ゾイドワイルドクロス アナザーZERO   作:オーガスト・ギャラガー

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 ゾイド、それは銀河の彼方の惑星に生息し、金属の肉体と動物の本能、自ら戦う意思を持つ金属生命体である。
 ゾイドが生息する惑星Ziが滅亡の危機を迎え、そこに住む人類は第二の故郷として地球を目指すが、あるトラブルにより、ゾイド因子が暴走し、それによって不慮のタイムワープを起こし、21世紀の地球に不時着し、地球にゾイドが現れ、ゾイドによる破壊と度重なる地殻変動で地球は一度滅びた。
 ペンダントの力によって突如復活した伝説のビーストライガーを相棒にした少年レオはビーストライガーを復活させた不思議な力を持つペンダントを持ち、地球の未来を左右する謎の少女サリーと共に地球再生のための冒険の旅に出掛けた。


第9話「争奪戦、新ナル巨龍」

 基地に侵入したジャミンガとの戦闘の際にあるトラウマを思い出したユウトは気絶し、心配になったメルビル少尉は自ら彼の看病をした後、ランド博士に報告するため、自身の青いスナイプテラの口内にあるコクピットに乗せ、帝都ネオゼネバスシティにあるプライド摂政の別荘に向かった。

 メルビル少尉の乗る青いスナイプテラはギレル中尉や帝国の一般仕様のスナイプテラと違い、口内のA-Zスナイパーライフルが除去され、代わりにシートが取り付けられ、2人乗りが可能な仕様になっている。これはメルビル少尉は軍人ではあるが、他の帝国軍人とは違い、好戦的な性格ではなく、出来るだけ相手を殺さないメルビル少尉の性格が反映された改造でもある。

 しかし、その代わりマシンブラストが使用できず、武装も他のスナイプテラと比べて乏しいため、要人を乗せている時に敵に狙われやすい危険性があるため、ある帝国要人の要請でその弱点を補うために両翼にA-Zインパクトキャノン砲が装備されるようになった。

 プライド摂政の別荘に着いたメルビル少尉はユウトを抱え、ランド博士のいる研究室にまで向かった。

 

 

 「おお、メルビル少尉。戻ってきたか! ん? ユウトは一体どうしたのだ?」

 

 「実は基地にジャミンガが侵入し、ジャミンガの群れに1人で戦っている途中、精神に異常が発生し、意識不明の状態になっています。

 私が基地で看病しましたので、しばらく安静にすれば大丈夫ですが…ただ…出撃は……」

 

 「そうか……優秀な彼でも欠陥はあるということか……出来れば完成間近のジェノスピノの最後のパーツの捜索に加わって欲しかったが…」

 

 「御父様、ジェノスピノのライダーは誰になるのですか?」

 

 「それは摂政閣下がお決めになることだ。私の一存では決められん。君としちゃ、ジェノスピノにはユウトに乗って欲しいのだろう?」

 

 「いえ、そんなことは……」

 

 「残念ながら、惜しくも適合率が2番目のため、乗ることは厳しいが……なに、いずれ彼にはハンターウルフ改よりもっと相応しいゾイドが現れる。

 それにジェノスピノにはユウトのような素晴らしいライダーが乗ってくれる。」

 

 その時、ランド博士に通信が入り、

 

 「私だ。そうか……直ぐにそちらに向かう。」

 

 それを聞いて首を傾げるメルビル少尉。

 

 「偵察に向かっていたバスキア少尉からジェノスピノの最後のパーツらしきものを発見したそうだ。メルビル少尉、君のスナイプテラで私と共に現地に行ってくれないか?」

 

 「はい、御父様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上の展望デッキに出たコリンズとギレル。コリンズ准将の口元には自らの手で呼吸器が添えられていた。 夕焼けに染まる町並みを見下ろし、コリンズは言う。

 

 「美しい。惑星Ziの夕日を思い出す。」

 

 そう言いながら彼はマスクを外す。呼吸器を外すことに心配したギレルが声をかける。

 

 「准将……」

 

 「平気だ。 先日、昔の夢を見た。ゾイドで空を飛び回っていた頃のな。」

 

 「“黒い荒鷲”と恐れられた歴戦の勇士。それでいて命令違反の常習犯。おかげで昇進が遅れたとか…」

 

 「お前と一緒にするな。私はただのゾイドライダーとして空を飛びたかっただけだ。 それで……進んでいるのか?ジェノスピノの修復は?」

 

 「はい。あと一つ、最後のパーツとなる化石だけがまだ発見できていません……」

 

 「ギレル中尉…」

 

 「はいっ!」

 

 「出来ればジェノスピノのライダーにお前を指名したいのが私の本音ではあるが、誰がライダーになろうともジェノスピノが戦争の抑止力になると信じている。ジェノスピノこそがここに平和をもたらす使者になると……。

 例え、世界を壊滅させたゾイドと呼ばれていても再び世界を滅ぼす力にさせるわけにはいかない。私はそのために帝国に命を捧げたのだ。

 頼んだぞ、ギレル! 帝国とこの世界の未来のために。」

 

 「ジェノスピノは必ず復活させてみせます!」

 

 「うむ……さて、私は任務に戻る。私もやらなければならないことがあるのでな。」

 

 「お気をつけてください。」

 

 コリンズ准将が退出し、一人展望デッキ兼飛行ゾイド発着場を歩くギレル。その直後、ギレルのインカムに入電が。発信主はランド博士だった。

 

 「化石の有力情報だ。私は今から現場に急行する。」

 

 「わかりました。ランド博士。現場で待ち合おう。場所は?」

 

 「イージスバレーだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 谷の発掘現場ではジェノスピノの背中の特徴的な武器ジェノソーザーが発掘されていた。

 データと照合し、眼前の巨大な化石こそジェノスピノの最後の化石だと確信するランド博士。

 

 「間違いない。正真正銘、ジェノスピノの最後のパーツだ!」

 

 「本当か!」

 

 ギレルは興奮を隠せない。

 

 「こんな遠くまで流されていたとはな。発見できなかったはずだ。これで全てのパーツが揃った。いよいよ破壊龍ジェノスピノの復活だぞ。」

 

 「感謝する、ランド博士。コリンズ准将もさぞ喜ぶだろう!」

 

 「珍しいな。君がそこまで感情を顕にするなんて」

 

 「あっ……いや……」

 

 「ま、当然か。ジェノスピノの復活は帝国の悲願だからな。この最後のパーツを無事に運ばなければ、ジェノスピノは完成しない。責任重大だぞ!」

 

 「わかっています。」

 

 「私はメルビル少尉と共に先に戻り、ジェノスピノの最後の仕上げに掛かろうと思っている。君はバスキア少尉たちと共に最後のパーツの輸送の準備をしてくれ。」

 

 「了解しました!」

 

 ランド博士はメルビル少尉の乗るスナイプテラに乗り、そのままプライド摂政の別荘に向かった。

 

 

 

 

 

 

 ギレル中尉とバスキア兄妹は最後のパーツの輸送方法を考え、陸路では10日はかかる距離と判断し、バスキア兄妹の乗るクワーガ2体と一般兵士の乗る一般仕様クワーガ2体の4期編成の輸送部隊で尉とバスキア兄妹はは空輸の手配を整え、ジェノソーザーの輸送準備に入り、ギレル中尉はその護衛に当たることになった。

 ギレル中尉は空輸の手配を整え、ジェノソーザーの輸送準備にかかる。到着は十八時間後とのこと。バスキア兄妹の乗るクワーガファイアボンバーとスカイステルスは2体のクワーガ一般仕様と共にジェノソーザーを入れたコンテナを入れ、ギレル中尉のスナイプテラについていった。

 

 

 そこを演習の終わりに基地に戻ろうとしていたツガミ大尉の乗るステゴゼーゲ改率いる共和国部隊が通り、ツガミ大尉は上空に飛行しているスナイプテラとコンテナを運搬する4期のクワーガを目撃した。

 

 「あれは帝国軍のギレル中尉の乗るスナイプテラとその配下のクワーガ隊、一体何を運んでいるのだ?」

 

 ツガミ大尉はコクピットに取り付けてある機械の電源を入れると巨大な反応があった。

 

 「この反応……まさか、ジェノスピノか!? ディアス中佐に直ぐ報告しないと!」

 

 ツガミ大尉は直ぐにディアス中佐とコンタクトを取り、

 

 「それは本当か!?」

 

 「どうやら、ジェノスピノの化石に間違いありません。直ぐにでも破壊しますか?」

 

 「いや、いくらなんでも運搬中のゾイドを攻撃すれば、共和国軍の宣戦布告とみなされ、逆に我が軍が危うい立場になるだろう。

 とにかく今は様子を見よう。だが、絶対に見失うな。」

 

 「了解しました!」

 

 通信を切ったツガミ大尉はそのまま共和国部隊を率いてスナイプテラとクワーガ隊の後を追った。

 そこにファングタイガー改が立ち寄り、

 

 「ほう……こんなところに共和国のエリートがいるとはな。丁度いい。暇潰しの相手にしようか。」

 

 その時、セードの右腕が突然オレンジ色に発光し、

 

 「ん? 俺の右腕がいつもより反応が強い。一体何処から?」

 

 同時にコンテナの中のジェノソーザーも反応し、以上なな熱を発生し、直後、クワーガのコントロールが効かなくなる。バスキア少尉はクワーガの異変に気付き、

 

 「どうした? クワーガ!」

 

 クワーガファイアボンバーは何やら苦しそうにし、コンテナの温度も更に上昇した。コンテナとクワーガの異変に気付いたギレル中尉はバスキア少尉とコンタクトを取り、

 

 「どうした? バスキア少尉!」

 

 「コンテナに異常な熱反応を探知し、その影響で私のクワーガに影響を与えたようです! 恐らく化石に何かしらの異変が起きていると思われます!」

 

 「馬鹿な! 復元前の化石にそんなはずは……! いや、待て……かつて世界の3分の1を壊滅させたジェノスピノなら有り得るということか……」

 

 コンテナの中のジェノソーザーが高熱を出し続けると同時にセードの右腕の反応も大きくなった。

 

 「あのコンテナのいる奴が俺を呼んでいるということか……一体何処のゾイドだ?」

 

 クワーガファイアボンバーを含めた4騎はコンテナの高熱に耐えられず、

 

 「駄目です! これ以上は無理です!!」

 

 「くっ! やむを得ん。一旦コンテナの接続を解除しろ! その後、基地に戻って回収部隊と共に化石を再び回収する。」

 

 「了解しました!」

 

 輸送部隊は輸送を断念し、ファイアボンバーを初めとしたクワーガ4騎はワイヤーを自切し、直下の森にコンテナは落下。 コンテナの発する熱により周りの草木は一瞬で発火。炎が周囲を包みこんだ。ギレル中尉は再び化石を回収するためにクワーガ部隊と共に急いで基地に向かっていった。 その様子を見たツガミ大尉は再びディアス中佐とコンタクトを取り、

 

 「ディアス中佐、コンテナに突然異変が起き、地上に落下しました! 化石を回収しますか?」

 

 「その必要はない。化石は発見次第、すぐに破壊してかまわん。」

 

 「よろしいのですか?」

 

 「帝国は問題の化石を除く、全ての発掘作業を完了している。万一その化石が帝国の手に渡れば、ジェノスピノが、伝説の破壊竜が復活してしまうのだ。 我々は何としてもそれを阻止しなければなならない。」

 

 「わかりました。直ぐに化石の破壊活動に入ります。全部隊、直ちに化石を捜索、見つけ次第直ちに破壊しろ!」

 

 「了解しました!」

 

 ステゴゼーゲ改率いる共和国部隊はバラバラに別れ、山火事になっている森に入って捜索した。その様子を影で見ているセードは、

 

 「何だか随分面白そうなことになっているようだな! 此所んところ、雑魚ばっかりだったから、ウォーミングアップの相手にさせてもらうか。

 おっと! その前に俺を呼んだ奴を連中より先に見つけなくてはな。この俺に相応しいゾイドか、見極めてやる。行くぞ、タイガー!」

 

 セードも化石を見つけるためにタイガー改で炎の海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから数キロ離れた場所で、レオたちは端末の捜索に入っていた。サリーはペンダントの反応を見るが、特に強い反応はなかった。

 

 「ここにも反応はないみたいですね……」

 

 「大丈夫だよ! サリー。きっと見つかるよ。」

 

 「ありがとう。レオ。」

 

 「せっかく2つ目も見付けたのに、結局端末探しの旅はまだ長くなりそうだな……」

 

 「それでも、こんな旅が出来るだけでもいいじゃない!」

 

 「どうせなら、金のなる旅になってくれればいいんだかがな。ん? あれ何だ?」

 

 バズが指差すと、目の前に森が火事になっていた。

 

 「こんなところで山火事になるなんて不自然だわ。何かあったのかしら?」

 

 「とにかく行ってみましょう! 逃げ遅れた人々もいるかもしれませんし。」

 

 「そうだな。サリーの言う通りだ。行くぞ、ライガー!」

 

 「あたしたちも行きましょう! ラプちゃん。」

 

 「お、おい! たく、しょうがねぇな。」

 

 

 

 

 

 

 

 ライガーとラプトリアが森の中に入る中、火の中、ステゴゼーゲ改率いる共和国部隊は化石を捜索していた。

 

 「化石はまだ発見出来ないのか?」

 

 「捜索は続けていますが、何しろこの火事ですから……」

 

 「何としても見つけ出すのだ! ジェノスピノを帝国軍の手で復活させるわけにはいかない。」

 

 その時、火の中、共和国部隊に砲撃するものがいた。現れたのはジェノソーザーの回収のために基地から来たキャノンブル、バズートル隊だった。

 

 「くそ、もう帝国軍の回収部隊が来たのか! ここは私が引き受ける。他の者は化石の捜索を!」

 

 「了解しました!」

 

 ステゴゼーゲ改に向かって一斉に砲撃するキャノンブル、バズートル隊、

 

 「並みの装甲だと思うな。 ステゴゼーゲ、進化 解放! エヴォブラストー!! ナイフオブフィフティーン!」

 

 帝国軍の回収部隊を1人で引き受け、ツガミ大尉はエヴォブラストしたステゴゼーゲ改の技で次々とキャノンブル、バズートル隊を撃破していった。

 ステゴゼーゲ改が帝国部隊を引き受けている間に捜索を続けているラプトリア隊に一体のラプトリアのコクピットから反応があった。

 

 「強力なZメタル反応を確認!」

 

 「ジェノスピノの化石か!? いや、強力な反応ですが、これは……ぐ、グワァ~!!」

 

 突然、一体のラプトリアが何者かの砲撃で倒れ、他のラプトリアも次々と撃破されていった。

 

 「な、何だ!? 敵は一体何処から? うっ、ウワァ~!!」

 

 最後の一体に飛び掛かり破壊して現れたのはファングタイガー改だった。

 

 「悪いな。俺を呼んでいる奴を貴様らごときに見付けられちゃ困るんでね。」

 

 更に強く発光する右腕を見たセードは、

 

 「反応が強い。どうやら、近くに来たようだな。行くぞ、タイガー!」

 

 セードは右腕の反応を頼りに化石の場所に向かった。時同じくしてステゴゼーゲ改はキャノンブル、バズートル隊に前線するが、多勢に無勢のため、次第に疲労していった。

 

 「くそ、こんなところで倒れるわけには……」

 

 キャノンブル、バズートル隊が一斉にステゴゼーゲ改に向けて砲撃しようとしたその時、ライガーが横からキャノンブル隊を蹴落とし、ラプトリアがヘキサスラッシュでバズートル隊の足を潰した。

 

 「レオ、アイセル少佐!」

 

 「大丈夫ですか? ツガミさん。」

 

 「一体何があったの?」

 

 「ジェノスピノの化石だ。」

 

 「ジェノスピノの!?」

 

 「帝国軍が最後のパーツを回収し、運んでいる途中、突然異変が起き、火事を引き起こしたのだ。」

 

 「それで、帝国軍がこんなところにいるのね。」

 

 「最後のパーツを破壊しなければ、伝説の破壊龍が帝国軍の手で復活してしまう。

 民間人に頼るのはどうかと思うが、レオ、化石を破壊してくれないか。」

 

 「え、でも、あなたは……」

 

 「私なら心配ない。これぐらいの戦闘、軍人として当たり前のことだ。」

 

 「確かに世界の3分の1を壊滅させたと言われるあのジェノスピノを復活させるわけにはいかないわね。」

 

 「わかりました! 必ず、化石を破壊します。」

 

 レオは火の中に入り、化石を捜索し、ツガミ大尉のステゴゼーゲ改はアイセルのラプトリアと共に帝国部隊と戦った。

 火の中を振り切って遂に開けた場所に来たライガー、その目の前にはジェノソーザーがあった。ジェノソーザーを見るレオ、

 

 「あれが……伝説の破壊龍、ジェノスピノの化石……」

 

 グルル……

 

 ジェノソーザーを見たライガーは怯えるような仕草をした。

 

 「ライガー、怖いのか? そうか、あの化石がどれだけ危険なのかわかるんだな。早く破壊しないと、行くぞ、ライガー!」

 

 その時、ライガーの行く手を阻むように空中からガトリングが放たれた。現れたのはギレル中尉のスナイプテラだった。

 

 「化石に手を出すな! ジェノスピノは帝国のゾイドだ!!」

 

 ライガーはスナイプテラのガトリングを避けるが、スナイプテラは執拗にライガーを追った。その時、地上からスナイプテラに何者かが砲撃してきた。現れたのは帝国部隊を全滅し、化石の場所に来たステゴゼーゲ改とラプトリアだった。

 

 「大丈夫か? レオ!」

 

 「ツガミさん、アイセル!」

 

 「スナイプテラは私に任せろ! 君は化石の破壊を。」

 

 「わかりました!」

 

 「ギレル中尉、私が相手だ!」

 

 「ツガミ大尉か、邪魔をするな!」

 

 ライガーは真っ先にジェノソーザーに走っていき、ライガーはレオに何か言いたいような素振りを見せた。

 

 「ワイルドブラストか……いくぜ、ライガー! ビーストライガー、進化 解放! エヴォブラストー!! ビーストオブクローブレイ……」

 

 その時、森から黒い影が現れ、ライガーに突進してきた。攻撃してきたのはファングタイガー改だった。

 

 「ファングタイガー改!」

 

 「ほうっ、まさか、こんなところでまた会うとはね。だが、あれには指一本触れさせんぞ。」

 

 タイガー改を見たギレル中尉は驚いたような表情で、

 

 「何!? ファングタイガー改だと! 何故、奴がこんなところに?」

 

 「よそ見をするな! ギレル中尉。お前の相手はこの私だ!」

 

 「くっ、スナイプテラ、兵器 解放! マシンブラストー!! アブソリュートショット!」

 

 ステゴゼーゲ改はボーンソーで受けきるが、無傷では済まなかった。

 

 「くっ、流石、赤き死神と言われるだけはあるな。」

 

 対峙するライガーとタイガー改、

 

 「そこをどけ!」

 

 「断る! こいつは俺を求めているんだ。俺の右腕を通じてな!」

 

 「右腕?」

 

 「お前もそうじゃないのか? 身体の何処かに金属化している部位が!」 

 

 「まさか、あいつも俺の左腕と同じ……」

 

 「そう、俺と貴様は同士というわけだ。」

 

 「俺はお前とは違う! この左腕はライガーと初めて出会った時に出来たもの、つまりこれは俺とライガーの絆の証だ!」

 

 「は、絆だと? そんなもので最強になれるとでも思っているのか!」

 

 「お前は一体誰なんだ?」

 

 「そういや、自己紹介がまだだったな。俺はセード、最強のゾイドを手に入れ、最強の存在になる男だ! そういう貴様は?」

 

 「俺はレオ、レオ・コンラッド。」

 

 「ふん、只の民間人といったところか。どういう経緯でその腕とライガーを手に入れたか知らねぇが、こいつは絶対に渡すわけにはいかない。

 何せ、この化石はかつて世界を破壊尽くした伝説の破壊龍ジェノスピノ、その破壊龍が俺を求めているということは俺こそが最強のライダーだと認めたということ。

 つまり、こいつに乗れば、更なる破壊を楽しめるというわけだ。そうなれば、このタイガーに用はない。」

 

 「お前はタイガーに思い入れは無いの? あの時、ウルフを傷つけて怒ったユウトのように……」

 

 「ユウトだと……? 減らず口はこの俺を倒してから言え~!! ファングタイガー、兵器 解放! マシンブラストー!!」

 

 「行くぞ、ライガー! ビーストオブクローブレイク!!」

 

 「デスファング!!」

 

 攻撃がぶつかる瞬間、ライガーはギリギリに避け、タイガーの足元に攻撃した。

 

 「ふん、前に戦ったこともあってか、少しはやるようになったな。 だが、これはどうだ!!」

 

 その時、タイガー改は1回転しながら、ライガーに突っ込んでいった。

 

 「あれを食らったら、いくらライガーでも! ん?」

 

 その時、レオは背後にジェノソーザーがあることに気付く。

 

 「ライガー、行けるか?」

 

 レオの問いにライガーはゆっくり頷き、タイガー改はライガーに当たりそうになったその時、ライガーは咄嗟に避け、タイガー改は自身の攻撃をジェノソーザーに誤爆してしまった。

 

 キィィィ~ン!!

 

 

 タイガー改のツインドファングがジェノソーザーに直撃するも、ジェノソーザーはその攻撃を食らっても無傷だった。同時にジェノソーザーとタイガー改の全身、セードの右腕が発光し、タイガー改はまるでジェノソーザーから力を与えられたかのように立ち上がり、強烈な衝撃波を放った。

 その衝撃波でライガーとステゴゼーゲ改、ラプトリアは吹っ飛び、スナイプテラもその衝撃波で起動をずらしてしまう。

 

 「ハハハハハ! こいつはいい! ジェノスピノがオレとタイガーに力を与えたというのか!! これで貴様を

容易に破壊出来る! デスファング!!」

 

 タイガー改は猛スピードでライガーに再び突っ込む。ライガーはスレスレで避けるが、タイガー改のツインドファングが地面に直撃したその瞬間、巨大なクレーターができ、ライガーはその衝撃波で再び飛ばされてしまう。

 

 「凄い、凄いぞ! ハハハハハ!!」

 

 タイガー改は追い討ちをかけるかのように飛ばされたライガーを掴み、そのままサッカーボールを蹴るかのようにライガーを周囲に蹴り飛ばした。

 

 「ぐっ、グワァ!!」

 

 「レオ!」

 

 「ハハハハハ! 無様だな! もう貴様との遊びは終わりだ。止めを刺してやる。」

 

 しかし、その時、タイガー改の全身に電流が迸り、タイガー改が苦しみだした。

 

 「どうした? 何をしている! 早く奴に止めを刺すのだ!」

 

 しかし、タイガー改は動こうにも動くこともままならないかのような状態になっていた。

 

 「まさか、ジェノスピノのパワーに耐えられず、苦しんでいるというのか!?

 この役立たずが! 貴様、それでも帝国軍最強のタイガーか!!」

 

 

 セードは八つ当たりするようにコクピットの中のモニターを右腕で破壊した。

 

 グオォ~!!

 

 苦しみながらもライガーに突っ込むタイガー改、

 

 「よし、行くぞ、ライガー!!」

 

 ガオォ~!! 

 

 「デスファング!!」

 

 「ビーストオブクローブレイク!!」

 

 互いのアーマーに傷が付くもジェノスピノのパワーに耐えられず、タイガー改が先に倒れた。

 

 「このポンコツが!」 

 

 しかし、ライガーもダメージは大きく、同様に倒れてしまう。

 

 「ライガー……」

 

 その時、バスキア少尉乗るクワーガファイアボンバーを初めとするクワーガ4騎が新たなコンテナを持ってきた。

 

 「ギレル中尉! ランド博士から新たなコンテナを!」

 

 「よし、直ちに回収しろ!」

 

 クワーガ4騎が運ぶコンテナが地面に降り、ジェノソーザーを中に入れ、そのまま運んでいった。

 

 「ランド博士が支給した特殊合金製が上手くいったようだな。化石は回収した! 全部隊撤退だ!!」

 

 タイガー改との死闘で地面に倒れ伏すライガーを尻目に、特殊合金のコンテナで化石を掬い上げた帝国軍回収部隊は戦場を後にし、ジェノスピノ本体のあるプライド摂政の別荘を一路目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プライド摂政の別荘の中の研究所で、回収された最後のパーツである背中のジェノソーザーが復元されたジェノスピノに取り付けられ、遂にジェノスピノは完成した。

 

 「ギレル中尉、感謝する。君のおかげで伝説の破壊龍ジェノスピノは遂に完成した。」

 

 感謝の意を唱え、ギレル中尉と握手するランド博士。

 

 「ギレル中尉。」

 

 その時、ギレル中尉の名を呼ぶものが現れた。その人物はシーガル大佐だった。

 

 「シーガル大佐…」

 

 「非常に残念な知らせだが、実は先程コリンズ准将が汚職の疑いで左遷された。」

 

 「コリンズ准将が!? そんなことがあるわけがない! 出任せを言うな!!」

 

 「出任せではない。ラスト大佐から報告があった。実に貪欲な奴だ……まさか、ジェノスピノを奪い取ろうとするとは……」

 

 「そんな馬鹿な!」

 

 「そして、左遷されたコリンズ准将に代わり、軍上層部からの命令で私が准将となり、このプロジェクトの任を任された。」

 

 「貴様ごときが准将だと!? 一体何をした!!」

 

 「ギレル中尉、今回の暴言は特別に許してやる。だが、君の席はもうない。ジェノスピノのライダーも既に決まっているのだからな。」

 

 「一体誰が!?」

 

 「俺だよ!」

 

 そこに現れたのはセードだった。

 

 「セード……貴様! ジェノスピノは戦争の抑止力となるための存在だ。いくら適合率が最も高くとも、貴様のような好戦的なバーサーカーが乗るべきゾイドではない!!」

 

 「はっ、大体共和国がいるから、この戦争が続いているんじゃないのか? なら戦争を手っ取り早く終わらせることは共和国を叩き潰せばいいということだ。」

 

 「そんな乱暴な理屈が通用するとでも……」

 

 「でも、筋は通っているだろ?」

 

 「うっ…ぐっ……」

 

 「だから、お前は甘いんだよ。ま、お前がライダーに期待していたユウトもそうだ。あいつも爪が甘い。

 それにもうあのタイガーには用はない。何せ、ジェノスピノはこの俺を選んだのだからな! 他に言うことは?」

 

 ギレル中尉は反論出来ずにセードを睨みながら黙っていた。

 

 「では……」

 

 

 

 

 

 

 セードはコクピットに乗り、ハンドルを握った瞬間、セードの右腕がオレンジ色になって勢いよく発光し、同時にジェノスピノのバイザーの目も怪しく光らせ、まるで目的の人物が自分に乗れたことを喜ぶかのように勢いよく咆哮を上げた。

 

 ギュオォ~!!

 

 「そうか……お前は100年以上眠り続けながらずっと俺を待っていたのか……。あの時、俺にこの腕を与えた時からずっと……そうだ。俺もずっとお前を待っていた!

 お前のおかげで今の俺がいる。最早タイガー等必要ない…お前が俺のゾイドだ!!」

 

 ギュオォォォ~!!

 

 セードの言葉に呼応するかのようにジェノスピノは再び天に向かって咆哮を上げ、その咆哮はプライド摂政の別荘中にこだました。

 

 To be continued




 次回予告

 遂に目覚めた灼熱の破壊龍! ジェノスピノに乗ったセードは更なる破壊を楽しむためにかつて世界の3分の1を壊滅させたその力で共和国部隊を次々と撃破してしまう。
 レオとライガーはジェノスピノの侵攻を食い止めるべく、ジェノスピノに立ち向かうが、伝説のゾイドと呼ばれたその力は凄まじく、ライガーはかつてない苦戦を強いられてしまう。

 次回「激進!! 伝説の破壊龍」

 走り抜け、ライガー!!

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