ドラえもん のび太のギレンの野望(偽) 更新停止    作:宇宙大戦

146 / 165
UC0080年 3月18日 毒ガス

宇宙世紀(UC)0080年 3月18日 地球 マダガスカル島

 

 南アフリカを完全に制圧した地球連邦軍アフリカ攻略軍別動隊は次なる目標をマダガスカル島に定める。

 

 そして、ジオンからの援軍として派遣されたホワイトベース隊もまた先日の南アフリカ攻略作戦の際に戦死してしまったエンマ・ライヒ中尉の死をどうにか乗り越え、この作戦に参加していた。

 

 

「そこ!」

 

 

 そう叫びながら、アムロ・レイ少尉はガンダム改B型の手に握られたビームライフルをトーチカに向けて発射する。

 

 すると、ビームの高熱によって中に居る人間は蒸発し、更に弾薬庫に誘爆したのか、そのトーチカは大爆発を引き起こして跡形もなく吹っ飛ぶ。

 

 だが、それでアムロは油断せず、こちらに発砲してくる2台の装甲車の姿を見定めると、そちらにビームライフルの銃口を向けて発砲し、これらを撃破する。

 

 

(ふぅ。これでだいたいの敵は掃討したかな?)

 

 

 アムロはそう思いながら辺りを見回す。

 

 戦況は上陸側である連邦軍が有利だった。

 

 当たり前だろう。

 

 このマダガスカル島にはアフリカ共和国のハイザックが1機たりとも配備されておらず、一方で上陸した連邦軍は最新のゲルググ改こそ無かったものの、ゲルググを始めとしたドム、ザクなどのMSが勢揃いしていたのだから。

 

 

(これでマダガスカル島を制圧すれば、一旦宇宙に戻れる。・・・エンマさんの遺体も持っていきたかったな)

 

 

 ホワイトベース隊はマダガスカル攻略作戦が終わった後、一時宇宙に帰投するようにジオン軍上層部から命令が出されている。

 

 だが、先日死んだエンマは宇宙を故郷としたスペースノイドであり、遺体が腐るということから地球の土へと埋めたが、出来る事ならば遺体だけでも宇宙に連れ帰ってあげたかったというのがアムロの本音だった。

 

 

(せめてエンマさんの死を無駄にしないように、ホワイトベース隊に居たみんなだけでも生かさないと)

 

 

 アムロがそんな決意を固めた時、当のホワイトベースから通信が入ってくる。

 

 

『ア──ロ。聞こ──るか。アム──」

 

 

 ミノフスキー粒子の効果によって阻害されつつも無線から聞こえてきたホワイトベースの艦長──ブライト・ノア中尉の声にアムロは反応する。

 

 

「どうしましたか!?ブライトさん」

 

 

『作戦は──だ』

 

 

「え?」

 

 

『もう──言う。さくせ──中止だ』

 

 

 途切れ途切れになっていたが、一応、“作戦の中止”という言葉だけは理解できた。

 

 しかし──

 

 

「ば、馬鹿な!こっちは優勢なんですよ!!」

 

 

 そう、こちらが優勢なのだ。

 

 そんな状況でこちらが作戦を中止するなど訳が分からない。

 

 思わず聞き間違えかと、無線機に限界まで耳を近づけるが、やはり言っている内容は変わらなかった。

 

 

(いったい、何がどうしたんだ?)

 

 

 そう思うアムロだったが、この時、彼は知らなかった。

 

 後方である南アフリカ一帯でとんでもないことが起きていたということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇旧エチオピア アディスアベベ

 

 別動隊がマダガスカル島攻略を進めていた頃、ジャミトフ・ハイマン大佐が率いる軍勢は、旧モロッコに続いて旧エリトリア、旧エチオピア、旧ケニアを制圧し終え、現在は旧スーダンへの侵攻の為の準備を進めており、その打ち合わせを幕僚達と共に行っていたジャミトフは副官からとんでもない報告を聞くことになった。

 

 

「なんだと!?」

 

 

「それは本当なのか!?」

 

 

 幕僚達はざわめいていた。

 

 当然だろう。

 

 その副官が持ってきた報告の内容が“南アフリカに毒ガスが広範囲に渡って散布された”というものだったのだから。

 

 しかし、そんな中でも冷静であったのはやはり彼らの長であるジャミトフだった。

 

 

「落ち着け。それで、南アフリカに居た別動隊の被害はどれ程のものなのだ?」

 

 

「は、はい。現地からの報告では全体の3割が死傷したと」

 

 

「3割?」

 

 

 ジャミトフはその損害の大きさにいぶかしんだ。

 

 上陸当初なら兎も角、別動隊の占領範囲は南アフリカ一帯にまで広がっており、これだけ広いとどうやっても兵力もそれ相応に散らばる。

 

 加えて、連邦軍の兵士は皆、ノーマルスーツを常備しており、毒ガスが撒かれた場合、すぐにそれを着込んで防ぐことが出来る。

 

 つまり、この状態で3割もの損害を出すには相当な広範囲に(それも短期間で)毒ガスを散布しなければならないのだ。

 

 

「何故、それほどの被害が出たのだ?」

 

 

「それは先程も言ったように広範囲に毒ガスが散布されたからです」

 

 

「その具体的な範囲は?」

 

 

「それは・・・その地図をお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

 

「構わん」

 

 

「失礼します」

 

 

 副官はそう言うと、ペンを取り出して机の上にあるアフリカ大陸の地図の南の部分を丸で囲っていく。

 

 

「まだ詳細は分かっていませんが、現地から入ってきた情報を分析班に分析させたところ、毒ガスが散布されたのはこの範囲となります」

 

 

 そう言って副官は丸をした部分を指し示す。

 

 

「こ、これは・・・」

 

 

「・・・」

 

 

 幕僚達はそれを見て絶句した。

 

 何故なら、その丸で囲われた範囲には別動隊が占領した南アフリカ一帯(・・・・・・・)のほぼ全て(・・・・・)がすっぽりと収まっていたからだ。

 

 

「これだけの範囲を覆う毒ガスをどうやって・・・」

 

 

「いや、それ以前に本当にこの情報は確かなのか?」

 

 

「そうだ!前線では情報が錯綜して誤った分析が成されることもある!!」

 

 

「しかし、これだけ混乱しているということは毒ガス散布はそれなりの範囲で起きたことなのでしょう。被害を過小に見積もるのは危険では?」

 

 

 議論する幕僚達。

 

 そんな彼らを見ながら、ジャミトフは副官の情報を自分なりに推察する。

 

 

(事実かどうかは定かではないが、事実であっても可笑しくないという事だけは確かだろうな)

 

 

 なにしろ、相手は大西洋大津波を引き起こしてアメリカ東海岸やヨーロッパ西海岸はおろか、自分の領域であるアフリカ北西部の海岸を洗い流し、更には連邦から独立した際にジャブローに核兵器を撃ち込み、挙げ句の果てには自国領内で核兵器を使用するような相手なのだ。

 

 理性など考えるだけ無駄であり、今回の事が例え事実であったとしてもなんの不思議でもない。

 

 

(まったく、ジーンめ。なんてことをしてくれたんだ)

 

 

 ジーン大将は何度も言うようにジャミトフの所属する保守派の首魁的な存在だった。

 

 そんな彼がこうも思いっきり連邦に仇を成すような事をすれば、その分だけ保守派の面々は発言力が下がるのだ。

 

 まあ、とは言っても改革派の方もブレックスという裏切り者を出している以上、それほど発言力は上昇しないだろうが、それでもジーンとブレックスでは連邦に与えた被害が違いすぎる。

 

 加えて、ジャミトフ個人としてもジーンの存在は許せなくなっていた。

 

 当たり前だ。

 

 なにしろ、ジャミトフは地球至上主義者であり、地球を汚す存在は、スペースノイド・アースノイドの区別なく彼にとっては駆逐するべき対象なのだから。

 

 

(しかし、これで連邦政府の奴等はどう出る?腑抜けた対応などしなければ良いが・・・)

 

 

 ジャミトフが気にしているのは今回出た民間人の被害だ。

 

 別に地球至上主義者である彼にとって地球を汚す人類が何人死のうと構わない(むしろ、好都合)のだが、連邦政府にとってはそうではなく、仮にこの毒ガス攻撃で数百万人レベルでの死者が出ていた場合、政府が何かを言ってくる可能性があった。

 

 それが戦いを早期終結させろという催促ならまだ良いが、アフリカ共和国と講和し、あまつさえ独立を認めるなどと言い出したりすれば不味いことになる。

 

 ・・・それも致命的なまでに。

 

 

(馬鹿な政治家連中はジオンのジャブロー攻略戦の時に死んだみたいだが、それ故に今の臨時政府がどう出るか私にも予想がつかんからな。まあ、ひとまずは様子見といくか)

 

 

 そう考え、ジャミトフは未だ議論を続ける幕僚達に向かってこう宣言する。

 

 

「諸君。我々は一旦ここで進撃を停止する」

 

 

 いきなりのその発言に幕僚達は再びどよめく。

 

 

「ジャミトフ閣下。それはどういう意味ですか?」

 

 

「言葉通りだ。我々は進撃を現時点の占領地域で停止するのだ。当然、旧スーダン攻略も延期とする」

 

 

「しかし、それでは敵に時間を与えてしまう事になります。それにジャミトフ閣下の副官が持ってきた情報が確かならば、毒ガスはもう使いきってしまっている可能性もあります。もしそうなら、逆に進撃するチャンスでは?」

 

 

 若干希望的観測が混じった幕僚の意見だが、この時に限ってはその推測は合っていた。

 

 実のところ、アフリカ共和国は今回の南アフリカでの使用によって毒ガスを完全に使いきってしまっていたのだ。

 

 なので、幕僚の男の言う進撃のチャンスという意見は決して間違いではない。

 

 だが、そんなことを知らないジャミトフがそんな希望的観測に基づいた意見を採用する筈もなかった。

 

 

「ダメだ。使いきっているという保証は何処にもない。むしろ、毒ガスの製造施設を速やかに見つけて爆撃なり、破壊なりする方が現実的だ」

 

 

 無論、簡単ではない。

 

 南アフリカ一帯を覆う量の毒ガスとなると、製造施設も広範囲に渡って存在すると予想されるのだから。

 

 

「・・・ですが、兵士達にノーマルスーツを着せれば・・・」

 

 

「我が軍のみに関して言うならば確かにそうだな。が、ここらに住む住民はどうだ?今から全員にノーマルスーツを行き渡らせられるのか?」

 

 

「そ、それは・・・」

 

 

 無理だ。

 

 なにしろ、この軍団の占領下だけでも1000万人以上の住民が居るが、この軍団の総兵力は120万人程。

 

 予備のノーマルスーツを足しても全然足りない。

 

 

「そういうことだ。情報部の人員は総出で敵の毒ガス製造施設を見つけろ。早急に、だ」

 

 

 こうして、ジャミトフの軍団は進撃を一旦ストップさせる事となった。

 

 この判断が凶と出るのか、それとも吉と出るかは後の歴史にしか分からない。




ちなみに南アフリカというのは南アフリカ共和国の事ではありません。文字通りの意味でアフリカ南部という意味です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。