ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 ペンダントの力によって突如復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーを復活させた不思議な力を持つペンダントを持ち、地球の未来を左右する謎の少女サリーと共に地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第6話「空ト陸ノスナイパー」

 帝国軍空軍基地、そこでは帝国軍の航空戦力のゾイドたちによる演習が行われていた。

 基地の回りを巡回しているのは帝国軍の航空戦力で最強のゾイドであるプテラノドン種の赤いスナイプテラが飛行していた。そして、そのスナイプテラには赤き死神の異名を持つ帝国軍のエースパイロット、クリストファー・ギレル中尉が乗っていた。

 スナイプテラは海にいる演習相手のガブリゲーター部隊と交戦していた。ガブリゲーター部隊は装備しているミサイルポッドでスナイプテラを撃ち落とそうとするが、スナイプテラは全てのミサイルを難なく避け、ガトリングとミサイルでガブリゲーター部隊を全て迎撃した。

 

 「この演習、思ったより、早く終わりそうだな。ん?」

 

 その時、レーダーに反応があり、背後から2体の赤いクワーガと青いクワーガが迫ってきた。2体のクワーガは帝国軍が開発した新型で、赤いクワーガはクワーガファイアボンバー、青いクワーガは青いクワーガスカイステルスだった。

 

 「制御トリガー解除! クワーガ、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 マシンブラストしたファイアボンバーは熱式ビームマシンガンを放ちながらスナイプテラに近付いてきた。スナイプテラは攻撃を避けるもファイアボンバーはまるでスタミナ切れを知らないかのようにマシンガンを撃ち込み、執拗にスナイプテラに攻撃した。

 

 「くそ、反撃する隙がない!」

 

 その時、罠に掛かったかと言わんばかりにいつの間にか目の前にスカイステルスが現れた。

 

 「制御トリガー解除! クワーガ、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 マシンブラストしたスカイステルスはデュアルシザースを剥き出しにし、スナイプテラの翼を切り裂こうとする。しかし、ギレル中尉は持ち前の勘でスナイプテラの方向を変え、間一髪で避けた。

 スナイプテラは上空に急浮上し、その後直ぐに下降して2体のクワーガに向かって突っ込んだ。

 

 「流石のコンビプレートだ。しかし、私はそう簡単には敗れん!

 制御トリガー解除! スナイプテラ、兵器 解放! マシンブラストー!! アブソルートショット!」

 

 マシンブラストしたスナイプテラはA-Zスナイパーライフルを剥き出しにし、ガトリングを撃ち込みながら、ファイアボンバーとスカイステルスに向けて放った。2体は避けようとするも間に合わず、翼を撃ち抜かれてしまう。

 

 「演習終了! 演習終了!」

 

 「今回はここまでだな。」

 

 スナイプテラと2体のクワーガは基地に戻り、離陸した。スナイプテラから降りたギレル中尉の元にファイアボンバーから降りた1人の男性とスカイステルスに乗っていた女性士官が向かった。ファイアボンバーのライダーはギルバート・バスキア少尉、スカイステルスはその妹のハヅキ・バスキア准尉だった。

 

 「流石です! 赤き死神の異名を持つギレル中尉には敵いません。」

 

 「そんなことはない。君たち兄妹も中々のものだ。下手したら、私が負けていたよ。流石、我が帝国軍が誇るエリートだ!」

 

 「コリンズ准将の元で師事された者ですから、ヘマは許されません。」 

 

 「ふっ、」

 

 ギレル中尉とバスキア少尉は量産型のスナイプテラを見、

 

 「スナイプテラもかなり量産されたようですね。」

 

 「ああ、今後も更にスナイプテラの量産を進め、帝国の制空権を確実なものにするつもりだ。」

 

 「これで、帝国の空は安泰ですね。 そういえば、最近帝国が何か強大なゾイドの開発も進めているとの噂もありました。」

 

 「強大なゾイド?」

 

 「詳しいことはわかりませんが、何でも地球の覇権を左右するほどの力を持ったゾイドだとか…」

 

 2人の元にバスキア准尉が、

 

 「ギレル中尉、コリンズ准将からの通信が!」

 

 「コリンズ准将から?」

 

 「至急、帝都に来て欲しいとのことですが…」

 

 「コリンズ准将がわざわざ私を呼び出すとは……一体?」

 

 

 

 

 

 

 帝国の首都ネオゼネバスシティ、そこにはゾイドクライシス以前の旧フランスの首都パリのマルセイユに当たる場所であり、そこでは近未来のような都市に地球に移住する時にゾイド人が乗っていた巨大な移民船が鎮座していた。

 そこにギレル中尉のスナイプテラが帝国軍の拠点に向けて飛行した。移民船の手前に止まり、通信で「スナイプテラは87番ハッチへ」という指示を受け、ハッチ内に入るスナイプテラ。中には帝都と同様の都市になっていた。

 87番ハッチを通過し、そのまま都市部に入るスナイプテラ、スナイプテラから降りたギレル中尉に声を掛ける男性、それは帝国軍のアドリアス・コリンズ准将だった。

 

 「ギレル中尉。」

 

 「コリンズ准将。あなたでしたか。私を呼び出したのは!」

 

 「久し振りだな。最近、随分腕を上げたとも聞いている。」

 

 「帝国軍人として、それは当たり前のことです。ところで、私に何の御用でしょうか?」

 

 「実は君に会いたいという人がおってな。」

 

 「私に?」

 

 コリンズ准将とギレル中尉は移民船のある部屋に入り、そこにコリンズ准将とギレル中尉を待っていたのは、ランド博士とユウトだった。

 コリンズ准将からギレル中尉は帝国軍最高科学顧問ランド博士を紹介される。

 

 「彼がお話したギレル中尉です。」

 

 「ほう、君か。帝国軍切っての切れ者という噂の軍人は…」

 

 「噂ではなく真実です!」

 

 「おお、そうか、それは失礼…」

 

 ユウトを見たギレル中尉は、

 

 「博士、この者は?」

 

 「紹介しよう。プライド摂政閣下直属の特務少尉にして、私の助手であるザナドゥリアス少尉だ。

 私の開発したハンターウルフ改のゾイドライダーでもある。」

 

 「では、あの帝国軍最強のハンターウルフ改を操るゾイドライダーというのは君か!」

 

 「言葉を慎みたまえ! ギレル中尉。 君より階級は低くとも彼はプライド閣下直属の者。そして、私が育てた優秀な軍人なのだ。」

 

 「しかし、彼は私より年し…」

 

 ランド博士に意見をするギレル中尉にコリンズ准将はギレル中尉の肩に触れ、

 

 「まあまあ、ギレル中尉。博士の言う通りだ。彼は帝国で最も優秀な人材なのだから。」

 

 「あなたがそう言うのでしたら…」

 

 「この帝国の移民船が地球に到着したのは、共和国よりも一年も後のことだ。その一年の間に、共和国はゾイドを発掘復元し、先に軍備を強化されてしまった。

 我々はその遅れを取り戻すため、ランド博士を帝国に招聘したんだ。

 ワイルドブラストの衝撃からゾイドライダーを守る耐Bスーツやゾイドの能力を最大限に引き出すゾイドオペレートバイザーも、このランド博士が開発したものだ。」

 

 「知っています。博士が元は共和国側の人間だったということも…」

 

 「ランド博士は現在、ゾイドの発掘と復元作業に従事している。君は博士の助手であるザナドゥリアス少尉と共に護衛として博士に同行し、博士の作業を全面的にサポートしてもらいたいのだ。」

 

「お言葉ですが准将、自分はスナイプテラのゾイドライダーです。化石の発掘を手伝うために軍人になったのではありません。」 

 

 「いいか、ギレル中尉、一月(ひとつき)前だ。帝国軍の発掘チームが、あるゾイドの化石を発見した。そのとてつもなく巨大な化石は、度重なる地殻変動のせいで良好な保存状態とは言えなかったが、綿密な調査の結果その化石の正体がジェノスピノだと判明した。」

 

 「ジェノスピノ?」

 

 ジェノスピノの名前にピンと来ていないギレル。そこで報道番組仕立ての地球崩壊のシーンが写し出される。

 

 「こ、これは!」

 

 「そう。あれがジェノスピノだ。ゾイドクライシスのあった21世期、記録によると僅か一晩で世界の1/3を壊滅させたとも言われている。」

 

 「ジェノスビノを完全復元出来れば、軍事力で共和国を一気に引き離し、ゾイドによる覇権争いにも決着が付く。」

 

 「そのために私を起用したのですか?」

 

 「そうだ。ジェノスピノの復元は帝国の悲願なのだ。この戦争に終止符を打つために、これからの帝国の将来を担う君を選んだのだ。」

 

 「まさか、帝国の将来をこの私に…?」

 

 「そうだ。君のような優秀な者をこれからの帝国を引っ張っていかなければならない。プライド摂政も君に期待しているのだよ!」

 

 「准将…… ところで、ジェノスピノが完成した暁には一体誰が乗るのですか?」

 

 「それはプライド摂政が御決めになることだ。」

 

 「ギレル中尉、これから私の手助けになってくれたまえ。」

 

 「わかりました。ジェノスピノ復元のため、全力を尽くします!」

 

 その時、ユウトが手を差し出し、

 

 「よろしくお願いいたします。ギレル中尉。」

 

 それを見て、少し疑問を持ちながらもユウトの握手に応じるギレル中尉、

 

 「こちらこそ、よろしく。」

 

 

 

 

 

 

 

 ツガミ大尉から教えられたルートを通るレオたち、アイセルは端末に疑問を持ち、レオとサリーに話しかけた。

 

 「ねぇ、その端末のことなんだけど、何処にあるのか分かるの?」

 

 「はい、でも端末の在りかの情報と言えば、これぐらいだけで…」

 

 サリーはペンダントを作動し、端末の在りかを点滅している地球儀のホログラムを見せた。

 

 「アイセル、何かわかる?」

 

 「う~ん、パット見、どの大陸にあるかだけならわかるけど、どれも漠然としていて、細かい位置まではわからないわね。」

 

 「やれやれ、共和国軍のボディーガードも形無しか…」

 

 「失礼ね! こう見えても私は共和国軍人兼考古学者なんだから。」

 

 「まあまあ、」

 

 「でも一番近いとするなら、ここね。ここなら、最短ルートで行けるわ。」

 

 「よし、まずはそこにある端末だな。 いくぞ、ライガー!」

 

 ガオォ~、

 

 ビーストライガーは目一杯咆哮を上げ、走って行った。

 

 

 

 

 その近くの地域をユウトのハンターウルフ改、ギレル中尉のスナイプテラがランド博士の護衛ゾイドと共にジェノスピノの化石の探索に向かっていた。コクピットに取り付けている発信器に反応しているのを見たユウトは、

 

 「この先にゾイド反応あり、通常のゾイドの反応じゃない辺り、ジェノスピノの可能性が高いです。」

 

 「よし、直ちにその場所に向かい、回収作業に入る。」

 

 「いえ、ジャミンガや共和国軍が潜んでいる可能性がありますので、僕が先に行って調査してきます。

 合図を出しますので、合図が来ましたら、中尉は回収班と共に来てください。」

 

 「了解した。」

 

 ハンターウルフ改はソニックブースターで加速し、そのまま走り去っていった。それを見たギレル中尉は、

 

 「ランド博士の助手にして、プライド摂政閣下直属の特務少尉、しかも耐Bスーツ無しでゾイドを乗りこなし、帝国軍最強のハンターウルフ改を操る最強のエリート… あの男の実力はどれ程のものなのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 最短ルートを通るレオたち、その時、サリーのペンダントがオレンジ色に発光した。

 

 「ん? どうした。」

 

 「この先に端末の反応があります。」

 

 「何だって! もうその在りかのところに着いちゃったのか!?」

 

 「やっぱり、最短ルートを通って正解だったようね。」

 

 「よし、じゃあ、早速行こう!」

 

 

 

 サリーのペンダントの指し示す方向に向かったのは、かつてゾイドクライシスで荒廃した街だった。レオとアイセルはライガーとラプトリアから降り、サリーとバズも車から降りた。

 

 「おいおい、もしかしてここって、ジャミンガがうじゃうじゃいるんじゃないかな?」

 

 「大丈夫! もし、ジャミンガが来たら、あたしとラプちゃんが倒してあげるから。」

 

 「ラプトリア一体じゃ、どうも信用ならんな。」

 

 「何よ!!」

 

 「まあまあ、とにかく端末を探しに行こう。」

 

 サリーのペンダントを頼りに街中を進むレオたち、レオは破壊された旧市街に何か違和感を感じていた。旧市街には破壊された建物の多くが何かによって切断されたような損傷の痕を持っていた。

 

 「ねぇ、この街って、何かちょっとおかしくない?」

 

 「地殻変動で壊された街はあちこち見掛けるけど、ここはそれらとは違うみたいね。」

 

 「確かに壊れたというより、何かに斬られたって感じだな。」

 

 「何だか、ちょっと怖い…」

 

 「この街に一体何があったんだ…」

 

 その時、バズは巨大な水たまりを見つけた。それは巨大なゾイドのような足跡だった。

 

 「お、おい、一体なんだ、あれ!」

 

 「大きい。」

 

 「なんて大きさなんだ。あんな巨大なゾイドの足跡があるなんて!」

 

 「もしかして… あれがこの街を壊したの…?」

 

 「んなわけねぇだろ! 一番デカいゾイドといったら、グラキオサウルスぐらいだぜ。 それよりデカいゾイドなんているわけ…」

 

 「そうとは限らないわ…」

 

 「え?」

 

 それを聞いたレオは疑問を感じた。

 

 「聞いたことがある。最大にして最強。ゾイドクライシスの時、その力で地球の1/3を滅したと言われる、伝説のゾイド。破壊竜“ジェノスピノ”……」

 

 「破壊竜…伝説のゾイド……」

 

 その時、ライガーが何か感じとったような素振りを見せ、レオたちを覆い被さった。同時に何処からか砲撃があり、ライガーに直撃した。

 

 「ライガー! 大丈夫か?」

 

 レオが上を見上げたら、切断されたビルの上にハンターウルフ改がいた。

 

 「あれは!」

 

 「ジェノスピノの化石の回収の調査に来たが、まさか、またあのライガーと会うことになるとは!

 博士からは化石の回収を最重要任務としているが、ここで逃がすわけにはいかない。化石と共に回収する!」

 

 ライガーに更に砲撃を加えるハンターウルフ改、

 

 「ちょっと、あれって、帝国軍最強のハンターウルフ改じゃない! 何であんなのがここにいるの!?」

 

 「俺に聞いても知るかよ!」

 

 「サリー、バズ、アイセルはここから離れて!」

 

 「レオ、どうするの?」

 

 「俺はライガーと一緒にあいつを食い止める。その間に皆は端末を!」

 

 「おいおい、無茶するなよ。あいつ、ライガーでも全く歯が立たなかった相手とだぞ! 1人じゃ、勝てっこないぜ。

 ま、ラプトリアが加勢に入っても同じだろうけど…」

 

 「何ですって!!  あたしのラプちゃんを愚弄する気!」

 

 「そんなこと言っている場合じゃないだろ! とにかくバズたちはここから離れて。」

 

 「確かにあたしのラプちゃんが加わっても勝てそうにぬいわね。」

 

 「レオ……」

 

 「大丈夫だよ。サリー。俺とライガーは必ず戻ってくる。」

 

 「わかった。」

 

 「よし、死ぬなよ、レオ!」

 

 バズはサリーを連れて車に乗り、アイセルはラプトリアに乗ってその場を離れた。レオはライガーに乗り、ハンターウルフ改と対峙した。

 

 「ここから先は通さない!」

 

 「君たちがここで何をするつもりか知らないが、ライガーは今度こそ渡してもらう!」

 

 ハンターウルフ改はガトリングを撃ち込みながら、突っ込み、前足でライガーを攻撃しようとするが、

 

 「ライガー、あいつが近付いてきたところを狙うぞ。」

 

 前足で引っ掻こうとしたハンターウルフ改の攻撃をギリギリで避け、前足でハンターウルフ改を攻撃した。

 

 「やった! いいぞ、ライガー!」

 

 「以前より、動きが良くなっている。経験を積んだのか!? だが、それでも僕のウルフの方が上だ!」

 

 ハンターウルフ改は態勢を立て直し、尚もライガーに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 合図を待っているギレル中尉は時計を見、

 

 「安全を確認するだけなら、もうそろそろ来てもいいころだが…」

 

 ギレル中尉はスナイプテラの元に向かい、それを見た1人の兵士が、

 

 「ギレル中尉! ザナドゥリアス少尉からの合図がまだですが…」

 

 「少し偵察に向かう。」

 

 「しかし、それでは……命令違反になります!」

 

 「様子を見るだけだ。 回収班も連れていくわけではないから、文句を言われる筋合いはないだろう。

 もし、ザナドゥリアス少尉が敵と交戦して苦戦していたら、尚更だ。

 合図は代わりに俺が送る。合図が来たら、直ちに現場に向かえ!」

 

 「り、了解しました!」

 

 ギレル中尉はスナイプテラに乗り込み、

 

 「耐Bスーツ正常に作動。スナイプテラ発進!」

 

 ギレル中尉の乗るスナイプテラは旧市街に向かった。

 

 「もし、奴が敵と交戦しているなら、この目で奴の実力を見るチャンスだ。」

 

 

 

 

 

 ライガーはハンターウルフ改に攻撃を当てようとするも、ソニックブースターで加速するハンターウルフ改のスピードに翻弄され、一方的に攻撃を受けてしまう。

 

 「くそ、やっぱりあいつ強い!」

 

 そこにスナイプテラが到着し、ギレル中尉はハンターウルフ改とビーストライガーを見付けた。

 

 「あれは? まさか、手配中の例のライガーか! こんなところに会うとは思わなかった。」

 

 スナイプテラを見たユウトは、

 

 「ギレル中尉! 合図が来るまで動くなと言ったはずじゃないですか!」

 

 「偵察に向かっただけだ。別に回収班までは連れてはいない。 何なら、手を貸そうか?」

 

 「ライガーは僕の獲物です! あなたは一切手を出さないでください。それより、ジェノスピノの化石の捜索を!」

 

 「思ったより、少々頑固で、まだ子供のようだ。だが、嫌いではない。」

 

 「ウォー!!」

 

 ハンターウルフ改はソニックブースターで更に加速し、次々とビルに跳び移って縦横無尽に駆け巡りながら、ガトリングをライガーに撃ち込んだ。ライガーも反撃しようとするが、ハンターウルフ改の機動性が余りに高く、そのスピードに翻弄された。

 

 「くそ、あの機動性を何とかしないと!」

 

 グルル……

 

 その時、ライガーがレオに何か言いたいように静かに頷き、同時にレオの左腕もオレンジ色に発光した。

 

 「そうか、奴が近づいてきた時にワイルドブラストして、そこを狙うんだな。 よし、行くぞ、ライガー!」

 

 ハンターウルフ改はビルの屋上に飛び乗り、そのままソニックブースターの加速を利用してまるで飛行ゾイドのように飛行し、そのままライガーに向けて急降下した。ハンターウルフ改は降下しながら、ガトリングを撃ち込み、前足でライガーを攻撃しようとするが、

 

 「今だ!」

 

 レオとライガーの勘がシンクロし、ハンターウルフ改の攻撃を瞬時に避けた。

 

 「よし、行くぞ、ライガー!!」

 

 ガオ~!!

 

 「ビーストライガー、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 エヴォブラストしたライガーはハンターウルフ改に向かって走っていく。

 

 「ビーストオブクローブレイク!!」

 

 ハンターウルフ改は急いで反撃に回ろうとするが、間に合わず、ライガーのタテガミクローがハンターウルフ改の前足を貫いた。前足を貫かれたハンターウルフ改は態勢を崩し、そのまま倒れてしまう。

 

 「よし、やったぞ! ライガー!!」

 

 それを見たギレル中尉は、

 

 「ほぅ、あのライガー、軍のゾイドでもないのにあれだけの動きをするとは! 中々興味深いな。」

 

 傷つきながらも立ち上がろうとするハンターウルフ改、

 

 「そんな…僕のハンターウルフが負けるはずがない! 僕のウルフは僕を認めてくれた博士がくれたゾイドなんだ。

 そのウルフと僕が負けるはずがない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 バズの車とラプトリアはサリーのペンダントの光を頼りに旧市街を走っていた。その時、サリーのペンダントが倒壊したビルの方を指し示した。

 

 「彼処です!」

 

 「ようし、彼処だ。ジャミンガが来る前にさっさと済ませるぞ! 共和国の姉さんも遅れるなよ!」

 

 「ちょっと、あたしの名前はアイセルよ!」

 

 バズの車とラプトリアは倒壊したビルのところにある巨大な穴に向かった。それを見たギレル中尉は、

 

 「あの入口は!? 彼処から巨大なゾイド反応がある。まさか、奴ら、ジェノスピノの化石を奪うつもりか!

 そうはさせん! ジェノスピノは我が帝国のゾイドだ。絶対に渡さん!

 制御トリガー解除! スナイプテラ、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 マシンブラストしたスナイプテラは口内からA-Zスナイパーライフルを剥き出しにし、

 

 「アブソルートショット!!」

 

 スナイプテラスナイパーライフルが洞窟の入口に直撃し、洞窟の入口は完全に塞がれ、アブソルートショットの衝撃でバズの車がスリップし、ラプトリアも飛ばされてしまう。

 

 

 

 

 

 立ち上がるもライガーの攻撃で足を挫いて、苦しむハンターウルフ改、

 

 「博士がこの僕にくれたハンターウルフを…… よくも… 貴様……許さない!!」

 

 ユウトは怒りを剥き出しにし、ハンターウルフ改はライガーに向かって走り出した。

 

 「あいつ、まだやる気だ。でもさっきあいつに一撃を喰らわせたんだ。もう一度いけるよな? ライガー!」

 

 グルル…

 

 レオの問いにゆっくり頷くライガー、

 

 「ようし、行くぞ、ライガー!」

 

 直進していくハンターウルフ改に向かってライガーも真っ直ぐ突っ込んでいく。

 

 「制御トリガー解除! ハンターウルフ、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 「ビーストオブクローブレイク!!」

 

 「ソニックシックル!!」

 

 マシンブラストしたハンターウルフ改はソニックブースターを前方に向け、鎌のような音波をライガーに向けて発射した。

 ライガーはタテガミクローでそれを受け止めようとするが、音波による鎌はライガーのタテガミクローを切り裂いてしまう。

 

 「ウワァー!!」

 

 ハンターウルフ改のソニックシックルによってタテガミクローをやられ、ライガーは態勢を崩し、谷底に落下してしまう。落下するライガーを見たサリーは、

 

 「レオー!!」

 

 「どうやら、勝負あったようだな。 ザナドゥリアス少尉…やはり、予想以上の男だった。」

 

 スナイプテラはスナイパーライフルを上に向け、上空に撃った。

 

 それを待機していた帝国軍の回収班は、

 

 「ギレル中尉の合図だ。急いで回収に向かうぞ!」

 

 スナイプテラの合図により、帝国軍の回収班はキャタルガに乗って現場に向かった。

 ハンターウルフ改はライガーが落下した崖下に近付き、ユウトは静かにじっと見詰めた。

 

 To be continued




 次回予告

 ハンターウルフ改に傷を負わせるも、マシンブラストによって倒れるレオとライガー、 ライガーはジェノスピノの化石と共に奪われ、基地に連行されていった。
 一方、サリーはレオとの再会を求め旅を続ける中、端末を見つけ、再起動を試みる。 レオは1人基地内部に潜入し、ライガー奪還を試みるが強敵と遭遇してしまう。

 次回「求メル相手」

 走り抜け、ライガー!!

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