ぐりむ・りーぱー〜剣と魔法のファンタジー世界で一流冒険者パーティーを脱退した俺は、最弱の身体強化しか使えないけど何とかなると信じてスローライフを送りたい。無双?最強?そんなものに興味はないですよ?〜 作:くろひつじ
昨晩は結局、アルにベッドを譲り、俺は毛布にくるまって床で寝た。
いや、くっそ寒くてロクに寝れなかったけどな。
て言うかそもそも、警戒しすぎて眠れる気がしなかったけど。
だってさー。普通に怖いって、女と同室とか。ほんと恐怖でしかないわ。
んでまー翌朝。つまり今日なんだが。
宿の裏庭がちょうど良い広さだったんで、おばちゃんに許可をもらってアルと二人でやってきた。
「よし。んじゃ、初めっかー」
「えぇと……何をですか?」
「ん? 実力確認。ほれ、剣振ってみ」
目の前を指さす。
そこにはアイテムボックスから取り出した木製の
つまり、試し斬りだ。
「これを斬ったらいいんですか?」
「おう。やってみー?」
「では、行きます!」
騎士剣を構え、デコイに向き直る。
大きく振りかぶり、そして、勢いよく振り下ろした。
ぶぉん、と風を切り、両手剣は見事にデコイを真っ二つに叩き切った。
そして、アル自身は何も無いところですっ転んでいた。
……うーむ。これはまた、極端と言うか。
いや、太刀筋は素晴らしいんだけどさー。
確かに宣告通り、攻撃に関してだけは一人前だ。
けどこれ、実戦だと即死だよなー。
「なるほど。素振りもこんな感じ?」
「毎回
「なんでそんな堂々としてるのかな」
これは根本的に鍛え直す必要があるかもしれない。
て言うか、殺る気に満ち溢れ過ぎだろ、お前。
捨て身で斬ってんじゃねぇよ。
「なるほどなぁ。アル、どこかで剣を習ったのか?」
「我流です!」
「だろうな。基礎が出来て無さすぎる」
ちょっと貸せ、と両手剣を取る。
「いいか? まず腰を落として重心を下げろ。縦振りする時は身を乗り出しながら。横に振る時は、重心を後ろに逸らしながらだ」
実際に振ってみせる。俺も一応鍛えてはいるからな。
あまり早くなければ見せてやる事はできる。
それにまぁ、こいつが使い物になれば俺は戦わずに済みそうだしな。
「おぉー。なるほど!」
「アルは全力でやり過ぎだ。今の感じなら八割の力で良いかな」
「やってみます!」
嬉々として両手剣を振り回し始めやがった。
おぉ、飲み込み早いなこいつ。ちゃんと振れてるじゃねーか。
……え、これ、俺が教えること無くね?
「ライさん! できましたよ!」
「うん。できたなー。じゃあ、そういうことで」
「逃がしませんよ!?」
「だめかぁ……でも実際、他に何を教えろって?」
俺は両手剣どころかどの武器も使えないし。
基本的な動きしか分からないもんなー。
「戦い方を教えてください!」
「戦い方なぁ。構わないけど、俺のはだいぶ邪道だぞ?」
「お願いします!」
「例えばだな……こう、縄を使ってな?」
目の前でくるりと結んでみせる。
「これを足元に放って、踏んだ瞬間に縄を引っ張ると……」
上から棒を突っ込んで縄を引く。
すると、縄の輪が小さくなり、棒を引っ張りあげた。
「こうやって足を取って、その隙に仲間が攻撃する」
「……うわぁ」
なんだその目は。有効なんだぞーこれ。
人型から四足相手まで使えるし、簡単だし、その割に効果はあるし。
「他にも穴を掘ったり、目潰ししたり、色々だなー。俺は弱っちぃから基本的に味方のサポートしかできないし」
「……あの、本当に本物のセイさんですか?」
「あぁ、まぁたぶん?」
あの、って言われると自身はないけどなー。
俺に出来ることは精々みんなのサポート程度だし。
「なるほど……
「だろうなー。そんだけ地力があるなら普通に戦った方が強いだろうしな」
「難しいですね……」
「冒険者は生き残ることが第一だ。捨て身の攻撃は外せば致命的だし、そこを意識してみると良いかもなー」
「勉強になります!」
うーん。ちぃと心配になるくらい素直だな、こいつ。
色々と大丈夫かね?
「あの。もし良かったら、模擬戦とかしてくれませんか?」
「んー。アルが加減できるようになってからだなー」
じゃないと俺、即死だからなぁ。
かすっただけでもヤバそうだし。
「なるほど。じゃあ努力します!」
「おーう。頑張れよ」
適当に返事しておく。
まぁ、この子はほっといても伸びるからなぁ。
「これでまた一歩、ぶっ殺せる日が近づきました!」
「……それさえ無けりゃなー」
キラキラとした満面の笑みで物騒な事言うなって。
そのサイコパスな部分はどうにかならないんだろうか。
それさえ無けりゃ良い奴なんだけど……マイナス点がデカすぎんだよな。
でもまぁ、こいつが頑張ってくれりゃあ俺が魔物と戦わずに済むし、その為にもアドバイスしてやりますかねー。
「とりあえず、鍛錬を続けることだな。姿勢を崩さずに剣を振れる事が出来れば、後は自然と身につくものだし」
「はい! ぶっ殺せるように頑張ります!」
「お、おう……まぁ、頑張れー?」
触らぬサイコパスに
スルーしておこう、うん。
「あぁ、そういや今日はどうするんだ? 俺は外壁修理に行くけど」
「私はしばらく練習してます!」
「そうか。まぁ何か会ったら外壁まで来てくれ。多分そこにいるから」
「了解です、師匠!」
師匠。師匠ねぇ。柄じゃ無いが、まぁ、悪い気はしないな。
「んじゃまたあとでな。頑張れよ」
「はい!」
とりあえず、ぶんぶか両手剣を振り回すアルを残して冒険者ギルドにより、そのまま外壁に向かうことにした。
さあて、今日もそれなりに頑張りますかね。