ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたゼロメタル帝国の神官プライドが遂にゼロメタル帝国の絶対神にして皇帝であるデスザウラーの分身、ディアベル・ギャラガーと古の皇帝龍ゼログライジスを復活させてしまう。 更なる絶望を迎えたレオはゼロメタル帝国にどう立ち向かうのか!?


第56話「強襲! ブラックビーストライガー」

 突如現れたラストのファングタイガー改と黒いビーストライガーに驚くレオたち、

 

 「何だ、あの黒いライガーは?」

 

 レオのライガーを見た黒いビーストライガーは目を赤く発光させ、レオのライガーに襲い掛かってきた。

 

 「レオ!」

 

 レオのライガーに襲い掛かる黒いビーストライガーを止めようと

サリーのハンターウルフが割って入ろうとした時、それを邪魔させないと言わんばかりにラストのファングタイガー改がサリーのハンターウルフを前足で吹っ飛ばしてしまう。

 

 「キャアァッ!」

 

 「サリー!」

 

 「邪魔しないでくれる? せっかくのライガー同士の対決を…」

 

 「ラスト元大佐…」

 

 「ん? そのギルラプターの色で気付かなかったけど、その声…もしかしてそれに乗っているのって、シーガルのバカ共にお飾りの皇帝に仕立て上げられたあのポンコツ娘じゃない。」

 

 「あなたに言われたくないわ! 私はハンナ・メルビルです!」

 

 「ま、そんなことどうでもいいわ。ついでにあんたも一緒に始末して上げようかしら?」

 

 「受けてたつわ。真帝国の罪滅ぼしとしてあなたを倒す!」

 

 「メルビルさん。」

 

 「サリー、あなたはさがってて。」

 

 「いいえ、私も戦わせてください。メルビルの気持ちは私も同じです。」

 

 「サリー…」 

 

 「あら、2人がかりでいくの? いいわ。その方が楽しめそうだし…それに見たところ、そのハンターウルフとギルラプター、カスタマイズされているから、前よりは期待出来そうね。」

 

 「行くよ、サリー。」

 

 「はいっ! メルビルさん。」

 

 「待ちなさい! サリー、メルビル。そいつと戦うのは…」

 

 ラストのファングタイガー改と戦おうとするサリーとメルビルをロックバーグ中尉が止めようとしたその時、突然、目の前に霧が現れ、サリー仕様ハンターウルフとメルビル仕様ギルラプターエンペラーの姿を隠し、その霧の中からジャミンガに騎乗した無数のゼロメタル兵とゼロファントスが現れた。

 

 「こいつら、私たちを行かせないつもりか!」

 

 

 

 

 

 

 レオのライガーに襲い掛かった黒いビーストライガーは前足でライガーのアーマーを引き裂こうとしたが、ライガーは一瞬の隙で出来た隙間に入ってそこから脱出し、黒いビーストライガーに機関砲を撃ち込むが、黒いビーストライガーはその機動力ですんなり回避した。

 

 「あの黒いライガー、一体何者なんだ?」

 

 その様子を見ていたコバは加勢もラストのファングタイガー改及び黒いビーストライガーに攻撃しようとせず、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エンヴィー、グラトニー、スロウスのバーニングキメイラ、ディメパルサーキメイラ、ゼーゲキメイラはそれぞれの基地でウルサス、オルド、ドッジのバーニングライガーと徹底抗戦していた。

 ウルサス、オルド、ドッジのバーニングライガーは当初はその高い機動力でバーニングキメイラ、ディメパルサーキメイラ、ゼーゲキメイラを翻弄していたが、バーニングキメイラは頭部のデスレックスのアーマーで全ての攻撃を防ぎ、頭部に装備しているライフルでウルサスのバーニングライガーを蜂の巣にした。

 

 「くっ!」

 

 「オラオラ、さっきの威勢はどうした!!」

 

 グラトニーもオルドのバーニングライガーの動きを見切ってマッドオクテットを放ち、動きを封じたところでガブリゲーターの顎で捕らえた。

 

 「しまった!」

  

 「もう、逃がさないよ。」

 

 ドッジのバーニングライガーもその機動力でゼーゲキメイラを翻弄するも、ゼーゲキメイラはびくともせず、近くを通った瞬間にボーンソーでアーマーを斬り刻んだ。

 

 「ちぃっ!」

 

 「お前、ウザいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルサスたちバーニングライガーがエンヴィーたちゼロメタルの三銃士と交戦している同時にエリア91でギレル少佐とジェイク率いるデュークナイツのゾイド爆撃隊が迎え撃ち、ラスのメタルレイザーの攻撃を食らわないよう、空中から砲撃する爆撃作戦で迎え撃つが、メタルレイザーはその砲撃をいくら喰らっても全くびくともしなかった。

 

 「攻撃しても、反応がない!」

 

 「くそっ、あのゼロメタル仕様スティレイザー…どうやら、並の装甲ではないようだな。」

 

 「俺のソニックバードも全く歯がたたない! あんな奴に勝てっこない。」

 

 「くそっ、あんな奴が相手では、ゼロファントス鹵獲どころではない。」

 

 しかし、その内、ダークスではない一体の通常のゼロファントスの足が帝国軍基地のキャノンブルの流れ弾に直撃し、倒れてしまう。それを見たギレル少佐はチャンスと見て、他のスナイプテラ隊に命令した。

 

 「しめた! 一体身動きが取れなくなった。スナイプテラ隊、あのゼロファントスを鹵獲しろ。」

 

 「了解!」

 

 ギレル少佐の命令を受けた3体の青いスナイプテラは装備しているアンカーを展開し、身動きの取れないゼロファントスを捕らえ、そのまま空中に上げた。それを見たラスはそうはさせないとそのスナイプテラ隊に攻撃しようとするが、

 

 「させるか! 我がゼロメタル帝国の誇るゼロファントスを貴様らごときに。」

 

 「もういい、ラス。直ぐに撤退しろ。」

 

 「この通信…プライドか! 何故だ!? 後少しで制圧出来るというのに…」

 

 「聞こえなかったのか? 撤退しろ。」

 

 「黙れ! 今の指揮官は皇帝陛下であって貴様ではない。貴様の指図は受けんぞ!」

 

 「これは私の命令ではない。皇帝陛下のご命令だ。」

 

 「何を言って…」

 

 「ラス、撤退しろって言ってるだろ?」

 

 その時、プライドの声とは別にディアベル・ギャラガーの声が入った。

 

 「その声…まさか、皇帝陛下ですか!?」

 

 「そうだよ。だから、撤退してよ。」

 

 「しかし! 我がゼロメタル帝国の誇るゼロファントが下等生物の反乱軍に…」

 

 「撤退しろって言ってるのがわからないの?」

 

 通信ごしでのディアベル・ギャラガーの威圧的な言動に圧倒されたラスは何も言えず、

 

 「いえ…」

 

 「そっか、なら、命令通り、こっちに戻ってきてね。後、他の3人共にも伝えといてね。」

 

 「了解しました。」

 

 ディアベル・ギャラガーの命令を受けたラスはエンヴィーたちと通信を開いた。

 

 「エンヴィー、グラトニー、スロウス! 撤退だ。」

 

 「ああ? 撤退? ざけんな! こいつらをブッ倒さねえと気が済まねえだろ。」

 

 「皇帝陛下のご命令だ。直ちに従え。」

 

 「ちぃっ、せっかくいいところだってのに!」

 

 「な~んか、消化不良だな。」   

 

 「どうでもいいぜ。さっさと帰るぞ。」

 

 

 ラスのメタルレイザーはゼロファントスダークス軍団と共にエリア91の基地から離れ、命令を受けたエンヴィー、グラトニー、スロウスも渋々、従ってそれぞれの基地から離脱した。

 

 「撤退…したのか?」

 

 「どうやら、その様だ。デュークナイツ隊も直ちに離脱する。鹵獲したゼロファントスを本部に搬送させる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ライガー、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 ライガーはエヴォブラストを発動し、黒いビーストライガーに攻撃するが、黒いビーストライガーはライガーの動きを丸で手に取るように把握しているかのように攻撃を悉く回避していた。

 

 「くそっ、これじゃ、攻撃を当てられない!」

 

 「レオ…」

 

 その時、レオの脳裏にテレパシーなのか、不明だが、誰かの声が聞こえた。

 

 「今のは……?」

 

 その一瞬の隙をついた黒いビーストライガーはエヴォブラストを発動し、タテガミブレードで襲い掛かってきた。レオは戸惑ったが、ライガーが自身の反射神経でそれを回避することが出来た。

 

 「ようやく、ゾイド乗りになれたというのに、その程度か!? 爪が甘いぞ。」

 

 

 再びテレパシーのような声がレオの脳裏に聞こえた。

 

 「また、聞こえた! どうなってるの? これは幻聴じゃないのか?」

  

 「父の声を忘れたとは、失望したぞ! レオ。」

 

 「その声…まさか、その黒いライガーに乗っているのは……」

 

 「そうだ。お前の父、ジョシュア・コンラッドだ。」

 

 黒いビーストライガーから聞こえた声を聞いて青ざめるレオ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧と霧の中から現れたゼロメタル兵士が騎乗するジャミンガとゼロファントス軍団に阻まれたロックバーグ中尉たちはサリーとメルビルの援護が出来ず、足止めを喰らってしまう。

 

 「くっ、こいつら、中々しぶといわね!」

 

 「俺のフォックスでも、この数はかなり限度があるぜ。」

 

 「なら、行くぞ、ガンナー! 進化 解放! エヴォブラストー!! キングバーストキャノン!」

 

 「ゼノレックスバスターXA、アサルトエクスバスター!」

 

 ガンナーとゼノレックスバスターXAの放った強力な砲撃がジャミンガとゼロファントス軍団を一気に一掃していった。しかし、霧の中から無数のジャミンガとゼロファントス軍団が再び現れた。

 

 「これじゃ、きりがないぜ。」

 

 「だったら、あたしに任せなさい!」

 

 「お前は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バルディーやロックバーグ中尉たちがジャミンガとゼロファントス軍団と交戦している中、サリーとメルビルはラストのファングタイガー改と交戦していった。サリー仕様ハンターウルフはブースターで加速してファングタイガー改の背中の装備を破壊しようとするが、ファングタイガー改は背中のレーザーガンでそれを迎撃し、更にサンダーテイルで動きを封じた。

 

 「キャアァッ!!」

 

 「サリー! 私が相手よ。」

 

 「あら、今度は真帝国のお飾り皇帝が相手なの? それにしても、そのギルラプター、いいカラーリングね。あたしの好みじゃないけど…あんたがやったの?」

  

 「このギルラプターは私のギルラプターエンペラーよ! 私を受け入れてくれたフィオナ陛下のためにあなたを倒す。」

 

 「ああ? あの帝国でダラダラやってるあの小娘皇帝がやったの? ちょっと拍子抜けしちゃうわね。 な~んか、大したことなさそう。」

 

 「フィオナ陛下を…私のギルラプターエンペラーを侮辱することは許さない!」

 

 それぞれぶつかり合うファングタイガー改とギルラプターエンペラー、前足でやり合い、ファングタイガー改がギルラプターエンペラーの背後に来てギルラプターエンペラーがそれを尻尾で凪ぎ払おうとしたところを避け、突進するファングタイガー改。

 しかし、ギルラプターエンペラーは怯まず、ジャンプしてファングタイガー改を踏み潰そうとする。ファングタイガー改すかさずそれを避け、ギルラプターエンペラーも避けたファングタイガー改を尻尾で凪ぎ払い、 ファングタイガー改はそれをものともせず、体勢を立て直した。

 

 「へぇ~、やるわね。 スナイプテラなんかに乗ってる時よりずっといいわ!」

 

 「あなたに誉められても嬉しくないわ。」

 

 猛スピードでファングタイガー改の方に向かうギルラプターエンペラー、ファングタイガー改はギルラプターエンペラーにレーザーガンを撃ち込む。

 

 「いいわ! もっとあたしを楽しませて頂戴!!」

 

 直撃しても怯まず、近づくギルラプターエンペラー、それを見てファングタイガー改も猛スピードでギルラプターに向かう。

 互いにぶつかり合うギルラプターエンペラーとファングタイガー改、ぶつかり合いの直前、ファングタイガー改はすかさずマシンブラストを発動し、ギルラプターエンペラーのアーマーに傷が付いてしまい、ギルラプターエンペラーが苦しむ隙にファングタイガー改はギルラプターエンペラーを蹴り飛ばしてしまった。

 

 「キャアァッ!!」

 

 「歯ごたえはまあまあだけど、やっぱり爪が甘いわね。それにどうも色、気に入らないわね。なら、あたしの美的センスのあるギルラプターで戦ってあげるわ。」

 

 そう言ったラストはコクピットから出た後、オーガノイド体になってファングタイガー改と融合し、ファングタイガー改は全身がピエロのようなカラーリングをしたギルラプターに変身した。

 

 「どう? あたしのギルラプターは? 美しいでしょ! あんた流に名付けるなら、ギルラプタージョーカーね。この美しいギルラプターちゃんであんたを斬り刻んであげるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんな…どうして、父さんがここに…?」

 

 「どうして? それは私がゼロメタル帝国の人間だからだ!」

  

 レオが動揺している間に黒いビーストライガーはタテガミクローでライガーを吹っ飛ばしてしまう。

 

 「グワァッ! 父さん、どうして……」

 

 「わからないのか!? 私がこの地球に真の秩序をもたらすために、あのお方に…ゼロメタル帝国についたのだ。」

 

 「あんなに…ゾイドを愛して…地球のために尽くしてきた父さんがゼロメタルにつくわけがない!」

 

 「では、お前はこの世界の何を見てきたのだ!? 滅びた惑星Ziを捨て、第二の故郷として地球に降り立ち、新たな新天地を築くという目的を持っていながら、滅亡寸前の星のことを一切顧みず、帝国の皇位継承や領土問題による下らないことで戦争を繰り返す愚かな帝国や共和国に何の未練があるというのだ!」

 

 「でも、それは…一部の人たちだけだ!」

 

 「なら、お前が旅していた時に帝国と共和国は無意味な反乱や戦争を起こさなかったとでもいうのか!?」

 

 それを聞いたレオは行く先々で帝国軍がサリーのペンダントを奪ったり、ランドとシーガルがメルビルの皇位継承権を宣言して真帝国を作り上げた時のことを思い出し、何も言い返せずにいた。

 

 「そ、それは……」

 

 「かつての私も帝国と共和国に希望を見出だしていた。だが、各地を旅している内に帝国と共和国はただ、自分たちの欲求を満たすための醜い国家だということを知り、私はこの地球を根本から変えることを決めたのだ。あの男と会ってからな。」

 

 

 

 ジョシュア・コンラッドが語った話、それは彼がまだ幼いレオの元を離れ、共和国の軍人兼学者を兼任していたため、ギャレット大将からゾイドクライシスの影響で環境が大きく変化した地球各地の様子を調査するという特令を受け、各地を調査していった。

 ゾイドクライシスによって崩壊された街々を見ていくと、誰もそこに移住しようとしないため、人っ子一人もなく、無数のジャミンガが見境なく、ゾンビのようにただ、荒廃した街に入った者を襲うというカオスな状況になっていて、そのおかげでゾイドクライシスで荒廃した街に近い村の人々は度々ジャミンガに襲われ、その恐怖に逢いながら生活し、中には遂にそれに耐えられず、故郷の村を捨て、各地を放浪していく人もいる有り様だった。

 コンラッドは彼等に帝国と共和国は彼等のために支援を送っているのかと問いただしたが、帝国、共和国は一切の支援をせず、そればかりか見てみぬふりをしていることが判明した。

 そして各地を旅して回ったコンラッドは帝国と共和国の実態を知るようになっていった。

 メルビルが孤児院に入れられたことによってフィオナが皇帝になるが、彼女の皇位継承を認めない軍上層部による反感、そして共和国に遅れを取らないためにゾイドの兵器化、武力的で強引な領土拡張、そして帝国の強硬政策に対抗するために共和国もゾイドの兵器改造を徹底的に施し、それによって両国の関係が悪化して戦争が勃発し、戦争によって巻き込まれた市民や破壊された村々、帝国軍による略奪を受けた街も多数ある状況だった。

 それらの現実を見たコンラッドは帝国と共和国に絶望し、共和国の特令とその軍服を捨て、独自に端末を調査し、それによって荒廃した地球の再生を謀る旅を続けた。

 旅を続けていく内に彼は両国の戦場に着いた。両国につかないことを決意したため、彼はその戦場から離れようとしたその時、運悪く帝国軍の流れ弾がコンラッドのいる位置に直撃したため、共和国軍に見付かってしまった。

 ジョシュア・コンラッドに気付いた共和国軍の指揮官はジョシュア・コンラッドの保護しようとするが、共和国の軍服を着ていないのを見て、任務放棄とみなし、彼を拘束しようとしたその時、帝国軍指揮官の搭乗する赤いスティレイザーが共和国軍指揮官の乗るトリケラドゴスを砲撃し、勢いに乗って他の帝国軍も砲撃し、戦況うが不利とみた共和国軍は戦場から離脱していった。

 赤いスティレイザーはジョシュア・コンラッドの元に立ち寄り、搭乗者がその姿を現した。その人物は帝国の摂政となる人物にして現ゼロメタル帝国神官、プライド准将だった。

 軍服を捨てていたとはいえ、共和国軍指揮官とのやり取りで共和国の重要人物と判明した帝国軍によってコンラッドは拘束されることになったが、彼に興味を示したプライド准将は自身の権力でコンラッドを解放し、自身の側に置いた。

 当初、コンラッドはプライドのことを信用しなかったが、接触していく内にプライドが戦争ばかりしていく帝国と共和国の上層部とは違うことを理解し、次第にその関係は良好になった。

 そして、コンラッドを信頼するようになったプライドは自身の正体と何故、帝国軍にいるのか、その目的を全てコンラッドに教えた。

 帝国、共和国に絶望し、もはや、その両国に完全に見きりをつけた彼にとってプライドの話はとても興味深いものだった。そして帝国、共和国両国を滅ぼし、ゼロメタル帝国による新たな秩序を築く地球リセット計画に協力するようになり、それ以後、ゼロメタル帝国の元で自身がそれまで集めた端末の情報をプライドに提供、そしてシーザーやコバたちによって封印されたゼログライジスの場所を把握等を行い、それらを全て自身の日記に記した。

 

 「そして、その最中に私は運悪く不幸な事故に逢い、瀕死の重傷を負った。しかし、プライドは同士である私を見捨てず、彼の盟友ドクターマイルスによって私はかつてのゼロメタルの反逆者アーサー・ランスロットと同様、ゾイドのボディを得て新たな生を与えてくれた。それがこのブラックビーストライガーだ。

 ここまでのことをし、私を生かしてくれた私はプライドに感謝し、遂に決心した。自分勝手に地球を荒らし、ゾイドを兵器改造して人々とゾイドを苦しめる帝国と共和国を滅ぼし、全ての者が平等に暮らしていける世界を実現するためにゼロメタル帝国がもたらす真の秩序を必ず築いてみせる。」

 

 「嘘だ! 父さんがゼロメタル帝国につくなんて、そんなの嘘だ!」

 

 「まだ、わからないのか! レオ。そうやって甘い蜜を吸っているから、現実に背けているから、そう言えるだけだ。」

 

 「俺の…俺の知っている父さんはそんな人じゃない! 父さんは…父さんは、皆や全てのゾイドが幸せになれるために尽くす人だ。その父さんが世界を破壊しようとしている悪い奴等の仲間になるわけがない!」

 

 「はぁっ…お前には失望したよ。レオ。お前だったら、ゼロメタル帝国の優秀な一員になれるはずだったのに、母親に甘やかされ続けてそんな甘い人間に育ってしまったのか。」

 

 「どういうこと?」

 

 「気付かないのか? お前があの時、ペンダントの光を浴びてその身にゾイド因子を取り込み、左腕が金属化したにも関わらず、何故、何のリスクも負わずに生きてこられたのかを…」

 

 「それは、俺とライガーの絆があるからだ。」

 

 「違う。お前が体内にゾイド因子を取り込めたのはお前が古代ゾイド人の末裔の血を引く者だからだ。最もプライドたちとは別に生き残った者の血だがな。」

 

 「そ、そんな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピエロのようなカラーリングをしたギルラプターに変身したラストのファングタイガー改はメルビル仕様ギルラプターエンペラーを遥かに凌ぐ機動力とパワーで圧倒し、メルビル仕様ギルラプターエンペラーは全く歯が立たず、一方的に追い詰めれてしまった。

 

 「メルビルさん!」

 

 「こいつ、強すぎる。」

  

 「あ~ら、全然歯が立たないわね~。やっぱりあたしの美的センスが高いからなのかしら? ま、当然といっちゃ、当然よね!

 あんたみたいな甘っちょろい小娘に宇宙で最も進化した人類であるあたしに敵うわけないんだから。オッホッホッホ!」

 

 「そんな…私とギルラプターエンペラーでも勝てないなんて……」

 

 「さあ、そろそろ、終わりにして上げるわよ。もちろん、苦しまないように一瞬で死なせて上げるわ!」

 

 ピエロカラーをしたギルラプターがメルビル仕様ギルラプターエンペラーとサリー仕様ハンターウルフに止めを刺そうとしたその時、突然、霧の中から強力な砲撃がし、ピエロカラーのギルラプターは間一髪で避けた。

 

 「何!? 何なの!」

 

 「どうやら、間に合ったようだな。」

 

 霧の中から現れたのはバルディーとマリの乗るワイルドライガーガンナーとパキケドスにフォックス、そしてゼノレックスたちだった。

 

 「何!? 何故、あんたたちが!」

 

 「確かに少しは手こずったけど、3馬鹿盗賊団のグソックによる他の仲間の増援とスコーピアの毒、そしてスパイデスの強烈な糸で殆どの奴等を一掃してくれたおかげで助かったぜ!」

 

 「だから、キラーク盗賊団よ! いい加減、覚えておきなさい。」

 

 「最初は役に立たない奴かと思ったけど、結構使える奴で安心したわ。」

 

 「このぉ~、パキケドスの女~、言いたい放題言いやがって!」

 

 「というわけで、次はオメェの番だぞ!」

 

 「流石にこれだけの増援となると、あたしでもきついか…まあ、いいわ。この小娘の始末は次の楽しみにとってあげる。」

 

 不利とみたラストはピエロカラーのギルラプターをファングタイガー改の姿に戻し、そのまま去っていった。

 

 「大丈夫? サリー、メルビル。」

 

 「ありがとう、ロックバーグさん。」

 

 「レオは?」

 

 「あの黒いライガーと戦っています。」

 

 「おし、そうとくりゃ、レオも助けに行かなくてはな。行くぞ、皆!」

 

 「たくっ、いつのまにか、あいつがリーダーになっちまってるぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンラッドの言葉を聞いたレオは信じたくないような顔をした。

 

 「俺が…古代ゾイド人の末裔だって……」

 

 「だが、その血は私のものではない。お前の母親の血だ。実を言うと、私も驚いていたよ。まさか、私の妻サラが古代ゾイド人の血を引いていたなんてな。」

 

 「そんなデタラメがあるはずがない! 俺は信じないぞ。」

 

 「信じるか、信じないかはお前が自由だ。だが、それは事実だ。何故なら、お前と同じ腕を持つセードは金属化した腕の制御に耐えられず、一時暴走したことがあったのだ。」

 

 「暴走…?」

 

 「そう、本来、ゾイド因子をその身にまとうことはその者の身体にかなりの負荷がかかる。何故なら、そのゾイド因子が持つゾイドの闘争本能に飲み込まれ、精神が崩壊し、やがて廃人になるか、ゾイドのようにただ、闘争本能だけを持って暴れまわるだけは怪物になるかのどちらかだった。

 だが、お前にはそれが無かった。それはお前が古代ゾイド人の血を引いているからだ。そして、ドクターマイルスがサラの遺伝子情報を調べ、古代ゾイド人の末裔であることが判明して遂に確信した。その血を引くお前にはゼロメタル帝国に入るべきだったとな!」

 

 「例え…例え、俺が何者だろうと、俺はゼロメタル帝国には屈しない!」

 

 「その愚かさは母親譲りだな。その愚かささえなければ、命を落とすことは無かっただろうに…」

 

 「え…?」

 

 「サラが古代ゾイド人の末裔と知って、私は彼女にゼロメタル帝国に入るように説得した。だが、彼女はその説得に応じず、ゼロメタル帝国に入ろうとしなかった。

 やむ無く、私は彼女の命を奪う選択をしなければなからなかった。そう、その愚かささえなければ、この村の惨状は起きなかったのだ!」

 

 「そんな…俺の父さんが…村を…母さんを……」

 

 「そして、レオ! お前もそれを拒ぬのなら、ゼロメタル帝国の理想に反する者として処刑せねばならない。」

 

 ライガーはレオに攻撃のタイミングを求めるが、レオの目は正気を失っているため、ライガーは何も出来ない状態になっていた。ブラックビーストライガーはその隙にタテガミクローでライガーに止めを刺そうとした。

 

 「皇帝陛下、絶対神に背いた報いを受けるがいい。」

 

 しかし、その時、霧の中から、ガンナーの砲撃がブラックビーストライガーを防ぎ、ブラックビーストライガーは間一髪で避けた。

 

 「新手か!」

 

 「聞こえる? ブラックビーストライガー。」

 

 「ラストか。どうした?」

 

 「戦況が変わったわ。一時撤退よ。」

 

 「わかった。」

 

 ラストの通信を聞いたブラックビーストライガーはそのままその場を去っていった。ハンターウルフから降りたサリーはライガーの元に立ち寄ったが、コクピットのレオは黙り込んでしまった。

 

 「レオ…」

 

 「僕の父さんが…嘘だ、嘘だ、嘘だ~!!」

 

 レオの悲痛な叫びが村中に響き渡った。

 

 To be continued




 次回予告
 
 ラスたちゼロメタル四天王の撤退後、デュークナイツは鹵獲したゼロファントスを解析し、それに対抗するための新型ゾイドの開発を急いだ。
 一方、レオはブラックビーストライガーの正体が父でゼロメタル帝国のメンバーだということを知って端末探しに行けない状態になっていた。サリーはそんなレオを励ますが、レオは自分の目的を失っていた。果たして、レオが取るべき道は!?

 次回「レオの進むべき道」走り抜け、ライガー!! 

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