ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 サリーという謎の少女が持つペンダントの力によって復活し、更に進化を遂げた伝説のライジングライガーを相棒にした少年レオは強敵セードとジェノスピノを打ち破り、更にはジェノスピノ以上の力を持ち、その後は帝国の反乱組織真帝国を壊滅させた。
 しかし、密かに帝国を牛耳り、帝国の反乱を引き起こしたゼロメタル帝国の神官プライドが遂にゼロメタル帝国の絶対神にして皇帝であるデスザウラーの分身、ディアベル・ギャラガーと古の皇帝龍ゼログライジスを復活させてしまう。 更なる絶望を迎えたレオはゼロメタル帝国にどう立ち向かうのか!?


第62話「目覚めよ! 新たな獅子王」

 シーザーとサリーの知らせを聞いてバーンやボーマン博士がその場所に合流し、科学船を調査した。

 

 「間違いない。これは地球人類がオリジナルの科学船を模して作った宇宙船だ。」

 

 「じゃあ、ここにいた人たちは脱出に失敗して…」

 

 「そうではあるのだが、あちこちに人が住んでいた痕跡がある。私の予想が正しければ、まだ、この時代に地球人類が生き残っている可能性があるかもしれない。」

 

 「てことは、帝国、共和国の国民のふりした地球人もいるってことか?」

 

 「あるいは、その別も…」

 

 「とにかく、もう少し調べておく必要があるな。ところで、レオは?」

 

 「それが全く連絡がないの。」

 

 「もしかすると…俺はフォックスと一緒にレオを探しに来る。他はここで待機していてくれ。」

 

 バーンとフォックスが出ようとしたその時、突然、ゼロメタルリーパーが騎乗するレックスジャミンガとジャミンガが現れ、シーザーとサリーたちを一気に取り囲んだ。

 

 「どうやら、原因はこいつらのようだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 ラストのファングタイガー改のツインドファングがクロスタイガーの身体に食い込み、クロスタイガーがその激痛に苦しみ、ライダーであり分身であるクラウスにも同様の痛みが走った。

 

 「ぐっ、グオォ~!!」

 

 「ちぃ、外したか!」

 

 クロスタイガーはファングタイガー改をふりはらい、ファングタイガー改を攻撃するが、ファングタイガー改はそれをすらりと避け、ブラックビーストライガーの側に立った。

 

 「ぐっ!」

 

 「クラウスさん!」

 

 「ラスト、 手出しするなと言ったはずだぞ!」

 

 「あら、あたしは皇帝陛下の代理たるゼロメタルの2代神官の1人よ。それにあんたはあたしの指揮で動けって皇帝陛下から命じられているはずよ? あんたに指図される筋合いはないわ。」

 

 「ちぃ、だが、レオに止めを刺すのは私だ。それだけは覚えておけ。」

 

 「いいわ、じゃあ、あのタイガーはあたしがやるわ。」

 

 

 ファングタイガー改のツインドファングによって重傷を負ったクラウスとクロスタイガーを助けるためにレオとライガーはクラウスとクロスタイガーに寄り添うが、クラウスはレオを引き留め、助けを拒んだ。

 

 「クラウスさん!」

 

 「来るな! レオ。俺は大丈夫だ。」

 

 「でも!」

 

 「気を取るな、そして焦るな。そうした焦りが戦場で敵の思う壺にはまり、そして自滅する。決して感情的になるず、迷いを捨てろ。それがお前に教える最後の試練だ。」

 

 「最後…」

 

 その時、ラストのファングタイガー改が再びクロスタイガーに襲いかかり、クラウスは瞬時にオーガノイド体に変身してクロスタイガーと融合し、ファングタイガー改と同じツインドファングとレーザーガトリングに装備を変え、ファングタイガー改のツインドファングを受け止めた。

 

 「クラウスさん!」

 

 「俺のことは気にするな! お前は奴と戦え。そしてお前の運命と父親との因縁に決着をつけろ!!」

 

 レオが目の前を見ると、ブラックビーストライガーがタテガミブレードを振りかざしてライガーに襲いかかってきた。

 

 「今度こそ、死んでもらうぞ!」

 

 レオはしばらく黙り込んだが、レオはクラウスの言葉をもう一度思い出し、今まで父親のジョシュア・コンラッドと一緒にいた時の思い出を重ねながら、考え込み、何かに吹っ切れたようにライガーに指示を出した。

 

 「行け…ライガー。」

 

 レオの言葉を聞いたライガーは瞬時にブラックビーストライガーの攻撃を避け、タテガミブレードでブラックビーストライガーの横腹を攻撃した。

 

 「ぐっ! 貴様…」

 

 「僕は迷わない。例え、父さんがどんな姿になろうと、俺は父さんを元に戻す!」

 

 「ふん、今さら、貴様が本気を出しても、結果は変わらん!

この私の新たな身体、ブラックビーストライガーの手で滅びるがいい。」

 

 「いくぞ、ライガー!」

 

 

 

 

 

 

 

 ファングタイガー改の一撃を食らい、更に重傷を負うクロスタイガー、もう一度攻撃に回ろうとするも、立ち上がることすら困難なクロスタイガーをよそにラストはライガーに苦戦するブラックビーストライガーに苛立ち、

 

 「全く、何やってるのよ。あれだけ、デカイ口叩いておいて、あんな程度のガキが乗るライガーごときに手こずるなんて…ああ、もう我慢出来ない。さっさと殺っちゃお。」

 

 ラストがブラックビーストライガーとの戦闘で生じた隙を伺ってライガーを仕留めようと近付いていくファングタイガー改に気付いたクラウスと融合しているクロスタイガーはそれを阻止しようと、ファングタイガー改を追うとするが、クロスタイガーはさっきの攻撃でアーマーの半分が剥がれ墜ち、両後ろ足も破壊され、立つことすらままならぬ状態で、とてもファングタイガー改を攻撃出来るような状態ではなかった。

 

 「くっ、身体の損傷が余りに激しい。仮に動けて奴に一発噛まそうとしても、逆に返り討ちになってしまうだけだ。

 もう一度、クロスタイガーに融合すれば、クロスタイガーの身体をある程度、修復することは出来るが、そうなると、俺のゾイド因子の全てを使いきり、一発でも喰らえば、俺とクロスタイガーは死ぬ。どうすれば…」

 

 選択を迷うクラウスはブラックビーストライガーと戦うライガーの姿を見て、シーザーとの会話を思い出した。

 

 「(私がレオの師に…ですか?)」

 

 「(そうだ、デスザウラーは自分とその分身を倒したブレードライガーとムラサメライガーを激しく憎悪し、それと同種のゾイドを破壊することに執着している。

 特にレオというあの少年が相棒としているライジングライガーにはブレードライガーとムラサメライガーに似たゾイド因子を感じた。もしかすれば、彼とそのライガーがゼロメタル帝国を倒し、地球の救世主となる可能性を秘めているかもしれない。

 だが、彼とそのライガーはまだまだ未熟だ。彼とそのライガーには何としても我々と同等か、それ以上の力を持ってもらわねばならない。)」

 

 「(だから、その養育として、私を…)」

 

 「(そうだ。)」

 

 「(ま、待ってください! 私はアドリア王国の戦士としてはまだまだ未熟で…それにその役目なら、モーリスの方が適任では?)」

 

 「(確かに、ゾイドのことに一番詳しい彼なら、引き受けるだろうが、私はむしろ君に期待している。)」

 

 「(え…?)」

 

 「(確かに、お前はアドリア王国の戦士としては、私やモーリスより未熟かもしれない。だが、ファングタイガーを自らの相棒として融合した時から、君には秘めたる可能性を感じた。 君なら、きっとレオというあの少年を導けるはずだ。)」

 

 「(私の秘めたる可能性…)」

 

 「(頼んだぞ! クラウス。)」

 

 

 

 一連のことを思い出したクラウスは何かに吹っ切れ、

 

 「そうだ、何を迷っているんだ。俺はレオの師だ。弟子を守るのは師の務めなのに、ここで逃げたら、師として、戦士として恥ずべきことではないか。

 それに、我々アドリア王国はゾイドを、この地球を、そして惑星Ziのような争いの起きない人とゾイドが共存していける世界を築くために戦っているんだ。

 その理想のためには、例え、この命を投げ出してもいい。 もう、迷わない。俺は俺の信念に従い、俺は戦う…そして、レオを助ける!」

 

 その時、オーガノイド体のクラウスがクロスタイガーのゾイドコアから飛び出し、再びオレンジ色の光になってクロスタイガーのゾイドコアと融合し、両後ろ足とアーマーが少しずつ再生されていき、完全復活とはいかないが、それでも戦える状態にまで回復した。

 

 「さあ、行くぞ。」

 

 

 互いのタテガミブレードをぶつけ、一進一退の2体のライガー、だが、レオはライガーに機関砲等の武装があることを利用し、タテガミブレードをぶつけながら、機関砲を撃ち込み、また、互いのブレードによるぶつかり合いで離れた後はタテガミショットで近付き、接近戦になった時にタテガミブレードと機関砲による連続攻撃に切り替えるといった二段階のエヴォブラスト技を持つライジングブルーライガーの特性を活かし、それぞれの段階を使い分けながら戦うレオとライガーに対し、ブラックビーストライガーは打たれ強いことを利用して機関砲やタテガミショットによる砲撃を全てアーマーで防ぎ、接近戦ではタテガミブレードで対処したが、ライジングブルーライガーと違って進化前のビーストライガー同様に多彩な武装を持たないため、攻撃のバリエーションがどうしてもワンパターンになるため、ライガーの攻撃のバリエーションに対処できず、苦戦を強いられていた。

 

 「くっ、ちょこまかと!」

 

 「いける、これならいける!」

 

 「ちぃっ、舐めるな~!!」

 

 「いくぞ、ライガー! ライジングバーストブレイク!」

 

 

 ライガーとブラックビーストライガーのそれぞれの攻撃がぶつかり合おうとしたその時、突然、ラストのファングタイガー改がその間に割って入り、ツインドファングを振りかざしてライガーを刺し殺そうと迫ってきた。

 

 レオとライガーは避けようとするも、ブラックビーストライガーに気を取られていたため、余りの突然の出来事に対処出来ず、間に合わなかった。

 

 「今度こそ、終わりよ! 死んで。」

 

 だが、その時、同時にクロスタイガーがファングタイガー改に迫り、展開したツインドファングを先程、ファングタイガー改のツインドファングを受けたのと同様にファングタイガー改の身体に突き刺し、体制を崩されたファングタイガー改はそのまま倒れ込んでしまった。

 

 ファングタイガー改は体制を立て直そうとするも、クロスタイガーのツインドファングがファングタイガー改の身体に深く食い込み、更にクロスタイガーがファングタイガー改の身体を抑え込んだため、身動きが取れない状態になっていた。

 

 「くそっ、死に損ないの分際で!」

 

 ファングタイガー改が力ずくで脱出しようとしたその時、クロスタイガーが装備しているレーザーガトリングをファングタイガー改のアーマーに接触させ、それを見て何かを察したラストは慌てた。

 

 「き、貴様! 何の真似だ!? そんな距離でそいつを撃ったら…」

 

 「ああ、わかっている。だが、今の俺が貴様を倒すにはこれしかないんだよ。」

 

 「何、バカなこと言ってんのよ。こんなことしたらあんただって、ただでは済まないわ。」

 

 「構わない。既に俺とクロスタイガーの命は風前の灯…命尽きるなら、せめてこれぐらいのことはしないとな。」

 

 「クラウスさん! 何を?」

 

 「すまないな、レオ。お前にはもっと教えてやらなきゃならないことがまだあるというのに、こんな無様な姿を見せてしまって…でも、ケジメくらいはちゃんと払うさ…」

 

 「クラウスさん…もしかして、あなたは…」

 

 「アーサー様、シーザー、こんな私を生み出し、認めてくださって感謝します。」

 

 「よせ…止めろ~!!」

 

 「ウオォ~!!」

 

 クロスタイガーはゼロ距離でレーザーガトリングをファングタイガー改に撃ち込み、ファングタイガー改のアーマーが凄まじい勢いで破壊され、その反動で再生されたクロスタイガーの身体も破壊されていき、両者が互いにダメージを受ける中、2体の身体が爆発し、その爆風でライガーとブラックビーストライガーが巻き添えを食らって吹っ飛ばされ、その爆風から紫色の光が飛び出していった。

 

 爆風が止み、レオが目を覚ますと、そこにはボロボロに破壊されたファングタイガー改とクロスタイガーの姿があり、更にクロスタイガーの身体から剥き出しになったゾイドコアには一体化している人間態のクラウスの上半身が出かかっていた。

 

 「クラウスさん…」

 

 それを見たレオは直ぐ様、クロスタイガーの元に赴いた。そして爆風から現れた紫色の光はブラックビーストライガーの側に現れ、オーガノイド体から人間体になった。

 

 「貴様、搭乗ゾイドを捨て、自分だけ逃げたのか!?」

 

 「仕方ないでしょ。あの状況、それしかないし、それにあれは噛ませのランドが造った真帝国のゾイドよ。所詮、使い捨ての兵器に過ぎないわ。」

 

 「この女…」

 

 

 クロスタイガーの側に立ったライガーから降りたレオはクラウスの身体を一体化しているクロスタイガーのゾイドコアから剥がそうとするが、完全に粘着され、しかも、ゾイドコアがクラウスの肉体にもなっているため、どれだけ、力を入れても剥がすことは出来なかった。

 

 レオが目一杯力を入れていることに気付いたクラウスは目を覚まし、レオを見た。

 

 「おお、レオか…」

 

 「クラウスさん、しっかりしてください! 今、そこから出して治療します。」

 

 「それは無理だ。クロスタイガーは俺の相棒であると同時に分身で俺自身でもある。今の俺は僅かに残っているクロスタイガーのゾイド因子で一命を取り留めている。 今、俺をゾイドコアから剥がそうなら、俺は確実に死ぬ。」

 

 「だったら、俺が助けを呼んできます。」

 

 「駄目だ。クロスタイガーも今の攻撃でゾイド因子が殆ど尽き、後もう少しで絶命する。それにこの状態では再生も不可能だ。」

 

 「そんな…クラウスさん、どうして…」

 

 「レオ、実を言うと俺はお前の師になれるような強い存在ではない。ホントはお前みたいにまだまだ未熟な卵のようなものなんだ。」

 

 「えっ…」

 

 「本来なら、お前の師にはシーザーかモーリスのどちらかが相応しいはずだった。それなのに、何故、俺がなったのか…

 シーザーに命じられたこともあるが、ホントは自分の可能性とやらを知りたかった。」

 

 「可能性…?」

 

 「アーサー様によって造られた人造オーガノイドの中で最も成長が著しく遅かったため、アドリア王国が建国されて、その戦士になった後も常に7人の中では最も下だった。

 だが、シーザーはこの俺を信用し、いずれ、アドリア王国の提唱する理想の世界を築くことが出きるのかもしれないと言って俺を信用し、俺は何度も努力し、そしてお前の師となって教育させた。

 へへ、けど、そんな俺がこんな無様な姿を見せるようになるとは…所詮、俺はここまでの失敗作だったようだ。」

 

 「クラウスさん!」

 

 「泣くな。別にお前とライガーが死ぬわけではない。」

 

 その時、クラウスとクロスタイガーの身体が徐々に石化していった。

 

 「どうやら、俺とクロスタイガーの命ももう少しで尽きる。これ以上、お前に教えることが出来ないのは残念だが、お前なら、俺の力を受け継ぎ、その力を使いこなせるかもしれない。」

 

 「どういうことですか…?」

 

 クラウスはレオの左腕を優しく握り、それを見たレオは少し戸惑った。

 

 「俺とクロスタイガーの残ったゾイド因子をお前に渡す。そうすれば、お前とライガーは今より強力な存在になれるだろう。」

 

 「そんな…出来ない。出来ないよ!」

 

 「いや、いいんだ。最後の力を使っておきながら、ラストと相討ちにならずにこのまま死ぬわけにはいかない。なら、せめてこの力を弟子に受け継がせることだけはしたい。

 でないと、俺はただの失敗作のまま、消えることになるだろう。」

 

 「クラウスさん、嫌だ、嫌だよ!」

 

 「頼んだぞ、レオ…お前の運命を、そしてこの星とゾイドのために…」

 

 クラウスのその言葉が最後の遺言になるように、クラウスとクロスタイガーの身体が全て石化され、レオの左腕を優しく握ったその手も遂に石になってしまった。それを見てレオは何も言えない状態になった。

 

 

 「ようやく、くたばったみたいね。」

 

 「そんなことはどうでもいい。今すぐ、そいつと一緒に地獄に送ってやるまでだ。」

 

 ブラックビーストライガーは再びタテガミブレードを振りかざし、クロスタイガーの側にいるレオを殺そうとしたその時、突然、レオの左腕が金色に輝き、その左腕をブラックビーストライガーに向けて振りかざすと、ブラックビーストライガーは逆に吹っ飛ばされてしまった。それを見て驚くラスト、

 

 「何!? 一体何が!」

 

 その後、暫く黙り込んだレオはゆっくりライガーの元に戻り、コクピットに乗った後、金色に輝いた左腕をライガーの身体に触れた。

 

 「行くよ…ライガー!」

 

 その時、ライガーの身体が金色に輝き、シーザーやコバがオーガノイド体になってゼノレックス、バーニングライガーと融合し、ゼノレックス、バーニングライガーが姿を変えるのと同じ現象を起こし、同様にライガーの姿が変わっていった。その光は空高くにまで登り、襲いかかってくるジャミンガとレックスジャミンガを蹴散らしていくシーザーやサリーたちの目にも届いた。

 

 「!? あの光は…」

 

 

 

 姿が変わったライガーは青緑色のアーマーになり、更にそれまでのライジングユニットではなく、クロスタイガーと同じイグニッションブースターとレーザーガトリングに装備が変わっていった。それを見たラストは余裕そうに笑い、

 

 「ハハハハハ! 何それ? 姿が変わったかと思ったら、さっきの死に損ないと同じ装備に変わっただけじゃない。その程度なら、今倒れているあいつが手を出す必要もないわね。やっちゃいな、あんたたち。」

 

 周囲にいたゼロメタルリーパーが騎乗するレックスジャミンガとジャミンガはラストの指示に従い、一斉にライガーに襲いかかり、グンタイアリのようにライガーに群がり、ライガーは一瞬で埋まってしまった。

 

 だが、その時、群がったレックスジャミンガとジャミンガが金色に輝き、徐々に浄化され、天に上るかのように消滅していった。

 

 「何!? 今度は一体、何が起こっているの!」

 

 レックスジャミンガとジャミンガを消し去ったライガーのアーマーの色が今度はパープルに変わり、更に目の色も紫色に変わった。

 

 「な…あの色…まさか、あのライガー、我々と同じ力を…? そんな、あり得ない!」

 

 ライガーが目一杯、咆哮を上げたその時、残りのレックスジャミンガとジャミンガも消え去り、同時にシーザーやサリーたちを襲っているレックスジャミンガとジャミンガも消え去った。

 

 「!?? な、何が起こっているんだ!」

 

 「よく、わからないけど、とにかくレオとクラウスの元に向かいましょう。」

 

 「感じる…」

 

 「サリー…?」

 

 「レオとライガーの気配を感じます。」

 

 「私も感じます。」

 

 「私のゾイド因子からも感じる。だが、どういうことだ? 何故か、ライガーのゾイド因子からはクラウスのゾイド因子からも感じる。一体、これは…」

 

 「とにかく、行くぜ!」

 

 

 

 

 

 「もう! 一体、何なのよ!」

 

 「どんな姿になろうと、関係ない。このまま奴に神罰を与えてやるまでだ!」

 

 立ち上がったブラックビーストライガーは再びタテガミブレードで攻撃しようしたが、突然、ライガーのイグニッションブースターが加速したと同時にライガーの姿が一瞬の内に消え、ブラックビーストライガーの背後に回っていった。

 

 「何!?」

 

 背後に入ったライガーはブラックビーストライガーにレーザーガトリングを連射し、ブラックビーストライガービーストユニットが破壊され、アーマーも大半が削れ、そのまま倒れていった。

 

 ブラックビーストライガーは尚も立ち上がり、再びライガーに攻撃するが、ブラックビーストライガーの前に立ち塞がったライガーに乗っているレオは、

 

 「父さん、いい加減に目を覚ましてよ。」

 

 ライガーが再び咆哮を上げたその時、ブラックビーストライガーが身動き取れなくなり、徐々に大人しくなり、

 

 「何だ、これは! これは丸で暖かい…」

 

 「父さん…」

 

 その時、ブラックビーストライガーの闘争心が消え、ジョシュア・コンラッドの声が優しくなっていた。

 

 「レオ…」

 

 「父さん、やっぱり、操られていたんだね。」

 

 「操られる…? どういうことだ? 今まで私はこの地球のために戦っていたのではないのか!」

 

 「感じるよ、その黒いビーストライガーから…父さんが何故、そんな姿になってゼロメタル帝国の兵士になったのかを…」

 

 「私がゼロメタル帝国の兵士に…はっ!」

 

 

 その時、ライガーが吠えたゾイド因子を通じてコンラッドは今までのことを思い出した。プライドに会った後、帝国、共和国に幻滅した彼はゼロメタル帝国を地球を救う救世主の国家として信じ、プライドと共に帝国、共和国を陥れる陰謀を企てた。

 

 しかし、やがて、プライドらゼロメタル帝国の野望が浮き彫りになると、彼は徐々にプライドの目指す世界が地球を救うためのものにならないと絶望してしまった。

 

 そんな時、彼はワイルドライガーらしき化石を見つけ、そのゾイドを復元し、ゼロメタル帝国から離脱しようと考えたその時、コンラッドの裏切りにいち早く気付いたプライドの命を受けたドクターマイルスがゼロメタルリーパーを引き連れ、彼を射殺し、そのライガーの化石をゼロメタル帝国の新たな戦力として手に入れようとしたが、運悪く地盤沈下によってその化石は失われ、入手することは叶わなかったものの、化石から得たゾイド因子は入手していたため、そのゾイド因子を解明した結果、その化石は突然変異種であることが判明し、ワイルドライガーから進化するその姿を復元したブラックビーストライガーを完成させ、そのゾイドコアに射殺したコンラッドの脳髄を移植し、彼の記憶を一部作り替え、ゼロメタル帝国の兵士へと変えられていったのだ。

 

 「そうだ、私はゼロメタル帝国から離脱しようとしたところを殺され、こんな姿になり、今までずっとゼロメタルのために戦っていたんだ。」

 

 「父さん…やっと戻ってきてくれたんだね。」

 

 「だが、レオ。帝国、共和国に対する私の憎しみは私自身のものだ。そのおかげで、その感情を奴等に漬け込まれ、お前の母であるサラを殺し、そしてお前にまで牙を向けるようになった。

 こんな、私が父親として、お前を抱くことは出来ない。」

 

 「でも、父さん。父さんは教えてくれたじゃないか! 僕にゾイドと地球を愛する気持ちを…それを教えてくれたから、今の僕がいるんだ。」

 

 「レオ…そうか、ホントに大きくなったな。まさか、あの時、私が見つけたワイルドライガーの化石を相棒にまでしてしまうとは…」 

 

 「父さん、だから、もう一度戻って!」

 

 「それは出来ない。私はもう人間ではない。それに…」

 

 その時、オーガノイド体に変身したラストが紫色の光になってブラックビーストライガーに宿り、目を赤く発光させ、ライガーに襲いかかってきた。

 

 「父さん!」

 

 「せめて最後は、敵と一緒に華々しく散りなさいよ!!」

 

 「くっ、馬鹿やろ~!! ライジングレーザークロー!」

 

 イグニッションブースターで加速したライガーは一瞬でブラックビーストライガーの攻撃を回避し、レーザーガトリングをブラックビーストライガーのゾイドコアに撃ち込み、その直前にラストはブラックビーストライガーとの融合を解いて、その場から脱出し、逃走していった。

 

 倒れたブラックビーストライガーから目の発光が消え、そのまま生き絶えるように沈黙し、レオは何も言えない状態になっていた。

 

 そんなレオの元にシーザーやサリーたちが到着し、ライジングブルーライガーとは全く違う姿に困惑したシーザーとサリーたちだったが、レオは一連のことを話し、クラウスの死に悲壮感を感じた。

 

 「そうか…そんなことがあったとは…」

 

 「シーザーさん、御免なさい。クラウスさんを守れなくて…」

 

 「いや、何も君のせいではない。それに、これは彼自身が決めたことだ。それを我々が否定するわけにはいかない。」

 

 「それにしても、驚いたな。まさか、ライガーが更に進化しちまうなんてな。」

 

 「ホントね。色はゼロファントスに近いようだけど、それらとは逆に神々しさまで感じるわね。」

 

 「なあ、このライガーに名前はないのか?」

 

 「名前って…そもそも名付けるどころじゃなかったし…」

 

 「デイズ…」

 

 「サリー…?」

 

 「この子、デイズって名前はどうかな?」

 

 「デイズ…ライジングライガーデイズか!」

 

 「へぇ~、サリー、中々いいセンスしてるね!」

 

 「そんなことないわ。」

 

 「いや、俺も嬉しいよ! ありがとう、サリー。」

 

 「レオ…」

 

 「犠牲を出してしまったが、我々にはまだやるべきことがある。クラウスを埋葬させてやった後、直ぐに端末探しに出掛ける。」

 

 「シーザーさん、ちょっと待ってください。」

 

 「どうした?」

 

 「父さんもお願い出来ますか?」

 

 レオが指差した方向に石化していくブラックビーストライガーの姿があり、それを見て察したシーザーは、

 

 「わかった。彼の遺体も回収する。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 

 しかし、その時、突然、地響きが鳴り、地面全体が揺れ始めた。

 

 「な、何だ? 地震か!?」

 

 その時、ブラックビーストライガーが倒れている地面から巨大な手が現れ、ブラックビーストライガーを掴み、ある巨大な存在が姿を現した。その存在はゼログライジスだった。

 

 「ぜ、ゼログライジスだと!?」

 

 ゼログライジスは掴んだブラックビーストライガーを放り投げ、そのまま口の中に入れ、飲み込んでしまった。ブラックビーストライガーを飲み込んだゼログライジスの目が赤く発光し、同時に紫色のラインも輝いた。

 

 「う~ん、それなりに働いただけあって中々の味だね。オヤツにはちょうどいい。」

 

 「と…父さん…ぐっ!」

 

 その時、レオが突然怒りを露にし、ライジングライガーデイズに乗ってそのままゼログライジスに向かって突っ込んでいった。

 

 「よせ、レオ!」

 

 「ウオォ~!!」

 

 しかし、ライガーはゼログライジスの重力操作で動きが封じ込められ、ゼログライジスの顎の一歩手前で止まってしまった。

 

 「へぇ~、ライガーが更に進化するなんて…興味深いね。もしかして前にボクの分身のバイオティラノを倒したムラサメライガーって奴と同じ類なのかな?」

 

 「くっ、」

 

 ライガーはイグニッションブースターで加速し、ゼログライジスの重力操作に逆らうが、ゼログライジスの重力操作は予想以上に強力で、脱出はほぼ不可能だった。

 

 脱出が不可能とみたレオは、さっきのように咆哮を上げるも、ゼログライジスには全く効果がなく、ゼログライジスは両手を重なる動作をし、そのままライガーを重力操作で潰そうとした。

 

 「うっ、グワァッ!」

 

 「ドクターマイルスが造った最初の傑作を倒したってラストから報告があったから、気合い入れて来てみたら、全然大したことないね。君、弱いよ。」

 

 「うっ、ライガー…」

 

 その時、バスターXAになったゼノレックスとパキケドスの集中砲撃がゼログライジスのGグラップクローに直撃し、重力操作を解除し、ライガーはそこから脱出することが出来た。

 

 「へぇ~、何千万年前か忘れたけど、ボクを封印したゼノレックスまでいるなんてね。これは中々いい面子だ。

 でも、その面子じゃ、ボクには勝てないな。そのライガーだって期待はずれだし。

 本来なら、今すぐ、そのライガーを潰したいところだが、ライガーには何度もこのボクを倒し、復活を阻止されたが因縁があるから、こんな簡単に潰さず、もうちょっと強くなってからじっくりいたぶりたいんだよね。」

 

 「ギャラガー、いや、デスザウラー! 貴様が何を企もうと何度復活しようと、我々は貴様を封印する。」

 

 「凄い大きく出たね。それは本気なのかい? それとも、ボクと戦いたくないための方便かい?」

 

 「うっ、」

 

 「まあ、いいや。今のボクの楽しみは別にあるからね。君たちとの遊びは最後に取っとくよ。そのついでと言ったらなんだけど…」

 

 ゼログライジスが片手に何か握っているものを取り出すと、それは3つあるリジェネレーションキューブの端末だった。

 

 「た、端末が3つも!」

 

 「これを再起動させれば、端末は残り一個だ。そうすれば、君たちの端末探しは終わりになり、同時に君たちは更にパワーアップするわけだ。

 ま、最もそれでこのボクを倒せるようになれるかどうかは別だけど…せいぜい、頑張ってね。」

 

 3つの端末をライガーたちの前に落としたゼログライジスの胸部から巨大なゲートのようなものが現れ、それを見たシーザーとアーサーは驚愕した。

 

 「あれは、アナザーゲート!」

 

 「まさか、奴等、あれを完成し、ゼログライジスに装備させたのか!?」

 

 胸部から現れたアナザーゲートに入ったゼログライジスはそのまま、その場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、ニューホープにあるデュークナイツに警報が鳴った。

 

 「何だ! 何が起こった!?」

 

 「エリア11に高エネルギー反応、ゼログライジスです!」

 

 「ゼログライジスだと!? まさか、こんなときに現れるとは…目標は何処にむかっている?」

 

 「確認します! これは…」

 

 「どうした?」

 

 「ゼログライジスの向かう先が確認されたのですが…」

 

 「何処なんだ?」

 

 「帝国首都ネオゼネバスです。」

 

 「何だと!?」

 

 To be continued




 次回予告

 犠牲となったクラウスとクロスタイガーの力を得てライジングライガーデイズに進化してブラックビーストライガーを倒したレオ、だが、そのときに現れたディアベル・ギャラガーとゼログライジスはレオたちを軽くあしらった後、今度はネオゼネバスに向かった。
 ギレル少佐とディアス中佐はロングレンジバスターキャノンとクラビティキャノンを輸送する中、ゼオルは単身オメガレックスに乗ってゼログライジスに立ち向かった。果たして勝算は!?

 次回「ゼログライジスVSオメガレックス」走り抜け、ライガー!!

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