ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

8 / 86
 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 ペンダントの力によって突如復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーを復活させた不思議な力を持つペンダントを持ち、地球の未来を左右する謎の少女サリーと共に地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第8話「時空ノ扉」

 ノックス大尉が指揮する帝国軍基地。帝国軍の元二等軍曹バーン・ブラッドがガトリングフォックスと共に帝国軍に反逆して離脱した責任を負われたフォックスの開発者は地位を奪われ、全ての研究を失われてしまうという代償を払い、ノックス大尉の部隊もフォックスとの戦闘で負傷し、最早部隊は壊滅的となった。

 ノックス大尉は本国の軍上層部からバーンとフォックスの捕獲命令を受け、バーンとフォックスの捜索に当たっていた。司令室でノックス大尉は兵士に怒鳴り付け、

 

 「まだ、バーン・ブラッドは見つからんのか!!」

 

 「はっ! 捜索を続けていますが、何しろ、光学迷彩を利用して我が軍を撹乱させていますから、捜索にかなり手こずっています。」

 

 「もし、奴が共和国軍と手を組んだら、益々我々の地位は危うくなる……何としても奴を見つけ出すのだ!!」

 

 「はっ!」

 

 兵士が部屋を退出すると、ノックス大尉は怒りをかくせず、思いっきり机を叩いた。

 

 「くそっ! あの男のせいで何もかも台無しだ。必ず見つけ出し、奴を軍法会議にかけてやる!」

 

 「お困りのようだな!」

 

 その時、いつの間にか司令室に影で素顔が隠れている少年がいた。

 

 「貴様! 何者だ!? 勝手に入るとは……これは軍率違反ものだぞ!」

 

 「独自行動の免許があるこの俺に軍の規律等、関係ないと思うが……」

 

 素顔を見せた少年はセードだった。 

 

 「貴様は……セード!」

 

 「お前らが俺のタイガーより強いゾイドを開発したっていう情報を聞いたから、どれぐらい強いか、来てみたんだが、まさか逃げられたとはね……。ここの帝国はホントにどいつもこいつも役に立たない連中ばっかりだ!」

 

 「ふん! 軍人ではない貴様に言われたくない!!」

 

 「そこでどうかな? そのフォックスとやらの捕獲に俺も加えるのは… 俺のタイガーもステルス仕様だから、毒をには毒を制すには適任だと思うが?」

 

 「それは出来ん! いくら摂政閣下の私兵と言えども、軍人ではない貴様を加える等……」

 

 「あ、そうか。 残念だな! せっかくラストからフォックスらしきゾイドを見かけた市民がいるっていう情報を聞いたのだが……」

 

 「何!? ラスト大佐からだと!」

 

 「ああ、それでラストから、そいつを捕獲しろとお前らに命令が上がってな。」

 

 「な、何故、ラスト大佐が捕獲しないのだ!?」

 

 「ふん、わかってないな。 名誉挽回だよ! 貴様らがここでフォックスを捕獲すれば、出世は補償してやると言っているんだ!

 最もその代わり、フォックスの捕獲の役目は俺にやらせるとのことだが……」

 

 「何!?」

 

 「ただし、指揮はお前に任せるから、その手柄はお前のものになるので、文句はないだろ?」

 

 「う…ぐっ……」

 

 「どうした! やるのか? やらないのか?」

 

 「わかった。 その指令に従う。」

 

 「そうこなくっちゃ! お前らの作ったフォックスの実力試させて貰うぞ。」

 

 「ちぃっ!」

 

 セードの自信たっぷりな態度にノックス大尉は納得いかない表情をした。

 

 

 

 

 

 

 

 海上都市のゾイドメンテナンス工場にある一つの倉庫に帝国軍の追撃を逃れたバーンがフォックスのメンテナンスとカスタマイズを行っていた。バーンはフォックスの色を変え、

 

 「よし、これでどうだ?」

 

 カスタマイズを終わった後のフォックスはボーンの色が青色になっていた。

 

 「帝国軍とは縁を切って自由になった証として、チョイとイメチェンしてみたが……どうだ? フォックス。」

 

 グルル……

 

 バーンを見たフォックスはバーンの気持ちに応えるかのようにゆっくり頷いた。

 

 「そうか、そうか。 そいつは良かったぜ! ん~、でも、やっぱり、アーマーの色も変えた方がいいかな……?

 まあ、いいや。取り敢えず、この色で行こう。 

 後…そうだな……もうお前は帝国軍のゾイドじゃないから、この際、名前も変えよう。ガトリングフォックスよりもっとカッコいい名前をつけてやろう。

 そうだな……そうだ! ブルーシャドーフォックスってのはどうだ!? 自由な旅をする俺とお前にとって相応しい名前だろ?」

 

 グルル……

 

 それを聞いたフォックスは嬉しそうな素振りを見せた。

 

 「そうか、気に入ったか! そいつは良かった。

 ん~、でもそうなると、やっぱりアーマーの色も変えなきゃならないことになるな……

 ま、それは追々考えるとするか。」

 

 「へ~、中々いいゾイドですね!」

 

 その時、バーンに話しかけたのは、バズの知り合いのビリー・コマンドだった。

 

 「あんた、誰だ? 俺に何の用だ?」

 

 「実は、元帝国軍の旦那に頼みたいことがあってな。」

 

 「頼み?」

 

 ビリーの後に付いていき、その倉庫に入ると、そこには幾つかのコアが埋め込まれ、一部欠けたゲートのようなものが現れた。

 

 「これが何だって?」

 

 「実は以前、帝国領のバルトア地帯にある遺跡群で強力なメタル反応があって見付けた代物なんです!」

 

 「見たところ、ゾイドのパーツでもないし、ただのガラクタにしか見えないが……」

 

 「いえ、実は先日調べたところ、どうやらこれはゾイドをも越える代物だということがわかったんですよ!」

 

 「ゾイドを越える?」

 

 「発掘したばかりにも関わらず、全ての通信機器を狂わせる程の強力な磁気を発生させていることが判明し、更に研究を積み重ねると、もっと凄い発見があったんです!」

 

 「ふ~ん…で、その凄い発見ってなんだ?」

 

 その時、ビリーが100年以上経っている如何にも古びた時計を出した。

 

 「これからやる実験は驚くものになりますよ!」

 

 ビリーは自信たっぷりな表情で欠けたゲートにコードを接続し、ゲートとコードで繋がった銃型の電磁波発生装置を古時計に向けた。

 

 「いいですか? 見ててくださいよ。」

 

 ビリーがスイッチを押すと、突然ゲートに稲妻が走り、更に電球や家電製品にも電流が迸り、部屋全体が揺れ、明かりが点滅を繰り返した。

 その時、電磁波発生装置から発生した電磁波が古時計に当たり光輝いた。その眩しさに一旦目を瞑ったバーン、光が収まり、目を開けると、目の前には完全に古びた古時計ではなく、まるで今完成したような新品の時計があった。それを目を疑うかのように驚くバーン、

 

 「お…おい、この時計って……」

 

 「そうです! さっきの古びた時計ですよ。」

 

 「こ…これが……さっきのあの時計だって!? まるで今完成したかのように直ってやがる!」

 

 「実はこのゲートには非常に強力な磁場を発生し、その力によって、古い物質をまるで時間を逆光させたかのように戻せる力があるんですよ。

 まあ、そもそも材料が少ないので、その力が何なのかわかりませんが、こいつのおかげで、今まで使い物にならなくなったものまで修復してくれたんです。」

 

 「まさか…俺を雇ったのは……」

 

 「そうです! もし帝国軍がこいつを知ったら、喉から手が出る程の注文が殺到するはずです!

 こいつを売れば、帝国軍から多大な大金が貰える。ですが、ただの運び屋の俺じゃあ、中々そいつを帝国軍を売り出すことは出来ない。

 そこで、元帝国軍である旦那に頼んでいるんです!」

 

 「冗談じゃねぇ! 俺はフォックスを解放するために帝国軍から脱け出してきたんだ! 今更帝国軍に戻るなんてまっぴら後免だぜ!!」

 

 「ですが、旦那は帝国軍のお尋ね者。 こいつを売りに出せば、旦那の罪は帳消しにしてくれるかもしれませんよ!」

 

 「駄目だ! 帝国軍は俺のフォックスを狙っている。いくら俺の罪が帳消しになっても、絶対フォックスを帝国軍に渡さねぇぜ!」

 

 「そうですか……でしたら、その代わり、これよりもっと大規模な実験に協力していただけますでしょうか?」

 

 「大規模な実験?」

 

 ビリーは窓の外にある島を指差し、

 

 「あそこにあるラプス島が見えますよね?」

 

 「あの島がどうした?」

 

 「それはあの島に行けばわかりますよ。」

 

 それを聞いて首を傾げるバーン、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2つ目の端末を起動し、帝国軍に捕らえられたライガーを助けたレオたちは休息のためにバーンのいる海上都市にある宿泊施設に泊まっていた。個室で、アイセルはディアス中佐と通信でコンタクトを取り、帝国軍の動向を探っていた。

 

 「何ですって! 帝国軍がジェノスピノを復元しているですって!!」

 

 「ああ、非常に厄介なことだ。各地にいる共和国軍の偵察部隊からも帝国軍は世界中に散らばっているジェノスピノの化石の回収作業をし、先日もギレル中尉率いる回収班も化石の一部を回収したそうだ。」

 

 それを聞いたアイセルは、旧市街で、端末のある地下で帝国軍の回収班が発掘作業をしていたのを思い出した。

 

 「まさか……あの時…掘り起こしたのは……」

 

 「どうした?」

 

 「中佐、ギレル中尉率いる回収班が行った場所って、もしかして第4地区ですか?」

 

 「そうだが……」

 

 「やっぱり……」

 

 「実は私、先日その回収班を目撃したのです!」

 

 「何てことだ。帝国軍はそんなところまで、手が回っていたのか。」

 

 「幸い、端末までには手は回りませんでしたが……」

 

 「帝国軍のジェノスピノ復元は何としても阻止しなくてはならない。 

 アイセル少佐、君はレオたちの協力と共に帝国軍のジェノスピノの化石回収の阻止のために我々とも協力してくれないか?」

 

 「わかりました。」

 

 「では…」

 

 「アイセルさん、どうしたの?」

 

 アイセルのいる部屋にサリーが尋ね、

 

 「実は帝国軍はかつてゾイドクライシスで地球を脅かした怪物、ジェノスピノを復元しようとしているみたいなの。

 あの時、端末のあった場所に帝国軍はその化石を掘り起こそうとしていたみたい……」

 

 「えっ……」

 

 「今はまだ、復元出来る程ではないみたいだけど……もし最後のパーツを発掘してしまったら……」

 

 「そんな……また、多くの人々やゾイドが死んでしまうの……」

 

 サリーはかつて帝国軍の元で、ゾイドを戦争兵器にするための研究をされたことを思い出しながら、すさんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビリーの乗るキャタルガによって、フォックスは運搬され、ラプス島に着くバーンとビリー。

 ビリーは自身のキャタルガで牽引した欠けたゲートを降ろし、ゾイド発掘現場で更に巨大な電磁波発生装置等を設置し、何やら作業を始めた。

 

 「お、おい! 一体何をするつもりだ?」

 

 「さっきのは古びた時計を直す小規模な実験でしたが、今度はここでもっと大規模な実験を行うんです!

 ここはかつてヴェロキラプトル種のゾイドの化石が大量に出土したため、帝国共和国の両国が領有権をめぐって争いが絶えなかった島で、化石のほとんどは彫り尽くされ、発掘は10年以上前から行われていない場所ですが、それでも少なからずゾイドの化石は残っている。それがどういうことかわかりますか?」

 

 「まさか、あんた、そいつの力で……!」

 

 「そうです! こいつの力でまだ発掘されていないゾイドを一気に復元させるんです。

 この実験が成功すれば、帝国軍の目は俺のところに止まり、必ず俺に大金をくれるはず!」

 

 「だけど…いくらなんでもそいつは危険なんじゃねぇか!? 時間を逆光させる力を持っていると判明しても、そもそもそいつが一体何なのかすらわかんないんだぞ!

 ましてや、ゾイドを復元させる実験に使うとなら尚更だ。」

 

 「俺はこのまま運び屋のままで終わるつもりはないんだよ! ただの運び屋で終わるつもりは……こいつはそのために俺の元に来たんだ!」

 

 ビリーは幾つかの電磁波発生装置をゾイド発掘場所に当てた。それを少し不安そうな目で見るバーン、

 

 「いいですか? いきますよ。 新たな時代の幕開けです!」

 

 ビリーはスイッチを入れ、ゲートに電流が迸り、幾つかの電磁波発生装置から電流がゾイド発掘場所に当てた。

 しかし、機械に異常が発生し、島全体が揺れた。

 

 「な、なんだ? 何が起こった!」

 

 「どうしたんだ? 故障か? おい、ちゃんと動けよ!」

 

 その時、ゲートが浮遊し、ゲートの中からブラックホールのような闇の空間が現れ、島全体を覆い被さった。そして、電流が走ったゾイド発掘場所や闇の空間から無数のジャミンガが地面から這い上がってきた。

 

 「お、おい、おっさん! これどうなってるんだよ!?」

 

 「こ、こんなはずは……」

 

 地面から現れたジャミンガは一斉にバーンとビリーに襲いかかってきた。バーンはビリーに襲いかかろうとしたジャミンガを蹴飛ばし、フォックスもバーンとビリーを護衛するようにバーンの前に立った。

 

 「ここは俺が引き受ける! あんたは今のうちにキャタルガに乗って逃げろ!」

 

 「いや、でも……あいつを回収しないと!」

 

 「そんなもの後にすればいいだろ!!」

 

 それを聞いて渋々逃げるビリー、

 

 「よし、行くぜ。相棒!」

 

 バーンはフォックスに乗り、ショットガンとマルチプルランチャーでジャミンガの群れに撃ち込んだ。

 

 「くそ、何でジャミンガが現れるようになったんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 ラスト大佐の情報を頼りに海上都市に着いたセードとノックス大尉率いる帝国軍、帝国軍兵士はバーンの写真が貼られている手配書を都市の人々に見せ、バーンの居場所を聞いていたその時、セードが闇に包まれたラプス島を目撃し、

 

 「おい、あれどうなっているんだ?」

 

 「何って……どうなっているんだ? あの島は! むっ!」

 

 ノックス大尉が双眼鏡でラプス島を見ると、そこには無数のジャミンガと交戦しているフォックスがいた。

 

 「遂に見つけたぞ! まさか、あんなところにいたとは!」

 

 「随分楽しそうじゃないか!」

 

 「よし、直ちに島を包囲し、滷獲作戦に入る!」

 「ノックス、忘れてはいないだろうな? フォックスの鹵獲は俺に任せて貴様らはその後方支援に回るというラストの命令だよな?」

 

 「忘れてはいない! だが、フォックスは破壊するな!」

 

 「分かってる! ちゃんとパーツは残すようにバラバラにするから。」

 

 「ちっ! ところで、貴様はどうするつもりだ!?」

 

 「俺が橋を渡って島に入って奴の相手をする。お前たちはフォックスが逃げられないように橋を破壊して、ジャミンガ共の掃討をやれ。」

 

 「了解した。」

 

 「では、お前たちの造ったガトリングフォックスの実力試させてもらうぞ。」

 

 セードはファングタイガー改に乗り、橋を渡ってラプス島に入った。それを見たノックス大尉は、

 

 「くそ、ラスト大佐といい、摂政閣下といい、何故、あんな奴が特別扱いされるのだ!?」

 

 セードのファングタイガー改が橋を渡って、ラプス島に入り、島にいるジャミンガが橋を渡ろうとするが、島に入ったファングタイガー改が目の前のジャミンガを蹴散らして、フォックスの元に向かった。

 海辺にいるバズートル部隊は橋を砲撃し、ノックス大尉はスティレイザーに乗って、ガブリゲーター部隊が牽引する板切れのような形状の船に乗ってラプス島に近付いた。

 船の破壊と島に向かってのバズートル部隊の砲撃に気付いたバーンは、

 

 「おいおい、マジかよ! もう帝国軍の追手がここまで来たのかよ。

 ただでさえ、ジャミンガの処理に手を焼いているってのに! 仕方ない。

 ここは姿を消して奴らの注意を引いてあのおっさんと一緒に島を脱出するしかない。いけるか、相棒?」

 

 グルル……

 

 バーンの問いに応えるように頷くフォックス、

 

 「ようし…じゃあ、行くぞ。」

 

 フォックスは光学迷彩で姿を隠し、その場を離れた。 ノックス大尉の乗るスティレイザーをを乗せた船は島に着く直前に止まった。

 

 「制御トリガー解除! スティレイザー、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 マシンブラストを発動したスティレイザーはガブリゲーター、バズートル部隊と共にラプス島に向けて一斉砲撃した。

 

 「フォックスの捕獲はセードに任せる! 我々はその後方支援に回る。 例え、島ごと沈没してもフォックスを捕らえるのだ!」

 

 帝国軍の一斉砲撃により、ジャミンガは次々と破壊され、同時に島も砲撃によって崩れていった。

 フォックスは帝国軍の砲撃を避けながら、ビリーのいる場所に向かうが、バズートル部隊の砲撃によって飛び散った水に全身が濡れ、フォックスの走った後に足跡が出来てしまった。

 足跡から動きを読まれたフォックスを砲撃が襲う。 岩陰に息を潜め、尚も襲いかかってくるジャミンガの襲撃も交わしたバーンとフォックスはジャミンガと逆方向に進もうとする。

 

 「へっ。そう簡単に捕まってたまるか」

 

 バーンがそう言ったその時、何処からか帝国軍とは別の砲撃がフォックスを襲った。フォックスはそれを避けるが、その砲撃はフォックスの位置が正確にわからず撃っている帝国軍と違い、フォックスの動きがまるでわかるかのように撃ってきた。 バーンは敵の姿を探そうとするが、その姿は見当たらない。

 

 「くそ、一体何処から撃ってきた!?」

 

 その時、突然、何者かがフォックスに体当たりし、フォックスは壁に激突され、その衝撃で光学迷彩が解かれ、姿を現してしまった。バーンが目の前を見ると、そこに現れたのはファングタイガー改だった。

 

 「お前か。 ノックスから俺のタイガーより性能がいいと聞いていたが、見たところ、大したこと無さそうな狐のようだな。」

 

 タイガー改とセードの声を聞いたバーンは、

 

 「あいつは…帝国軍の中で最強と謳われるファングタイガーを操る摂政の私兵か!? てめえが俺に何の用だ?」

 

 「貴様のフォックスとやらが、俺のタイガーより強いかどうか知りたくてな。 お前の実力を試してやりたいんだよ!」

 

 「はっ! 俺はそんなものに興味はない。 さっさと道を開けたらどうなんだ?」

 

 「あっ? もしかして、弱いから俺と戦うのは後免って言うのか? だとしたら、とんだ期待外れだね。

 やっぱり、俺のタイガー以外のゾイドは雑魚だということか……」

 

 それを聞いたバーンは拳を握り締め、

 

 「貴様、俺のフォックスを侮辱することは許さんぞ!」

 

 「そうか……なら、試してみるか?」

 

 「一瞬で終わらせてやる!」

 

 フォックスは再び光学迷彩で姿を隠し、直ぐに背後に回り、タイガー改を攻撃しようとするが、タイガー改は尻尾のサンダーテイルで攻撃し、フォックスの全身に電流が走った。

 

 「ぐっ…グワァ~!!」

 

 タイガー改のサンダーテイルで一旦怯むフォックス、だが、再び姿を隠し、タイガー改の周囲を走って撹乱させようとした。

 そして、フォックスは瞬時にタイガー改の頭上に回り、そのまま落下しながら攻撃するが、タイガー改はそれも軽く避け、フォックスを蹴飛ばした。

 

 「何故だ? 何故、俺とフォックスの動きがわかる?」

 

 「俺のタイガーもステルス仕様でな。それに応じた戦闘は腐るほどやっている。

 だから、ステルス戦に特化した奴の戦法なんざ、手に取るようにわかるのさ!」

 

 「なら、こいつはどうだ!? 行くぞ、フォックス!

 ガトリングフォックス、進化 解放! エヴォブラストー!!」

 

 「ふん、 制御トリガー解除! ファングタイガー、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 「ファントムガトリング!」

 

 エヴォブラストしたフォックスはガトリングをタイガー改に撃ち込むが、タイガー改はその砲撃を全てツインドファングで受けきった。

 

 「何!?」

 

 「さっきよりは断然良くなったが、どうやら、俺のタイガーのレベルには程遠いようだな。」

 

 それを聞いたバーンは、

 

 「俺とフォックスの力を持ってしても、あいつには勝てねぇって言うのか!」

 

 「歯応えとしちゃ…まあまあだったけど……そろそろ終わりにしようか!」

 

 タイガー改はツインドファングでファングでフォックスをぶっ飛ばした。

 

 「グワァ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 海上都市の宿泊施設で休息していたレオたちはラプス島に異常が発生し、更に帝国軍が総攻撃しているため、その調査をして欲しいとディアス中佐がアイセルに命じ、レオたちは早速ラプス島に向かった。ラプス島を見たレオたちは、

 「おい、あの島一体どうなっているんだ?」

 

 「詳しくはわからないけど、島に何やら闇のような空間が包み込んで、突然ジャミンガが大量に沸いてきたみたい。

 そして、帝国軍が何が目的なのか、島を攻撃しているの?」

 

 双眼鏡でラプス島を見たレオは闇の中から大量のジャミンガが沸いていくのを目撃し、更にファングタイガー改に苦戦するフォックスも目撃した。

 

 「彼処にフォックスがいる!」

 

 「えっ!? じゃあ、帝国軍はフォックスを狙って?」

 

 「あのフォックスは俺たちを助けてくれた。今度は俺が助けにいかないと!」

 

 「でもどうやって行くんだよ!? 行こうにも橋は無いし、回りに帝国軍もいるんだぜ!」

 

 「それでも行かないと! 行くぞ、ライガー!」

 

 レオはライガーに乗り込み、ライガーは海に飛び込んで、そのまま犬掻き……いや猫掻きで海を渡って行った。それを見たサリーは、

 

 「アイセルさん、私もフォックスを助けたい!」

 

 「しょうがないわね。私たちも行きましょう。」

 

 「おいおい、嘘だろ! マジで行くのかよ!? ていうか、渡ろうたって大体船はどうすんだよ?」

 

 「大丈夫。実は共和国軍が支給してくれた船があるから。」

 

 

 

 

 

 タイガー改の執拗な攻撃を喰らって、アーマーに傷が付き、遂にタイガー改に抑えられたフォックス、

 

 「がはっ!」

 

 「やれやれ、予想以上の雑魚でホント残念だよ。そろそろスクラップにしてやる。」

 

 タイガー改がフォックスに止めを刺そうとしたその時、

 

 「止めろー!!」

 

 海を渡ったライガーが現れ、タイガー改に飛び掛かろうとした。タイガー改は瞬時に避け、態勢を変え、ライガーはフォックスを守るかのようにタイガー改に立ち塞がった。ライガーを見たバーンは、

 

 「お前は…あの時のライガー! 何故、お前がここに?」

 

 「あなたを助けに来たんですよ! あの時、俺たちを帝国軍から助けてくれたじゃないですか!」

 

 「まさか、お前、あの時の借りを返すために!?」

 

 「だって、せっかく助けてくれた借りを返さないままにする訳にはいかないじゃないか!」

 

 「ふっ……」

 

 「誰かと思えば、あの時のショボいライガーじゃないか! まさか、俺と再びやるつもりか?」

 

 「俺は戦いに来たんじゃなく、フォックスとこの人を助けに来たんだ。」

 

 「なら、それでも俺と戦う理由になるんじゃないか? いっとくが、俺はそいつを帝国に持ち帰る任務があるからね。」

 

 「おい、ライガーの少年! そいつには一対一で戦うのは危険だ! ここは俺のフォックスの2体で戦った方が得策だ。」

 

 「でも……あなたのフォックスは……」

 

 「俺の相棒なら心配はない。それにあいつの強さはお前もわかっているだろ!?」

 

 レオはライガーが少し警戒した表情を見て、

 

 「確かにライガーだけじゃ、敵わない。一緒に戦おう。」

 

 「そうこなくっちゃ!」

 

 「2体がかり? いいよ! 遠慮せず、かかってこい。そのショボいライガーの弱さは前の立証済みだ。

 この際、2体相手にした方が張り合いがある。」

 

 「行くぞ、ライガーの少年!」

 

 「わかった! 行くぞ、ライガー!」

 

 

 

 

 

 ディアス中佐から支給された船を使って、帝国軍の死角を通って、ラプス島に着いたサリーたち、アイセルはラプトリアに乗り、島にウジャウジャいるジャミンガを蹴散らしながら、島に入って行った。

 

 「早く、レオとライガー助けないと不味いぞ! あのファングタイガーメチャクチャ強かったから、今頃苦戦しているかもしれねぇ!」

 

 「わかっているけど、こうジャミンガがウジャウジャいると、中々先に進めない。」

 

 その時、サリーは島の向こう側にゲートを回収するために周囲にいるジャミンガを鉄棒で倒しているビリーを目撃した。

 

 「ねぇ、あの人は?」

 

 ビリーを見たバズは、

 

 「あいつは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ビーストライガー、進化 解放! エヴォブラストー!! ビーストオブクローブレイク!!」

 

 「デスファング!!」

 

 ライガーはエヴォブラスト技でタイガー改に攻撃するが、直ぐにタイガー改のツインドファングで返される。

 

 「もう一度食らえ! ファントムガトリング!」

 

 「ふん!」

 

 フォックスの一斉砲撃も全て軽々と受けきられ、ライガーとフォックスを2体同時に蹴飛ばされてしまう。

 

 「2体でかかってその程度か? むず痒いぞ!」

 

 「ライガー、大丈夫か!?」

 

 「くそ、フォックスもダメージが大きい。どうすれば……」

 

 

 

 

 

 

 

 欠けたゲートを回収するために周囲のジャミンガを鉄棒で蹴散らすビリー、

 

 「どけっ、どけっ! こいつは俺のものだ!! お前らのものじゃない!」

 

 しかしいくら倒してもジャミンガはゲートによって出現した闇から無数に沸いていき、ジャミンガを倒すごとに体力が消耗していくだけだった。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ……こいつを何としても……」

 

 体力が限界に来ても尚も戦うが、横から現れたジャミンガがビリーを蹴散らし、その衝撃で鉄棒を離し、倒れてしまう。ビリーが諦めかけ、ジャミンガが襲いかかろうとしたその時、バズがジャミンガに殴りかかり、ラプトリアが周囲のジャミンガを蹴散らした。サリーはビリーを優しく抱え、

 

 

 「大丈夫ですか?」

 

 「ああ…」

 

 バズを見たビリーは驚き、

 

 「バズ、どうしてお前がここに!?」

 

 「それはこっちの台詞だ! お前こそ、こんなところで何をしている!?」

 

 「俺は地球の歴史を変える歴史的実験をしていたんだ! あれを使って!」

 

 「実験だと?」

 

 それを聞いて疑問を感じるバズ、

 

 

 

 

 

 

 タイガー改と対峙するライガーとフォックス、

 

 「くそ、あいつにどうやって死角を作る……待てよ、さっきは一体ずつで掛かったが、2体同時で掛かれば……

 おい、ライガーの少年!」

 

 「何?」

 

 「俺にいい考えがあるが、乗ってくれるか?」

 

 「俺とライガーなら大丈夫だよ!」

 

 「よし、まず先にお前が仕掛けろ! 俺はその後に動く。」

 

 「わかった。行くぞ、ライガー!」

 

 ガオ~!!

 

 「ビーストオブクローブレイク!!」

 

 「同じ手が2度も通用すると思っているのか? デスファング!!」

 

 タイガー改に向かって再び攻撃しようとするライガーにタイガー改もライガーに向かって攻撃しようとする。タイガー改のツインドファングの刃がライガーに当たりそうになったその時、フォックスが瞬時にタイガー改の真下に回った。

 

 「何!?」

 

 「流石のお前でも、目の前の敵に集中すれば、もう一体は疎かになるだろう。 食らえ! ファントムガトリング!!」

 

 「グワァ!!」

 

 タイガー改はフォックスの攻撃をまともに喰らって態勢を崩し、ライガーはそれを逃さず、

 

 「今だ、ビーストオブクローブレイク!!」

 

 ライガーとフォックスの同時攻撃を食らい、アーマーにひびが入って、倒れるタイガー改、

 

 「よし、上手くいった!」

 

 

 「バカな! この俺に死角を作らせるとは!」

 

 ライガーとフォックスがその場を去ろうとしたその時、島に上陸したノックス大尉のスティレイザー率いる帝国軍が背後から砲撃してきた。

 

 「バーン・ブラッド! 貴様に逃げ場はない。直ちに投降しろ!」

 

 「しまった! 帝国軍がもう島に上陸してしまったか!」

 

 「へっ、心配ない。 あの厄介なタイガーさえ足止めできれば、それでいい。 取り敢えず目つぶってろ!」

 

 バーンはフォックスの尾部マルチプルランチャーから照明弾を発射した。

 

 「グワァ!! 照明弾か!」

 

 「よし、今だ! 今のうちに逃げるぞ!」

 

 敵の視界を奪ったところをフォックスはライガーを誘導して一緒に逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 ラプトリアがジャミンガが蹴散らすも無数に現れるジャミンガに手こずり、あっという間にジャミンガの群れに包囲されてしまう。

 

 「こんな数、いくらラプちゃんでもきついわ!」

 

 サリーたちに襲いかかろうとしたその時、サリーのペンダントが突然オレンジ色に光り、同時にゲートもオレンジ色に発光し、ジャミンガの動きが鈍くなった。同時に闇はオレンジ色の光りになり、出現したジャミンガや周囲をブラックホールのように吸収していった。

 

 「不味いわ! このままいたら、私たちもあの中に吸収されてしまうわ! 早く逃げましょう!!」

 

 「そうだな。おい、サリー、ビリー。早く逃げるぞ!」

 

 「待て! あれを回収しなければ!!」

 

 「駄目! そんなことしたら、あなたまで……」

 

 「うるせぇ! せっかく手に入れたものを手放したまるか~!!」

 

 ビリーはサリーの手を振り払い、ゲートの方へ向かった。サリーはビリーを追いかけようとするが、その時、帝国軍の砲撃の流れ弾が周囲に直撃し、ビリーは態勢を崩し、空間の範囲に入ってしまい、そのままジャミンガと共に吸収されてしまった。

 

 「う、ウワァ~!!」

 

 「そんな……」

 

 ビリーを助けられなかったサリーは落ち込むが、運悪くサリーも範囲に入ってしまい、身体が浮上した。

 

 「あ、キャァ~!」

 

 「不味い! サリーまで飲み込まれてしまう。」

 

 バズとアイセルのラプトリアは助けにいこうとするが、吸収されるジャミンガに阻まれ、中々前に進むことが出来なかった。サリーまで飲み込まれそうになったその時、突然、ビリーのキャタルガがサリーを護衛した。そのおかげで、サリーは吸収を免れ、空間は消え、ゲートもそのまま埋もれてしまった。サリーはキャタルガを見て、

 

 「もしかして私を庇って……?」

 

 キャタルガはサリーを見ずにそのまま立ち去っていった。

 

 「ふぅ、何とか難は逃れたな。」

 

 「それより、レオとライガーを探さなきゃ!」

 

 その時、目の前にライガーとフォックスが現れ、

 

 「サリー、バズ、アイセル!」

 

 「レオ、無事だったか!」

 

 「ここは危険だ! 早くここから脱出しよう。」

 

 「そうね。帝国軍もまだこの島にいるしね。」

 

 レオたちは帝国軍に気付かれないように船に乗り、そのまま島から脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライガーとフォックスを逃がしてしまった帝国軍、

 

 「おのれ! 後少しだったというのに! セード、お前がさっさとフォックスを捕獲しなければこんなことにならなかったのだぞ!!」 

 

 「俺は俺のやり方でやっただけだ。あのままいけば、鹵獲出来ただろうが、さっき島に上陸して包囲したのに油断して照明弾に当たった貴様らの方が一番責任があるんじゃないのか?」

 

 「うっ……ぐっ……」

 

 「まあ、今回は色々と楽しめたから良しとするか。精々頑張れよ!」

 

 「おのれ~!」

 

 「ふっ、今まで俺のタイガーに傷を付けられたゾイドは一体もいなかったが、まさか、あのライガーになるとはね……もっと俺を楽しませてくれよ。」

 

 戦闘に満足したセードはファングタイガー改に乗り、海上都市を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 脱出に成功したレオたちとバーン。助けてくれたお礼にレオと硬い握手を交わした。

 

 「助かった。お前がいなかったら、あのまま帝国軍に捕まっていたよ。」

 

 「いいよ。これぐらい当然さ!」

 

 「これでお前に借りが出来てしまったが、ちゃんとこの借りは返すぜ。ライガーの少年!」

 

 「レオだよ!」

 

 「ん?」

 

 「レオ・コンラッド、それが俺の名前だよ!」

 

 「ああ、そうか。俺はバーン・ブラッド。帝国軍の元二等軍曹だが、今は違う。」

 

 「因みに俺は運び屋のバズ・カニンガム。」

 

 「あたしは共和国軍のジョー・アイセル。」

 

 「サリー・ランドです。」

 

 「バーン、俺たちと一緒に来てくれないか? 地球再生のための端末を再起動させるための旅に力が必要なんだけど……」

 

 「地球再生の旅か……確かにそいつは面白いが、俺は相棒のフォックスと共にこの世界を旅したいんでな。お前たちと同行することは出来ない。」

 

 「何処へ行くんですか?」

 

 「何処へでも…俺と相棒の行きたいとこまで行く。じゃあな!」

 

 そう言うとバーンはフォックスに乗り、フォックスは夕焼けの中に消えていった。

 

 「やっぱり、いい人ですね。」

 

 「ああ、またもう一度会いたい。」

 

 レオとサリーは走っていくフォックスを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国軍が去った後、ラプス島にラスト大佐の乗るキャノンブルが訪れ、コクピットから降り、埋もれたゲートを見付けた。ゲートを見付けたラスト大佐はプライド摂政と通信を開き、

 

 「プライド、いい土産が見付かったわ。」

 

 「土産だと? まさか、ジェノスピノの最後の化石か?」

 

 「もっといい。 それも我々の計画に重要な代物よ!」

 

 To be continued




 次回予告

 ジャミンガのトラウマにより、しばらく出撃不可能になったユウトの代わりに残されたジェノスピノの化石を回収するギレル中尉。
 ランド博士の指令により、遂に最後の化石を発見するが、レオたちはジェノスピノの復元を阻止するために共和国軍と共に化石を回収しようとするギレル中尉率いる帝国軍と交戦状態になる。しかし同時にセードのファングタイガー改も乱入してきた。

 次回「争奪戦、新ナル巨龍」

 走り抜け、ライガー!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。