ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたゼロメタル帝国の神官プライドが遂にゼロメタル帝国の絶対神にして皇帝であるデスザウラーの分身、ディアベル・ギャラガーと古の皇帝龍ゼログライジスを復活させてしまう。 更なる絶望を迎えたレオはゼロメタル帝国にどう立ち向かうのか!?


第58話「オメガレックス再始動」

 エリア61の帝国軍基地、そこに何者かの襲撃を受け、基地の帝国軍ゾイドが迎え撃つが、次々と返り討ちにされていった。

 

 「襲撃されただと! まさか、ゼロメタル帝国か!?」

 

 「わかりません。突然、何者かが我が軍のゾイドを乗っ取り、基地を破壊し、我が軍のゾイドを蹴散らしています。」

 

 「敵の規模はどれぐらいだ?」

 

 「確認出来ているのはキルサイス一体だけです。」

 

 「キルサイス一体だけだと!? まさか、それに我が軍が苦戦しているというのか!」

 

  「ですが、通常のキルサイスと性能は大差ないはずなのに、機動力も戦闘力も桁違いです。恐らく、乗っているライダーが並みの人間ではないと…」

 

 「言い訳は無用だ! 只でさえ、真帝国の影響で我が帝国軍は軟弱国家と呼ばれるようになったのだぞ。

 しかもゼロメタルにも蹂躙させられ、オマケにたかが、一体のキルサイスごときに…」

 

 「ですが、相手が尋常では…」

 

 「黙っ…うっ!」

 

 基地の司令が気付くと、目の前の窓に基地を襲撃しているキルサイスが現れ、チェーンソーナイフで司令塔を破壊し、エリア61の基地を一瞬で壊滅させてしまった。

 司令塔を破壊したキルサイスは基地での戦いを物語るかのようになボロボロの状態で、そのまま降り立ち、コクピットから1人の人物が降り、キルサイスは倒れてしまった。

 搭乗していたのはセードだった。セードは破壊した基地を見渡し、何かを探そうとしたところ、キャタルガと多くの物資が入れられている倉庫を見付けた。

 

 「ほぅ、こんな辺境の基地にもそれなりの物資はあるようだな。相変わらず歯応えのないクズばかりだが、こういうところは役に立つ。

 とはいえ、これでも足りない。次はエリア63の基地を狙うとしよう。」

 

 物資があることを確認したセードは単身で別の基地に向かっていった。

 

 

 エリア61の基地が襲撃されたことはやがて、ネオゼネバスにいる独立部隊司令のマクラマカン大佐とシーガル中佐の元に届いた。

 

 「何!? エリア91が襲われただと! ゼロメタル帝国か?」

 

 「いえ、何者かがその基地のキルサイスに乗り、基地を襲撃し、壊滅させたとの報告です。尚、襲撃した者の所属は不明ですが…」

 

 「シーガル元准将らの反乱を許し、真帝国が築かれた一件以来、我が帝国軍も随分舐められたものだな。」

 

 「大佐、何としても、オメガレックスを!」

 

 「そうだな。今となってはあれが我が帝国の希望なのだからな。ところで、ゼオル司令は?」

 

 「デュークナイツの本部に原因不明の事故が発生したため、その原因究明が完了次第、報告するとありました。」

 

 「そうか…では、彼から通信が来たら、直ちに私に報告しろ。」

 

 「了解致しました。」

 

 司令室をでたマクラマカン大佐は周囲の様子を見渡した後、ある個室に入り、誰かと通信を開いた。

 

 「私です。マクラマカンです。はい、基地があの男によって襲撃され、オメガレックスによる作戦も開始されます。……わかりました、よろしくお願いいたします。」

 

 通信を終えたマクラマカン大佐は個室を去り、そのまま司令室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鹵獲されたゼロファントスによる謎の紫色の霧によって研究者の大半が死亡し、ライダーであるゼロメタル兵の死と共にゼロファントスが石化してしまったため、得られた解析データは僅かなものとなってしまった。

 

 「かなりの損害だな。まさか、ゼロファントスにあのようなものがあり、我がデュークナイツの研究者の大半を失ってしまうことになるとは…」

 

 「だが、これで一つ分かった。ゼロファントスには通常のゾイドにはない毒性のものが存在し、しかも、それがエネルギー源だということは分かった。」

 

 「しかし、その生態系までは知ることは出来なかった…」

 

 「ツガミ大尉、例の新型ゾイドは?」

 

 「復元は完了し、後は最終調整のみとなります。」

 

 「よし、俺はネオゼネバスに向かい、マクラマカン大佐の元で、オメガレックスによるゼログライジス迎撃作戦のシミュレーションに向かう。」

 

 「ゼオル、俺たちも連れていかせてくれ。」

 

 「ギレル少佐にスピーゲル中佐。」

 

 「我々はオメガレックスのテストパイロットとして一度あれに乗りました。扱いの手順には我々も必要です。それにこれは帝国の重大な責務でもあります。」

 

 「わかった。そうしよう。」

 

 「俺とギレル少佐、スピーゲル中佐はネオゼネバスに向かう。他の者はゼロファントスの解析と新型ゾイドの開発に専念を。」

 

 「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アドリア王国領のアダマン領域、シーザーたちがゾイドクライシス時に回収したリジェネレーションキューブの端末の力によってこの領域だけは環境が整い、多くの野生ゾイドが自然のまま、何不自由のない生活を続けていた。

 そんな野生ゾイドが生息している森に位置する崖の辺りで、レオのライガーとシーザーの側近の1人でヒューマンオーガノイドのクラウスの操るクロスタイガーと対決していた。

 ライガーは機関砲を撃ち込むが、クロスタイガーはイグニッションブースターで回避し、レーザーガトリングをライガーに撃ち込んだ。

 しかし、ライガーはすかさず、メガシールドで防ぎ、攻撃の体制に入った。

 

 「行くぞ、ライガー! 進化 解放! エヴォブラストー!! ライジングバーストブレイク!」

 

 ライガーのエヴォブラスト技に対し、クロスタイガーはレーザーガトリングで迎撃し、両者の攻撃がぶつかり合ったが、どちらも倒れなかった。

 

 「いいぞ、その調子だ。 だが、我々と比べ、戦闘経験が浅く、動きも単調だ。もっと敵の動きに注意するんだな。」

 

 「はいっ!」

 

 「それと、君はライガーと完全にシンクロしていない。それが出来なければ、我々と同じヒューマンオーガノイドであるゼロメタル帝国と渡り合うことは出来ない。」

 

 「ライガーとシンクロ…それはどういうことですか?」

 

 「こういうことだ。」

 

 その時、コクピットから出たクラウスがオーガノイド体に変身し、クロスタイガーと融合した後、クロスタイガーはさっきとは比べ物にならない程の機動力でライガーに襲いかかってきた。

 余りのスピードにレオはどうすればいいかわからず、メガシールドで防ぐしかなかった。

 

 「今のではっきりした。君は自分の指示でライガーを動かしているため、ライガーの行動とその心に理解出来ず、自分よりの戦いになってしまっている。

 わかっているだろうが、ゾイドは我々と同じれっきとした生命体! だが、ゾイドに乗るのは馬に乗るのとも訳が違う。我々の先祖は常に人間と共に過ごし、一心同体として生きてきた。

 ゾイドと心を一つにし、その精神と身体を一体化させることこそ、ゾイドの本来の力だ。

 ましてや、君はゼオル様と同じ古代ゾイド人の血を引いている上にゾイド因子をその身に宿している。かつて古代ゾイド人は我々の先祖たるオーガノイドと融合する能力を持ち、それによって古代ゾイド人の文明は栄え、平和に暮らしていた。デスザウラーが現れるまでは…

 君が本当にライガーを相棒と思っているなら、出来るはずだ。ライガーとの一体化…そう、人機一体を!」

 

 「人機一体…わかりました。 もう一度お手合わせしてください。」

 

 「いいだろう。」

 

 再び特訓するレオとライガーを見て、サリーは安心した表情で静かに見守っていた。

 

 「サリー、こんなところで、何しているんだい?」

 

 「バーンさんに、バズさん。」

 

 「レオ、どうしちまったんだ? まさか、喧嘩でもしてるのか?」

 

 「ううん、レオ、やっと気付いたみたい。お父さんと向き合うために自分が何をすべきかを…」

 

 「よく、わからんが、吹っ切れたみたいだな。」

 

 「あ~あ、これで結局俺も旅に同行しなければならなくなっちまったか。」

 

 「とかなんとかいって、お前も人並みにレオを心配してんじゃねぇか?」

 

 「ばっ! 俺はレオと長い付き合いだからよ。両親がいないあいつをここまで育てたのは俺だからな。それに俺とキャタルガがいなきゃ、誰がレオの運搬しなくちゃならないんだ。」

 

 「よっぽど、信頼しているみたいだな。」

 

 「ま、まあな。俺も小さい頃、親父が賭博ばかりに明け暮れたために勝手に自滅してしまい、お袋はそんな親父の元を離れ、オマケに親戚を家に乗っ取られ、何度も騙され続ける生活を送って、ようやくまともな親父に雇われて運び屋になったものはいいもの、ゾイドがいない上にずっと1人作業だったから、何度も同僚にバカにされたよ。

 だが、そんな俺の元にあいつが来て、俺と似た境遇の奴を放っておけなくて、初めて人って奴を信用するようになった。思えば、あいつは俺にとって天使みたいなものだったぜ。」

 

 「そうか、お前も相当苦労してたんだな。」

 

 「そりゃ、旦那ほどではないけど…」

 

 「なら、もう少し、レオや俺たちと付き合ってくれるか?」

 

 「はぁっ、そういってくれるのは旦那が初めてだぜ。」 

 

 「よろしくな。」

 

 

 「ここにいたの?」

 

 「ロックバーグにアイル、どうしてここが?」 

 

 「あんたたちの行動パターンなんて、大体お見通しよ。」

 

 「それより、朗報よ。ボーマン博士が遂に端末の発信器を開発したそうよ。」

 

 「何だって!?」

 

 

 

  ロックバーグ中尉とアイセルの報告を受けたレオとバーンたちはシーザーたちの元に向かい、ボーマン博士は開発した端末発信器の説明を行った。

 

 「今回、開発した発信器はペンダントと違い、ゼロメタル帝国に奪われないことを考慮し、更により端末の居場所を特定出来るように改良した。

 まず、この発信器はゾイドのコクピットに搭載させることで、ゾイドの嗅覚及びゾイドの持つゾイド因子と共通させることで、端末の反応を瞬時に見付け、更にその範囲が半径10キロ以内に上がった。」

 

 「なるほど、ゾイドと一緒に端末を探すっていう発信器か。確かにそれは使えそうだな。で、その発信器はどのゾイドに?」

 

 「元々はよりゾイド因子の強いゾイドに取り付けるとしてレオ君のライガーか、アーサーのどちらかに取り付けようと考えていたが…」

 

 「私のゼノレックスに取り付けさせて下さい。」

 

 「シーザー君…」

 

 「私はヒューマンオーガノイド、そして私の分身のゼノレックスはゼノエヴォリューションシステムでゾイド因子をより活性化させることが出来ます。

 それにレオとアーサー様はゼロメタル帝国の標的にされているため、余計に狙われる危険性が高い。私に敵の注意を反らせば、その隙に端末の再起動を行うことが出来ると思います。」

 

 「そうだな。確かに君とゼノレックスなら、ゼロファントスが襲ってきても返り討ちにすることは出来る。」

 

 「それに地球の滅亡まで、もう後僅かしかありません。1日でも早く全ての端末を再起動せねば…」

 

 「よし、ではこれにより、私たちは再度、端末捜索に入る。」

 

 「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レオたちが再び端末捜索の旅に出掛けた中、ゼロメタル帝国帝都オグドロスの宮殿近くの基地で、エンヴィー、グラトニー、スロウスのバーニングキメイラ、ディメパルサーキメイラ、ゼーゲキメイラの修復が行われていた。その様子を見るエンヴィーたちの元にラスとグリードが立ち寄り、

 

 「全く、随分派手に傷付けたものだな。貴様らのゾイドは親衛隊となったお前たちのために皇帝陛下が献上してくださったものだぞ。 もう少し大事に扱わんと我ら四天王の名に傷をつけるぞ。」

 

 「全くだ! 貴様らが乱暴に扱うせいで、こっちは貴様らの整備担当になってしまったのだぞ。」

 

 「うっせぇよ! ラス。ゾイドなんて所詮、ゼロメタル帝国の奴隷でしかねぇ! 

しかもこいつら作ったのドクターマイルスで、献上したのは皇帝陛下じゃなくてプライドの野郎じゃねぇか!! 俺たちはあの野郎の手下じゃねぇんだぞ!」

 

 「それに、そのプライドがあの時、撤退の命令出さなかったら、あのバーニングライガーなんて、とっくに俺のディメバルサーキメイラでガブッてやってるはずだし。」

 

 「別にどうでもいいよ。どうせゾイドがブッ壊れても、代わりのゾイドなんていくらでもいるわけだし…」

  

 「ま、この私なら、もっと性能のいいゾイドを作れるんですがかね。」

 

 「とにかく、軽率な行動を取るのは止めろ。絶対神たる皇帝陛下の親衛隊として恥ずべき行為だぞ。」

 

 「はっ、文句があるんだったら、プライドの野郎に言えばいいただろ!」

  

 「こら、貴様ら、こっちに気付け! ラス、エンヴィー、グラトニー、スロウス!」

 

 「ああ、そういえば、誰かが口うるさく言ってるかと思えば、最近影の薄いグリードちゃんですか?」

 

 「ま、俺たちの整備担当になってるだけでも少しはマシと思うんだな。」

 

 「へ、こう見えて俺は天才科学者だ。その気になれば、ジェノスピノやオメガレックスなど、屁でもないないくらいのゾイドなら作れるわ! 

 それに俺はヒューマンオーガノイドの端くれだ。それを何故、あのドクターマイルスごときが…」

 

 「そういえば、最近、見ないけど、ドクターマイルスは何処にいるの?」

 

 「けっ、あの野郎、帝国の内通者と通信して、そいつの要望通りにゼロファントスとゼロファントスダークスを派遣しやがった。しかも、あの野郎の判断で…」

 

 「ボクたちと違い、ヒューマンオーガノイドになってもないのに、何で皇帝陛下はあいつとプライド、ラストに独自行動の免許を与えるのかな? 不公平にもほどにもあるよ。」

 

 「しかも、端末とユウトが開発されたのも、奴のおかげというのも余計に腹が立つ。」

 

 「最も何でも、コールドスリープシステムなんて開発して、俺らと同じ不老にもなっているらしいしな。」

 

 「まあ、脳筋のお前らじゃ、一生、皇帝陛下の側に置けないがな。」

 

 「ふん、お前にそれを言われちゃ、お仕舞いだ。」

 

 「何!?」

 

 「止さないか。我々は常に絶対神たる皇帝陛下のために尽くすのだ。我々ヒューマンオーガノイドで争うという醜い姿をさらけ出すな。」

 

 「けっ、いい子ぶるのもその内だぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オメガレックスによるゼログライジス迎撃作戦を行うためにゼオルはギレル少佐とスピーゲル中佐と共にネオゼネバスに向かい、司令部にいるマクラマカン大佐とシーガル中佐と会い、マクラマカン大佐たちは司令部とは別に首都から数キロ離れている場所にゼオルたちを案内し、そこにオメガレックスが保管されている倉庫に入った。

 そこでゼオルたちは誘導ミサイルに代わってなジェノスピノのロングキャノンに似た巨大なキャノン砲を装備したオメガレックスを目撃した。

 

 「これは…」

 

 「グラビティキャノンとロングレンジバスターキャノンを装備するのを想定して誘導ミサイルの代わりに新たなキャノン砲を装備させました。 これなら、オメガレックスのシミュレーションにも十分対応出来るでしょう。」

 

 「何故、こいつを首都に置かなかった?」

 

 「知っての通り、オメガレックスはあのジェノスピノと同等か、それ以上の力を持つ破壊龍です。テストパイロットとして一度乗った経験のあるギレル少佐ですら、まともに乗ることが出来なかったため、また暴走してしまったら、首都を巻き添えにしてしまう恐れがありますからね。」

 

 「悪いが、俺はあんたらみたいに普通の人間と思わない方がいいと思うが…」

 

 「ですが、以前にも暴走の記録もありますから、念には念を入れてのことです。もちろん、司令殿のための耐Bスーツも用意していますが…」

 

 「必要ない。俺はこれまで何度もアーサーに乗ってきて、数々の試練を乗り越えてきた。そんな俺がわざわざそんなものを着る必要などない。 それに、そんなセンスのないスーツなど、着たくもないしな。」

 

 

 

 マクラマカン大佐の要望を断ったゼオルはオメガレックスのコクピットに乗り込み、起動の準備を行った。

 

 「司令、オメガレックスが暴走した場合のことを想定し、倉庫の周囲には我が独立部隊のキルサイス隊が待機しています。これで万が一のことでも、キルサイス隊が抑えてくれます。」

 

 「ま、その必要はないかもしれんがな。」

 

 

 ゼオルがコクピットの操縦桿を握ったその時、突然、オメガレックスの意識が凄い勢いでゼオルの脳裏に流れ込んできた。

 

 「オレニノルナ。ユウトイガイのヤツニハノラセナイ。」

 

 「ぐっ、くっ…」

 

 バイザーの目が発光した時、オメガレックスは咆哮を上げ、突然、地団駄を踏むような行動を取り、更に尻尾を振り回し、倉庫の壁を破壊してしまった。

 

 「くっ、やはり、暴走してしまったか。仕方ない。直ちにオメガレックスに停止を…」

 

 「いや、待ってください。」

 

 ギレル少佐が待ったをかけると、オメガレックスは暴れては、何かの力に抑えられるように苦しみ、また暴れては抑えられるといった行動になっていた。

 

 「これは…」

 

 「おそらく、ゼオル司令がオメガレックスの暴走を抑えているのかもしれない。」

 

 「コクピットにいる司令の様子は?」

 

 「脳波数が上昇していますが、未だに正常範囲内です。」

 

 「あの状態で、まだ正常だと!」

 

 

 「オレニノルナ、ノルナ!」

 

 「うっ、ぐっ…大佐。」

 

 「どうしました? 司令。」

 

 「一旦、こいつを外に出させてくれ。」

 

 「しかし!」

 

 「こいつは倉庫の中は居心地が悪いみたいだ。だから、外に出せば、少しは大人しくなるかもしれない。」

 

 「しかし、下手をすれば、オメガレックスを逃がすことになります。」

 

 「そんときはあんたらに任せる。それに巻き添えを食らわせるよりはマシだ。」

 

 「大佐…」

 

 「わかった。倉庫の扉を開けろ!」

 

 倉庫の扉が開いた途端、オメガレックスは直ぐ様、倉庫から出て、森の中に入っていった。オメガレックスは足と尻尾で木をなぎ倒していったが、ゼオルが抑え込んでいるため、被害はそれほどではなかった。だが、それは2時間続き、その様子を見たシーガル中佐は、

 

 「大佐…もうこれ以上は限界です。直ちにキルサイス隊でオメガレックスを取り押さえましょう。」

 

 「やむを得ない。キルサイス隊、オメガレックスを取り押さえろ!」

 

 マクラマカン大佐の命令を受けたキルサイス隊がオメガレックスを取り押さえようとしたその時、突然、何処からか、ゼロファントスとゼロファントスダークス軍団とゼロメタル仕様キルサイスが現れ、ディゾルボムを投げつけてキルサイス隊を次々と撃墜してしまった。

 

 「ゼロファントスだと!? 何故、ここに!」

 

 キルサイス隊が直ぐ様、ゼロファントス軍団を迎撃しようとするが、ゼロファントスとゼロファントスダークス軍団のラインが紫色に発光し、そのラインから紫色の霧を発生させ、その霧の中に入り、または触れたキルサイス隊が次々と石化し、同時にコクピットのライダーが白骨化していった。それを見たギレル少佐は、

 

 「あれは、あの時の毒の霧! 大佐、一旦基地に待避して体制を立て直しましょう。」

 

 「オメガレックスはどうするのだ?」

 

 「あの霧に触れたら、我々は全滅してしまいます。一旦基地に戻り、体制を立て直した後、オメガレックスの救援に向かうのが先決です。」

 

 「仕方ない。」

 

 ギレル少佐とマクラマカン大佐たちがその場を離脱したのを見たゼロファントスとゼロファントスダークス軍団はオメガレックスに向けて次々とディゾルボムを投げつけていった。

 ゼオルは反撃しようとするも、オメガレックスが言うことを聞かないため、動くことが出来ず、ただ、ディゾルボムの攻撃を受け続けるだけとなり、更にゼロメタル仕様キルサイスが丸でスズメバチに群がるミツバチのようにオメガレックスに群がり、完全に身動きが取れなくなってしまった。

 

 「ユウトヲコロソウトシタヤツラ、ゼッタイニユルサナイ!」

 

 「そうか、自分の相棒を捨て駒にし、瀕死にさせた奴等を恨んでいるんだな。だが、その気持ちはお前だけじゃない、俺も奴らに借りがある。

 何処の馬の骨ともわからん奴に乗ってしまうのは気に入らないかもしれんが、せめて共通の敵を倒すまでは俺と一緒に戦え~!!」

 

 ゼオルの叫び声を聞いたオメガレックスは少し大人しくなると、オメガレックスは全ての力を振り絞って群がったゼロメタル仕様キルサイスを振り払った。ゼロファントス軍団は尚もディゾルボムを投げ付けたが、オメガレックスは新たに装備されたキャノン砲で迎撃し、それを見たゼロファントス軍団はオメガレックスに向けて次々と突進していった。

 しかし、オメガレックスはゼロファントス軍団を足で踏み潰したり、尻尾で凪払ったり、更に一体のゼロファントスに食らい付き、そのまま噛み砕いていった。

 基地に戻り、スナイプテラに乗ったギレル少佐とマクラマカン大佐たちはキルサイス隊を率いてオメガレックスの元に向かったが、既にその場はオメガレックスによって蹂躙された後になり、周囲にはゼロファントスの残骸があちこちに散らばっていた。

 そしてオメガレックスのコクピットの中にはゼオルがギレル少佐とマクラマカン大佐たちに向かってグーサインをし、それを見たギレル少佐とマクラマカン大佐たちは驚愕した。

 

 「まさか、本当にノリこなしてしまったというのか…」

 

 ゼオルの乗るオメガレックスはギレル少佐とマクラマカン大佐たちの乗るスナイプテラと共に首都に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新たな物資を得るために一旦エリア61の基地から離れ、エリア63の帝国軍基地に向かったセードはその基地に着くが、目の前には既にコバたちバーニングライガーによって襲撃されていた。

 帝国軍ゾイドは一斉にコバたち4体のバーニングライガーに砲撃するが、4体とも同じイグニッションブースターを装備し、ブースターの加速でその砲撃を悉く避け、帝国軍ゾイドの装備とコクピットだけを狙いながら、戦っていた。

 辛うじて破壊されず、ゾイドから切り離されたコクピットの帝国軍兵士が直ぐ様、その場を離脱しようとしたその時、コバのバーニングライガーが目の前に現れ、帝国軍兵士は恐怖した。

 

 「た、助けてくれ…お願いだ。助けてくれ…」

 

 しかし、コバのバーニングライガーは兵士の命乞いに聞く耳をもたず、そのまま踏み潰してしまった。

 

 「貴様らのようなゾイドを道具扱いにし、戦争兵器にする人間共に生きる資格はない。」

 

 「相変わらず、派手にやってるな。」

 

 その時、誰かからか、声がし、コバが振り向くと、そこには踏み潰されたコクピットの上に立つセードの姿があった。

 

 「お前は!」

 

 「ふっ、」

 

 To be continued




 次回予告

 ジェノスピノ暴走形態の襲撃以来、コバたちはセードをデスザウラーと同類と判断してセードと死闘を繰り広げるが、コバはセードからデスザウラーのような気配を感じず、そればかりか、彼の戦いが自分たちと似ているようにも感じ、セードを敵と思えられないようになったコバたちはセードに興味を示し、彼の素性を知ることになる。

 次回「戦う理由」走り抜け、ライガー!!

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