ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺は、最弱の身体強化しか使えないけど何とかなると信じてスローライフを送りたい。無双?最強?そんなものに興味はないですよ?〜   作:くろひつじ

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30話「やっぱりサウレには笑顔が良く似合うと思う」

 

 ユークリア王国最大の港町、アスーラ。

 潮の香りと賑やかな喧騒に包まれた町。

 道のそこかしこに細長い特徴的な木が植えられていて、大通りどころは路地裏まで露店がずらりと並んでいる。

 

 中でも目を引くのが多種に渡る人種だ。

 人間族、エルフ、獣の特徴を持つ様々な亜人。

 普段滅多にお目にかかれないドワーフやマーメイド、有翼種のハーピー。

 俺の二倍くらいデカい女の子もいれば、サウレより小さなおっさんも居る。

 

 レンガ造りの建物と相まって、異国情緒に溢れた町だ。

 

 ぼんやり眺めて居るだけでも中々に面白い。

 大道芸人がナイフでジャグリングしてるのは見ててヒヤヒヤするし、吟遊詩人の弾き語りは耳触りが良い。

 ずんぐりむっくりしたドワーフが昼間っから酒を飲んでる横で、痩身で耳が長いエルフが呆れた顔で小言を言っている。

 猫系亜人の子どもが店の売り子として客に声をかけ、それに釣られて品定めをする人族のおばちゃん。

 

 正に港町。活気に溢れていて楽しくなる。

 

「……ライ。凄いね」

「あぁ、凄いよな。何度見ても慣れねぇわ」

「……王都より道が混んでる」

「人口密度高いからなー。ほら、離れるなよ?」

「……ずっとライと一緒にいる」

 

 言いながら、そっと擦り寄って来るサウレ。

 女性恐怖症なのに、不思議とそこまで嫌悪感が出てこない。

 慣れてきたんだろうな。直接抱き付かれたりするとアウトだけど、近くにいる分には違和感も無くなってきた。

 たまにスキンシップが過剰なのは勘弁して貰いたいけど、かなり信頼はしてるからなー。

 

「さてと。とりあえず露店巡りでもするか」

「……何か買いたいものがあるの?」

「いや、冷やかしだな」

「……そう。私はライがいれば何でもいいよ」

 

 にこりと、愛らしく微笑む。うぅむ……やっぱり見た目は美少女なんだよなー。

 褐色の肌に白い髪、赤い瞳。丸まった小さなツノ。

 背が低い上にブカブカの外套を纏っているせいで洒落っ気は無いけど、それを踏まえてもかなり可愛いと思う。

 はぁ。これで中身なマトモならなぁ。

 

 何せ種族がサキュバスだ。外套の下は局部だけ隠れる程度の布面積しかないし、そっち方面はかなり積極的なのが困る。

 だって、見た目幼女だもん。実年齢は俺より歳上だけど。

 今だって手を繋いで歩いてるだけで結構見られてるしな。

 ……まぁ、嫌ではないんだけどな。

 

「お、ありゃ魔導都市製のオモチャか。珍しいな」

「……人形?」

「あぁ、見たことないか?」

「……はじめて見る。これは何?」

「ふむ。あぁ、すまん。ちょっと借りていいか?」

 

 売り子に断って一つ借りる。見た目はただの人形。そして操作用の球体の魔道具

 こいつに魔力を通してやると、好きな様に動かせる訳だ。

 

 立ち上がり、貴族風に一礼する人形。それを見てサウレは目をぱちくりさせた。

 身振り手振りに合わせたステップを合わせ、踊り出す人形。

 それを見ていた吟遊詩人がこちらに合わせて歌い出す。

 売り子にもう一つ借りて、二体の動きを合わせてワルツを踊らせる。

 

 まるで夜会のように優雅に踊る人形達。

 吟遊詩人の詩に合わせて、右に左にくるくると回る。

 その姿に、サウレの目は釘付けだ。

 

 歌声が徐々に盛り上がっていき、クライマックス。

 二体のダンスも激しさを増し、ラスト。

 ビシッとポーズを決めたあと、人形はくしゃりと崩れ落ちた。

 売り子に礼を告げて人形を返し、吟遊詩人にチップを投げる。

 

 大通りが小さく沸いた。

 拍手を貰い、周りに手を振る。

 人形の露店に人が群がってきたので、俺たちは先程の吟遊詩人の元に避難した。

 

 再び歌い出した穏やかな英雄譚を聴きながら壁に背を預けると、サウレがじっと俺を見上げていた。

 

「おぅ、楽しめたか?」

「……うん。凄かった。ライは器用」

「小手先の技術なら任せとけ。それだけが取り柄だしなー」

 

 魔法は上手く使えないけど魔力の回し方には自信がある。

 こういった役に立たない小技に関しては一流だ。

 

「……今のは私にはできないと思う」

「あー。サウレは魔力量が多いもんな」

 

 確かにサウレやジュレには難しいかもしれない。

 俺くらい魔力量が小さければ制御も簡単だけどが、魔力量が多い奴がやると人形の許容量を超えてしまい、最悪人形が破裂する。

 魔力が大きいとその分制御が難しいらしいからなー。

 

「まぁ出来たところで、って感じではあるがな」

「……私は面白かった」

「そうかい。そりゃ良かった」

 

 にこりと微笑むサウレ。頬を赤らめていて、普段の無表情が嘘みたいな笑顔。それを見ていると、何だか得した気分になる。

 この程度の事で喜んでもらえて何よりだ。

 

 魔導製のあやつり人形は飛ぶように売れ、俺たちの目の前で完売。

 そのお礼にと焼き菓子をもらったので、サウレと一緒に食べながら町中をうろついた。

 

 

 アルとジュレが戻ってきたのは日が沈み出す頃だった。

 どうやらかなりの数の魔物を狩ってきたらしく、アルが非常にご満悦だ。

 ジュレも大して疲れているようには見えなかったので、そのまま皆で冒険者ギルドに向かい、討伐報酬を貰うことにした。

 尚、今回の儲けはアルとジュレの二人に渡すつもりだったのだが、二人の強い希望でパーティー共有財産となった。

 消耗品などはここから金を出す形だ。

 俺もいい加減玉の補充をしなきゃなんないし、アスーラに居るうちに材料を揃えてしまおう。

 

 ともあれ。アスーラの初日は何事もなく終わりそうだ。

 この後は船で一緒だったクレア達と飯を食うことになっているが、特に問題は無いだろう。

 平穏なことで何より。それに今日は良いものも見れて満足だ。

 

 やっぱりサウレには笑顔が良く似合うと思う。

 

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