所属し、禁制地区近くを見回りしている独立部隊の指揮を取っていた。

 1人目はカーチス・マクラマカン大佐、真帝国の首謀者であるシーガル元准将と同期であり、その思想は極めて偏執的であったが、軍の任務を忠実にこなし、忠誠心の厚い男であった。

 そのため、帝国のあり方に関してにはシーガルとことあるごとに対立し、その仲はは極めて悪いもので、シーガル元准将が反乱を起こすと、その気に乗じて真帝国討伐部隊を率い、真帝国に加担する帝国内部のものを掃討し、真帝国の拡大を防ぐ功績を上げた。

 2人目はマクラマカン大佐の部下、クランク・シーガル中佐。真帝国の首謀者シーガル元准将の弟であるが、兄と違い、生真面目な性格で、ゾイドクライシスで壊滅した地球の復興と帝国の再建を唱えていたため、他を顧みない、ただ自分の理想だけに偏った兄に賛同せず、兄が反乱を起こすと、そのケジメを付けるために帝国領を再制圧しようとした真帝国軍を撃ち破り、更にはシーガル元准将の死亡後の残党狩りにも参加し、全て全滅させた功績を上げた。

 その功績を認めたハワード宰相と上層部は2人を独立部隊の指揮権を与え、対ゼロメタルの戦力にした。

 

 「今日も異常はなさそうだな。」

 

 「しかし、大佐。ゼロメタル帝国を倒しても、これで本当に平和が訪れるでしょうか?」

 

 「あの無能なシーガルが反乱を起こしたせいで、帝政は堕落し、国民は今の帝国に期待を抱いていない。例え、戦いが終わっても国民は帝国を信用しないだろう。」

 

 「でしたら、やはり、帝国の再建を!」

 

 「まあ、待て。今はその時ではない。ん? 皇帝陛下からの緊急通信…」

 

 「マクラマカン大佐ですか?」

 

 「はい、独立部隊所属、カーチス・マクラマカン大佐です。」

 

 「実は、その近くに私の御姉様が敵に襲われているとの情報が出ました。直ちにその救援に向かってください。」

 

 「今からでは間に合いません。とにかく、スナイプテラ隊を先に行かせます。我々はその後で、何とか追い付いていきます。」

 

 「頼みました。」

 

 「はっ! (今のところ、ゼロメタルに大きな動きはないが、まさか、遂にあれが近づいたのか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、ユウトとギルラプターLCを守るように現れたオメガレックスはジェノスピノ暴走形態の首に噛み付き、その首をへし折ろうとするが、ジェノスピノ暴走形態はそれに全く動じないどころか、オメガレックスの噛み付きでもその首はびくともしなかった。

 ジェノスピノ暴走形態はそのままオメガレックスを振り払い、オメガレックスはギルラプターLCの前に立ち、ジェノスピノ暴走形態に向かって咆哮を上げた。

 

 「何故、ここにオメガレックスが? まさか、帝国にあれをまともに扱えるライダーがいたというのか?」

 

 セードがセンサーで確かめると、オメガレックスのコクピットに人の反応はなく、完全に無人だった。

 

 「無人…ということは、奴自身で動いているのか。」

 

 オメガレックスはジェノスピノ暴走形態に襲いかかるが、ジェノスピノ暴走形態はそれを難なく避け、丸で赤子の手をひねるかのように圧倒した。

 

 「いくら、強大なゾイドでも、ライダーがいなければ、所詮その程度か…ましてや、荷電粒子砲が使えないなら、尚更!」

 

 更にジェノスピノ暴走形態はオメガレックスに向かって火炎放射を放ち、追い討ちをかけるようにヘッドキャノンとロングキャノン、ソーザーバルカンを撃ち込んだ。それによって苦しむオメガレックス、

 

 ギュオォ~!!

 

 「止めろ~!!」

 

 それを見ていられなくなったレオはタテガミブレードをジェノスピノ暴走形態にぶつけようとした。しかし、ジェノスピノ暴走形態は瞬時にそれをジェノソーザーで防いだ。

 ライガーのタテガミブレードとジェソーザーがぶつかり合ったその時、レオの脳裏に恐竜が栄えている地球に暗雲が立ち込め、目を不気味に赤く輝かさせ、背中に幾つかの刺が生えた超巨大な怪獣型のゾイドが無数のゼロファントスを率いて背中の刺から紫色のビームを放ち、一気に恐竜を全滅させ、更に両手をかざして地殻変動まで起こして地球を壊滅させるビジョンが映った。

 

 「こ…これは……何だ?」

 

 「全く、ホントにしつこい奴だ!」

 

 ビジョンに気を取られた隙にレオとライガーはジェノスピノ暴走形態に吹っ飛ばされてしまった。

 

 「レオ!」

 

 「そんなに死にたいなら、貴様から始末してやる。」

 

 ジェノスピノ暴走形態がジェノソーザーを振りかざそうとしたその時、セードが右腕を通じて何かを感じ取った。

 

 「この感覚は……そうか、プライドの奴、動き出したか。」

 

 ジェノスピノ暴走形態は突然、攻撃を止め、マシンブラストを解除した。

 

 「命拾いしたな。だが、次会うときは確実に殺してやる。」

 

 そう言い残し、ジェノスピノ暴走形態は何処かへ去っていった。

 

 「ま、待て!」

 

 「待って、レオ。」

 

 「サリー、どうして?」

 

 「その前にユウトを!」

 

 「そうだ、ユウトが。」

 

 ギルラプターから降りたメルビルはギルラプターLCの元に向かうが、コクピットのユウトは出血多量で気絶していた。

 

 「傷が余りに酷い…誰か、救護班を!」

 

 「といっても、ここに救護班はいないし、それに今、ニューホープに戻っても、間に合わない可能性が…」

 

 「そんな…お願い、誰でもいいから、ユウトを救って!」

 

 メルビルがアイセルに泣きついたその時、独立部隊のスナイプテラが上空を飛行していた。

 

 「あれは……」

 

 「皇帝陛下の命により、あなた方をネオゼネバスに送り返します。」

 

 「陛下が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 独立部隊のスナイプテラのおかげで、レオたちはネオゼネバスに戻り、独立部隊の救護班はジェノスピノ暴走形態の攻撃で瀕死の重傷を負ったユウトを基地の医務室に送った。レオたちは暫く、待った後、レオたちの元にフィオナとジーンが立ち寄った。

 

 「陛下!」

 

 「陛下は止めて、御姉様。 私はあなたの妹です。」

 

 「それで、ユウトはどうなんです?」

 

 それを聞いたフィオナは何ともいえない表情をした。

 

 「医者によると、傷と貧血が余りに酷く、例え、助かっても植物人間状態になるのは避けられないと……」

 

 「そ…そんな……」

 

 「でも、出来るだけのことはやります。だから、御姉様は安心して。」

 

 「わかりました。」

 

 フィオナの話を聞いて渋々従ったレオたちは復興したネオゼネバスにあるフィオナの別荘で休息を取り、そこにギレル小佐もいた。

 

 「ところであのユウトって奴は結局どうなるんだ? いくら皇族のメルビル様の大事な人でも、ゼロメタル帝国の人間だろ?」

 

 「確かに議会や軍上層部でも、奴を死刑にするべしと考えるものもそう、少なくはない。メルビル殿下は皇族だったから、すんなり許されたが、そうはいかないだろう。」

 

 「だが、何より驚いたのは、あのジェノスピノのライダーがまさか、サリーの弟だったとはな。」

 

 「俺もその話を聞いて驚いたよ。まさか、プライドの反逆の時にそいつがランドを殺害した犯人だったとはな。」

 

 「父親が反乱者で、その息子は好戦的なバーサーカーって奴か。全くホント、ランド家はろくな奴がいないな。」

 

 「バズ! 余計なこと言わないの。」

 

 「え? だって、ホントのこと…」

 

 アイセルが指差すと、そこにはレオの前で泣き崩れるサリーの姿があった。

 

 「レオ、あたし、どうしたらいいの!?」

 

 「サリー……」

 

 「あたし、今までずっとお爺さんに託された使命だと思って、端末探しを続けてきた。地球を救うために頑張ってきた。

 なのに…お爺さんから死んだと聞かされた父と弟が生きていて、小さい時、いつも一緒に仲良く遊んでいた弟がお父さんに酷い目に遭わされて、そのお父さんを殺すほどになってしまったなんて……あたしはそんなこと知らないで生きてきた。

 もし、あたしがピーターの側にいてあげたら、あんなことにならずに済んだはずなのに、全部、あたしのせいで弟をあんな目に…レオや皆までこんなことに巻き込んで……」

 

 レオはサリーの手をそっと優しく握り、

 

 「サリー、落ち込まないで。君のせいじゃないよ。」

 

 「でも!」

 

 「確かにあいつがサリーのお父さんのせいで歪んでしまった。でも、あいつがこれから何をしようが、サリーには関係ない。あいつは、セードは必ず僕が止めてみせる。」

 

 「でも、あの子はあたしの弟です。レオは止めることは……」

 

 「僕は今までずっとサリーのために頑張ってきた。セードの問題がサリーの問題なら、それは僕の問題だよ。 だから、サリーが命を掛ける必要なんてないんだ。」

 

 「レオ……」

 

 「安心して、サリー。セードは必ず僕が止めてみせる。そして地球も救う。」

 

 レオの優しい表情と言葉を聞いたサリーは安心し、

 

 「ありがとう、レオ。」

 

 「え? そ、そんことないよ。」

 

 

 赤面するレオを見たミラーはニヤニヤし、

 

 「くぅ~、素晴らしいカップルだわ! あたし、感動しちゃう!!」

 

 「おい、気持ち悪いぞ。ミラー。」

 

 「それはそうと、ジェノスピノがいきなり戦闘を放棄してその場を離れたと聞いたが、一体どういうことだ?」

 

 「俺も詳しいことはわからないが、あの時の奴は丸で何かを感じ取ったようなものだった。丸で俺たちの戦闘はそれを待つための延長戦だったように…」

 

 「一体、奴は何を企んでいる。」

 

 そこにバスキア大尉が立ち寄り、

 

 「小佐、」

 

 「バスキア大尉、一体、どうした?」

 

 「帝国の基地のゾイドがどれもバイザーの制御に従わず、出撃が出来ません。」

 

 「何!」

 

 

 ネオゼネバスやその他の帝国軍基地はゾイドが中々言うことを聞いてくれず、どれも基地から出られないでいた。

 

 「くそっ、どうしてだ! 何故、キャノンブルは言うことを聞いてくれないんだ。」

 

 「リュック大尉。」

 

 「シェル軍曹にノックス大尉か。そっちはどうなってなる?」

 

 「バズートルが全く使い物になりません。」

 

 「スティレイザーもだ。」

 

 「どの基地も同じだと? くそっ、一体どうなっている?」

 

 

 

 

 「しかも、同じことは共和国にもあり、バイザーのない共和国軍のゾイドも同様の現象が起こっていると先程、ツガミ大尉から報告がありました。」

 

 「それは一体いつから起こった?」

 

 「独立部隊がレオたちを救出する時からです。」

 

 その時、レオの左腕が何か、不穏なことを伝えるかのように鼓動を始めた。

 

 「感じる…この腕が何かを感じ取って……あの時、ライガーの攻撃がジェノスピノにぶつけた時に見たビジョンにも似ている。一体、何が起きようとしているんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナザーゲートを抜けたプライド率いるゼロメタル帝国の捜索部隊は南極を歩き回り、プライドはある日記を見ながら、辺りを見渡していた。 そして何かに気付いたプライドはその場に止まり、捜索部隊にある場所を指差した。

 それを見たキルサイスとスパイデス型のジャミンガ、スパイデスグローと兵士はプライドが指差した位置をひたすら掘っていった。

 やがて、掘り起こすと、そこには丸で地下に続くような巨大な洞穴が現れた。捜索部隊にその場に待機するよう、指示したプライドは命綱を使わず、そのまま降下していった。穴は数十m、いや数百mはあり、難なく着地したプライドが頭上を見上げると、穴は豆粒のように見えていた。

 プライドはライトを照らし、手に持っている日記を持って氷の地下を進んでいった。氷の地下は丸で地下世界のような広さで、誰かが掘り起こし、再び埋めたような後もあった。しばらく歩いていくと、目の前にとんでもないものが現れた。そこにはゼロファントスと白いアーマーと紫色のラインをした超巨大な怪獣型のゾイドが凍り付けになっていて、更に胸部のゾイドコアらしきものには人型のものが張り付いていた。

 

 「ようやく、見付けましたよ。我らの神にしてゼロメタル帝国皇帝のデスザウラー様、そして、その分身、古の皇帝龍、ゼログライジス。

 それにしても、アドリア王国の連中はデスザウラー様とゼログライジスをこんなところに封じ込めたのか。どうりで見付からないわけだ。このジョシュア・コンラッドが我々のために残してくれたこの日記が無ければ、探すのは到底無理だったな。」

 

 その時、突然、地響きが起き、氷の空洞が灼熱の炎に焼かれ、プライドの背後からジェノスピノ暴走形態が現れた。ジェノスピノ暴走形態はプライドを背後から喰おうとしたが、誰かに静止されたかのように突如、動きを止めた後、コクピットから右腕が黒く染まり、突起のようなものが生え、尻尾も生え、更に指が肉食獣の爪になり、顔半分と右半身が機械と有機質が融合したような姿となったセードが現れた。

 

 「待っていたぞ、ピーター・ランド…いや、セード・コルディアス。無論、貴様がここに来ること等、最初からわかっていたがな。

 その姿…D因子を取り込んで得た姿か。だが、我々ヒューマンオーガノイドのようにデスザウラー様の分身になることを拒んで半身だけゾイドになったなり損ない、謂わば、疑似ヒューマンオーガノイドといったところか。 デスザウラー様の力を手に入れようなど、実に愚かな行為だが、その精神力は評価に値する。」

 

 「そう、させたのはお前だ。そのためにお前はあの時、俺を拾い、ここまで育てたのだろう?」

 

 「ふ、それが分かれば、後のことは説明する必要はないな。今、お前がデスザウラー様とゼログライジス復活の生贄になることを…」

 

 「その逆だ。」

 

 「ん?」

 

 「そこに氷像になっているデカブツを俺とジェノスピノの力となってもらうだけだ。」

 

 「思い上がりも甚だしいぞ。お前が取り込んだD因子はあくまで元々器となるユウトが持っていたデスザウラー様の一部の力に過ぎん! そんな貴様がオリジナルに勝てるはずがないだろう。」

 

 「だろうな、だが、そのオリジナルは今、そこでオネンネだ。 その状況なら、いくらそのオリジナルがどれだけのバケモノと言えども、何も出来ない。」

 

 「お前の復讐のために、ここまで育てた恩を仇で返すというのか? それに復讐を果たしたお前には戦う理由など……」

 

 「確かに、俺は俺をあんな人生を歩ませることを強制した奴と、俺を除け者にした連中とこの世界そのものを憎み、貴様の地球リセット計画に興味を抱き、お前に付いていった。

 お前につきゃ、俺の復讐は果たせると思ってな。だが、貴様らと行動をしていく内にお前らの腹を知った。お前らはただ、一度リセットした地球を自分たちの思い通りの世界にしたいだけ…お前らは人類のエゴそのものだ!」

 

 「貴様にはそう見えるかもしれないが、我々はあの下等な人類と違い、進化した人類。 下らぬ理由で戦争をおっ始める今の愚かな人類を滅ぼし、人類を我々のような進化した人類に変え、この世界を本来あるべき姿にする救世主なのだ。そして、そのためにはこの世の全てを支配するに相応しいデスザウラー様を唯一絶対神にするのだ!」

 

 「そして、貴様は俺をデスザウラー復活の駒としか、見ていない。ならば、今度は俺が貴様に引導を渡してやる。」

 

 「クヒヒ、貴様ごときが私を殺せると思っているのか?」

 

 「いくら、ヒューマンオーガノイドの貴様でも、融合対象のゾイドは存在していない。それにここに着くまでに上にいた貴様の部下は全て始末した。 今の貴様は丸腰同然だ。」

 

 「残念だが、貴様ごとき、私1人で十分だ…」

 

 「何!?」

 

 「ハァァッ…」

 

 その時、プライドの身体が液体金属状になり、オーガノイド体に姿を変化していった。プライドはドラゴンのような翼を持った刺々したティラノサウルス型のオーガノイドに変わり、それはかつて300年前の大戦で惑星Ziに生き残っていた赤いオーガノイド、アンビエントのような姿だった。

 

 「あの姿は!」 

 

 「そうだ、この姿は300年前の惑星Ziの大戦で復活したデスザウラー様が取り込んだオーガノイドの姿だ。」

 

 オーガノイド体のプライドは翼を広げ、猛スピードで突進していった。セードはすかさず、ジェノスピノ暴走形態のコクピットに乗り込み、プライドに噛みつこうとするが、プライドはそれを難なく交わし、ジェノスピノ暴走形態の顔にぶつけ、ジェノスピノ暴走形態は一瞬怯んだ。ジェノスピノ暴走形態はヘッドキャノンを撃ち込むが、プライドはそれも回避し、上空を飛行した。

 

 「くっ! 何て奴だ。しかも、あの姿でも喋れるだと?」

 

 「あの時の船の反乱の時に私はデスザウラー様の直ぐ近くにいたため、他の奴らより強いD因子を浴びるようになった。かつて惑星Ziの大戦で復活したデスザウラー様が取り込んだオーガノイドと同じ姿になった。

 他の6人と違い、謂わば、私はデスザウラー様に最も近い分身にしてヒューマンオーガノイドの上位種なのだ。」

 

 ジェノスピノ暴走形態はヘッドキャノンに加え、火炎放射やロングキャノンも放つが、プライドは身のこなしと小さい身体を活かしてそれらを全てを交わし、ジェノスピノ暴走形態の箇所を幾つか攻撃し、ジェノスピノ暴走形態は翻弄されていった。

 

 「ちぃっ! ならば、ジェノスピノ、マシンブラストー!! ジェノサイドクラッシャー!」

 

 ジェノスピノ暴走形態はジェノソーザーで飛び回るプライドを斬り裂こうとするも、それさえも交わされてしまう。

 

 「他のゾイドと融合することだけがオーガノイドの能力ではない。その真の能力は半身である古代ゾイド人と融合し、本来の性能を引き出すことにある! 

 だが、通常では融合したオーガノイドの力に耐えられず、長時間その力を維持することは出来ないが、ヒューマンオーガノイドはオーガノイドそのものの力を取り込んでいるため、オーガノイド体になっても、そのものの肉体であるため、常にその力を解放したままの状態で戦うことができる。

 加えて、このサイズなら、小回りは効き、重火器でその照準を捉えることは不可能。」

 

 「くっ、」

 

 プライドの言う通り、ジェノスピノ暴走形態はヘッドキャノン、火炎放射、ロングキャノン、ジェノソーザー、ソーザーバルカンと全ての武装を使っているが、そもそもジェノスピノは大型ゾイドのため、人間サイズに近いオーガノイド体のプライドを撃墜させることは至難の技であった。

 

 「くそッ、これではこちらが不利だ。ん?」

 

 その時、セードはジェノスピノ暴走形態のロングキャノンの流れ弾が氷の壁に直撃したのを見て何かに気付いた。

 

 「そうか…その手があったか。ジェノスピノ!」

 

 セードの言葉を聞いたジェノスピノ暴走形態はセードが何かすることに気付き、プライドではなく、頭上に向かって火炎放射とヘッドキャノン、ロングキャノンを放った。

 

 「ふ、とうとう錯乱したか。ん?」

 

 その時、ジェノスピノ暴走形態が放った火炎放射とヘッドキャノン、ロングキャノンによって頭上の氷が溶け、次々と氷の洞窟が崩壊していき、プライドは崩れ落ちる氷を避けていった。崩れいく氷は凍り付けになっているゼログライジスにも直撃し、その瞬間、動けないはずのゼログライジスの目が点滅した。

 

 「ちぃっ、セードめ。下手な小細工を! だが、こんなもので、この私を…」

 

 その時、目の前に崩れ落ちていく巨大な氷の障害を突き破り、ジェノスピノ暴走形態が巨大な口を開けて襲いかかってきた。

 

 「んな!?」

 

 プライドはそれを回避しようとするが、間に合わず、そのままジェノスピノ暴走形態に噛み付かれてしまった。

 

 「やっと、捕らえたぜ!」

 

 「くっ、洞窟を崩壊させ、それで落ちた氷を障害にしたのか。」

 

 「太陽の表面温度に匹敵するジェノスピノの火炎放射とロングキャノンなら、南極の氷を破壊することぐらい容易だと思ったからな。」

 

 「ふ、我々の同士であれば、もっと優秀な上位種になれたものを…」

 

 「貴様らの進化など、どうでもいい。俺は俺の目的を果たすだけだ。」

 

 「クヒヒ…」

 

 「何がおかしい?」

 

 「気付かないのか? そんなことをしたおかげで、状況は更に悪化したのだぞ。」

 

 「だが、今の貴様にはもう逃げ場はない。後はこのまま噛み砕くだけだ。」

 

 その時、凍り付けのゼログライジスの目が赤く輝き、崩れ落ちた氷から次々と多数のゼロファントスが現れ、ジェノスピノ暴走形態の身体を拘束していった。

 

 「何!? 何故、こいつらが!」

 

 「ここに眠っていたのは、ゼログライジスだけではない。6500万年前カオスゼログライジスと共に地球を蹂躙していたゼロファントスもここに眠っているのだ。」

 

 「くっ!」

 

 現れたゼロファントスがジェノスピノ暴走形態の動きを封じ込めた隙にプライドはジェノスピノ暴走形態の拘束を解いて、コクピットに入り、セードの右腕を噛み付いてそのまま丸で吸血鬼のようにセードの右腕から血のように流れる紫色の液体を吸い尽くしていった。

 

 「ぐっ、グワァッ!」

 

 プライドがセードの右腕から紫色の液体を吸い尽くしていくと、セードの右腕はD因子を取り込む前の金属の腕に戻っていき、異形になった身体も元の姿に戻っていき、同時にジェノスピノ暴走形態も元のカラーリングに変わっていった。

 やがて全て吸い尽くし、プライドの目が紫色に発光すると、プライドは直ぐ様、コクピットから離れ、凍り付けのゼログライジスの胸部のコアと一体化している人型の存在の側に寄った。

 

 「よくやったと言いたいところだが、所詮貴様は我々の同士にはなれなかったというわけだ。

 6500万年……もう休眠はよろしいでしょう、陛下。 さあ、目覚めの時だ。」

 

 オーガノイド体のプライドが紫色の光になってその人型と融合したその時、その人型は紫色に輝き、胸部のコアから離れ、段々と人間の姿に形成されていった。

 

 「あ…あれは……」

 

 その人型の存在は容姿はユウトと瓜二つだが、銀髪ロングのユウトと違い、黒髪ショートカットをした美少年に変わり、更に凍り付けのゼログライジスから無数の機械のコードが現れ、その少年を包み込み、背中に搬送させた。

 その時、ゼログライジスの目が赤く発光し、身体から紫色の衝撃波が放たれ、その衝撃波によってジェノスピノを拘束してい多数のゼロファントスの次々と粉砕され、ジェノスピノもその衝撃波で何処かへ跳ばされていった。

 

 

 

 

 同時にニューホープやネオゼネバスシティに地震が起こり、両市民はパニックになっていた。

 

 「何だ? 何が起こった!?」

 

 「ギャレット大将、南極に超巨大な高エネルギー反応が!」

 

 「南極にだと!? まさか、この地震はそれによるものだというのか!」

 

 地震と共に両国の基地のゾイドたちが突然、制御に逆らって騒ぎだし、ライガーたちも何かに怯えるように騒ぎだした。

 

 「どうしたの? ラプちゃん。皆も…」

 

 「ライガーだけじゃない、俺のフォックスも何かに怯えているようだ。レオ、お前は…」

 

 バーンが振り向くと、レオが左腕を押さえて倒れこみ、同様にサリー、メルビル、ゼオル、シーザー、クラウス、モーリスも恐怖を感じた。

 

 「感じる…俺の左腕から、何か、恐ろしいものが目覚めようとしている。」

 

 「こ、怖い。」

 

 「な、何なの、これ…? こんな、怖い思い、初めて……」

 

 「ガキの頃に襲ったジャミンガの恐怖とは丸で比べ物にならない……」

 

 「まさか、奴が…奴が、目覚めたというのか……」

 

 

 

 プライドの捜索部隊が掘り起こした場所が一気に崩れいき、それによって南極の4分の1が一気に崩壊し、そこから、ゼロファントスと同じ白いカラーリングと紫のライン、背中に巨大な刺のようなキャノンとミサイルを装備した超巨大な怪獣型のゾイドをしたゼログライジスが現れていった。

 

 ヴオォ~!!

 

 ゼログライジスが咆哮を上げたその時、両国の基地のゾイドが暴れまわり、レオたちも激しい頭痛に襲われた。

 

 「まただ、あの時、ジェノスピノに触れたあの時のビジョンと同じだ。まさか、あれが……」

 

 「れ、レオ…一体、何を言ってるんだ?」

 

 頭痛に襲われたレオ、サリー、メルビル、ゼオル、シーザー、クラウス、モーリスは頭痛よりも何かが目覚めたような恐怖が強く表情に表れ、かつてない戦慄が走った。

 

 To be continued




 次回予告

 6500万年の長い眠りから覚め、遂に復活を遂げたZGもといゼログライジス、ゼログライジスのライダーであるデスザウラーの分身は復活したゼログライジスの力を見せつけるべく、共和国に向かって進撃を始めた。
 これに対し、共和国軍は迎撃を開始するが、ゼログライジスはジェノスピノ、オメガレックスを遥かに凌駕する圧倒的なパワーで立ち向かうもの全てを凪払った。
 レオたちはゼログライジスの進撃を食い止めるために共和国に向かうが、その時、ゼログライジスの前にD因子を奪われたセードとジェノスピノが現れた。

 次回「脅威! 古の皇帝龍」走り抜け、ライガー!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。