ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺は、最弱の身体強化しか使えないけど何とかなると信じてスローライフを送りたい。無双?最強?そんなものに興味はないですよ?〜   作:くろひつじ

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32話「うん。普通の仕事って最高だな」

 

 昨晩。クレアは何とか宿を借りる事ができたので、何とか相部屋は回避出来た。

 最悪の場合俺が馬小屋で寝ようかと思ってたけど、何とかなってよかった。

 

 さて、本日から治療院の雑用の仕事だ。

 街の外れにある治療院に行き、雑用の仕事を引き受けた事を伝える。

 関係者用のタグを渡された後、仕事内容の説明を受けた。

 

 内容的には専門的な事はなく、治療に使った物を消毒したり、ポーションの容器を持ってきたり、患者を運ぶのを手伝ったりと、シンプルな物が多い。

 時には足りなくなった薬草を採取しに行く事もあるらしいけど、今日は必要ないようだ。

 

 そしてシンプルな分、常に人手が足りない治療院としては冒険者を雇いたいくらいに大変な仕事なのだろう。

 

 この国の治療院はとにかく仕事が多い。

 怪我や病気の対処から始まり、薬草を栽培したり、病気の予防方法を伝えたり、読み書きや計算、魔法の使い方を教えたり、炊き出しをしたり。

 その分給料は高いらしいが、ほとんど休みもなく働いているらしい。

まぁ、怪我や病気は休日なんて関係ないしな。

 

 そんな場所での雑用だ。少しでも力になれるなら、と気合いもはいる。

 俺がやる気を出しているのを見たからか、サウレもどことなくいつもよりやる気が出ている、ように見える。

 表情が変わらないから何となくだけど。

 

「ではまず、こちらの倉庫の整理からお願いします」

 

 案内してくれた治療院の男性が倉庫に通してくれた。

 大きな木箱が幾つも積まれていて、それぞれに物の名前の書かれた紙が貼ってある。

 

「了解です。同じものを同じ場所にまとめたらいいですか?」

「それでお願いします。終わったら声を掛けてください」

「わかりましたー。さて、やるぞー!」

「……おー」

 

 重たいものを俺が、軽いものをサウレが担当し、ホコリを払いながら荷物を運ぶ。

 倉庫内はそこそこ広く、結構な重労働だ。

 でもこの、仕事をしている! と言う感じが心地よい。

 命の危険なんて無いし、これはこれで良い職場かもしれない。

 

 身体強化の魔法を使いながらせっせと運び終わると、次は治療器具の消毒を任された。

 デカい鍋にグラグラと湯を沸かし、その中に包帯や器具を入れていく。

 しばらく煮沸(しゃふつ)して殺菌したら、サウレに浄化の魔法を使ってもらう。

 鍋の前に立ちっぱなしだからかなり暑い。俺もサウレも上着を脱いで次々と消毒していった。

 

 一通り終わったので、アイテムボックスから取り出した水を飲み、先程の男性を探す。

 視線を巡らせると、どうやら怪我をした男性の治療をしているようだ。

 足に刺さった木のトゲが痛々しいが、それらを的確に取り除いていく。

 見える範囲で全てを抜き終わったら回復魔法で傷を治し、こびり付いた血を拭ってやっていた。

 

 回復魔法を使う時は傷の治療の他にも、先に異物を取り除いたり幹部の消毒を行う必要がある。

 そうでないと刺さった物が残ってしまったり、毒が回ってしまう事があるからだ。

 俺も知り合いの治療師から教えてもらい、それを実践している。

 いや、回復魔法自体は他のやつに任せるしか無いんだけどな。

 

 しかし、さすが本職。手つきに迷いがなく、早い。

 これがプロってヤツだよな。素直に尊敬するわ。

 

「消毒、終わりました。次はどうします?」

「あぁ、じゃあ次は昼食の……って、何て格好をしてるんだ!?」

「は? ……あ、そうか。サウレ、お前だよ」

「……?」

「首を(かし)げるな。いいから上になにか着ろ」

 

 見慣れ過ぎて忘れてたけど、コイツほぼ何も着てないからなぁ。

 普通の人から見たらただの変態とその仲間だわ。

 

「……他はマントしか持ってない」

「じゃあほら、俺の上着貸してやるから」

「……分かった」

 

 俺が渡した予備の上着を頭からすっぽりと着ると、流石にサイズがブカブカだった。

 袖口を掴み、そのまま顔に持って行って匂いを……っておい。

 

「……ライの匂いがする」

「やめろ恥ずかしい……あ、すんません。とりあえず着せたんで」

「この子はサキュバスかい? 種族的に仕方ないかも知れないけど、出来るだけ気をつけてくれよ?」

「……分かった」

 

 指先しか出ていない袖口を見て微笑みながら、サウレは適当にうなづいた。

 

「あー……すみません。こいつ、悪気はないんで」

「構わないよ。じゃあ二人とも、昼食の手伝いを頼む。あっちにキッチンがあるから」

「了解です」

 

 言われた方に進み、既に作られていた昼食を職員達に渡していく。

 手軽に食べられるようにか、肉と野菜がふんだんに入ったサンドイッチだ。

 俺達も同じものをもらい、隅の方に座って食べることにした。

 

 一口かじると、葉野菜のパリッとした歯触りに、肉の濃厚な旨み、そしてマスタードの刺激が口中に広がる。

 なんだこれ、美味い。そこらの飯屋より美味いんだが。

 その上かなり食べやすい。具だくさんなのに具がこぼれ落ちないのは、糸で十字に縛ってあるからだ。

 これ考えた奴凄いな。ボリュームがあって手軽に食えて、その上美味い。言う事なしだ。

 

「……ライ。これ美味しい」

「あぁ、美味いな。これで昼からも元気に働けそうだ」

「……うん。頑張る」

 

 小さなガッツポーズに、思わず笑みがこぼれる。

 こいつやっぱり可愛いんだよなー。普通にしてれば。

 

「うっし。んじゃ、働きますかね!」

「……おー」

 

 二人で右拳を上げ、とりあえず皆の分のゴミを回収しながら次の指示を貰うことにした。

 さてさて。まだまだ体力は有り余ってるし、頑張りますかね。

 

 うん。普通の仕事って最高だな。

 

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