ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたゼロメタル帝国の神官プライドが遂にゼロメタル帝国の絶対神にして皇帝であるデスザウラーの分身、ディアベル・ギャラガーと古の皇帝龍ゼログライジスを復活させてしまう。 更なる絶望を迎えたレオはゼロメタル帝国にどう立ち向かうのか!?


第60話「新たなゾイド」

 共和国第二の首都ニューホープに位置するデュークナイツの本部、総司令のゼオルがネオゼネバスでオメガレックスによる対ゼログライジス戦のためのシミュレーションが行われる中、本部ではゼロファントスに対抗するための新型ゾイドの開発が進み、その様子をギレル少佐とディアス中佐が見ていた。

 

 「完成はもう間近だな。」

 

 「ああ、後はシミュレーションを兼ねた最終調整を終えれば、完成だ。 僅かだが、石化したゼロファントスから得た情報を基にこいつの突撃はゼロファントスの装甲を貫き、更にゼロファントから発生する特殊な毒を完全に遮断することが出来る。」

 

 「これが、我が帝国、共和国の救世主となるか、否か…」

 

 「帝国、共和国の威信をかけた共同開発を受けたゾイドだ。期待出来ないはずがない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロメタル帝国帝都オクドロスの施設で、スパイデスの頭部をした研究員がゼロファントスとゼロファントスダークスの整備を行い、ラスとグリードはその様子を見ていた。

 

 「ディメパルサーのマッドオクテットを応用し、ゼロファントスのマインドホーンの出力も上がっているようだな。」

 

 「当然だ、私にかかれば、これくらいのことは出来る。それにディメパルサーもゼロファントスのマインドホーンを応用してマッドオクテットの出力も並みではない。

 これが放たれれば、下等生物が従えるゾイド共を支配下に置くことも可能だ。そうなれば、奴らはおしまいだ。」

 

 「だが、奴等の技術力も早々侮れん。対策も練らねば。」

 

 「随分、心配性だな。デスザウラー様であるディアベル陛下が治めるゼロメタル帝国を倒せる者など、この世に存在しないというのに…」

 

 「無いとも限らん。陛下が一度オリジナルデスザウラーとして御復活なされた時にブレードライガーというものに敗れ、更にはその分身であるバイオティラノすらムラサメライガーというものに敗れている。」

 

 「もしかすると、現陛下も同じ運命に逢う可能性もあるやもしれない。」

 

 「けっ、ゼロメタル四天王最強と呼ばれた貴様がそんな弱気を吐くとはな。笑わせるぜ。」

  

 その時、小馬鹿にした態度を取ったグリードをラスは彼の胸倉を掴み、

 

 「ヒィッ!」

 

 「その言葉、聞き捨てならぬぞ! 私は陛下万歳御身を案じて言ったのだ。我々は陛下に従い、ただ、その計画を実行するために動く。

 それが我等ヒューマンオーがノイドの生き方だ。だからこそ、陛下を脅かす輩は必ず排除せねばならない…わかっているよな?」

 

 「わ…わかった。わかったから、離せよ。」

 

 「ふん、」

 

 「(ちっ、いい気になりやがって。)」

 

 ラスが周囲を見渡すと、突然、ゼロファントスダークスの群れが施設から出ていっていった。それを不審に見たラスは直ぐ様、群れを追い、静止させるように先頭に立った。

 しかし、そこでラスが見たのは、ゼロファントスダークスの群れを率いているバーニングキメイラとディメパルサーキメイラ、ゼーゲキメイラだった。

 

 「エンヴィー、グラトニー、スロウス! 貴様ら、どういうつもりだ?」

 

 「決まってるだろ? 俺たちの邪魔になりそうなライガーを始末するんだよ!」

 

 「早々、帝国や共和国っちゅう、弱っちい奴等より、ライガーを相手にした方が食い応えがあるんだよね。オマケに青色をした一体は何でもバイオティラノを倒したムラサメみたいに姿を変えられるライガーって聞いたし。」

 

 「もう、いいから、さっさと行こうぜ。面倒くさい。」

 

 「貴様ら、我々四天王の役目を忘れたのか? 皇帝ディアベル・ギャラガー陛下直属である我々はあくまで陛下のご命令のみ…」

 

 「ああ、それなら、問題ない。ちゃんと陛下の命令で動いているからな。」

 

 「何…だと…」

 

 「プライドから例のライガーを聞いた陛下がそいつに興味を持って、そいつの実力を知りたいから、俺たちで確かめるんだとさ。」

 

 「馬鹿な! 私は聞いていないぞ。」

 

 「だったら、自分で確かめるんだな。ホントかどうかを…最もガンコなお前じゃ、わからないだろうな。行くぞ! 野郎共。」

 

 ラスに事情を話したエンヴィーたちはそのまま、ラスを避けながら、ゼロファントスダークス軍団を率いれ、去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アドリア王国の端末から得た情報を基に開発した発信器を便りにレオたちは端末のある場所に向かって進んでいった。ラストやブラックビーストライガーのこともあってか、再びゼロメタル帝国に襲撃された場合、いつでも攻撃の姿勢を取れるよう、以前より警戒しながら歩いていった。

 しかし、地球滅亡までの時間が後僅かということもあり、警戒はしながらも、ゆっくりといかず、周囲に目を凝らしながら、進んでいった。

 

 発信器の反応が強くなり、レオたちはようやく端末のある場所に着いた。

 

 着いた場所は人の影がない荒廃した都市だった。都市に着いたレオたちは街中を歩いて端末を探し回った。

 当初、レオたちはここを行く先々で見掛けるゾイドクライシスによって荒れ果てた街だと思っていたが、破壊された建物はつい最近に建てられた形跡があり、また、あちこちに銃弾を受けた家やビルもあった。

 ロックバーグ中尉とアイセルが街の跡を調べると、ここは元共和国の都市だったが、帝国軍がその都市の資源を狙い、共和国軍と交戦し、帝国軍を追い払うことに成功するも、その際に戦闘に巻き込まれ、すっかり荒れ果てたためにここに住むことが不可能と判断した住民が軍と共に離れ、誰も立ち寄らなくなった場所だということが判明した。

 

 「つうことは、ここは帝国と共和国の戦争の爪痕ということか…」

 

 「皮肉ね…ゼロメタル帝国に対抗するために今は共同戦線を組んでいる両国だけど、その跡が未だに根強く残っているなんて…」

 

 「てことは、帝国軍が狙ってたという資源って…」

 

 「おそらく、リジェネレーションキューブの端末のことだろう。だが、正常に作動していないため、戦争で荒れ果てたこの街を再生することが出来ず、ここの住民はこの街を捨てざるを得なかったのだろう。」

 

 

 街のあちこちには焼け焦げた共和国軍の軍服やゾイドの残骸のパーツが所々に落ちており、それを見たサリーは自分が帝国軍にいたときのことを思い出し、自分の研究がこんなところに利用されたということを知り、胸が痛み、同時にメルビルも軍人ではあったものの、あくまでランドの助手としてその研究や護衛等を主な任務としていたため、ユウトやセードのように前線に送られることがなく、直接の戦闘の経験を知らなかったため、それまで帝国軍が行っていた愚行やランドの所業を再び知らしめることになり、自分がもっと早くこの事に気付くべきだと悔やむ気持ちになった。

 

 その時、サリーが何かに気付き、辺りを見渡していた。

 

 「どうしたの? サリー。」

 

 「感じる。彼処に何か…」

 

 「確かに…俺の左腕にも何か感じる。」

 

 サリーが指差したのは、崩れたビル群に僅かにある地下への穴だった。レオとサリーはその穴に入り、地下の中へ進んでいった。辿り着いた先には幾つかの建物の破片で少し埋もれていた端末の姿があった。

 

 「これは…」

 

 「戦争によって崩れた建物に埋もれたために端末が起動出来なくなったのか。」

 

 「戦争の影響がこんなところにも…レオ…?」

 

 瓦礫を別のところに移動させながら、レオは端末に近付き、左手の手袋を取り、端末に触れた。

 レオの左手で再起動した端末は周囲を無重力にし、そのまま地中に入っていった。

 そして、戦争によって荒れ果てた街は再起動した端末により、戦争の爪痕を少しずつ消し、破壊されたゾイドの残骸のパーツも浄化され、次第に再生していった。

 

 レオとサリーは地下から姿を現し、端末を再起動させたことをシーザーやボーマン博士たちに伝えた。端末の再起動の確認後、直ぐ様別の端末の居場所に向かおうとしたその時、突然、街中が霧に覆われ、出口の位置を失われ、レオたちはライガーたちに乗り込み、一点に固まって攻撃の構えを取った。

 

 すると、霧から幾つかのディゾルボムが投げ付けられ、蜂の巣にするように360度、どの方向からも来た。それに対し、ライガーは機関砲を、フォックスはガトリングで、パキケドスはライフルで、ゼノレックスとクロスタイガー、クロスコングはレーザーガトリングとそれぞれの武装で迎撃した。

 

 その砲撃は何度も続いたが、ライガーたちは以前までの戦いの経験もあり、ディゾルボムへの攻撃を難なく防いでいった。ディゾルボムによる砲撃?無意味と理解したのか、霧が徐々に晴れていき、周囲にゼロファントスダークスの群れがその姿を現し、全ての霧が晴れた後、その数が明確になり、同時にその先頭にはエンヴィーたちのバーニングキメイラとディメパルサーキメイラ、ゼーゲキメイラの姿があった。

 

 「へぇ~、やるじゃねぇか。帝国、共和国の奴等より歯応えはありそうだ。」

 

 「いいねぇ、ディメパルサーキメイラの顎に耐えれるか、実験出来そうだ。」 

 

 「いいから、さっさとやっちゃおうよ。めんどくさいから。」

 

 

 

 ゼロファントスとの戦いを経験しているとはいえ、エンヴィーたちやそのゾイドであるキメラゾイドを見るのは初めてのため、少し戸惑っていた。

 

 「何だ…あのゾイドは?」

 

 「俺も見たことがねぇ。しかもガブリゲーターやゼノレックスの頭をしている癖にディメパルサーやステゴゼーゲの体をしているぞ!」

 

 しかし、そんなレオやバーンと違い、ロックバーグ中尉とシーザー、クラウス、モーリスは既に知っている顔をし、

 

 「奴よ! 帝国、共和国の軍基地を襲っているっていう、噂のキメラゾイドは。」

 

 「そうだ、奴等は皇帝の親衛隊で、4体のキメラゾイドを従えるヒューマンオーガノイド、ゼロメタル四天王だ。」

 

 「ゼロメタル四天王?」

 

 「よく知っているじゃねぇか! なら、俺たちがここに来た理由ももちろん、知っているよな? 皇帝陛下が目障りだっていう、そのライガーと俺たちゼロメタルの天敵のゼノレックス共を始末しに来たってことをよ!」

 

 「けど、あいつら、ライガー入れて4体だぜ。ちょっと不利じゃないか?」

 

 「なら、俺が2体同時に相手する。俺はそのライガーとタイガーにする。他はお前らに譲ってやるぜ。」

 

 「おいおい、何勝手に決めてんだよ!」

 

 「どうでもいいから、早くさっさとやろうよ。」

 

 「ちっ、まあ、いい。なら、俺はあのコングをディメパルサーキメイラでガブってやる。」

 

 「じゃあ、ボクはゼノレックスか…はあっ、面倒くせぇな。」

 

 「決まったな。他のゼロファントス共はその連れを頼むぜ!」

 

 

 「来るぞ、レオ。」

 

 「はいっ、」

 

 

 

 ライガーとクロスタイガーに襲い掛かるバーニングキメイラ、ライガーとクロスタイガーは咄嗟にそれぞれ反対に回避し、それぞれライガーがバーニングキメイラの正面、クロスタイガーがその背後に入り、同時に機関砲とレーザーガトリングを撃ち込んだ。

 

 しかし、バーニングキメイラはデスレックスアーマーで機関砲を防ぎ、更にレーザーガトリングに対しては後ろ足に装備しているチャージミサイルで迎撃した。

 

 通常攻撃では通用しないと見たレオとクラウスはエヴォブラストで迎え撃つ体制に入った。

 

 「レオ、今度はエヴォブラストで同時攻撃だ。」

 

 「はいっ!」

 

 レオはライガーのエヴォブラストを発動させ、クラウスはオーガノイド体に変身してコクピットから出、クロスタイガーと融合し、背中の武装がレーザーガトリングからレーザードリルに変更した。

 

 「ライガー、進化 解放! エヴォブラストー!! ライジングバーストブレイク!」

 

 

 ライガーのライジングバーストブレイクとクロスタイガーによる同時攻撃がバーニングキメイラを捕らえたその時、コクピットから出て、その姿を現したエンヴィーがクラウス同様にオーガノイド体に変身してバーニングキメイラと融合し、攻撃が当たる直前にバーニングキメイラの姿が消え、それを見て慌てたクラウスはイグニッションブースターの加速を止め、咄嗟にライガーの横に回り、ライガーとの激突を防いだ。

 

 「大丈夫ですか? クラウスさん。」

 

 「ああ、しかし、奴は一体何処に?」

 

 クラウスが辺りを見渡すと、そこにクロスタイガーと同じイグニッションブースターを装備したバーニングキメイラの姿があった。それを見たクラウスは驚愕した。

 

 「馬鹿な! 何故、ゼロメタルの奴等がコアドライブウェポンを!?」

 

 「何言ってやがる。こいつは貴様らの同士のバーニングライガーと同じゾイド因子を持っているんだ。同じ能力を持っているのは当然だろ?」

 

 「クラウスさん、くっ、行くぞ! ライガー。」

 

 「ま、待て! レオ。」

 

 「それに加えて…」

 

 

 ライガーはA-Z機関を撃ちながら、バーニングキメイラに近づき、もう一度タテガミブレードによる一撃を喰らわせようとした。

 しかし、バーニングキメイラはイグニッションブースターで加速し、その攻撃を避け、デスレックスアーマーでライガーにぶつけ、ライガーを吹っ飛ばした。

 

 ライガーは直ぐ様、体制を立て直し、再び機関砲を撃ち込むが、バーニングキメイラはそれをデスレックスアーマーで防いだ。正面からの攻撃は無意味とみたレオはライガーの持ち前の機動力でバーニングキメイラを翻弄させる作戦に出た。

 

 しかし、バーニングキメイラもイグニッションブースターによる加速で一気にそのスピードに追い付き、一瞬でライガーの直ぐ様まで来てしまった。

 

 だが、それは全てレオとライガーの狙いだった。離れての砲撃といつもの攻撃が通用しないなら、至近距離で攻撃すれば、倒せるのではないかと思い、バーニングキメイラがイグニッションブースターによる加速で追い付き、近付いたところに攻撃するのが狙いだった。

 

 バーニングキメイラが近くに来て、直ぐ様、ライガーは機関砲を放ち、タテガミブレードをデスレックスアーマーにぶつけた。ゼロ距離でぶつけたため、これで突き破れたかと思いきや、デスレックスアーマーはそれでも傷一つ付かず、そればかりか、バーニングキメイラは頭部に装備しているライフルをゼロ距離で放ち、逆にライガーが返り討ちになってしまった。

 

 「加えて、このバーニングキメイラにはデスレックスのゾイド因子を合成しており、打たれ強いデスレックスの装甲がプラスされているため、大抵の攻撃は効かん!

 オマケに俺たち四天王はただ、鍛えてるだけじゃない。皇帝陛下に歯向かう連中を一人残らず殲滅するためにここまで向上してきた。その証拠に見ろ!」

 

 

 レオとクラウスが辺りを見渡すと、シーザーと融合したゼノレックスがシザースXAになり、ゼーゲキメイラを押し、優勢になっていたが、業を煮やしたスロウスがオーガノイド体になってゼーゲキメイラと融合し、ゼーゲキメイラの装甲が以前より上がり、ゼノレックスシザースXAでも斬り裂けない程になり、アーマーを破壊するのにかなり手間取っていた。

 

 そしてモーリスのクロスコングもその強靭な装甲でディメパルサーキメイラのマッドオクテットを防ぎ、更に腕を顎で噛み付かれても、逆に投げ飛ばしたり、優勢になっていたが、グラトニーがオーガノイド体に変身して融合すると、ディメパルサーキメイラのマッドオクテットと顎の噛む力が以前より遥かに増し、流石のクロスコングも苦戦していった。

 

 更にバーンのフォックスやロックバーグ中尉のパキケドスたちもゼロファントスダークス軍団と交戦しているが、D因子を注入させられ、更に凶暴性を増し、全体的に全ての性能が通常種より向上しているゼロファントスダークスを一体敗るだけで手間取り、オマケに数の暴力で来ているため、完全に膠着状態になっていた。

 

 「これでわかっただろう? 最初から貴様らに勝つ確率なんて無いんだよ!」

 

 「くっ!」

 

 「さて、十分楽しんだから、そろそろ終わりにしよう。貴様のような奴をこれ以上、野放しにするわけにはいかないからな。」

 

 「止めて~!!」

 

 その時、サリーの乗るハンターウルフが割って入り、バーニングキメイラに攻撃してきた。

 

 「サリー、来ちゃ駄目だ!」

 

 しかし、バーニングキメイラは赤子の手をひねるように攻撃をすんなり避け、逆に吹っ飛ばしてしまった。

 

 「お前はお呼びじゃないんだよ。それにお前を始末しちゃったら、色々と困るんでね。」

 

 「(どういうことだ? 何故、こいつらはそこまでライガーにこだわる?)」

 

 「さて、改めて止めを…」

 

 その時、突然、砲撃音がし、街の外から次々とギルラプターLCによる大部隊が現れ、ゼロファントスダークス軍団に攻撃してきた。ゼロファントスダークス軍団は現れたギルラプターLC部隊と交戦し、そのおかげでフォックスとパキケドスたちはゼロファントスダークスによる包囲から解放され、徐々に力を盛り返していった。

 

 しかし、ギルラプターLC隊が加わったとはいえ、相手は強力なゼロファントスダークスで、しかも数はまだ敵の方が上のため、力を盛り返したのは序盤だけで、再びフォックスとパキケドスたちも押されていってしまう。

 

 ギルラプターLC隊が次々とゼロファントスダークス軍団に破壊されていったその時、突然、何処からか見たこともない2体のゾイドが現れ、数体のゼロファントスダークスを突進だけで破壊していった。

 

 現れたのはサイ型のゾイドで、それぞれ帝国のエンブレムが貼られ、黒い体色をした個体と共和国のエンブレムが貼られた白いカラーリングの個体がいた。突然現れた見たこともないゾイドに呆気を取られたバーンとロックバーグ中尉の元に通信が入った。

 

 「大丈夫か? バーン、ロックバーグ中尉。」

 

 「その声は…ギレル少佐とディアス中佐ですか!?」

 

 

 通信の主はギレル少佐とディアス中佐で、ギレル少佐は帝国仕様を、ディアス中佐は共和国仕様にそれぞれ搭乗していた。

 

 「遅れて済まない。後は私たちに任せてくれ。」

 

 「オラオラ、道を開けろ!」

 

 ギレル少佐とディアス中佐の乗る2体のサイ型ゾイドは次々とゼロファントスダークス軍団に突進し、その強靭な角でゼロファントスダークスの装甲をいとも簡単に砕き、次々と蹴散らしていった。

 

 ゼロファントスダークス軍団は数に有無をいわせ、次々と2体のサイ型ゾイドに向かって一斉に突進していったが、ギレル少佐とディアス中佐はそれでも動揺するどこらか、余裕の表情をし、更に互いにウィンクして何かを始めようとした。

 

 「行くぞ! ディアス中佐。こいつの、グライノスホーンの力を奴等に示してやるのだ。」

 

 「オオ、グライノスホーン、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 ギレル少佐とディアス中佐の乗る2体のサイ型ゾイドがが同時にエヴォブラストを発動すると、肩のアーマーが開き、そこから、キャノン砲が放たれ、更にサイ型ゾイドの角が電撃が迸り、チャージされていった。

 

 「喰らえ、これがグライノスホーンのエヴォブラスト、サンダーホーン!」

 

 電撃を溜め込んだサイ型ゾイドの角がゼロファントスダークスのボディを貫いたその時、固まったゼロファントスダークスにも感電していき、一気に数体、いや、数十体のゼロファントスダークスが粉々に破壊されていった。

 

 「な…何なんだ? 一体…ん?」

 

 エンヴィーが気がつくと、既に目の前にフォックスとパキケドス、ギルラプターLC隊がライガーの周りを囲い込み、いつでもバーニングキメイラを攻撃できる体制になっていた。

 

 「ちっ、ホントになんなんだよ!」

 

 「流石にこいつは分が悪いね。」

 

 「おい、グラトニー、逃げるのか!?」

 

 「戦い好きの俺でもわかる。こいつは俺たちの方が圧倒的不利だってことをな。逃げたくなければ、別に逃げなくていいぜ。その代わり、返り討ちにされるだけになるがな。」

 

 「くそっ!」

 

 グラトニーとディメパルサーキメイラがその場を離脱していくと、エンヴィーとバーニングキメイラも渋々離脱し、それを見たスロウスとゼーゲキメイラも去っていき、残ったゼロファントスダークスも次々と撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 エンヴィーたち四天王を追い払った後、ギレル少佐とディアス中佐は2体のサイ型ゾイドから降り、レオたちの元に立ち寄った。

 

 「ギレル少佐にディアス中佐。そのゾイドは…」

 

 「帝国、共和国が偶然見つけた新種のゾイドの化石を共同で復元し、改造を施したデュークナイツの新たなゾイド、サイ種のグライノスホーンだ。」

 

 「グライノスホーン…」

 

 「最終調整として、こいつのシミュレーションを行った時、大量のゼロファントスの反応が感知し、やむ無くこいつで出撃してここに来たんだが、まさか、こんな形でレオたちに披露されることになるとはな…」 

 

 「最も、そのおかげで、こいつの性能証明し、これで我々もゼロメタル帝国に対抗する戦力が増えたわけだ。」

 

 「それに、ゼオル司令がオメガレックスに搭乗出来たことで、ゼログライジスへの対策も進行中だ。」

 

 「ゼオルさんがオメガレックスに!?」

 

 「ああ、そうだ。これで後は奴等を迎え撃つだけだ。」

 

 「ぎ…ギレル少佐。」

 

 「メルビル殿下?」

 

 「あの…ユウトは…?」

 

 「彼は昏睡状態で、今はまだ、何とも言えない状態です。」

 

 「そう…」

 

 「だからこそ、ゼロメタル帝国は倒さなくてはならない。この世界のためにも、我々は戦う。

 レオ、君たちは端末の再起動だけに専念し、ゼロメタル帝国は我々に任せてくれ。必ず奴等の野望を阻止してみせる。」

 

 「はいっ、ありがとうございます!」

 

 

 

 再びグライノスホーンに乗ったギレル少佐とディアス中佐らと別れを告げ、再び端末探しに向かうレオたちの様子をラストとブラックビーストライガーが高台で見ていた。

 

 「新手が来たおかげで、あのガキの始末がちょっとやりづらくなったけど、あんたはどうするの?」

 

 「決まっている。子供の責任は親の責任、なら、レオを殺すのはこの私だけでいい。」

  

 「フフ…」

 

 レオとライガーを見詰めたブラックビーストライガーは闘争本能を剥き出しにし、両目を赤く発光させた。

 

 To be continued




 次回予告

 ゼロメタル四天王との対決によってゼロメタル帝国に新たな戦力がいることを知ったレオたちは彼等の妨害を受けないために端末探しに専念する中、もう一つの端末の場所に既にラストとブラックビーストライガーが待ち構えていた。
 レオはブラックビーストライガーに取り込まれている父、ジョシュア・コンラッドを助けるために再びブラックビーストライガーと戦うが、そこでジョシュア・コンラッドはある真実をレオに話す。

 次回「再戦、ブラックビーストライガー!」走り抜け、ライガー!!

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