ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺は、最弱の身体強化しか使えないけど何とかなると信じてスローライフを送りたい。無双?最強?そんなものに興味はないですよ?〜   作:くろひつじ

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98話「とりあえずは解体から行ってみようか」

 

 王都から町までは馬車で三日間の旅になる。

 魔導列車は主要都市間しか走っていないので、辺境に行くときは普通の馬車を使うしかない。

 とは言え歩きよりは快適だし、みんなと馬車に乗るのは初めてだから結構楽しかったりもするんだけど。

 ガタゴト揺れる広い車内は乗合馬車な事もあって広めで、装飾は無いけどそれが逆に落ち着く作りだ。

 やっぱり俺は煌びやかな街よりも、こういった素朴な物に囲まれた生活の方が性に合っている。

『始まりの町』に着くまでの三日間、のんびりと馬車旅を満喫しよう。

 

 などと、呑気な思ったのがいけなかったんだろう。

 

「うわぁっ!?」

 

 御者の人がいきなり悲鳴を上げた。

 

「どうしました?」

「この先にオークの群れがいる! しかもデカい奴が一匹いる! あれはたぶんオークロードだ!」

 

 ……うん、オークロードかぁ。

 オークは二足歩行の豚みたいな魔物で、武装してる事もあって冒険者でも油断は出来ない相手だ。

 そいつが群れに居ると討伐難易度が途端に跳ね上がる程に厄介な相手である。

 特に上位種であるオークロードに率いられたオークの群れは『軍団(レギオン)』と呼ばれ、その危険度は王立騎士団が総出で立ち向かう必要がある程だ。

 当たり前のことだが、冒険者のパーティなんかが太刀打ちできる相手では無い。

 

 普通ならな。

 

「あー。御者さん、馬車を止めて待っててもらえます?」

「何を言ってるんだ! ここは私が時間を稼ぐから君たちは逃げてくれ!」

「いや、追いつかれますって。それよりも一つ、頼みがあります」

「頼み? こんな時に何だって言うんだい?」

「ありったけの調理器具を用意しておいてください」

 

 オークに関する情報として一つ重要な物がある。

 二足歩行の豚。魔力を纏っている。数が多くて一匹当たりの大きさもかなりのものだ。

 それはつまり。

 

「よっしゃ。今日は食べ放題だぞー」

 

 俺の頼れる仲間たちは元気よく手を突き上げた。

 

 

 さて。オークロードの特徴としてまず挙げられるのが、魔物の癖に魔法を使うという事だ。

 こいつは単体でも強いのに強化魔法を使って群れ全体を一段階強化できる。

 通常のオークでも並の冒険者と同等の戦力を持つオークが群れを成し、更には強化されている訳だ。

 だからこそただの群れではなく『軍団』と呼ばれており、軍団が現れた時は騎士団や複数の一流冒険者パーティが共同で討伐を行う流れとなっている。

 なっているのだ。普通ならな。

 

「んじゃ、後ろのデカブツは俺達な。他の奴らは任せた」

「張り切っていきましょう!」

「頑張ろうね!」

 

 まるで小枝を振るように大剣を振り回すアルと、小型の盾を打ち鳴らすクレア。

 うーん。アルの方は最近は可愛いと感じることが増えたけど、こういう所を見ると相変わらずだなと思う。

 クレアは張り切っているように見えてその実かなり冷静だ。互いの戦力差を見極めながら自身の役割をしっかりと理解している。

 

「……たくさん頑張る。だから後で褒めて」

「それは良いですね。では私もお願いします」

「あ、ボクもボクも!」

「ずるいです! 私だって頑張りますからね!」

「では皆さんに強化魔法を施しておきますね」

 

 わいわい騒ぐみんなの中から一歩下がり、妙に冷静なルミィが両手をかざした。

 

「大いなる女神よ、我が祈りを聞き届けたまえ。願わくば彼の者達に神の加護を。極大身体強化(エクストラブースト)! 極大防御障壁付与(エクストラシールド)!」」

 

 詠唱が終わると同時、白銀の魔力光が俺達を包み込む。

 おぉ、相変わらず凄いなこれ。体がメチャクチャ軽いわ。

 ちなみに魔法障壁の方は魔獣の王であるドラゴンの一撃すら無効化できる代物だ。

 正直こんなところで使うような魔法でも無い気はするけど、俺達のことを想って最大級の強化魔法を付与してくれたんだろう。

 

「これで私の功績は確定したよね? ライ、後でたくさん褒めてね? ね?」

 

 あぁ、そういう事か。納得したわ。

 清楚可憐な微笑みを浮かべつつ、全身から「褒めてオーラ」を出しているルミィに苦笑いを返し、さてと敵に向き直る。

 

 強化されたオークが二十七匹。その後ろにひと際でかいオークロードが一匹。

 下手したら騎士団でも後れを取るような数だ。

 しかしまぁ、相手が悪かったな。

 

「では最初は私から……透き通り、儚き、汚れなき、麗しきかな氷結の精霊。願わくば、我にその加護を与えたまえ!」

 

 詠唱に応えて現れる、百を超える氷の刃の数々。一つ一つが短剣サイズだ。

 陽光を反射しながら滞空していた凶器は、ジュレが指さすと同時にオークへと殺到する。

 その冷たい嵐は奴らの分厚い脂肪などお構いなしに切り刻み、見る間に数を減らしていく。

 

 甲高い悲鳴。上がる血しぶき。

 そんな戦場を、一筋の紫電が通り抜けた。

 敵の合間を縫い的確に急所を切り裂くサウレは、止まる事無く次々と敵を葬っていく。

 

「他愛もないですね」

「……一応、まだ残っている。油断は禁物」

「そうですね。では第二波、いきますよ」

「……合わせる」

 

 電光石火の早業で流れる様に敵を撃墜していく二人にもはや呆れを感じていると、クレアとアルが揃ってオークロードに突っ込んでいった。

 

「さて! ここからは!」

「私たちの見せ場ですよ!」

 

 オークロードの巨大な棍棒の一振り。それをクレアが盾で器用に逸らし、その隙を突いてアルが前進する。

 次いで繰り出された横薙ぎの攻撃すら軌道を逸らす神業を見せると、クレアはニヤリと強気な笑みを浮かべた。

 敵の二手を封じらた。それは即ち、その分の距離を詰める時間が生まれたという事。

 

「アル! やっちゃえ!」

「あははは! その首、もらいましたぁ!」

 

 オークロードの得物を超える大きさを誇る両手剣。その一撃は、残像を残して空間を裂いた。

 災害クラスの魔物の首を一撃で切り落とし、アルが無邪気に笑う。

 

「ライさん! ちゃんとぶち殺しましたよ!」

「おいおい。油断するんじゃねぇよ……っと!」

 

 はじゃぐアルの後ろから迫ったオークの攻撃をクレアが受け止め、同時に俺が放った粘着玉が動きを封じる。

 周りが見えなくなる癖は早い内にどうにかしなきゃなんないなー。

 

「ありがとうございます! えーい!」

 

 身動き一つとれないオークを嬉しそうに両断し、次の獲物を目掛けてアルが走り出そうとした時。

 

「あら。やはり加勢は必要ありませんでしたね」

「……ライ、終わった。怪我はない?」

 

 戦闘開始から一分弱。

 その僅かな時間で軍団を壊滅させた少女たちが笑いながら戻ってくる。

 うっわぁ。分かってはいたけど、ここまで戦闘力高いのかこいつら。

 マジで魔王でも倒せるんじゃないか?

 

「いや、怪我も何も。俺は何もしてないんだけど」

「ライさんはちゃんと私のフォローをしてくれましたよ!」

「いや、いらなかったろアレ」

 

 実際クレアが手際よく対処してたし。

 うーん。まぁ楽でいいけど、なんて言うか。

 過剰戦力、だよなぁ。

 

「それよりほら、お肉がたくさんですよ!」

「そうだな。さっさと解体して戻ろうか。アルとルミィは御者さんにもう大丈夫だった伝えて来てくれ」

「わっかりました!」

「すぐに戻ってくるからねセイ。待っててね。本当にすぐ戻ってくるからね?」

「あぁ、頼んだ」

 

 対照的な態度の二人を見送り、ジュレに魔法で水を出してもらいながら手早く解体を行う。

 冒険者にとって解体なんてものは慣れ切った行為だ。

 まぁ、ジュレを除いて、だけど。彼女にはこれからいろいろなことを教える必要がありそうだ。

 戦闘以外にも出来ることは増やして行った方が良いに決まってるし。

 とりあえずは解体から行ってみようか。

 

 

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