ゾイドワイルドクロス アナザーZERO 作:オーガスト・ギャラガー
ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたゼロメタル帝国の神官プライドが遂にゼロメタル帝国の絶対神にして皇帝であるデスザウラーの分身、ディアベル・ギャラガーと古の皇帝龍ゼログライジスを復活させてしまう。 更なる絶望を迎えたレオはゼロメタル帝国にどう立ち向かうのか!?
エンヴィーたちゼロメタル四天王を退け、更にゼロファントスダークス軍団を壊滅させたギレル少佐とディアス中佐はデュークナイツの本部がある共和国第二の首都ニューホープに戻り、ハワード宰相とコリンズ中将ら帝国上層部とギャレット大将ら共和国の上層部を本部に招き、グライノスホーンの性能を説明、更にレオたちを助け、エンヴィーたちゼロメタル四天王率いるゼロファントスダークス軍団を壊滅させた映像を見せ、それを見た両国の上層部はその戦功に圧巻し、ゼロファントスの脅威を退かせることが出来ると思ってデュークナイツの今後の活躍を期待した。
しかし、そんな上層部がグライノスホーンの性能に過信し、デュークナイツに期待する中、ハワード宰相とコリンズ中将、ギャレットだけは安心出来ない様子でいた。
そう、宰相たちが最も恐れているのはゼロメタル帝国の主戦力であるゼロファントスとゼロファントスダークスではなく、敵の首領、皇帝ディアベル・ギャラガーの操るゼログライジスだったのだ。
重力操作や両国の大部隊を一瞬で壊滅させる程の強力な銃砲類等を装備させ、あのジェノスピノすら赤子扱いにした桁外れの戦闘力を持つ破壊龍を倒すことが出来なければ、両国とこの地球全体の平和は勝ち取れないと思っていたのだ。
説明を終えた後、上層部がそれぞれの首都に戻る中、ハワード宰相とコリンズ中将、ギャレット大将は残り、ゼログライジスに対する対策の説明をギレル少佐とディアス中佐に持ち掛けた。
ギレル少佐とディアス中佐はデュークナイツ総司令ゼオルがオメガレックスの制御に成功し、マクラカン大佐とシーガル中佐の指揮の元、対ゼログライジスのためのシミュレーションを行い、同時に自分たちは完成し、実績を起こしたグライノスホーンと共にグラビティキャノンとロングレンジバスターキャノンを使用した迎撃作戦を考案中だと説明した。
「そうか…」
「両国の威信をかけ、ゼログライジスは我々デュークナイツが必ず撃破してみせます。」
「我々帝国、共和国も出来るだけのことはする。頼むぞ。」
「はいっ!」
その時、ギレル少佐は以前、メルビルがユウトの安否を伺っていたことを思い出し、首都に戻ろうとするハワード宰相とコリンズ中将を引き留めた。
「宰相殿、コリンズ中将!」
「何だね? ギレル少佐。」
「1つお聞きしたいことがありますが…ザナドゥリアス元少尉はどうなっているのでしょうか?」
「あの男か…残念だが、傷の状態が酷く、医者の報告によると、例え、完全治療出来ても、植物人間は避けられないとのことらしい…
議会はこの機会に彼を安楽死させようとしているが、フィオナ陛下が必死に彼を擁護しているため、未だ、結論が出ないままだ。」
「そうですか…」
「ただ…」
「? 何です。」
「マクラカン大佐が彼を軍施設で治療させたいと言って、現在、ネオゼネバスの軍施設に移動させているが…」
「大佐が…何故?」
「よくわからないが、フィオナ陛下が彼を心配しているから、軍の方で出来るだけのことはしたいと言っていたが…」
ネオゼネバスの軍施設、そこはマクラカン大佐とシーガル中佐の指揮下にあり、そこでゼオルがオメガレックスのライダーとしてゼログライジスに対抗するための戦力となるためのシミュレーションを行っている場所となっている。
ゼオルが搭乗するオメガレックスが仮想シミュレーションで敵ゾイドを倒しながら、レベルを上げ、ゼログライジスに至るまでの訓練を続け、その様子をシーガル中佐が見、記録していた。
その一方、マクラカン大佐はその現場にいず、ユウトが入れられている個室にユウトの様子を見、その隣には部屋が暗いため、全貌が明らかになっていないが、医者らしき人物もいた。
「どうだ、様子は?」
「駄目だ。脳や心臓は辛うじて機能しているが、他が全く使い物にならん。」
「彼にはもう少し役に立って欲しかったが、どうやら、それも敵わぬようだな。」
「脳と心臓を別の肉体、または機械に移植することなら可能だが…」
「オメガレックスの様子を見て考えよう。今はまだ、その時ではない。」
「それにしても、意外だな。あの男がオメガレックスを操れるようになるとは…」
「このまま行けば、いずれ我々の元に引き込み、我が帝国を更に強大化することも可能だろう。」
「最も奴を引き込めば…だがな。」
その時、シーガル中佐がオメガレックスのシミュレーションの結果をマクラカン大佐に報告するため、マクラカン大佐を探し回った。
しかし、大佐の部屋や他のどの個室にいず、見付けるのにかなり手間取っていた。シーガル中佐は近くにいた兵士に聞き、その部屋に向かった。
「大佐!」
「シーガル中佐か。どうした?」
「オメガレックスのシミュレーションを…? 一体、何をしているんですか?」
部屋に入ったシーガル中佐はマクラカン大佐の隣にいた人物と培養液に入れられているユウトの姿が気になってそのまま奧に入ろうとするところをマクラカン大佐が引き留め、直ぐ様、部屋から出された。
「いや、何でもない。それより、報告とは?」
「はい、ゼオル司令の乗ったオメガレックスは予想以上の成果を上げています。キャノンブル60体、スティレイザー30体をそれぞれ僅か2分で壊滅させました。」
「素晴らしい。まさか、荷電粒子砲を失っている状態でも、これ程とは…」
「元々オメガレックスが持つ強力な近接戦闘能力もですが、何よりゼオル司令の技術のおかげで、ここまでの成果を上げられました。これなら、あのゼログライジスにも対抗出来ます。」
「この後は?」
「ジェノスピノとの戦闘を想定したシミュレーションに入るところです。」
「ご苦労だったな。」
「はっ!」
「(ふ、だが、もし万が一のことがあれば、その時はその時だ。フフフフフ。)」
ハワード宰相とコリンズ中将、ギャレット大将がそれぞれネオゼネバス、ネオへリックに戻った後、ギレル少佐とディアス中佐はグライノスホーンがいつでも出撃出来るように整備に向かう途中、ツガミ大尉が医師と共に白骨化したゼロファントスのライダーのゼロメタル兵士の遺体を調べていた。
それが気になったギレル少佐とディアス中佐はツガミ大尉に遺体を調べて何を調べているのかと問い、ツガミ大尉はその兵士が何故、ゼロファントスに搭乗出来たのかを調べているとのことだった。
「この兵士が何故ゼロファントスに乗れたということを調べる必要がある?」
「変だと思いませんか? 我々ではゾイドに搭乗する際、耐Bスーツを着用しなければなりません。
例外にゼオル司令やレオ、セードもいますが、しかし、彼等はあくまで古代ゾイド人の末裔またはその身体にゾイド因子を宿しているから、可能になっていますが、この兵士は耐Bスーツどころか、ゾイドを模した仮面を付けているだけで、しかも衣類もほとんど着用せず、身体に金属化されている箇所も何処にも見当たらない。
加えてゼロファントスにはゾイドや他の生物を一瞬で死に至らしめる毒の霧を発生させ、実際研究員たちも、それのおかげで絶命してしまいました。
なのに何故、この者だけはそのリスクを負わず、ゼロファントスに搭乗することが出来たのかを…」
「確かに…」
「まさか、こいつらも、あのヒューマンオーガノイドの類なのか?」
「可能性はありますが、ゼオル司令での話ではヒューマンオーガノイドは一見普通の人間の姿を持ち、更に自らの身体を液体金属状にしてオーガノイドの姿に変身出来るということを聞いていますが、こいつにはそういった能力がありません。」
「別種なのか…?」
その時、調査している兵士が駆け寄り、
「ツガミ大尉!」
「何だね?」
「調査の結果、遺体からは微量ですが、D因子の反応がありました。」
「やはり、こいつは人間ではなかったのか。」
「ただ…」
「ただ…何だ?」
「この者のDNAを鑑定した結果、我々のような第二世代、第一世代いずれも異なる部分が発見されました。」
「!? それはどういうことだ?」
「おそらくですが、我々のような惑星Ziの人間とは別の人間という可能性も…」
「一体、こいつの正体は何なんだ?」
ギレル少佐とディアス中佐の助けられた後、レオたちは端末の再起動に専念し、ボーマン博士の作った発信器を頼りに端末の場所に向かい、これまで5つの端末を再起動させることに成功した。
グライノスホーンの活躍もあってか、四天王の襲撃後、しばらくの間、ゼロメタル帝国の妨害がなく、スムーズに事を運ぶことができ、バズはゼロメタルが自分たちに恐れをなして手を出せなくなったと思って浮かれていた。
しかし、グライノスホーンの性能に期待している両国の上層部と違ってゼログライジスに対する警戒のために浮かれることが出来なかった宰相たちのようにバズ以外のレオたちも以前はあれだけの襲撃があったというのに、敵の一切の妨害がないことにむしろ不気味に感じていた。
発信器を頼りに端末の場所に辿り着くと、そこはレオたちが何度も見るゾイドクライシスで荒廃した街であったが、以前の共和国の都市のように所々戦争を受けたような爪痕があり、更には巨大なクモの巣や何かの生物に襲われたような跡があちこちあり、それを見たサリーとメルビルは怖がり、レオはサリーとメルビルを宥めるように寄り添うが、同時にレオも左腕から不吉な感覚を感じ、ライガーやアーサー、シーザーとクラウス、モーリスも分身のゼノレックス、クロスタイガー、クロスコングと共にいつも以上に警戒していた。
ボーマン博士とロックバーグ中尉は当初は固まりながら、端末を探さそうと考えたが、これ以上時間を割るわけにはいかないため、それぞれ別々のメンバーで手分けして探すことに決め、ロックバーグ中尉はバーンとバズ、アイセル、ボーマン博士、クリスタと、シーザーはモーリスとサリー、メルビルと、ミラーはキラーク盗賊団としての元々のメンバーと、そしてレオはクラウスとアーサーで分かれることになった。
サリーと一緒じゃないことに少しロックバーグ中尉に不満を漏らしたレオだが、ロックバーグ中尉はシーザーと話し合いの結果、師であるクラウスと一緒に行動した方が安全と考え、もしサリーとメルビルと一緒だと、万が一、戦闘の時、敵に弱味を漬け込まれる可能性が出るとして、敢えて別々にしたとのことで、レオは納得がいかなかったが、渋々従い、それぞれ別の方向へ端末を探しに行った。
シーザー、モーリスと一緒にいるサリーとメルビルとは反対の方向に行きながら、レオは少し面白くなさそうな表情をした。
「どうした? レオ。」
「何でもありません。」
「やはり、彼女と一緒じゃないとやり易くないか?」
それを聞いたレオは赤面し、慌てた。
「そ、そんなわけないじゃないですか!」
「ハハハ、そんなに隠すことはない。人の恋や愛というのは決して悪くはない。オーガノイドである我々にはない感情だからな。」
「クラウスさんは恋したことってあるんですか?」
「いや、ない。というより、ゾイドってのはオーガノイドも含めて皆女性格で、そういう感情は無いんだよ。」
「でも、クラウスさんは男ですよね?」
「それは我々が自然のゾイドではなく、人によって造られた人造ゾイドだからだ。いくら、ゾイドコアやゾイド因子を解明して人為的にゾイドを造ることが出来ても、こればっかりは再現出来ないからね。だから、我々アドリア王国のヒューマンオーガノイドはゾイドの卵を産むことは出来ない。
でも、ヒューマンオーガノイドになっていろんな人間を見てきたから、人間の感情を色々知ることは出来たけどね。」
「クラウスさん…」
「なんだい?」
「俺、サリーのこと好きなんだ。あの時、初めてライガーを相棒にした時から…だから、サリーのことを放っておけない、守らなきゃならないんだって…
そのためには俺もライガーと一緒に強くならなきゃならないのわかっているけど、シーザーさんやギレル少佐やディアス中佐に新たな相棒ゾイドが現れて、俺、本当に強くなれるか心配になってきたんです。ホントに今のままでサリーを守ることが出来るのかも…」
「そう、落ち込むことはない。言いたくなければ、無理にいう必要はない。 でも、いつまでも自分の気持ちを隠してはいけない。
自分の素直な気持ちを伝えれば、サリーだって君を分かってくれる。もしかしたら、サリーも君のこと好きかもしれないよ。」
「な、何いっているんですか!?」
「ハハハ、ん…?」
その時、突然、クラウスとクロスタイガーの動きが止まり、目の前にクモの巣で覆われている場所に何か警戒し、アーサーもそれに気付いて動きを止めた。
「クラウスさん?」
「しっ!」
クラウスがじっと耳を傾けると、クモの巣の周りから時限爆弾のタイマーのような音が聞こえた。
「どうやら、既に嗅ぎ付けられたみたいだな。」
「一体、どうなって…」
ライガーがゆっくり後退していくと、後ろ足がクモの巣に当たり、クラウスがそれに気付くと、既に遅く、クモの巣に仕掛けられた爆弾が全て爆破し、ライガー、クロスタイガー、アーサーはその爆破に巻き込まれてしまった。
そして爆破音にいち早くサリーが気付き、レオの行った方向を見た。
「どうした?」
「向こうに爆発音が…」
「何!? 確かに一瞬、何処かに私と似た感覚が…」
「シーザーさん、モーリスさん、サリー!」
その時、メルビルが何かを見付け、それに気づいたシーザーとモーリス、サリーが見ると、そこには科学船に似た船があった。
「あれは…」
しばらくして、クモの巣に仕掛けられた爆弾の爆破に巻き込まれたレオとライガーは目を覚ました。辺りを見渡すと、そこは地下だった。レオとライガーは重傷は免れていたが、どれぐらい落ちたかは定かではなかった。
しかし、周りにクラウスとクロスタイガー、アーサーの姿はなく、ここにいるのはレオとライガーのみだった。レオとライガーはクラウスとアーサーを探そうとするが、どういうわけか、ライガーの身体が動けなかった。
レオがいくら指示してもライガーは動かなかった。左腕を通じてライガーに何か異常があることを感じ、ライガーから降りようとするも、コクピットも開けられない状態になっていた。僅かに見える部分を見ると、何とライガーのクモの糸によって全身が巻き付けられていたのだった。
そしてその時、周りからスパイデスの仮面を被り、右腕にガトリングを装備したゼロメタル帝国の兵士が複数のスパイデス型のジャミンガ、スパイデスグローに騎乗し、同時にゼロファントスのライダーでもあるゼロメタル兵士が騎乗したレックスジャミンガも現れた。
突然のことに戸惑うレオだが、更に驚くべき光景があった。スパイデス型のジャミンガとレックスジャミンガの中央にはブラックビーストライガーとラストの乗るファングタイガー改が佇んでいた。
「まさか、父さん!」
「ようこそ、私がゼロメタル帝国に生涯を捧げると誓った聖地にして、惑星Ziの人間を恨む地球種が復讐を誓った場所へ。」
「フフフ、ここに来ると思って罠を仕掛けたけど、こうも簡単にかかるとはね。」
「当然だ。自分の息子の行動など、手に取るようにわかる。」
「父さん、どうしてこんなことを!」
「言ったはずだ。お前は父の言い分に逆らい、ゼロメタル帝国入ることを拒み、挙げ句ゼロメタル帝国に反逆したその行為、万死に値する。」
「僕の知ってる父さんはこんなことしないはずだ。」
「まだ、わからないのか! その左腕を通じて感じるはずだ。私のこの憎しみを、そしてここにいる地球を侵略してきた惑星Ziの人間を憎む地球種の声を!」
「地球種の声?」
その言葉を聞いたレオはスパイデス型のジャミンガとレックスジャミンガに騎乗しているそれぞれラプトール、ガブリゲーター、ステゴゼーゲ、スパイデスの仮面を被り、ナイフや弓矢、斧やハンマー、ガトリングを装備したゼロメタル兵士を見たレオは何かを察した。
「まさか…この人たちって…」
「そうだ。ここにいる我がゼロメタル帝国の兵士は地球に侵略してきた惑星Ziの人間に復讐するために地球に残り、皇帝ディアベル・ギャラガー陛下に忠誠を誓い、我々と同じD因子を与えられて進化した地球人類だ!」
「そんな…」
科学船に似た船を見つけたサリーとメルビル、モーリスは船のを調べていった。
「これは、アーサー様やゼオル様が乗っていた科学船なのか?」
「いいえ、形は似ていますが、中身は所々違っていて、お爺さんと一緒に乗っていた科学船じゃありません。」
「ということは…」
「おそらく、元々この地球にいた人間が科学船を真似て作ったものと思われます。」
「だが、その船がここにいるってことは、その失敗作か…または脱出に失敗して不時着した船ということになる。」
「ということは、この街は…」
「地球からの脱出に失敗または、ゾイドクライシスの原因が人為的に行われたことを知り、その地球を荒らした侵略者に復讐するためにそのまま地球に残り、我々と同様にD因子によって進化を遂げたゼロメタル兵士、ゼロメタルリーパーだ。
プライドたちのように完全なヒューマンオーガノイドではないが、プライドたちに極めて近い、いわば疑似ヒューマンオーガノイドだ。そのため、オーガノイド体になれなくとも、通常の人間を遥かに上回る身体能力を持ち、バイオアシッドの毒の影響を一切受けず、ゼロファントスの搭乗が可能になっている。そして彼等の仮面は仮面ではなく、疑似ヒューマンオーガノイドに進化した際に変化した彼等自身の顔なのだよ。」
「元々地球にいた人々をゼロメタル帝国の兵士に変えるなんて…!」
「彼等が望んでやったことだ。我々のように神に仕える進化した人類になれたことにむしろ感謝しているんだよ。そしてこの星に侵略した帝国、共和国を滅ぼし、地球を取り戻し、我々の支配下に置くことが彼等の悲願だ。」
「嘘だ、そんなのあり得ない!」
「現実を見ろ、レオ。お前も見たはずだ。ゾイドを自分たちの都合で勝手に改造し、故郷である惑星Ziを壊滅させただけでなく、この地球に侵略し、かつての惑星Ziのように再び戦争を起こして地球を荒らし、滅亡寸前にまで追い込んでやってることを全く自覚せず、真帝国などという別の国家を勝手に創設し、更には自分だけがゾイドを扱えるだけのゾイドの星にするなどという愚か者まで出てくる始末…
そんな過去から何も学ばない愚かで下等な人類にこの地球に生きる資格はない。この地球に君臨するのは絶対神であるディアベル・ギャラガー陛下であり、それに仕える我々進化した人類こそがこの地球を支配し、管理するべきなのだ。
そして私はゼロメタル帝国と共にこの地球に新世界を造る。帝国、共和国のような愚かな人間を全て排し、争いのない理想の新世界にする。お前にはそれがわかるはずだ。レオ!」
「確かに…真帝国やサリーのお父さんが自分勝手な考えで、戦争を起こし、サリーやメルビルさんの苦しみを知った。そんな人たちに地球の未来を任せられないかもしれない。
でも、僕はこの旅で多くの仲間を得た。そしてこの地球を守るためにどうすればいいか、大切なことを学んだ。
僕はそんな人たちが好きだ。だから、人間を滅ぼすことなんて出来ない。」
「目を覚ませ、レオ。お前はその連中共に踊らされているだけだ。」
「目を覚ますのは父さんの方だ! 僕の知ってる父さんなら、皆を苦しめ、世界を混乱させる悪い奴等に味方するわけがない!」
「そういうことか…。なら、絶対神に代わり、この私自ら神罰を下してやる!」
「ようやく、死刑執行ね。あのガキとライガーの始末はあたしにやらせていいかしら?」
「お前は一切手を出すな。息子の後始末は父親だけでやる。」
「ちぃ、つまらないわね。」
「レオ、お前には失望した。お前にはゼロメタル帝国に入る資格はない。サラと一緒にあの世に送ってやる。
原始 解放! ゼロブラストー!! ブラックビーストオブクローブレイク!」
「ライガー!」
ブラックビーストライガーのタテガミクローがライガーに直撃するその時、ライガーは予め、前足でスパイデスグローの糸を削っていたため、ブラックビーストライガーの攻撃を喰らう寸前に糸から脱出することに成功した。
「お前、予め、糸を!」
「僕がただ、捕まっているだけだと思うなよ。父さん!」
「しかし、脱出したからといって、この私を倒すことが出来ない。あの世に送って目を覚まさせてやる。」
「僕だって、父さんの目を覚ますために戦う! ライガー、進化 解放! エヴォブラストー!! ライジングオブクローブレイク!」
ライガーとブラックビーストライガーの攻撃がぶつかり合うが、パワーはブラックビーストライガーの方が一歩勝り、ライガーは逆に押されてしまう。
体制を立て直したライガーは機関砲で牽制しながら、ブラックビーストライガーと距離を取った。
「あの黒いビーストライガーはパワーは高いけど、ライガーみたいに遠距離の武器はないから、近距離戦でしか発揮出来ない。なら、砲撃で距離をつけながら、隙を見付け、そこをたたけば…」
ブラックビーストライガーがライガーの前の姿であるビーストライガーみたいに武装がないことを利用し、機関砲だけで攻撃し、十分に距離をつけ、ブラックビーストライガーが攻撃し、その隙をついて攻撃しようとしていた。
遠距離武器がなく、ライガーの機関砲をタテガミクローで受け止めながら、近付いていくブラックビーストライガー、
「ふん、いくらこちらに遠距離武器がなくとも、そんな程度の砲撃で、この私を止められるとでも思ったのかー!! ブラックビーストオブクローブレイク!」
「今だ!」
ブラックビーストライガーのタテガミクローがライガーに直撃する寸前、ライガーは瞬時にブラックビーストライガーの背後に回り込み、攻撃の体制に入った。
「何!?」
「これなら、勝てる!」
レオが勝利に確信したその時、既にマシンブラストを発動したラストのファングタイガー改が頭上から襲いかかってきた。
「あたしがいること、忘れないでちょうだい!」
「しまった!」
「死になさい。」
ファングタイガー改のツインドファングがライガーに直撃するその時、突然、クロスタイガーが現れ、それを諸に受けてしまった。
「クラウスさん!!」
「レオ、焦るな…焦ってはいかん。」
ファングタイガー改のツインドファングがクロスタイガーの身体に食い込み、激痛に襲われたクロスタイガーの悲痛な叫びが地下に響き渡った。
To be continued
次回予告
ラストのファングタイガー改によって重傷を負いながらも、レオとライガーと共に戦うクラウスとクロスタイガー、しかし、クラウスとクロスタイガーは力尽き、自分の力をレオとライガーに与えることを選択する。そのとき、ライガーに変化が!
次回「目覚めよ! 新たな獅子王」走り抜け、ライガー!!