Big Gr∞ve-ビッグ・グルーヴ- 作:Manami☆彡
<KAMITANI SIDE>
「あったあったサンドイッチ〜。」
ラスト残っていた、お気に入りのサンドイッチを購入。
藍川は、僕のお金にも関わらず大量に買いやがる。
「買った分、いつか返してくれよな…。」
悲音「分かってるよ。高校生になったら稼ぐから、それまで見逃してくれ。」
思わず大きな溜息が出る。
「いいや、さっさと食べるぞ。」
自分の教室に行こうとしたその時。
終「兄貴!大丈夫!?」
妹の終が駆け寄ってくる。さっきの飛び降りでさぞかしパニックになったことだろう。
「ごめん終。でも僕はこの通り怪我1つも──。」
終「あの花壇だよ!兄貴が飛び降りた場所にあった花壇!」
僕のことなど、そっちのけである。あの時骨折していたら流石に気にしてもらいたかった。
そういえば花壇、やばい、忘れてた…!
終「その顔、やっぱりやらかしたんでしょ!
毎日、手入れしてる人いるんだよ、放課後に。」
そんな奴いたか?でも見たのならいるということ。
放課後…ってことは今か。待ち伏せして全力で謝ろう。
だが、その前に。
「終、お前は先に帰っててくれ。巻き込んで困らせたくないからさ。」
僕がやったことは妹には関係ない。勝手に飛び降りたのは僕なのだから。
終「うーん…うん。じゃあお先に。
でも一応気をつけてね。べ…弁償とか…。」
容赦ない一言に一瞬怯む僕。確かにあの花壇は綺麗に手入れされていた。怒られても当然だ。
──覚悟はもうできている。
「大丈夫だよ。弁償とか言われても、僕だけで解決するから、な?」
いいからいいから、と僕は無理にでも帰らす。
終「…分かった。それじゃ、また家でね。」
お互い手を振って見送る。
悲音「話は済んだか?」
今まで黙ってその場に立っていた藍川。やっと口を開く。
「藍川ごめん!お前、先に食べてて。僕ちょっと急用を思い出して。」
僕だけの問題。だから藍川もこの件は…。
悲音「あの花壇だろ?俺も一緒に謝る。」
どうして?お前まで謝る理由がどこにある?
「そうだけど、でも…。」
悲音「元々は俺のせいでお前があんなことしたんだし。つーか、今日は散々迷惑かけたと思ってる。頼む、狼谷。俺もお前の役に立ちたい。」
「やれやれ…。」
藍川の急な責任感には毎回ビビってしまう。
この先もこいつに振り回される、そう感じた。
<AIKAWA SIDE>
狼谷から借りた金で、パンや弁当など買いまくる。
これだけあれば何日かは持つだろう。
狼谷の視線が痛い。
高校に進学すれば働けるので、その時に全部返そう。
「よいしょ…っと。」
大きな袋を両手に持ち、先を行く狼谷を追う。
すると、向こうから誰かが走ってきた。
終「おーい!」
狼谷の、双子の妹、狼谷 終だ。
双子なのでもちろん同級生、クラスは隣の1-8だ。
ちなみに俺たちは1-9。
高等部より狭いとはいえ、中等部は全部で10クラスある。
狼谷にとって終は、命より大事な存在だという。
兄らしさは感じられるものの、多少違和感はある。
それより何やら深刻そうだが…、どうしたんだ狼谷。
花壇がどうとか言っているけど、もしかしてさっきのアレか?
思った通り、管理人がいたんだな。
なんて立ち聞きしていると、終は帰っていった。
狼谷の表情は、不安げなまま変わらない。
先に帰らせた理由はどうせ、"巻き込みたくないから"であろう。狼谷は何でもかんでも1人で抱え込みすぎだ。たまには俺に押し付けてもいいんだぜ?
まず、今回の件は俺が元凶だということ。
校門を強行突破しようとしてサイレン鳴らしまくったり、狼谷に気を使わせたり…、しかもついさっきめちゃくちゃ金借りたし。
──さあ、懺悔の時間だ藍川 悲音。
狼谷は俺にも誤魔化そうとする。だが俺も押し通す。
始「…はぁ。」
いつもの、呆れたという顔。
だが、うっすら安堵しているようにも見えた。