ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺は、最弱の身体強化しか使えないけど何とかなると信じてスローライフを送りたい。無双?最強?そんなものに興味はないですよ?〜   作:くろひつじ

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48話「何気に扱いが一番難しいかもな、こいつ」

 

 しばらくどうでも良い話をした後、急患が入ったからとジュレが慌てて立ち去った後。

 

「お、ライみっけ! どうよこの格好!」

 

 何故か治療院の仕事着を来たクレアが嬉しそうにやってきた。

 

 仕事着は灰色の長袖ワンピースにフリル付きのエプロン、白い布を頭に巻くというシンプルながらも可愛らしい衣装だ。

 兎耳が帽子の脇からぴょこんと立っているのが印象的で、首から下げているのは関係者の証明である十字の赤いペンダント。

 全体的に清楚な雰囲気だが、何故か活発なクレアによく似合っていた。

 

「可愛いと思うが、わざわざ着せて貰ったのか?」

「そんな訳ないでしょ、みんな忙しいのに。これ自作だよ」

「自作って……何でそんなもん持ってんだよ」

「色んな服着たいから!」

 

 薄い胸を張りながらドヤ顔で言われた。

 趣味て。かなり本格的な服なんだが。

 

「それに一応、治療師として働ける資格は持ってるからね!」

「マジか。凄いなお前」

「可愛くて優秀なクレアちゃんだからね!」

 

 うん。確かに可愛くて優秀だが、自分で言えるのは凄いと思う。

 

「確かに似合ってるな。良いと思うぞ」

「え。まさか素直に褒められるとは思わなかったんだけど……まじかー」

 

 途端にはにかんでモジモジしだすクレアに苦笑いを返す。

 こいつ相手だと変に気を張らなくて良いから楽だ。

 うちのパーティーで貴重な常識人だし。

 

「で、仕事は良いのか?」

「ボクが出来る仕事は全部終わらせてきた!」

「マジで優秀だよなお前」

「えっへん!」

 

 しかし、こうやって話してると本当に美少女にしか見えないな。

 顔立ちも良いし、気配りも出来るし、何でも任せられる。

 常に仲間内の欠点を補うように動いてくれるから俺も非常に助かっている。

 

「ところでこんな可愛いボクを見てムラムラしないかな!?」

 

 こういう所が無ければなあ。

 

「するかアホ。せっかく褒めてるんだから大人しくしてろ」

「えー。ダメかー」

「可愛いのは認めるが、それとこれとは話が別だ」

「うーん。ライの好みがイマイチ分かんないなー」

 

 腕を組んで小首を傾げられても困るんだが。

 好みか……好みなあ。

 

「悪いがそれは俺にも分からないからな?」

「そうなの?」

「そもそも恋愛をした事がない」

 

 可愛いとか美人だとかは思うし、つい女性的な部分を見てしまう事はあるけど。

 基本的にヘタレだからなあ、俺。

 それに誰かと付き合う余裕なんてなかったし。

 

「じゃあボクが初彼女だね!」

「いや付き合ってないからな?」

「くそう。流されないかー」

「しばらくそう言うのはいらん」

「ふふふ。そんな事を言えるのも今の内だからね? クレアちゃんの魅力には逆らえないのさ!」

 

 うーん。魅力なあ。

 確かにこういう馬鹿な会話が出来るのはありがたい所ではあるんだよなあ。

 適当に話しても乗っかってくれるから楽しいし。

 でもなんて言うか……本当に絶妙に残念なんだよなこいつ。

 

「あ、ところでさ。今夜の宿は取ってるの?」

「うん? いや、宿は必要ないな」

「んー? どういうこと?」

「王都だからな。俺の持ち家がある」

 

 実は王都の外壁近くに小さいながら家を持っている。

 昔ちょっとした特別な依頼を受けた時に建てたものだ。

 大して立派な家でもないが、全員が泊まれる程度の広さはあるから宿代は気にしなくても良い。

 

「ねえマジでボクと結婚しよ?」

「断る」

 

 目を輝かせながら詰め寄るクレアを押し返しながら真顔で告げる。

 こういう所なんだよなー。

 打算的と言うかなんと言うか。

 たくましい奴だよな、本当。

 

「まあでもお金がかからないのは良い事だよね!」

「だな。ここ終わったら久しぶりにオウカ食堂の職員寮にも顔出すか」

 

 知り合いへの挨拶回りも終わったし、チビ達の様子も気になるところだ。

 オウカが何も言ってこなかったから問題無いとは思うけど、心配ではあるからなあ。

 

「ところでさ。ライはこれからどうするの?」

「王都でって事か? とりあえずアルとジュレの人探しかね」

「あ、ギルドに依頼した奴だね」

「だな。それが終わったら王都を出るけどな」

「うーん。それなんだけどさー」

 

 難しい顔で腰に手を当てるクレア。

 どうでもいいけど仕草が面白いなこいつ。

 

「いっその事、王都で話を着けた方が良くない?」

「はあ? 話を着ける? あのルミィとか?」

「だってさー。一生逃げ続けるとか、キツくない?」

「……まあ、それは確かになぁ」

 

 考えた事も無かったけど、確かにクレアの言う通りではある。

 そこで話が終わるならそれに越したことは無い。

 そうなれば王都で適当な仕事を探してのんびり生きていく事もできる訳だしな。

 

「けどなあ……あいつが話を聞くと思うか?」

「んー。何とも言えないけど、王都なら大丈夫だと思うよ」

「うん? 何でだ?」

「だって英雄様が助けてくれるでしょ?」

「……ああ、なるほどな」

 

 言われてみればそうか。

 レンジュさんに酒でも持って行って護衛を頼めば戦力的にはどうとでもなるし。

 ふむ。ちょっと本気で考えてみるのも良いかもしれんな。

 いや、怖いけど。死ぬほど怖いけど。

 

「ライが落ち着かないとボクも困るし!」

「それが本音かよ……まあ、ありがとな。考えてみるわ」

「ちなみにボクは何番目でも良いからね!」

「そっちは知らん」

 

 くすくすと笑うクレア。

 おかげさまで、少し心が軽くなった気がする。

 こいつと居るといつも、どんなに深刻な事態でも何とかなるんじゃないかと思わせてくれる。

 パーティー唯一の常識人だし、何気によく助けられてるんだよな。

 ここは素直に感謝しておくか。

 

「クレア、いつもありがとな」

「おっと。いきなり何さ?」

「いや、お前が居てくれて助かってるなと」

「なるほど。じゃあほら、撫でて撫でて!」

 

 言われるままに朗らかに笑うクレアの頭をぐりぐりと撫でてやる。

 サラサラした髪にフワフワした兎の耳が心地良い。

 ……そういやこの耳って付け根はどうなってるんだ?

 

 髪を掻き分けて付け根の部分を探り、コリコリと触ってみると。

 

「ひゃあんっ!?」

 

 何か変に色っぽい声を出しながら屈み込んでしまった。

 

「あ、えっと、その……耳の付け根は敏感だから、ダメ!」

「お、おう。すまなかった」

 

 潤んだ瞳で見上げられると、なんだが悪いことをした気になってきた。

 うーん。何か申し訳ない。

 

「悪かった。ほら、立てるか?」

「……立てない。立ってるから」

「は? 何を言って……いや待て、説明しなくていい」

 

 こいつ、こんな見た目なのに男だからな。

 つまりはまあ、そういうことなんだろう。

 なんだかなー。改めて言われると違和感しか無いんだが。

 

「くそう。ライは触り方がえっちすぎるよ……」

「なんかすまん……」

 

 なんとも言えない微妙な空気になりながら、とりあえず謝っておいた。

 

 何気に扱いが一番難しいかもな、こいつ。

 

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